人形町にある老舗洋食店 ”芳味亭”で、自己定番のハヤシライスを食す
此処のハヤシライスはドミグラスソースと云うより、ケチャップソースの味に近いものである。
子供の頃、父親が作ってくれた味によく似ているのである。想うに大正生まれの父親が流行りの洋食を食し、それを真似て作ったのであろう。父のは、玉葱と牛肉を炒めてウスターソースにケチャップ、醬油、甘口ワインに砂糖を加えていたように思う。
こってりと甘酸っぱく、玉葱のガリガリ感が残るもので、深平皿にこんもり盛り上げたご飯の窪みに生卵を落とし、上から例の玉葱と牛肉のソースを掛けてくれたものである。濃いめのソースが玉子で程よくマイルドになり、旨かった。
30数年前、芳味亭で初めて食して以来、食すたびに父を思い出すのである。齢67才にして今だに父の味である。
相方の食したオムライスも、如何にも懐旧の品である。
職人さんの拘りと老舗の味は途絶えて欲しくないのであるが・・・・
・・・・一言
お茶を注ぎに来てくれた仲居さんが、食事途上にソースの器を断りなしに下げてしまったのは、老舗らしくない接客であった。殆ど食べてしまって器にこびりついた程度ではあるが、未だもう少し丁寧にこそげよぅかと思っていたのにと・・・・今時ファミレスでも下膳の際は断るくらいの接客はする。
たかがハヤシライスである、しかし前記のような拘りもあり30数年通っている客もいるのである・・・老舗は老舗らしい味と接客は必須であると、同時に時代の変化に対応するたゆまぬ努力も必要なのではないだろうか?
ハヤシライス1200円、オムライス1600円である。スープやサラダ無し単品で、この価格設定は決して安くは無い。
老舗の看板と味に胡坐を掻いてはいけない!!
勘定支払いの際、番台の女将さんへ一言苦言を呈したのであるが、ここは卒無い流石の接客ではあったが・・・・