晴耕雨読とか

本読んだり、いきものを見たり。でも、ほんとうは、ずっと仕事してます。

奇跡の1日 ~ヤマトイワナ産卵観察 その2~

2012年10月21日 | 生き物
同行していたのはガイド氏ともうひとり。
3人で、遊歩道から流れを見下ろし、イワナの動きを観察する。





ときおり尾びれで砂を掘るメス。すーっと来て、寄り添うオス。
スニーカーが入ってきて、びゅんとオスが追い払い、
そして、メスにくっついてブルっと体を震わせる。
産卵には至っていないようだが、ずっと2匹で一連の行動を繰り返している。

この感動的な光景を前に、ぼくらは押し黙って観察……するのではなく、
「おっ、またブルッとした!」「あっ、ほかのオスが邪魔しに来た!」「いやー、すごい、すごい!!」と、
小声でささやくように、でも大騒ぎの興奮状態。

挙げ句には「そもそもヤマトイワナっていうのはですねえ…」と、
2匹のイワナの前に講釈をたれるわたし。

「あっ! こっちでもやってますよ!」

いつのまにか少し下流に下ったガイド氏の声が聞こえる。

川中で産卵行動がはじまっている!! 

動画を撮る。ただ観察する。ちょっと近づいてみる。
2匹のイワナはまったく逃げずに行為を続けている。

すごい、すごい! まさかほんとうにこんなことが!!

あっというまに時間が過ぎる。1時間近くはイワナを観察していただろうか。

お腹もすいたし、いや~、すごかったねといったん引きあげることになった。
遊歩道を歩いて、最下流までいくと、そこにはスリット式の堰堤があって、
イワナが何匹も溜まっていた。さすがにそこからは遡上できない。

でも、端っこにちょろちょろと水が落ちるところでバチャバチャと遡上を試みるイワナがいた。
ほとんど水がないので、ほぼ体がむき出しだ。



この模様…たしかにヤマトイワナかも!
いや、でもこいつは死んじゃうね……。

3人は大満足で、昼飯を食べるべく川をあとにした。

ふふ。でもね、わたしはそのまま帰るはずはないね。
みんなで名物のソースカツ丼を食べたあと、
明日の準備があるというガイド氏と同行にもうひとりは、そそくさと帰っていった。

そして、わたしは川に戻り、ひとりでじっくりと観察をするのだ!
今度は川岸を匍匐前進して、寝そべってイワナを見よう!!

(つづく)

奇跡の1日 ~ヤマトイワナ産卵観察 その1~

2012年10月21日 | 生き物
フェイスブックとは不思議なもので、
昨年、長野県の山村に住む、会社の先輩の学生時代の友人…というかなり遠目の人と友人になった。
友人とはいってもフェイスブックなので、会ったことはないし、
お互いの近況をときおり「いいね!」しあうぐらいの関係だった。

その人が、昨年の11月に「10月16日、ヤマトイワナの産卵現場」という近況とともに、
2匹のイワナが産卵行動を繰り広げる短い動画をアップしていた。

えっ? ヤマトイワナの産卵!? 

いやいやイワナの産卵はすごいけど、「ヤマトイワナ」って、意味わかって使ってんのかな!?
今の日本で、ヤマトイワナがどれだけ絶滅危惧か知らないんじゃないのかな?

アップされた動画を食い入るように見るが、ケータイで撮ったもので、
さすがにそれが放流モノと交雑してしまったイワナか、
本物のヤマトイワナなのかは、よく分からなかった。

場所を教えていただくと(というか明記されていた)、そこはT川水系のとある場所。
2万5000分の1の地形図を見ても「水系」が記されておらず、
しかも、ある支流に合流する地形にはなっているのだが、かなり急で、
地表流としては下の河川とつながっていない可能性があった。

下の川から隔絶しているのか……。
もしかしてほんとうにヤマトイワナなのかも?

******

ということで行ってきましたよ。1年後の今年。
会ったこともないフェイスブックの「友人」を頼って、
最後の夏休みを1日使ってはるばると。

そもそも、その人が産卵を見たのは去年の10月16日。
今年は秋も暑かったし、紅葉もやや遅いので、イワナの産卵も遅れるかな…と想像。
休みの関係もあって10月の19日に日程を決定した。
ラッキーなことに、18日に台風が通過した影響でかなりの雨が降ったので、
「もしかしてイワナたちの活性があがってるかも…」と抑えようのない期待が高まった。

彼からは、「いや、たしかに去年は見たけど、自然のことだから…」という感じ。
それは充分わかっているので、「ま、山登りがてらですから」ということで、
内なる情熱と期待を秘めて、車を走らせた。

19日は平日だったので、その友人は仕事で同行できず、
そのまた友人の地元ネイチャーガイドの案内で川に行った。
そこをフィールドにしているネイチャーガイドだったが、当然イワナの産卵なんて見たことがない。
まぁ、ふつう見ないというか、見えないものだから、彼も半信半疑だった。

現地はちょっとした高原状の場所で、流れも渓流いうよりは細流で、水量も少ない。
たしかにこれぐらいだと地形図には明記されないのかも。

じつはほぼ観光地といってもいいような場所なので、
細流に沿って遊歩道も整備されていた。



流れに沿って歩いていると、「おっ、イワナがいますよ」とガイドが指をさす。



おおっ! イワナだ! 白点がなく、たしかにヤマトイワナっぽい!!
20cmぐらいかな。

「けっこうイワナは見えるんですよ。でも、まぁ、産卵はどうですかね~」とガイド氏。

しばらく歩いてイワナを探していると、2匹が寄り添うように泳いでいる姿を発見。

「あれ? これ2匹で泳いでますね」

そこから、めくるめく1日がはじまった。

(つづく)