アンティマキのいいかげん田舎暮らし

アンティマキは、愛知県北東部の山里にある、草木染めと焼き菓子の工房です。スローライフの忙しい日々を綴ります。

映画「戦ふ兵隊」

2018-08-09 15:19:25 | 映画とドラマと本と絵画
  「ヤンキー・ドゥードゥール・ダンディ」を見て、この映画を思い出しました。1939年に日本で作られたドキュメンタリー映画。私は30年以上前に京都で開かれた自主上映の会で見ました。

   「戦ふ兵隊」は陸軍省の後援で東宝が製作したもの。中国の戦地で戦う日本兵たち、対する中国人たちの姿を実直に追いかけ記録に残したもの。監督は「戦争の中絶を内心願っていたのは確かだが、撮影で中国人と触れ合う中で「戦争で苦しむ大地、そこに生きる人間(兵隊も農民も)、馬も、一本の草の悲しみまでものがさずに記録したいと努力した」に過ぎず、本作が公開禁止になるとは思ってもいなかった」(ウィキペディア)とのことですが、内務省からは「厭戦的」と烙印を押され、上映差し止め、フィルムは焼却されました。

   ところが1975年に、なくなったと思われたこの映画フィルムが完全ではなかったけれど見つかり、日本各地で上映されました。私が見たのはその折だったらしい。 

   当時いくつかの昔の戦争映画を見たのですが、この映画は群を抜いていました。ドキュメンタリーだから迫力がすごい。細かいところは覚えていませんが、重装備した兵隊たちが苦しげに行軍する姿や、うごめくように戦場で走り回る姿を見たように覚えています。全編暗く、確かに内務省の言う通り「厭戦的」気分濃厚。

   東宝の社内で一か月ほど試写会が続けられたそうなのですが、反響は素晴らしかったとのことです。よくできたいい映画です。いまはどこかで簡単に借りられるのかもしれません。ぜひ若い人たちにもみてほしい。      

   
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ」

2018-08-09 14:57:47 | 映画とドラマと本と絵画
   この映画、テレビで放映されているのを見て、初めて知り、すぐに借りました。

   「ブロードウェイの父」と呼ばれている、アメリカの有名な興行師・ジョージ・M・コーハンの半生を描いたこの作品は、コーハンが死んだ直後の1942年に完成。70年以上前にできた映画ですが、おどろくほどよくできています。全く飽きずに、だれることなく、見続けました。映像も編集も王道を行っている感じ。脚本もいい。

    主人公は、芸人夫婦の間に生まれ、子供時代からコーハン一家として舞台に立ち、各地を巡業。20歳前から頭角をあらわし、一人で舞台に立つようになり、その後プロデューサーに。演じるジェイムズ・ギャグニーは、ギャング映画などで見たことのある俳優ですが、ちんけなうだつの上がらない役者だと思っていました。ところがこの映画では、ものすごい芸達者な所を見せていて、もうびっくり! タップは踏める、歌は歌える、ピアノも弾ける(みたいに見えました)。

    この映画が作られたのは、第二次大戦中。製作中に真珠湾攻撃が起き、もともと国策的映画だったのが、さらに国威高揚の意図を込めたらしい。題名のなかにある「ヤンキードゥードゥル」は独立戦争時代にうたわれた民謡の替え歌だそう。日本では「アルプス一万尺」の歌詞で親しまれている歌です。ジョージの舞台はミュージカルが多いのですが、そこで演奏されるのが、この「ヤンキー・・」の編曲やそのほか、耳に少しなじみのあるアメリカの楽曲がすこしずつ変奏されてくりひろげられます。

    子供のころ、テレビでミッチミラー合唱団の番組を好んで聞いていましたが、まさに彼らの歌う歌がいっぱい登場しました。そして舞台の背景には星条旗が。ジョージ作曲の「オーバーゼア」という歌は、当時の軍歌のような存在だったらしいことも初めて知りました。

    この時期、日本でも戦意高揚のための映画がたくさん作られました。「麦と兵隊」「加藤隼戦闘隊」「陸軍」そのほか、京都にいたころ自主上映の会などで見ましたが、優れたものも駄作もいろいろ。でも、どれも威勢が良くない。これで戦意を鼓舞できると、ほんとに軍部あるいは政府は思ったのだろうか、と疑問に思いました。

    軍歌もしかり。日本の軍歌は切なく淋しい歌が多い気がします。大正末年頃の生まれで、徴兵され内地勤務のまま終戦を迎えた父は、子供の私に軍歌や戦時歌謡をよく歌って聞かせたものですが、後年、「日本の軍歌は厭戦的だよなあ」と言ったことがあります。彼はそこがどうやら好きだったようなのですが、ほんとにどれも勇ましくない。

    それにくらべて、この映画に登場する軍歌は威勢がいい! そしてその歌を効果的に使ったこの映画は、目論見通り、士気を上げる手伝いをしただろうなと思いました。たぶん、いろいろ脚色たっぷりで、嘘も誇張もいっぱいの筋だと思うのですが、観客は調子よく乗せられます。映画一本を見ただけでも、「日本は負けるよな」とおもわせる、そういう映画でした。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「鳳凰橋を離れて」

2018-08-04 15:49:15 | 映画とドラマと本と絵画
   だいぶ前にテレビで放映された映画やうんちく番組を、ビデオフィルムに録画したままほうってあったのを、最近ちらちらとみています。フィルムの劣化が激しくて、見るに耐えないものもありますが、おもしろいものはなんとか頑張って視聴しています。

   そうしたフィルムのなかからでてきた、中国のドキュメンタリー「鳳凰橋を離れて」。李紅という女流監督の、1997年の作品です。撮影対象は農村から北京に出てきて働く4人の若い女性たち。4人が暮らすには狭すぎる部屋には、布団や衣類が積み重ねられ、炊事もその場所でしていました。大家の年配女性は彼女たちの誰かの親戚にあたるらしいのですが、田舎出の若い女性たちを口汚くののしることもしばしば。共同生活している彼女たちの間でもいさかいは絶えません。

   貧しい農村で生まれた女の子は、いらない子。田舎にいたら夢も希望も持てないから都会にやってきたようなのですが、実際は給金の大半を故郷の家族に送り、自分たちはかつかつの生活を強いられています。

   恋人ができては捨てられてまた出来て、を繰り返す同室の友人をせめるひとり。彼女は故郷の叔父の持ってきた縁談に期待を抱いて、遠く離れた土地まで相手に会いに行きます。しかし、おどろいたことに相手の家族は縁談を承知しているようないないようなあいまいな態度をとり、本人に会わせてくれません。

   北京でのうだつの上がらない生活に見切りをつけて、少しは今の生活より上昇できそうな希望の持てる縁談に乗った彼女は、失望を隠せません。結局彼女は、また北京に戻ります。

   4人で始めた共同生活は2人減り、そうなると家賃が払えないので、さらに狭い部屋に引っ越します。カメラは、同じ場所のほかの部屋部屋に暮らす人々や大家の女性の罵声を浴びながら家財を運び出す彼女たちを上から写し,あたかも虫のようにうごめきながら生きるしかない彼女たちの像をとらえています。

   驚いたのは、彼女たちがとても若く見えること。中学生かせいぜい高校生にしかみえません。実際は、22~24歳だとか。屈託なく、無邪気。笑い顔がかわいい。ひねくれていないのだろうな、とおもいました。   

   世界でもっとも貧富の差が激しいのが中国だとか。社会主義国とは名ばかりのこの国、20年後の今は、さらにひどいことになっているのではないかと想像されます。    
  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画「エコール」

2018-08-04 14:47:25 | 映画とドラマと本と絵画
   この映画「エボリューション」の監督ルシール・アザリロヴィックの作品というので、借りてみました。

   冒頭、室内で白服を着た少女たちが見守る中、棺がはこびまれます。棺の中で寝ていた少女は裸。目覚めた彼女、取り囲む少女たちに世話されて、仲間に。髪には赤いリボンを巻かれます。年少の生徒のリボンは赤、上の学年になると青、最終学年は紫と決められているのです。

   舞台は森の中の学校。いるのは白い制服を着た少女たちと二人の女教師。それに彼らの下女となって働く老婆たち。少女たちが教わるのは、生物学とダンスだけ。食前の祈りもなければ、図書室もないようです。森は深く、森の中に流れている川で、少女たちはときおり水浴びをします。

   学校の建物も森の様子も、美しく厳かで、引き込まれます。学校は塀で囲まれていて、彼女たちは外に出られません。ダンス(バレエ?)は熱心に教えられ、年に一度やってくる「校長」の眼鏡にかなうと、一人だけ「外」に出られることになっています。選ばれなかったひとりの女生徒は失望し、塀を乗り越えて逃亡します。でも、たぶん森深くで道に迷い、凍死したであろうと想像されます。

   なぜ、棺に入れられたのか、親はどうなっているのか、この学校はいったい何なのか、すべて不明のまま、物語は進みます。ただ、少女たちの遊ぶ姿や幼い子たちの拙いダンス、白い制服の下から伸びる細い脚、意図不明の会話などから目を離せなくなり、最後まで見続けました。 


   原題は「イノセンス」。たぶん、ぴったりのタイトルだと思います。原作もあるようです。この映画の翌年作られた「エボルーション」は少年たち。幻想的なシーンが多かったのですが、こちらにはそういうシーンはありません。不条理なだけです。

   フランス映画は面白くなくなったと、だいぶ前から思っているのですが、こういう、商業的でない映画なら、優れた作り手たちがやはりたくさんいるのだな、ということ思わせてくれました。お金もあまりかかっていません。

   それにしても、いくつかでてくる学校の建物はすばらしい。ほんとうにある建物だろうと思うのですが、いい感じでした。 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする