ジェフリー・アーチャーの「ケインとアベル」を読了
圧巻の面白さ。最初からストーリーに引き込まれ最後まで一気に読み終わる。面白い小説を探している人は、この本を読むべき。損はしない。
一人の人間の一生を描き切る小説は英米に多い。また、イギリスの文学は人間のセンチメントな部分を刺激する。
「感情」を刺激すること。
これは脳科学的に言えば、大脳辺縁系の扁桃体を刺激することである。どうすれば、文字でこの人間の感情を動かすことができるのか、最近、ずーっと考えていた。
この「ケインとアベル」を読んで、そのことが少しだけ分かったような気がしている。
それは、私たちの感情の源泉は「愛すること」にある、ということだ。
激しく愛しているがゆえに、その者が傷つけられれば、強い憎しみが生まれる。愛憎入り交じる激しさが、私たちの心を動かす。そして、激しく人を愛するには、過剰なエネルギーが必要なのである。
ケインとアベルは、同じ日にまったく違った境遇で生まれる。その二人が、ちょっとしたすれ違いで、対立しあうことになる。
戦うことと愛することは表裏一体である。愛が深ければ深いほど、激しく戦うことになる。
激しく人を愛せる者は幸いである。たとえそのせいで不遇の人生を送ることになったとしても、「生きている」という充実感は味わえるからである。
ああ、私は人を本当に愛しているのだろうか、と問いただしてみる。結局のところ、自分のことがかわいいだけなのではないだろうか、と。
このメロドラマ的小説の中核は、家族愛である。それに心を揺さぶられるのなら、まだ自分は大丈夫なのかなぁと思いつつ、小説を読み終わった。
こういう小説は大好きである。人間の中にある愛情を刺激する。
ジェフリー・アーチャーの小説をもう少し読んでみようと思う。