フェイスブックとは不思議なもので、
昨年、長野県の山村に住む、会社の先輩の学生時代の友人…というかなり遠目の人と友人になった。
友人とはいってもフェイスブックなので、会ったことはないし、
お互いの近況をときおり「いいね!」しあうぐらいの関係だった。
その人が、昨年の11月に「10月16日、ヤマトイワナの産卵現場」という近況とともに、
2匹のイワナが産卵行動を繰り広げる短い動画をアップしていた。
えっ? ヤマトイワナの産卵!?
いやいやイワナの産卵はすごいけど、「ヤマトイワナ」って、意味わかって使ってんのかな!?
今の日本で、ヤマトイワナがどれだけ絶滅危惧か知らないんじゃないのかな?
アップされた動画を食い入るように見るが、ケータイで撮ったもので、
さすがにそれが放流モノと交雑してしまったイワナか、
本物のヤマトイワナなのかは、よく分からなかった。
場所を教えていただくと(というか明記されていた)、そこはT川水系のとある場所。
2万5000分の1の地形図を見ても「水系」が記されておらず、
しかも、ある支流に合流する地形にはなっているのだが、かなり急で、
地表流としては下の河川とつながっていない可能性があった。
下の川から隔絶しているのか……。
もしかしてほんとうにヤマトイワナなのかも?
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ということで行ってきましたよ。1年後の今年。
会ったこともないフェイスブックの「友人」を頼って、
最後の夏休みを1日使ってはるばると。
そもそも、その人が産卵を見たのは去年の10月16日。
今年は秋も暑かったし、紅葉もやや遅いので、イワナの産卵も遅れるかな…と想像。
休みの関係もあって10月の19日に日程を決定した。
ラッキーなことに、18日に台風が通過した影響でかなりの雨が降ったので、
「もしかしてイワナたちの活性があがってるかも…」と抑えようのない期待が高まった。
彼からは、「いや、たしかに去年は見たけど、自然のことだから…」という感じ。
それは充分わかっているので、「ま、山登りがてらですから」ということで、
内なる情熱と期待を秘めて、車を走らせた。
19日は平日だったので、その友人は仕事で同行できず、
そのまた友人の地元ネイチャーガイドの案内で川に行った。
そこをフィールドにしているネイチャーガイドだったが、当然イワナの産卵なんて見たことがない。
まぁ、ふつう見ないというか、見えないものだから、彼も半信半疑だった。
現地はちょっとした高原状の場所で、流れも渓流いうよりは細流で、水量も少ない。
たしかにこれぐらいだと地形図には明記されないのかも。
じつはほぼ観光地といってもいいような場所なので、
細流に沿って遊歩道も整備されていた。
流れに沿って歩いていると、「おっ、イワナがいますよ」とガイドが指をさす。
おおっ! イワナだ! 白点がなく、たしかにヤマトイワナっぽい!!
20cmぐらいかな。
「けっこうイワナは見えるんですよ。でも、まぁ、産卵はどうですかね~」とガイド氏。
しばらく歩いてイワナを探していると、2匹が寄り添うように泳いでいる姿を発見。
「あれ? これ2匹で泳いでますね」
そこから、めくるめく1日がはじまった。
(つづく)