5、基準値の誤り
私たちは、物事や出来事を確率的な数値で判断することが多い。その際に、生じる誤り。
数値である確率を表す場合、その条件や基準値があるのだが、それを考慮せず、単に数値を見ただけで直感的に反応してしまうところに問題がある。
例えば、「燃費リッター30キロメートル」と言われると、その30キロメートルに強く反応するが、どういう条件でその燃費が測られているのか、注意を払うことが少ない。そのため、誤りが生じてしまう。
6、大数の法則・少数の法則
サイコロやコインの表裏など、経費と時間が許すかぎり、より多くのデータから平均を求めた方が、真の平均値に近づくことを「大数の原則」という。
これに対して、「少数の原則」とは、少ないデータで発生した結果を、全体の結果と錯覚してしまう現象である。
例えば、3試合無安打のイチローと5割を打った新人を、その3試合だけで比較し、イチローよりその新人のほうが優秀と判断してしまうことである。
結論を急いで、はじめの直感だけで判断しないこと。データが多くなればなるほど結論は変わる。
7、代表性(典型性)のバイアス
典型的な性質で物事を判断してしまうこと。
例えば、黒人居住地は犯罪率が高い、ユダヤ人は金融業についている、日本人はおとなしい、など。
8、偶然に秩序を見る
偶然につづいた出来事なのに、そこに秩序や法則を見出してしまうという錯覚。
一定の地域にたまたま肺がんの発生率が高かったとき、そこに何らかの原因をこじつける。
9、原因と結果
AがあるとBという出来事が起こるという経験が続くと、Bの原因がAだと思ってしまう誤謬。
例えば、白い帽子をかぶるとパチンコに勝つという結果が続くと、パチンコに勝つ原因が白い帽子をかぶることだと思ってしまうこと。
白い帽子をかぶることとパチンコに勝つことには相関関係はあるかもしれないが、因果関係はない。相関関係は因果関係の単なる必要条件の一つである。
誤謬を表すと、
1、Aの発生は、Bと相関している。
2、したがって、AがBの原因である。
例えば、靴を履いたまま寝ると、頭痛がする。
したがって、頭痛の原因は靴を履いたまま寝ることである、間違い。原因はアルコールによる酩酊(酔っ払って靴を履いたまま寝る)。
もう一つの例。アイスクリームが売れると水死者が増える。
したがって、水死者の原因はアイスクリームである、は間違い。原因は、夏の暑さである。
10、確実性効果
人がある現象が起こる確率を主観的にとらえて、確率が0%と100%に近づくと極端に敏感になる。
例えば、病気にかかる確率を40%から20%にするより、5%の確率を0%にする方を重視する。タバコの禁煙を促進するより、放射能の除染に多額のお金をかけることもこの例である。