【今回は5作品をイッキ読み!】
今回は評論第九弾として最近読んだ5作品を勝手に評価する。
今回は歌野晶午作品3つ、殊能将之作品1つ、柚月裕子作品1作品を読書感想文として紹介しよう。
「名探偵、初心者ですが 舞田ひとみの推理ノート(2021年2月 角川文庫) ”旧:舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵” 歌野晶午 83」
本作は、ストーリーテラーが主人公ではないし、主人公はタイトルにある女の子ではない。
そこが逆にライトに(俯瞰で)面白く読める推理小説となっている。
短編集だが、きちんと連作モノでもある。
だけど、この作品では主人公が、それぞれふわっと解決してふわっと伏線を回収するところが実に楽しいのだ。
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「名探偵は反抗期 舞田ひとみの推理ノート(2021年5月 角川文庫)”旧:舞田ひとみ14歳、放課後ときどき探偵” 歌野晶午 73」
前作とガラッと変わり、ストーリーテラーがひとみ嬢の友人に変更となる。
そして、前作では主役級だった叔父の刑事がそのひとみ嬢の脇差し級へ格下げ。
また、舞田ひとみという少女は中学二年に成長したことに合わせ、突然のスーパー名探偵へ格上げされていた。
そのため、歌野作品にしてはストーリーが強引になった印象が強くなってしまった。
短編連作だが、伏線回収は登場人物間で謎に行われるから縦軸が萎えがち。
最後まで読めるが、歌野氏作品の密室殺人ゲームのように、主軸縦軸を思いっきり曲げられてしまわないか不安ばかり過ぎってしまった。
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「誘拐リフレイン 舞田ひとみの推理ノート(2020年11月 角川文庫)”旧:コモリと子守り” 歌野晶午 5」
舞田ひとみという少女がJCからJKになって再登場するシリーズもの。
しかし、本編までの導入に我慢できずエピローグを過ぎたところで挫折してしまった作品。
ごくまれにある歌野氏のこの流れ、オレは好きではないため読むのをやめてしまったのだ。
シリーズ最後の作品だったから期待していただけに残念。
あまりにも助走が長かったり、導入までの過程が自分の想像の範囲を超えるような展開は、さすがに実績あるシリーズであっても読み切れなくなる、残念。
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「月下のサクラ(2021年5月 徳間書店 )柚月裕子 59」
いわゆる「森口泉」シリーズ。
親友を公安によって失った森口が、いよいよこの作品では刑事になって活躍するというもの。
しかし、柚月氏が桜ネタをこちら側から描くときは、お決まりのパターンになってしまうと萎えがちになるのだが、この作品も同様になってしまっていた。
つまり、おおむね概要がわかる中盤で萎えが来てしまうのだ。
終盤のクライマックスもさすがの臨場感があるものの結果がわかっているように読み進めてしまうことになる。
だけど、さすがの取材力には感服、頭が下がるというもの。
勿論最後まで読み切れるのだけど...
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【今回のMVPは?】
「美濃牛(2003年4月 講談社文庫) 歌野晶午 85」
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今回のMVPはこの作品。
本編で登場の必要があったのか不明なファンタジー要素が残念ではあったものの、全体を通しては優秀な長編ミステリー。
長編作品だが、一切ダレることなくよめるようになっている配慮も高評価。
大小の短編集が折り重なっているという配慮は、時代を超えても飽きない。
登場人物数が多いところも減点なのだが、ギリギリ頭はついていけるため、ミステリー作品として十分ついていけるところも合わせて評価したい。
もうだいぶ古い作品だが、今でも十分面白くワクワクしながら読めるのはすごい。
ただ、かなり入手困難の作品なので、お見掛けしたら是非ノータイムで手に取っていただきたい。