日本経済新聞のイブニングスクープに出ていた気になるニュースを転載する。
稼働していない原発用の送電線は空いているのに使わせないので、風力や太陽光等の再生エネ発電で作った電力が送れなくて、再生エネ事業者が撤退する事態も起こりつつある。 社会全体の損失で大手電力会社の社会貢献姿勢が疑われる。
日本経済新聞社
再生エネ、送電網使えず 東日本で5割「空きなし」
【イブニングスクープ】
2019/10/10 18:00
送電線の空き容量不足が課題となっている
大手電力会社が持つ送電線の容量不足が深刻になっている。日本経済新聞社が大手電力のデータを基に調べたところ、北海道や東京など東日本で送電線の5~8割が空き容量不足に陥っている。未稼働の原子力発電所のために容量を確保し再生可能エネルギーを接続しにくい実態がある。送電線の有効な使い方が広がらなければ現在16%の再生エネの比率を2030年に22~24%に引き上げる国の政策にも影響を及ぼしかねない。
送電線は発電所から家庭へ電力を送る役割を担う。日本では送電線は停電など非常時に備え原則として普段はピークの容量の半分しか使わない。
電力会社は発電所をつくる際に送電線を使う権利を確保する。今回の調査では使える容量が全て埋まり、再生エネなどの新設の発電所につなげない送電線を「空き容量不足」とした。
電力各社が自社のホームページで公開している送電線の空き容量の目安などのデータを基に、各地域の主要な送電線のうち何割が容量不足であるかを調べた。
関東や東北では5割、北海道では8割近くの送電線が容量不足となっていた。西日本では関西と中国が2割程度の不足で、九州や北陸、四国では主要送電線では容量が確保されていた。風が強く、東北や北海道は風力発電が多い。主要送電線に空き容量があっても、発電所から主要送電線につなぐまでの細い送電線の容量が不足する例もある。
容量不足にはいくつかの理由がある。送電線の権利は先着順で埋まる制度の問題だ。送電線の整備は1970年代から本格的に進み、新設計画のあった大型の火力や原子力発電所で権利が埋まった。
電力大手は原則、廃炉を決めた原発の権利は手放すが、未稼働でも今後の再稼働を目指す原発の権利は維持している。これに対し再生エネ各社は実際は空きがあると批判。接続できないことが電力供給への参入障壁になっている。
12年に再生エネの固定価格買い取り制度(FIT)が導入されると各地で太陽光や風力発電などの新設が相次ぎ、発電量が一気に増えた。
再生エネ事業者などが新規に発電所をつくる際に、容量不足の地域では電力大手が送電線の整備費用の一部負担を求めている。負担が重く、発電所建設を断念する事業者が相次いでいる。
経済産業省も見直しには着手している。非常時のために空けている送電容量の5割の一部を再生エネの事業者に開放するほか、最大出力で確保している枠を実際の発電量に即したものにするよう電力大手に促している。
東京電力ホールディングスは9月、送電容量が逼迫した場合には一時的な出力抑制に応じることを前提に、送電線の使用枠を再生エネ事業者などに開放する取り組みを始めた。ただ、一部にとどまっている。
欧米では地域の電力を蓄電池などを使って融通し合うスマートグリッドなどが進む。再生エネ普及につながるため日本でも導入が期待される。
電力大手が整備した送電網は老朽化が進む。太陽光や風力は発電量が安定せず送電線に負荷がかかりやすい。20年4月からは発電と送電の部門が分離され、さらに大規模投資がしづらくなる。
大型の火力や原子力発電所だけの集中型から、太陽光など様々な場所で発電する分散型へと発電の実態は変わっている。つくった電気を有効活用する送電線の在り方が求められている。