アンティマキのいいかげん田舎暮らし

アンティマキは、愛知県北東部の山里にある、草木染めと焼き菓子の工房です。スローライフの忙しい日々を綴ります。

映画「ニュートン・ナイト」

2018-08-15 17:46:00 | 映画とドラマと本と絵画
    アメリカの南北戦争の折、南軍にいながら軍に敵対して反乱を起こした人たちがいた。そのリーダーがニュートン・ナイト。実話に基づくこの映画。地味ながらいい映画でした。

    貧しい白人である主人公は、戦場で甥に遭遇し目の前で死なせてしまう。彼の遺体を家族のもとに運ぶため、軍を脱走して村に戻ります。村で見たのは、南軍がやってきて洗いざらい「徴収」と称して略奪する姿。もともと黒人奴隷を持たない彼は、戦争に意味を見いだせず、軍隊に帰らずに脱走兵となります。

    彼を森の奥に住む脱走兵たちの住処に案内したのは、黒人との混血の女性レイチェル。黒人とも分け隔てなく接するニュートン・ナイトは、黒人白人の脱走兵双方の信頼を得ます。脱走兵狩りにやってきた南軍の軍隊をゲリラ戦で撃退。ついには、一つの町まで占領し、自由州として開放します。

     彼は、北軍あてに手紙を書き、南軍内部での反乱を支援するよう要請します。しかし、北軍は、彼らを素人の集団だとして支援を拒否。戦争は終わります。

     主人公役のオスカー俳優が熱演。KKK団が黒人を襲い吊るすシーンは、何度も映画で見ているのに、今のアメリカの政情と重ね合わせて、遠い昔の出来事とは思えませんでした。

     映画は、ニュートンの孫が裁判所で被告席に立たされたところからはじまります。はじめは、何のことかわかりませんでしたが、南北戦争から50年くらいたった当時、ニュートン一族がずっと住んでいたこの州(ジョージア州)では、白人と、黒人、および黒人のハーフとの結婚がみとめられておらず、ニュートンの孫はこの法律に違反した罪で、被告となっていたのです。彼は、白人女性と恋愛し、結婚するつもりだったところを、出自をいつわったかどで逮捕されたのです。

     彼の祖父・ニュートン・ナイトは、最初の妻とは離婚し、脱走したときに彼を救った混血のレイチェルと結婚。でも、最初の妻は行く当てがなく、結局一軒の家で同居となったため、孫の親の母親がどちらの妻か不明ということになり、裁判沙汰になったというわけです。奴隷解放宣言後だいぶたっていたとはいえ、公民権運動より40~50年前のできごとです。南部だったら、こういう差別的法律もまかり通っていても不思議でなかったのでしょう。

      ニュートン・ナイトたちによる南軍内部のこの反乱は、アメリカではこれまで歴史の表舞台にでていなかったのだとか。南部はもちろん北部にとっても、都合のよくない歴史的事実だったということなのでしょうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

漫画「ペスよ おをふれ」

2018-08-15 16:26:56 | 映画とドラマと本と絵画
   2007年に出た復刻版「ペスよ おをふれ」。少女漫画雑誌「なかよし」に、1957年から1958年まで連載されていた漫画です。

    同時期に、松島トモ子主演のラジオドラマもあったそう。ほんのかすかに記憶の底に、このタイトルと主人公&愛犬のスピッツ・ペスの姿があるような気がして、発刊時、購入しました。

    主人公ユリは普通のサラリーマンの家の娘。お姉さんは病気がちで、お金持ちではないけれど、親子4人仲良く暮らしています。そのユリが拾ったのが白い子犬。ペスと名付けられたその犬は、ユリとユリの家族のために大活躍します。

    当時の少女漫画は、異性愛も同性愛もふくめて恋愛ものはたぶん皆無で、ほとんどが母恋もの。この漫画の主人公ユリも、お母さんとお姉さんが不慮の事故で亡くなってから、お父さんが精神を病み、彼女は田舎のおじいさんの家に預けられ、悲しいことがあるたびに優しかった母や姉を思い出す、というシーンが描かれています。

    薄情な大家に追い出されそうになったり、悪者たちの策略でペスを殺されそうになったりする一方、やさしい担任教師や優れた医学博士に助けられたりと、波乱万丈の人生を歩む彼女。預けられた田舎のおじいさんが一命をとりとめ、やっと一息ついたところで、この復刻版は終わっています。

    続刊を心待ちにしていたのですが、いまに至るまで刊行されていないようです。巻末のみなもとたろうの解説によると、こののち、ユリとペスの放浪がはじまり、それがとても面白いのだそうですが、残念ながら読むことはできません。いままたちらちら読んでいたら、続きがよみたくて仕方なくなりました。

    ちなみに、当時スピッツは大流行。私の祖父の家もスピッツを飼っていました。名まえは忘れましたが。コリーが流行ったのはそのあと。アメリカドラマ「名犬ラッシー」が始まってからです。   


 

   
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

本「文部科学省を解体せよ」

2018-08-15 15:09:06 | 映画とドラマと本と絵画
  半年ほど前に読んだ。高校の教師を経て、文部省に入ったもと官僚が書いています。実際に彼が体験した話がもとになっているし、モりカケ問題が浮上したころ出版されたものなので、説得力抜群。

  たとえば、毎年いくつも全国の小中学校に依頼されるアンケート調査。「やる気度調査」とか「いじめについての調査」とか、多くの調査が課されるのだそうですが、著者によれば、その調査報告書が現場でどんな風に役立ったかについては、まったくわからないのだとか。官僚たちが自分の名声のために何らかのアイデアをおもいつき、忙しい現場におろして無理をして調査させた挙句、報告書は校長室か職員室の片隅でほこりをかぶっている、といっています。行った仕事の成果を判定する仕組みがないのです。

   PISAという「国際的な学習到達度に関する調査」があるそうなのですが、始まったばかりの2000年には、日本は読解力が32か国中8位でした。文科省はこの時、国際ルールに従わずに試験したため、わりにいい成績だったのですが、その3年後はルールに従った途端14位に下落。「PISAショック」というのだそうです。
   
   「PISAショックは、いまでもゆとり教育を導入したせいで、日本の学力はガクッと落ちたという論拠に使われています。しかし、ゆとり教育を取り入れたのはその前年、平成14年度からです。たった一年でその弊害が出るなどということはかんがえられません」

    この国際的な学力調査のデータを「曲解して下がったと大騒ぎすることで」文科省は、全国学力テストの復活に成功。教育現場に不要の競争や混乱を招いたという理由で1964年に中止になった一斉学力テストが、またはじまったのです。当然ながら、ふたたび学校間、都道府県間の競争が始まり、教育機関らしからぬ不如意の事態があちこちでおきているのだそうです。

そのほか、二年後から始まる予定の小学校の英語教育やプログラミング教育についても言及。実際の現場で教師が指導できるような体制は、ほとんど整えていないとの指摘に驚きます。

    本書では、天下りに不正、官邸からの強い圧力にまで言及し、さらに、「教育現場で翻弄されている親と教師、子どもたちがどうやったらこの危機を生き残れるか」を提言しています。表やグラフ、具体的な問題文などをあげての解説はわかりやすい。最後の提言には一部疑問がないこともないけれど、文科省の在り方に憤りつつも興味深く読みました。
   


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする