8月が終わり、今日から9月です。夕方の 5時50分、私は机でパソコンに向かい、いつものように一日が終わります。
金賢姫のインタビューを読みますと、このありふれた一日にも感謝したくなります。私はただ、自分の息子たちのため、事実が伝えたくてブログを綴ります。
《 でも外交官や、留学経験のある人は、そんな自国に矛盾を感じるのではないか。 》
「多くの人がそう感じると思いますが、決して彼らは口に出しません。」「北朝鮮の社会では、どんな不満があっても、それを出しません。」「口に出せば、自分はもちろん家族も含めて、全部殺されてしまいますから。」
《 密告制度が、徹底しているということか。》
「文明国の人々には、考えられないほどです。」「生活している地域に、五戸担当制という仕組みがあります。」「これは、五世帯が互いに監視するというシステムです。」「ある家でどんな話をし、どんな人が来たかということを監視し合うわけですが、いつどこで、誰に見られているかわからない状態なんです。」「だから親が、党や金日成に対して不満を持っていても、口にできない。」
「家族さえも信頼できないのです。」「私の両親も、政治的なことは一切話したことがありませんでした。」「子供は学校で、親よりも金日成の方が大切と教えられていますから、」「親が不満を言ったら、子供はそれを、組織に報告します。」「そして、親が処罰されることになります。」
反日左翼の学者や活動家たちの中には、戦前の日本にあった隣組を、国民監視のための悪質な仕組みだと批判する者がいます。回覧板を回したり、配給品を間違いなく届けたりするため、今で言う町内会や自治会に、調査・報告・分配などの権限を持たせた組織です。
自由な戦後になっても、親たちは隣組がひどい監視組織だったと、嘆く話を聞いたことがありません。戦争遂行のため政府が作った緊急体制と、日常生活での監視組織を同じレベルで語るところに、左翼主義者の誇張あるのではないかと金賢姫の話から教えられます。
「北朝鮮の人たちは、生まれて一度も、誰とも、胸襟を開いて話すことができない状態にあります。」「例えば男同士がお酒を飲みながら、不満を漏らす場合がありますね。」「そういう場合、すぐ密告されて、姿が消えてしまうのです。」
「私の周辺にも、そういう人がいました。」「昨日まで学校に来ていた子が、突然来なくなったので、その家を訪ねてみると、」「昨日の夜トラックが来て、家族全員を連れて行ったと聞かされました。」
優秀なエリート工作員と言われる彼女が、どうしてここまで、自分の国のことを喋るのかと、そんな疑問も湧いてきます。韓国政府に監視されているので、自国の悪口を言えば刑が軽くなると、そんな気持ちがあるのでしょうか。しかしそれならば、落合氏の注釈があるはずです。注釈がない限り彼女の証言は事実だと、そう考えられます。
「そういう人たちが、政治犯収容所に送られたということを、」「政府は秘密にしていますが、皆な何となく知っているんです。」「収容所は、生きたまま人間を殺してしまう、地獄のようなところです。」「文明国では、ごく当たり前に許されることが、死に値する。」「それが現在の、北朝鮮という国の実態です。」
「あのような独裁体制は、一日も早くなくなるべきだと思うし、」「金日成や金正日も、なくなるべき存在だと思います。」「そのためには韓国をはじめ、世界の人々が、」「北朝鮮の人々の人権のため、そして収容所で死んでいく人々のため、」「もっと積極的に、闘争をして欲しいと思います。」
罪も無いのに突然拉致された日本人たちは、こんな国に捕まっているのです。彼女の話を知った家族は、どれほどの悲しみに浸ることでしょう。彼女の話の受け止め方につき、私と氏の相違に違和感を覚えました。
「確かに彼女のいう通りなのだが、6年ぶりに韓国を訪れて、私が感じたのは、」「北朝鮮についての国民の関心が、著しく欠け、6年前の緊張が、全く感じられなかったということだ。」「北朝鮮の核開発に対しても、あまり関心を見せないし、それほどの脅威とも思っていないようだ。」
「これは一般国民だけでなく、インテリ層の間でも同じだった。」「豊かになりすぎて、日本人同様平和ボケに陥ってしまったのだろうか。」
北の核への危機感のなさや、無関心について語る前に、氏はなぜ一言も拉致された日本人について語らないのでしょう。学校帰りの道で、夕方の散歩の途中で、いきなり頭から麻袋をかぶせられ、屈強な男たちに拉致された国民について、氏はなぜ語らないのか。質問もしないのか。
氏の著書を半分以上読んでいますが、未だに氏の立ち位置が不明のままです。日本人が「平和ボケ」に陥っているのは事実かもしれませんが、それを言う資格が、氏にあるのでしょうか。この章の最後の言葉を転記しますので、息子たちも、「ねこ庭」を訪ねられた方々も、一緒に考えていただきたいと思います。
「生まれた時と場所が違っていたなら、彼女はそのIQの高さと美貌で、」「何をやっても成功していただろう。」「北朝鮮という社会に生まれたが故に、」「彼女は、独裁者の狂気の計画を実行するための、単なる駒として使われてしまった。」「115人の命を奪い、北朝鮮に残してきた家族を、地獄のような収容所へ送り込んでしまったという、」「とてつもなく重い十字架を背負って、これからも生き続けなければならない。」「神も含めて誰も、その十字架を、彼女に代わって背負ってやることは出来無いのである。」
私なら彼女のことより、拉致されたままの日本人について述べます。