銀ステ根なし草

銀のステッキ旅行・スタッフの雑記帳

精神安定剤(トランキライザー)その2

2020年03月27日 | のほほん同志Aの日常

この春は、時間の流れがずいぶん違います(皆さんもそうでしょうが)。

落ちつかない事態であることは間違いありませんが、
音楽を聴き、本をゆっくり読む時間は増えました。

というわけで、このところ、先日買った1枚を、くりかえし聴いています。
バッハの「ゴルトベルク変奏曲」。
カナダが生んだ不世出のピアニスト、グレン・グールドの演奏です。

きっかけは、生物学者の福岡伸一さんが、
その著書、『動的平衡』のなかで、こう述べておられたこと。

 私は、バッハの中でも、特にゴルトベルク変奏曲が好きだ。
 グレン・グールドのピアノを聴いて以来、
 すっかりこの曲が最上のトランキライザー(精神安定剤)となった。

 静謐に始まり、華麗に展開する。
 そして輝きが舞い、やがてまた静謐に還る。


実際に聴いてみると、そのとおりで、何度聴いても、ふしぎと飽きません。

それはどうしてなのか。
先の本のなかで、著者の福岡さんは、
フランス西部の港町ナントで開かれた音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ」を訪ね、
バッハのゴルトベルク変奏曲を聴き比べたたときの体験を紹介されています。

さまざまな演奏家による、それぞれの解釈の「ゴルトベルク変奏曲」。
おたまじゃくしだらけの難曲を実にさりげなく弾きこなすピアニストもいれば、
奇妙なノイズやDJのちょっかい、ドラムスまで打ち鳴らす超変化球を投げてくる強者も。

後者の演奏には、あまりの「反クラシカル」なバッハに席を立つ観客まであったそうですが…。

  しかし、私は心の中で快哉を叫んでいた。
  この「変奏」こそがゴルトベルクだと。
  この豊かさと自由がバッハだと。

  そしてわかった。
  ここには音楽の律動があますところなく発揮されている。
  その律動は本来、私たち自身のものであった。
                    (福岡伸一 小学館新書 『動的平衡2』)


本来、私たち自身のものであったという「律動」。
心臓の鼓動や、呼吸の起伏、脳波の低周波、
そうした生命体としての律動をおもてに取りだしたものこそが、
生きている証としての音楽ではないのだろうか。

…と、こう締めくくられており、なるほど、そういうわけでその「ゴルトベルク」とやらは
福岡さん云うところの最上のトランキライザー(精神安定剤)なのだな、
と書いている今も、グレン・グールドのゴルトベルクが流れており、
肩こりは相変わらず続いているものの、律動と律動は嚙み合っているのか心持ちは極めて平穏で、
なのでやっぱり、「ゴルトベルク変奏曲」、精神安定剤としてお勧めです(実証済み)。

安定ばかりでなく、そろそろ高揚もしたいところですが…。



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