モンゴル製品のお店、空飛ぶ羊のラクダやヤク、カシミアの製品を愛用するようになり、昨年実店舗ができてからは、アンティマキの焼き菓子を置いていただけることになりました。
お店を主宰するモンゴル人のダリさんとも親しくなるにつれ、これまで全くと言っていいほど知らない国だったモンゴルが、急に近しい国になりました。
そのモンゴルの映画を二つ、続けてみました。ひとつは、「天空の草原のナンサ」、もうひとつは同じ監督の「ラクダの涙」。「ラクダの涙」のほうが制作は先なのですが、先に2005年にできた「天空の草原のナンサ」を見ました。天空の草原のナンサ : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)
主人公は6歳の女の子ナンサです。町の学校に通っていて、お休みで戻ってきたところから物語は始まります。彼女は3人の子供の一番上。遊牧生活を営む両親と一緒に住んでいます。彼ら一家の日常の生活が淡々とつづられるのですが、彼女が草原の岩穴の中で犬を見つけたところから、物語らしくなります。ほぼ主食に近いと思われるチーズ作り、乾燥した家畜の糞で行う煮炊き、家畜の世話まどなど、日々の暮らしがとても興味深い。
ナンサは、弟妹の世話だけでなく、母親の家事の手伝いもおこないます。その彼女が草原の岩穴で犬を拾ってきたことから、彼女の生活はいっぺんに潤いのあるものに変わります。父親からは飼うことを反対され、隠れて飼い続けるこの犬と彼女との交流が、映画の骨子となっていきます。
ナンサをはじめとして弟妹、両親の演技があまりに自然なので、俳優ではないのだろうなとおもってみていたら、映画終了後のメイキングで、やはり彼らは実在のモンゴルの草原に住む遊牧民一家と明かされます。監督が大勢の家族の中から選んだのだそうです。
現地の人たちの衣装を着た監督はナンサたちと遊びながら、演技に導く、ということを根気よく続けます。たぶん、子供たちは最後まで遊び続けたとしかおもっていないかもしれません。
映画の最終場面は、一家が次の遊牧地あるいは街をめざして(遊牧をやめる、という話も出てくるので、どちらか不明)、移動するところ。夫婦二人でゲルをたたみ、数台の荷車に家財一式とゲルの部品とともに載せ、子供たちは荷車に、自分たちは馬に乗って、出発します。家畜も含めての移動なので、長い行列なのですが、一軒の家をバラバラにしてまた新たな場所で組み立てる、ということそのものがすごい。柱も覆った布?もタンスも縛るロープも、どれにも長い歴史と彼らの知恵を感じさせます。
モーターバイクで町へ毛皮を売りに行った父親が、妻への土産にプラスチックの黄緑色の柄杓を買ってきます。妻はとても喜ぶのですが、子供たちがこの柄杓を家畜の乳を煮ている鍋の中に落として、変形させてしまいます。一見ずっと昔から変わらぬ生活を続けているように見えて、じつは少しずつ取り崩されるようにして見られる変化。その象徴的な出来事がさりげなく描かれています。でももちろんこの柄杓、捨てないで、犬の水入れになります。
山も川もないずっと続く草原に住む人たちの暮らしぶりがよくわかる、いい映画でした。
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