アンティマキのいいかげん田舎暮らし

アンティマキは、愛知県北東部の山里にある、草木染めと焼き菓子の工房です。スローライフの忙しい日々を綴ります。

どんぐり工房の伊藤和久さん

2013-08-03 21:27:29 | 稲武のモノ・コト・ヒト・バ
 稲武にきて、精力的に活動するお年寄りの多いことに驚きます。ご本人はとりたてて「がんばっている」意識はないようなのですが、若いうちから体を動かすこと、工夫することが当たり前になっているらしい方に、しばしばお目にかかります。

   どんぐり工房のインストラクター・伊藤和久さんもそのお一人です。

    彼はどんぐり工房で、実にさまざまな体験講習の指導を務めています。藁馬、藁ぞうりなどの藁細工、竹とんぼやウグイス笛、料理用のヘラやバターナイフなどの竹細工、土雛の色づけ、枝や葉を使った細工物、最近ではトウモロコシの皮でできた人形なども手がけています。ここに枚挙できないほど、とにかくたくさん! 工房の庭に設置してある、石焼芋とピザの焼ける金属製の窯も、彼の工夫でできました。

その伊藤さんが最近作ってくださったのがこれ。

   どんぐり工房での草木染め講習のおり、布の干し場が少ないので、いっぺんにたくさん干せる物干し台を作ってほしい、とお願いしたところ、さっそく考案してくださったものです。

   こんなふうにつかいます。

    干し道具の木枠は、可動式。チェーンで高さを調節できます。下はコンロを置く場所。染め液を煮終わってほぼ作業がおわったころに干し場が必要になるので、その上の空間にまとめて干せるよう、工夫して下さいました。干し竿は、稲武のどこにでもある細い竹。いくらでも補充可能です。

    この道具、想像以上に便利です。これまで、この3倍以上の場所に物干し用の紐を張っていたのですが、場所が足りなくて苦労していました。いまは、一挙に解決です。

    とにかく、伊藤さんは工夫の達人。どんぐり工房で教えているさまざまな細工物は、雑誌などに載っている写真を参考にすることもありますが、あとはご自分で工夫。どんぐり工房のインストラクター仲間として彼と知り合ってからこの方、レパートリーは増え続けています。

   「ひとつことを思い立つと、すぐに作ってみたくなる。ああしたらどうだろう、こうしたらどうだろう、とあれこれ考えるのがすきなのです」

    地元にはもともとなかった藁馬も、「写真を見て、どこからどう作ったものだろうかとさんざん考えました。どうにかものにして、今では、小学生でも全員が作れるようになり、この工房から何千頭と旅立ちました」。

    最初は藁馬だけだったのが、次つぎに藁細工ものが登場し、オリジナルの藁の鶴亀も生まれました。

    こちらは虫いろいろ。虫づくりの体験もできますが、むずかしくて時間がかかるので、色づけだけを希望する方のためにつくったものです。
 
     そのほかもろもろの作品は、どんぐり工房に展示してあります。自由に手にとって遊ぶこともできます。

     さて、ものづくりの大好きな伊藤さん、小学校のときは、「読み書き算数はきらいだったけれど、図画工作は大好き」な少年でした。稲武の農事試験場(現農業試験場)で農業を学び、家の仕事を手伝い始めました。

    「だけど、こんな狭い村にいるのはいやだった。広いところに行きたかったよ。ブラジルにでも行こうかな、と夢見たこともありました」

     そんなとき、たまたま愛知県で青年を県外に派遣する制度があり、応募。肉牛を育成する岡山県の農家で半年ほど学びます。

     「土産に、競り市で子牛を競り落として、貨車で一緒にかえって来ました」

     こうして和牛の飼育をはじめ、一人前になりました。その後、山のスギやヒノキの搬出に牛を駆り出して務め、酪農家がちらほら稲武にも現れだした頃には乳牛の飼育に切り替えて牛乳を販売しました。

     養蚕も手がけます。しかし、国内の養蚕業の衰退と共に廃業。クワが育っていた畑に梅を100本植え、いけばな用のサンゴミズキの栽培もはじめます。    

     「当時は、高度経済成長が始まる頃だったから、こんな山里にも豊田の街からマイクロバスが迎えに来て、工場に通う人が増えました。同級生のほとんどは、工場づとめに行きましたが、私は行く気がなかった」

     そのころ、縁あって、稲武にできた名古屋市の教育センターと学習センターにつとめることに。そこでの彼の仕事は、子供達に民芸を教えること。草木染めも紙すきも、独学で学びました。

     そして7年ほど前、どんぐり工房の開設と共にインストラクターに。それから伊藤さんの才能はますます開花。今に至ります。「勤めに出る」のが当たり前の生き方になっている今、試行錯誤しながらさまざまな仕事を手がけて来た伊藤さんのお話は興味深いものでした。

    ところで、伊藤さん以外の工房のインストラクターのおじさんたちも、みな手仕事がお好きです。こつこつ工夫するのが楽しそう。どこかにいってできあいのものを買ってくるのではなくて、まずどうにかして直そうとかつくろうとか、なさいます。

    どんぐり工房の草木染めの折に活躍している、草などを切断する押し切りは、どなたかの家で昔使っていた古いものを、彼らが研ぎ、使えるようになおしたものです。使い心地は、わたしがホームセンターで手に入れた新しい押し切りより、数段いい。

この夏も、どんぐり工房ではさまざまな体験メニューをそろえているそうです。手作りや工夫が大好きなおじさんたちと一緒に、作る喜び、工夫する喜びをぜひ味わって頂きたいものです。お問い合わせは、こちらまで。



      


    
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