首相、靖国参拝 米国 中韓と関係悪化懸念/戦争肯定意味しない
産経新聞 12月27日(金)7時55分配信
【ワシントン=青木伸行】米政府は26日、安倍晋三首相の靖国神社参拝は、中韓両国とのさらなる関係悪化をもたらすもので「失望している」と表明した。その一方で米国内には、参拝を正当なものであるとして支持する見解があるのも事実だ。
在日米国大使館の声明では「首相の過去への反省と日本の平和への決意を再確認する表現に留意する」とも指摘した。ただ、米政府としては、バイデン副大統領が今月、中国の防空識別圏設定で高まった緊張を緩和するため、日中韓を歴訪したばかりのことでもあるだけに懸念を強めている。
米政府にはこれまで、首相の靖国神社参拝を思いとどまらせようとしてきたフシがある。10月にケリー国務、ヘーゲル国防両長官が訪日した際、宗教色がなく、A級戦犯が合祀(ごうし)されていない千鳥ケ淵戦没者墓苑を訪れ献花したのも、靖国参拝を牽制(けんせい)する意味合いがあったとの見方もある。
米主要メディアも異口同音に「中国、韓国との論争に火を付ける」(CNNテレビ)などと否定的に伝えたが、これらとは異なる見解を米国で表明してきたのがジョージタウン大学のケビン・ドーク教授だ。
教授は今年に入り、産経新聞などの取材に「日本の政治指導者が自国の戦死者の霊に弔意を表することは外交・安保政策とは何ら関係はない」と述べている。
教授はこれまでにも、「民主主義的な選挙で選ばれた政治指導者が、戦死者の霊を追悼することは、平和への脅威や軍国主義への前進になるはずがない」と強調。米国のアーリントン国立墓地には、奴隷制度を守るために戦った南軍将校も埋葬されている事実を指摘し、ここを歴代大統領が訪れたというだけで「奴隷制度を肯定したことにはならない。同様に靖国神社参拝も、日本が関わった戦争の全面的肯定を意味しない」と主張している。
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「首相の信念」「自己満足」=靖国参拝、識者ら分析
時事通信 12月26日(木)19時42分配信
日中、日韓関係が冷え込む中、安倍晋三首相が踏み切った26日の靖国神社参拝。「中国、韓国の人々を傷つける考えはない」と首相は両国に理解を求めたが、やはり強い反発を招いた。さらなる関係悪化が見込まれながら、なぜ参拝したのか。識者に話を聞いた。
「保守層への配慮というより首相の信念だろう」と話すのは川上和久明治学院大教授(政治心理学)。首相が意志を貫いた背景には、国内の保守層は安倍首相以外に支持する選択肢はない現状があるとの見方も示した。
参拝時期については、「来年4月の消費増税で景気が腰折れしかねず、支持率が安定している今しかなかったのではないか」と分析。「第2次政権発足直後は中国、韓国に配慮する考えはあったと思うが、両国の反日姿勢が変わらないことから参拝の判断に傾いたのだろう」と推測した。
外交評論家の田久保忠衛杏林大名誉教授(国際政治)は安倍首相の参拝を「快挙」と高く評価した。「靖国神社は他国が怒っているから行かないとか、よその国の決裁を求めてから行くような所ではない」と話す。
中国、韓国の反発については、「靖国神社を(両国が)政治的に利用しているだけだ。安倍首相は、一時的に関係が悪化しても、時がたてば平静を取り戻せると判断したのだろう」と語った。
安倍首相は参拝後、記者団を前に戦没者を弔う普遍性を説いたが、元レバノン大使で外交評論家の天木直人さんは「A級戦犯をまつった時点で靖国神社は政治的な意味合いを持ってしまっており詭弁(きべん)だ」と指摘。首相の発言はかえって中国や韓国の感情を逆なでする可能性があるとし、「ここまで外交を無視した首相はいない。安倍首相が得たのは自己満足だけだ」と批判した。
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首相と靖国神社―独りよがりの不毛な参拝
2013年12月27日(金)付 朝日新聞デジタル
内向きな、あまりに内向きな振る舞いの無責任さに、驚くほかはない。
安倍首相がきのう、靖国神社に参拝した。首相として参拝したのは初めてだ。
安倍氏はかねて、2006年からの第1次内閣時代に参拝しなかったことを「痛恨の極み」と語ってきた。一方で、政治、外交問題になるのを避けるため、参拝は控えてきた。
そうした配慮を押しのけて参拝に踏み切ったのは、「英霊」とは何の関係もない、自身の首相就任1年の日だった。
首相がどんな理由を挙げようとも、この参拝を正当化することはできない。
中国や韓国が反発するという理由からだけではない。首相の行為は、日本人の戦争への向き合い方から、安全保障、経済まで広い範囲に深刻な影響を与えるからだ。
■戦後日本への背信
首相は参拝後、「母を残し、愛する妻や子を残し、戦場で散った英霊のご冥福をお祈りし、手を合わせる。それ以外のものでは全くない」と語った。
あの戦争に巻き込まれ、理不尽な死を余儀なくされた人たちを悼む気持ちに異論はない。
だが、靖国神社に現職の首相や閣僚が参拝すれば、純粋な追悼を超える別の意味が加わる。
政治と宗教を切り離す。それが、憲法が定める原則である。その背景には、軍国主義と国家神道が結びついた、苦い経験がある。
戦前の靖国神社は、亡くなった軍人らを「神」としてまつる国家神道の中心だった。戦後になっても、戦争を指導し、若者を戦場に追いやったA級戦犯をひそかに合祀(ごうし)した。
境内にある「遊就館」の展示内容とあわせて考えれば、その存在は一宗教法人というにとどまらない。あの歴史を正当化する政治性を帯びた神社であることは明らかだ。
そこに首相が参拝すれば、その歴史観を肯定していると受け止められても仕方ない。
それでも参拝するというのなら、戦死者を悼みつつ、永遠の不戦を誓った戦後の日本人の歩みに背を向ける意思表示にほかならない。
■外交にいらぬ火種
首相の参拝に、侵略の被害を受けた中国や韓国は激しく反発している。参拝は、東アジアの安全保障や経済を考えても、外交的な下策である。
安倍首相はこの春、「侵略の定義は定まっていない」との自らの発言が内外から批判され、歴史認識をめぐる言動をそれなりに自制してきた。
一方、中国は尖閣諸島周辺での挑発的な行動をやめる気配はなく、11月には東シナ海の空域に防空識別圏を一方的に設定した。米国や周辺諸国に、無用な緊張をもたらす行為だとの懸念を生んでいる。
また、韓国では朴槿恵(パククネ)大統領が、外遊のたびにオバマ米大統領らに日本の非を鳴らす発言を繰り返してきた。安倍首相らの歴史認識への反発が発端だったとはいえ、最近は韓国内からも大統領のかたくなさに批判が上がっていた。
きのうの首相の靖国参拝が、こうした東アジアを取り巻く外交上の空気を一変させるのは間違いない。
この地域の不安定要因は、結局は歴史問題を克服できない日本なのだという見方が、一気に広がりかねない。米政府が出した「失望している」との異例の声明が、それを物語る。
外交官や民間人が関係改善や和解にどんなに力を尽くそうとも、指導者のひとつの言葉や行いが、すべての努力を無にしてしまう。
問題を解決すべき政治家が、新たな火種をつくる。
「痛恨の極み」。こんな個人的な思いや、中国や韓国に毅然(きぜん)とした態度を示せという自民党内の圧力から発しているのなら、留飲をさげるだけの行為ではないか。それにしてはあまりに影響は大きく、あまりに不毛である。
首相はきのう、本殿横にある「鎮霊社」にも参った。
鎮霊社は、本殿にまつられないあらゆる戦没者の霊をまつったという小さな社(やしろ)だ。首相は、ここですべての戦争で命を落とした方の冥福を祈り、不戦の誓いをしたと語った。
■新たな追悼施設を
安倍首相に問いたい。
それならば、軍人だけでなく、空襲や原爆や地上戦に巻き込まれて亡くなった民間人を含むすべての死者をひとしく悼むための施設を、新たにつくってはどうか。
どんな宗教を持つ人も、外国からの賓客も、わだかまりなく参拝できる追悼施設だ。
A級戦犯がまつられた靖国神社に対する政治家のこだわりが、すべての問題をこじらせていることは明白だ。
戦後70年を控えているというのに、いつまで同じことを繰り返すのか。
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靖国参拝「緊張緩和に貢献せず」=EU報道官
時事通信 12月27日(金)6時10分配信
【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)のアシュトン外交安全保障上級代表(外相)の報道官は26日、安倍晋三首相の靖国神社参拝について声明を出し、「地域の緊張緩和や、日本の近隣諸国、とりわけ中国、韓国との関係改善に貢献しない」と述べた。
声明は「慎重な外交による紛争の処理や、緊張を高める行為の自粛」が必要だと強調。関係国に対して信頼関係の構築や、「地域の長期的な安定確保」を呼び掛けた。
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台湾「隣国の国民感情を傷つける行動すべきでない」
産経新聞 12月26日(木)17時43分配信
台湾の外交部(外務省に相当)は26日、安倍晋三首相の靖国神社参拝に関し、「日本政府や政治家は史実を正視し、歴史の教訓をくみ取り、隣国の国民感情を傷つける行動をすべきではない」とする声明を発表した。(台北 吉村剛史)
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やっぱり、産経は産経だし朝日は朝日だ。
靖国問題は深いところまで知らないので「首相としての参拝」が良いのか判断が付かない。
が、
徒然なるままに書いてみる。
・参拝に反対・抗議しているのは中国と韓国と台湾のみ
・他のアジアの国の反応が見たいところだが、ニュースにはならないだろう
・アメリカは「失望している」だけで非難はしていない。アメリカの思惑と安倍さんの行動が合致していないから「失望」したのであって、参拝に対してではない
・A級戦犯と呼ばれているがB級もあり、それは戦争犯罪度に対しての優劣・多寡ではないらしい。勝てば官軍
・20世紀初頭までは植民地化という名の侵略戦争は当たり前で、欧米がその主人公だった
・政教分離は日本の問題であり、他が言うと内政干渉になる。日本人の論点としては、今回の安倍さんの参拝が「政治と宗教」の分離に配慮しているかを問うべきである
・参拝すれば必ず、波紋が広がるのに、政治的にきちんと回収する担保があるのか?
・韓国・中国という世界的なスタンダードを守らない国に対して、かの国に居る邦人の安全確保ができるのか?