晴耕雨読とか

本読んだり、いきものを見たり。でも、ほんとうは、ずっと仕事してます。

『誘拐』

2008年09月09日 | 
『誘拐』(本田靖春著/ちくま文庫)を読む。戦後ノンフィクションの名著と言われるものだ。



学生時代、ノンフィクション作家を夢見て、柳田邦男や鎌田慧、足立倫行、本多勝一、もちろん本田靖春らを一生懸命読んでいたことを思い出す。そのころはいろいろ読んでいたが、どういうわけかこの『誘拐』は読んでいなかった。

ノンフィクションらしいノンフィクションで、重厚でディテールがつまった一冊だ。昭和30年代末から40年代前半の話。今となっては大昔の話のようで、でも、実際わたしの生まれが昭和42年だから、じつは重なっている時代でもある。

幼児誘拐事件の顛末を追ったノンフィクション。戦後が終わっているような、終わっていないような、高度経済成長期の裏側というか、影の話だ。

どうして一見関係のないようなことにここまで取材をして細部を積み重ねていくのか? その時間、コストは無駄だろう!? そう思ってしまうほどのディテール。

しかし、そのディテールに魂が宿り、すべてのことに歴史性や時代性があること明確に伝えてくれる。単なる事実の積み重ねではない、ノンフィクション作品。ほんとうに圧倒される。

仕事上、ジャーナリストの真似事をしたことはあったが、この本を読んで今一度、ディテールから時代を切り取り、見つめることのチカラや意味を感じた。

なにか今からでもできることはあるか、そんなことを夢想してしまった。



謎のチョウ

2008年09月09日 | 生き物
買い物から帰ってきて車をでたら、頭の上をふわふわ飛んでいる大型のチョウを発見。「おっ、アサギマダラか!」と思ったらどうもちがう。そういえば、前も、カタチはアサギマダラみたいで、もうちょっと白黒で、後ろ翅に丸い斑紋があるのがいて、それと同じような気がした。

調べてみると、どうもアカボシゴマダラらしい。
http://www.ikimono.net/sono47/index.html
もともと日本には奄美諸島にだけいるそうだが、いま関東地方で増えているのは中国産の可能性が高いそうだ。自然分布の拡大ではなく人為移入で、だれかが放蝶もしくは幼虫を放したということだ。ウィキにも載っているのだから、もう有名な話なんだな。ぜんぜん知らなかった…。

95年に埼玉、2006年に東京で発見され、爆発的に増えている…といことらしい。エノキが食樹ということで、たしかに多摩丘陵にはどこにでもあるから、どんどん増えるというわけか、、、。

放蝶起源ということで、放鳥起源の中国産外来種ガビチョウ、ソウシチョウと同じようなもんか。クマゼミ、ツマグロヒョウモンは一応、人為がらみでも独力(?)で分布を拡大してきたんだろうから(ま、造園・園芸関連による人為移動という話はあるかもしれないが)、ま、なかなかおもしろい…とも言えるが、完全な人為移入は最悪な感じ。エノキが食樹ということは……多摩丘陵のゴマダラチョウやオオムラサキは大丈夫なんだろうか……。

ゴーヤのタネ

2008年09月07日 | 
ゴーヤの実がバキャッといったあと、地面にばらばらとタネが落ちていました。長さ1センチぐらい。端っこがネズミにでもかじられたようにギザギザしている。



軽くてスカスカな感じ。これは水に浮くな、、、という印象。いや、べつに水に浮くからどうというわけではないですが。ま、そういう散布方式もあるわけで、でも野生のゴーヤがどこに生えているかは知らないので、ま、あれですが。それぐらい、大きさの割に軽いのです。

はてしてこれが充実したちゃんとしたタネなのか、うまくいってないタネなのかはよく分かりません。

あとは、これが発芽するかどうか、、、。4株植えたから、それぞれでうまく受粉したか、あるいはタネはできるけど自家不和合性があるのか、そもそもその4株は同じ親からの株かもしれないし……。

どこかのサイトで調べよっと。




クマゼミ地獄。それはホラーに近い

2008年09月03日 | 生き物
ネットでクマゼミ北上のニュースが流れていました。

これまでは東に分布が広がっているという話でしたが、ついに(?)北上という表現になっています。

わたしは川崎の多摩区に住んでいるのですが、去年は鳴き声を一声聴いた気がするのですが、今年は自宅周辺では聴いていませんね。ただ、先日ドレッジ調査のために三浦半島の油壺に行ったときにはけっこう鳴いていました。

しゃわしゃわしゃわしゃわ……って。

そもそも実家がクマゼミ地獄で、そこは浜名湖湖畔のいつのまにやら浜松市に吸収されていた町なのですが、そこはすごかったですね。

家は狭い森に面していたのですが、それはもう大音響で、朝とか寝てられないぐらいでした。

しゃわしゃわしゃわしゃわ……って。

で、森の中に一本の細いヤマザクラがあったのですが、あんまりのクマゼミの数で、一度数を数えたのです。

たしか、、、40何匹かだったと思います。ほんとうです。それは部屋の窓から見える角度だけだったので、裏にいるのも数えたら、いったい何匹いるんだ…という状態でした。

それで、恐ろしいことに、新幹線に乗って東京に戻るとき、頭の中でずうっと鳴いているのです、クマゼミが。

しゃわしゃわしゃわしゃわ……って。

最初は、すごいなあクマゼミは、新幹線で時速200キロ(?)で走っていても、声が聞こえるんだーと思っていたのです。でも、冷静に考えれば、車窓には田んぼが……。ええっ、これは気のせいなのか! 気づいたときは驚愕しました。だって、ほんとうに聞こえるのです

しゃわしゃわしゃわしゃわ……って!

ああ、なかばホラーですね。でも、クマゼミってほんとうにそういうパワーというかエネルギーをもっているのですよ。それが徐々に分布を広げているって恐ろしい感じです。 

『植物一日一題』

2008年09月02日 | 
『まっくら、奇妙にしずか』と一緒に牧野富太郎の『植物一日一題』(ちくま学芸文庫)も購入。牧野によるガマズミの絵がいけてる一冊です。



うちでは、牧野富太郎のことを“とみちゃん”と呼んで親しんでいる(失礼か)。もう7、8年前のことだが、たまたま高知の牧野植物園に行ってから夫婦でファンになったのだ。http://www.makino.or.jp/

とにかくセンスいい建築で、ミュージアムショップのレベルもすごく高くて、Tシャツも買ったし、メモパッドも買ったし、さんざん散財した記憶がある。もちろん牧野博士の魅力もある

で、この本。牧野が一日に一題の文章を書くことを自らに課し、それを100日間続けたものをまとめたものだという。見つけたときは、これはみっけもんだとホクホクした。

でも、読み始めて、ちょっとしんどいことが判明。なんかこう、、、説教くさいのだ。一題目がジャガイモと馬鈴薯はちがうものだという話で、こういう勘違いはまったく話にならん!という感じ。

解説の大場秀章氏によるとこのようなものを「名実考」というのだそうだ。つまり、「一般にそう呼ばれているものが実際どうなんだ…」ということを検証するもののようだ。

中国の影響下にある日本では、日本の植物に中国名を当てたり、当時の中国の図鑑から同種だと判断したりして、それが間違っていて、それがいつのまにか定着してしまうことを検証しているのだ。

それがどうも、「まったく世の中、馬鹿でどうしようもない…」みたいな雰囲気があって、読んでいてつらいのだ。執筆当時、牧野はじつに84歳。ま、じいさんのお小言、と思えばそれもありか。

確かに、今でも馬鈴薯はジャガイモだし、それが本当はどうなのかは別として、ちょっとしたうんちくにはなっていて、勉強になるし、おもしろい。まぁ、書き方の問題なのかな。おもしろそうなところを拾い読みをする感じで読むか、、、という方向で。