マンガですが、半分以上が文章。マンガだから手っ取り早く勉強できると思ったら、案に相違して、重い! あまりに知らないことが多すぎて驚愕の連続です。
日米地位協定の存在を知ったのはわりに最近のこと。 「日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか」 - アンティマキのいいかげん田舎暮らし (goo.ne.jp)を読んで、日本は到底独立国と言えないのではないかとおどろいたのですが、本書でさらにその感を強くしました。
さて、簡単に紹介します。
本書の主人公の女子高校生は、父親が遭遇した交通事故の加害者が米軍の兵士だったことから、日米地位協定の存在を知ることになります。
米軍兵士の側に事故の責任はあるのに、保険は効かないと保険会社に言われて、主人公一家は驚きます。兵士は休暇中であったにもかかわらず、勤務時間内での事故とみなされ、罪は免れたのです。在日米軍基地の米兵が勤務中に罪を犯しても、日本の法律ではさばけません。近代日本史で習った「治外法権」がいまもまかり通っているのです。
地位協定によってまかり通っている大きな事柄の一つが、「横田ラプコン」。
「東京の西半分から栃木、群馬、埼玉、神奈川、静岡、山梨ーー 長野、新潟にまでまたがる巨大な空域がアメリカのものなんだよ」「富士山が・・・ あの空が日本の物じゃねェなんて・・・」
主人公たちは羽田空港で、大阪からの飛行機が西からではなく、南からやってくるのを目撃します。「西からだと横田ラプコン内を通過することになる。だから房総半島の南まで来て大きく北に旋回して着陸するんだ」
基地で使う燃料漏れなどによる横田基地や嘉手納基地周辺の川の汚染もひどい。
「2016年、沖縄県は基地周辺の川から高濃度の発がん性物質を検出して、一億7千万ものお金をかけてこの物質を除去した」が、その防衛局に費用を請求しても「米軍と発がん性物質の因果関係は確認されてない」と拒否。地位協定のせいで、日本は米軍基地への立ち入り調査もできません。日本同様に敗戦国であるイタリアやドイツでは、自由に立ち入りができ、賠償もさせている事柄が、日本では「賠償どころか責任も認めてもらえない」のです。
講和条約発効後から実に70年にわたり、この地位協定を存続させているのは、「日米合同委員会」です。主な構成員は外務省や財務省、農水省などの官僚トップと在日アメリカ大使館のトップ、それに在日米軍のトップ。官僚は、県知事ですら簡単に会えないほどの高級官僚なのだそうです。それなのに、驚くことに、日本の政治家もアメリカの政治家もこの委員会に属していません。
「戦勝国の軍人が敗戦国の官僚を呼びつけ、今後の日本の運営方針を命じているのに他ならない」
本書は、軍事知識を身に着けることを説いています。「軍事の知識を学ぶことは、戦争や軍国主義を美化する事とは違う。ウイルスについて何も知らなければ感染症とは戦えん」「平和を尊び、戦争を遠ざけ軍国主義を断固拒否するために軍事知識は必要なのだ」
そして、日本の自衛隊の能力がほんとはかなり優れていて、日本は軍事大国なのだということを、かなり強調していますこの論調には賛否両論ありそうですが、どちらにしても、現実を忌避するのはいいことではなかろうとおもいます。
ところで、蛇足ですが、この本は小学館から出ているのに、やたら誤植が多い。ちゃんと校正する暇がないままに出版を急がせたのだろうか、とちょっと気になりました。
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