ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

アメリカは、北朝鮮を核爆撃する -3

2016-09-15 14:50:44 | 徒然の記

  三万七千人の兵力を持つ、在米韓国軍はどこにいるのか。

 日高氏の著作で初めて知り、世界一の軍事強国アメリカの力を見せつけられた。朝鮮戦争終了時から50年間、在韓米軍は韓国を守るため北朝鮮軍と対峙してきた。その実態について、氏が明らかにしてくれる。

 「ソウルにある在韓米軍司令部は、ソウルの中央部、龍山 (ヨンサン)のほとんどを占めている。 」「東京で言えば、東京駅から大手町、銀座にかけての一等地を独り占めしているようなものだ。」「しかし、地図には何の記述も見当たらない。」「つまり龍山の一帯は、名無しの権兵衛、地名のまったくない地域になっている。」

 「表向きには、北朝鮮のゲリラから守るためと言われているが、」「主たる理由は、ソウルの中心部をアメリカ軍が独占している事実を隠すことだろう。」「韓国の人々にしてみれば、首都の広大な一等地をかくも長い間、外国人に占拠されたままというのは、まったく面白くないことに違いない。」

 現在、北朝鮮が38度線近くに置いている軍隊は 70万人であり、しかもテポドンを持ち、核兵器を持ってしまった今となっては、在韓米軍3万7千人が待機して攻撃を待つという形は、時代遅れになったとラムズフェルド国防長官が考えていたらしい。

 米軍の韓国からの撤退については、盧武鉉大統領が要求したとかしないとか、マスコミが騒いでいたのを覚えている。ほとんどのアメリカ人が彼を嫌悪し、金正日以上に、アメリカの敵と見ている。アメリカ国内には、「いっそのこと、在韓米軍を引き上げてしまえ」という意見が強くなっている。

 アメリカ政府は、在韓米軍の待機体制が戦略的に意味をなさなくなったことに加え、北との戦闘時に米軍が人質になる危険を考え始めた。先のブログで述べたように、グアムの基地が完成した今となっては、戦術的観点から米軍を韓国に置く意味がなくなっている。氏は、これに加えて次の要因を挙げる。

 「アメリカ国防総省の私の友人は、韓国内の反米感情を真剣に懸念している。」「今の韓国人たちは、北朝鮮に強い同族意識を持っている。」「私も韓国に再三渡り、取材しており、知り合いのジャーナリストに尋ねたことがある。」「北朝鮮がソウルを攻撃したとき、韓国軍や韓国人は北朝鮮に報復の戦いを始めるだろうかと、」

 すると、ジャーナリストがこう答えた。「大勢の国民がアメリカに反感を持っている今、何か起きたら、北朝鮮にではなく、米軍基地に攻めかかることが、絶対にないとは言えないでしよう。」

 つまりアメリカは、北朝鮮へ核攻撃をする前に、人質となる恐れのある在韓米軍を韓国から引き揚げなければならない。勿論そういう理由は口にせず、軍事情勢の変化ということで実行に移すだろうと氏は言うが、事態はこのように切迫している。

 さてここで氏は、アメリカが北朝鮮を核攻撃し、崩壊させた後の処置について、更に興味深いことを語る。

 「朝鮮戦争は、アメリカが10万人以上の死傷者を出して韓国のために闘った戦争だ。」「その韓国が今、北朝鮮に対して友好的な姿勢をとり、アメリカの基地反対闘争に全力を挙げているのを見て、アメリカの国民は猛烈に怒っている。」「アメリカには、社会の第一線で働いている、当時の兵や将校たちが多数いる。」「彼らは、自分や友人たちが韓国のために命を捧げたことを、今でも覚えている。」

 「こうした国民のためにも、ブッシュ大統領は、爆撃で崩壊させた北朝鮮を、韓国に併合させることはできない。」「しかも、北朝鮮と国境を挟んでいる中国とロシアは、アメリカ独自の処置に必ず反対する。」「アメリカは、おそらく中国、ロシアとの三国による、北朝鮮軍事管理という提案をするだろう。」「この状況が、ただちに日本の危機というわけではない。」「日本の危機は、アメリカ軍が朝鮮半島から引き揚げてしまった後にやってくる。」

 アメリカは、恩義を忘れた韓国を嫌悪し、怒りさえ覚えている。捏造の「慰安婦問題」で、日本だけが苦しめられていると思っていたが、すでに何年も前から、米国は韓国に憎まれ、攻撃されていたのだ。沖縄の基地反対運動に、韓国人が多数参加しているという話も、こうなってくると納得できる。だから米軍の韓国撤退という話は、根も葉もない噂でなく、信ぴょう性のある話だと分かる。

 「朝鮮半島からアメリカ軍が引き揚げ、中国とロシアが半島を支配することとなった場合、社会的な問題がまず起きてくることは明白である。」

 氏がこの本を出版した13年前には、半信半疑の国民が多かっただろうが、今日では迫り来る日本の危機が実感できる。好感の持てない氏であるとしても、現実の国際情勢下では、しっかりと聞きたくなる意見だ。

 「大勢のロシアマフィアが朝鮮半島に乗り込み、海岸線から日本海を超えて、日本にやってくる。」「今でも北朝鮮の小さな船が、日本から密輸をしたり、北朝鮮の人間を不法入国させたりしているが、」「ロシアマフィアの日本侵入は、北朝鮮の比ではない害を及ぼすだろう。」国名のロシアを中国と置き換えれば、まごうかたなき日本の危機が誰にも分かる。最後に、氏は中国の危険性にも言及する。

 「ロシアマフィア以上に危険なのは、中国の地下組織である。」「中国の地下組織は、北朝鮮の数百倍ものスケールで、」「麻薬や偽札、犯罪者、不法入国者を日本に送りこむだろう。」「中国の地下組織は、韓国の港を経由して、日本への侵入をやりたい放題にやるであろう。」「長い歴史の中で、日本はいつもこうした状況を恐れてきた。」

 「歴史的に、日本の指導者たちは、" 朝鮮半島の問題は日本の問題である " と 、考えてきた。」「これは韓国への内政干渉を意味しているのではなく、」「朝鮮半島の地政学的状況が、日本の安全にとって極めて重要だという意味である。」

 さてここからが、本題である。氏の意見と私の考えがぴったりと符合し、大きくズレているこの主張だ。

 「有事法案が成立した時、朝日新聞系の雑誌が、有事法案は新しい敵を作ると書いた。」「作るどころか、日本の周りはすでに、アメリカと台湾を除き敵ばかりである。」「こうした周りの国々の敵意から、これまで日本を守ってきたのがアメリカである。」「アメリカに協力し、対等の立場で同等の責任を持って自国を守っていくためには、日本は憲法を変え、日米安保条約を改訂しなくてはならない。」

 ぴったりと符合するのは、憲法改正と安保法制の改正で、大きくズレているのは氏の主張するアメリカ第一の思考だ。日本の危機を警鐘乱打する氏に共鳴しても、全てをアメリカと共にという意見には首をかしげざるを得ない。

 昨年の11月に亡くなられた平泉渉氏の動画が、今も私の脳裏に残っている。元外交官であり、国会議員だった氏は「世界のダイナミズム」という動画を自ら作り、毎回「憂国の思い」を語っておられた。昨年の5月の動画が最後のものであり、氏の遺言でもあった。氏はアメリカと中国の強大さを常に語っていたが、何でもアメリカ一辺倒になれとは言わなかった。忘れもしない氏の言葉を、再度引用したい。

 「憲法と安保の組み合わせで見たら、日本の実態は、アメリカの保護国です。」「おそらくこれは、国際社会での常識ですが、日本人はそう思っていません。」「日本は過去、欧米については研究しても、中国は軽視してきました。」「本来なら、中国については日本に任せろ、というくらいの気概を持つべきなのです。」「敗戦後の日本は、国際社会から隠居し、アメリカに頼ってきたのです。」「独立への対応も、体制も、第一国民の危機意識も無くなっています。」

 「日本は、大国である米中のはざまに位置していて、大国の動きで存亡が決まるのです。」「他の国々と連合を組まなくては、生きていけないのです。」「日本はグローバル化しないと、中国とは対抗できません。」「世界の代表として中国と対抗できる国のはずなのですから、引きこもっていてはダメなのです。」「そのためには、意思表示のツールとしての英語が、駆使できなくてはいけません。」

 政治家はもちろんのこと、経済界の人間も学者も、そして国民も、自己主張する他国の人間に負けないよう、日本語でなく、英語で渡り合えるようになることの重要性を訴えておられた。単に英語が喋れるだけの日本人でなく、自己主張できる意見と知識を持つべしと、氏は訴えておられた。平泉氏の、国を思う熱い心に私は涙を誘われたが、日高氏の多弁には胸を突かれるものがない。

 それでも、自分の知らないことを教えてくれた先輩対し、共鳴する意見を一つだけ著書から引用し、三回にわたったブログを終わるとしよう。

 「たしかに日本人は、自らを守るだけの力をすでに持っているが、肝心なものを持っていない。」「自らを守るという、意思である。」

 

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする