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ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『 日本が軍事大国になる日 』 - 10 ( 領海法公布後の、南シナ海 )

2022-02-10 13:11:44 | 徒然の記

 東シナ海と南シナ海の説明に、氏はタイトルの表示を変えています。

  東シナ海 ・・ 「不審船による襲撃事件が頻発する東シナ海」

  南シナ海 ・・ 「南シナ海の領有権問題」

 同じような中国周辺の海を説明するのに、なぜタイトルが違うのか。氏は特に説明していませんが、読んだ後で分かりました。

 現在91ページですが、氏の著作が教えてくれる事実は、驚くことばかりです。マスコミの報道では、南シナ海の岩礁を埋め立て、飛行場を建設しているのは、中国だけのように思えます。しかし、フィリピンもベトナムもマレーシアも、領有権を主張する島や岩礁に、灯台を立てたり、ホテルを作ったりしていました。

 領土を守るためなら、大国の中国にも、各国は負けずに対抗しています。最初から軍が出動するため、「不審船」などの出る幕がありません。「不審船による襲撃事件」の文字が、タイトルから消える訳です。 発展途上国への援助と言いながら、日本は中国だけでなく、東アジアの国々へもODA援助をしています。インドネシアについて言えば、日本が最大の援助国だそうです。経済面から見ると、これらの国々は発展途上国に見えるのかもしれませんが、国際社会を生き抜く精神面から見ますと、日本の方が「発展途上国」であることを教えられます。

 岩礁の埋め立て争いは、最近の話だと思っていましたが、64年前の1956 ( 昭和31 ) 年から、各国が、衝突を繰り返していました。マスコミが、南シナ海での軍事衝突を報道しない理由も、氏のおかげで分かりました。自国より大きな中国に立ち向かう、東アジアの国々の報道をすると、日本の不甲斐ない姿が国民に晒されます。

 「経済大国に相応しい、日本のODAが、アジアの繁栄と安定に貢献しています。」「日本のリーダーシップと、平和外交が、多くの人々に理解されています。」

 政府と外務省がマスコミを使い、平和憲法のもとで、日本がいかに国際貢献をしているかと、国内向けの報道をしていますが、氏の著作が、この大嘘を国民に明らかにします。反日野党や学者のように、過激な言葉で攻撃しませんが、事実を述べることで、氏は「日本の異常さ」を教えてくれます。

 「尖閣諸島や竹島以上に、多くの国が領有権を主張し、」「しかも尖閣諸島以上に、」「豊富な海底資源が期待でき、その上戦略的に重要な位置にあるため、」「紛争発生がきわめて憂慮されているのが、南沙諸島である。」

 66ページの書き出しの叙述です。なぜ各国が激しい対立を繰り返すのかを、簡潔な言葉で説明しています。

 「台湾より南、マラッカ海峡に至る南シナ海には、」「東沙、西沙、中沙、南沙の4つの群島があり、合計170以上の島がある。」

 「これらの島は、歴史的、また民族、経済的に、」「周辺諸国と密接な関係があり、中国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイが領有権を主張している。」

 「漁業の適所であるだけでなく、海底油田、天然ガスがあることが確実で、」「ベトナム沖などはかなりの範囲で、米国が調査・確認している。」

 「しかも南シナ海は世界の経済にとって、きわめて重要な海上交通路で、」「年間5万隻の船舶が通過する。」「その重要性は、世界的視野からはおそらく、」「東シナ海を上回るであろう。」

 氏は南シナ海の実情を、東シナ海との比較で語りますが、もう一つ大事な比較を忘れてはいけません。各国と日本の対応の比較・・・これを常に頭に入れておくと、いっそう理解が深まります。

 「軍事上からは、インド洋と太平洋を結ぶ航路として、」「自由航行の保証が、米国にとっても重要となっている。」「中でも最重要な場所が、190以上の島と岩礁からなる南沙諸島である。」

 軍事面の最重要地点だから、関係国が領土を主張し、一歩も譲りません。名称についても、各国がつけた次の名前を変更しません。

  中国名・・南沙諸島        マレーシア名・・スプラトリー諸島

  ベトナム名・・チュオンサ諸島   フィリピン・・カラヤン群島

 南沙諸島に関する歴史的流れを、氏の説明に添い、箇条書きで紹介します。

  ・1938 ( 昭和13 ) 年、フランス軍が西沙諸島を占領した。

  ・同年日本が南沙諸島を占領し、台湾に編入し日本領とした。( 日本名 : 新南群島 )

  ・大東亜戦争終了後日本の占領が終わり、フランスも領有権を放棄した。

  ・領有権の継承が特定されなかったため、周辺国紛争の原因となっている。

 そうしてみますと、北方領土も尖閣諸島も、戦後の混乱が残した、紛争の種の一つだったことが分かります。注目すべきなのは、周辺国の行動です。

  ・1958 ( 昭和33 ) 年、フイリピン海軍が、南沙諸島の中に無人島9つを発見した。

  ・カラヤン諸島と命名し、フィリピン領と宣言した。

  ・同国は、バガサ島に航空基地を設営し、1000名の海兵隊を常駐させた。

  ・1974 ( 昭和49 ) 年、中国が西沙諸島をめぐり、ベトナム軍と戦う。

  ・1975 ( 昭和50 ) 年、南ベトナム崩壊に乗じ、中国が西沙諸島全域と南沙諸島の一部を占領した。

  ・中国はここに、港湾、航空基地、通信施設の建設をし、領有の既成事実化を図る。

  ・1980 ( 昭和55 ) 年、マレーシアが「200カイリ経済専管水域」に基づき、東沙諸島の部分的領有を主張した。

  ・海軍の監視所を設置し、マレーシア海軍がフィリピン漁船の臨検をした。

  ・フィリピンの抗議を受け、マレーシアが撤退し、その後にフィリピンが海兵隊を常駐させた。

 日本のテレビや新聞の報道を見ていますと、大国の中国が武力を背景に、周辺の弱い国々を無視し、わがまま放題しているように見えます。氏の説明を読み、南シナ海では、ベトナムもフィリピンも、マレーシアも、似たようなことをしていると分かりました。中国だけが悪者でなく、国益のため、似たもの同士が争っていただけの話です。

 比較して考えますと、争っている周辺国には、「独立国」の姿があり、何もしない日本の方が、「おかしな国」ということに見えてきます。

 スペースの都合で一区切りとしますが、「南沙諸島」での紛争について、次回も氏の解説を紹介します。ここに、現在の日本の問題点が集約されていると、そう感じるのは私だけでしょうか。

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『 日本が軍事大国になる日 』 - 9 ( 領海法公布後の、東シナ海 )

2022-02-09 12:31:57 | 徒然の記

 氏は東シナ海と南シナ海を分け、それぞれ説明しています。ご存知の方は多いと思いますが、二つの海が関係している国を整理しておきます。

 〈 1. 東シナ海 〉

  ・ 東シナ海は、中国大陸、台湾、南西諸島、韓国、日本に囲まれた海洋を言う。

  ・ 日中間では、尖閣諸島の他、東シナ海ガス田の、経済水域の設定争いがある。

  ・ 中国と韓国の間では、蘇岩礁の領有に争いがある。

  〈 2. 南シナ海 〉

  ・ 南沙諸島、西沙諸島、東沙諸島など、各国の利害が対立している。

  ・ 関係国は、中国、ベトナム、台湾、フィリピン、マレーシア、ブルネイである。

 箇条書きの方が分かりやすいので、割愛しつつ「東シナ海」から紹介します。

  ・ 中国の領海法制定以来、東シナ海では国籍不明の、不審な武装船による発砲、襲撃、臨検事件が急増した。

  ・ 発生件数・・1991 ( 平成3 ) 年は14回  1992( 平成4 ) 年は33回    1993 ( 平成5 ) 年は、半年で31回。

  ・ 不審船による被害を受けたのは、ロシア、韓国、ベトナムの船舶も含まれるが、日本船が圧倒的に多い。

  ・ 日本船だけ多く狙われるので、意図的な何かがあるのではと、推測する向きもある。

  ・ 不審船のほとんどは中国船と思われるが、国籍を明示する旗を掲載していないことがある。

  ・ 報告される不審船は、公船らしいのだが、海賊船まがいのものも少なくない。

  ・ 1992( 平成4 ) 年6月、川崎汽船のタンカー「信濃丸」が、制服を着た4人組に襲われ、自動小銃を発砲され、燃料油の供出を要求された。

  ・ 1993( 平成4 ) 年5月、「セイザン1号」は、自動小銃で銃撃されたのち、「香港から積んだタバコ」を要求された。

  ・ 東シナ海に、海賊船が出没するのは事実らしいが、公船でありながら、海賊行為や密輸行為を働いているものもあるようだ。

  氏は遠慮しながら述べていますが、これが最大の支援国日本に対する、中国式感謝です。ロシアの対応が説明されているので、泣き寝入りする日本と比較して読めば、違いが分かります。

 1993( 平成4 ) 年の6月から7月にかけて、ロシアの貨物船と冷凍トロール船が、威嚇発砲され、拿捕される事件が起きました。ロシアは太平洋艦隊の巡洋艦 ( 1万トン ) と、艦隊補給艦など三隻を即座に出動させています。

 「ロシアの船舶を海賊行為から守るため」と、モスクワ放送が伝え、その後巡洋艦は南シナ海にまで足を伸ばしたと言います。ソ連邦が崩壊しても、ロシアは中国の武力行使を容認せず、実力で自国の船を守りました。

 自国の船を守りませんが、政府と外務省は「日本国憲法」を守ります。ロシアと同じことをせず、自衛隊の艦船が出動すれば中国を刺激すると、大人の対応です。

 参考のため、不審船による威嚇、発砲、襲撃、臨検を受けた船舶の名前を転記します。( 平成5年の海上保安本部の資料からです。)

 ・長崎船籍「まき網運搬船」( 340トン)  ・・威嚇発砲

 ・長崎船籍「漁船」( 297トン)  ・・不審船の乗員10名による臨検

 ・鹿児島船籍「貨物船」( 2,412トン) ・・威嚇発砲

 ・沖縄船籍「内航タンカー」( 699トン) ・・サイレンを鳴らす、不審船による追尾

 ・鹿児島船籍「貨物船」( 454トン) ・・サーチライトを照射する、二隻の不審船による追尾

 ・沖縄船籍「貨物船」( 299トン) ・・サーチライトを照射する、不審船による追尾

 ・長崎船籍「鮮魚運搬船」( 214トン) ・・サーチライト照射ながら、追尾・銃撃

 ・長崎船籍「鮮魚運搬船」( 214トン) ・・不審船の乗員8名による臨検

 もう一件、氏が参考資料を掲載していますので、追加します。平成5年7月24日号の「週刊時事」の記事です。

 「また増え始めた国籍不明船 " 銃撃  " 事件 」・・これが記事の見出しです。

 「2月2日に、久米島沖の北西150キロで、鹿児島県の貨物船〈ゆうしょう〉を、」「威嚇発砲した中国船は、中国公安部の船であった。」

 「日本からの抗議で、中国側は、」「密輸を取り締まるために行ったもので、日本船とは知らずに発砲した、と弁明。」「遺憾の意を表明した。」

 江畑氏が本に書いてくれなければ、私たちはこうした事実を、知らないままです。中国式感謝のやり方を知りましたので、日本の政治家と官僚諸氏には、ロシア政府の爪の垢でも煎じて、贈りたい気持ちになります。

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『 日本が軍事大国になる日 』 - 8 ( 中国の領海法 と密輸取り締まり問題 )

2022-02-08 18:49:16 | 徒然の記

 フランスの言う「金のない中国」に、ODA ( 政府開発援助  ) の名目で、永年多額の支援をしてきたのは日本でした。前回も紹介しましたが、外務省は次のように広報しています。

 「経済インフラ整備支援等を通じて、中国経済が安定的に発展してきたことは、」「アジア太平洋地域の安定にも貢献し、日中の民間経済関係の進展にも、大きく寄与しました。」

 誇らしそうな叙述ですが、江畑氏が「東シナ海と南シナ海」の章で、力をつけてきた中国が、どのように「アジア太平洋地域の安定に貢献」しているのかを、説明しています。

 「台湾の軍備近代化に対し、北京の心中は当然穏やかではない。」「かと言って、台湾の軍備近代化を上回る増強を行うには、」「経済状態が許さない。」

 やはり話の始まりは、台湾との「軍事バランス」でした。

 「1992 ( 平成4  ) 年2月、東西冷戦の終焉を受け、中国は全人大会の常務委員会で、」「〈領海法〉を採択し、承認、公布した。」

 「これは東シナ海から南シナ海一帯を、中国の領海と規定するもので、」「中国の主張を認めるなら、二つの海はほとんどが、中国領になってしまう。」「472万平方キロのうち、300万平方キロが中国の領海になるのである。」

 ソビエト連邦が崩壊したのは、忘れもしない1991 ( 平成3 ) 年の12月でした。ソビエト連邦共産党の解散を受け、全ての連邦構成国が主権国家として独立しました。世界のマスコミは、「ベルリンの壁崩壊」に続く「大国ソ連の崩壊」に目を奪われ、中国の「領海法」については、ほとんど報道しなかったのではないでしょうか。

 なぜ中国が火事場泥棒のように、このような行動に踏み切ったのか、氏が説明します。

 「北京が、日本を含む、アジアの周辺諸国との衝突、緊張を覚悟の上で、」「領海法を制定・公布したのは、東シナ海と南シナ海に眠る、」「膨大な地下資源の存在があったと解釈できる。」

 150億トン以上の石油と、 300億トンを下らない天然ガスの存在が確認され、金額にすると2兆5千億ドル相当です。金のない中国が、目をつけないはずがありません。中国の狙いはそれだけでなく、繰り返される密輸の取り締まりにもあったと、氏は言います。

 「中国と台湾の貿易額は、1985 ( 昭和60 ) 年頃は10億ドルであったのが、」「1992 ( 平成4 ) 年 には、74億ドルにまで伸びている。」

 把握できているだけでこの数字なので、密輸の額は、相当なものであろうと語ります。

 「関税収入が入らないだけでなく、国内製品が密輸品に圧迫されるのだから、」「密輸の取り締まりはどの国でも、国家の経済基盤を守るため、」「最優先の課題である。」

 中国が突然、尖閣諸島や沖縄を自国の領土だと言い出したのは、海底資源が確認されたからだと、何かの報道で見たことがありますが、密輸の取り締まりという事情もあったとは、知りませんでした。

 「国連海洋法条約」によりますと、領海と接続水域内では、「無害航行の原則」が適用されます。船籍を示す旗を上げ、海上交通の規則に従っている限りは、沿岸国は航行を妨害してならないことになっています。ただし、沿岸国の財政を乱す密輸に関しては、相応の根拠があれば、捜索・拿捕ができます。 

 「ねこ庭」を訪問される方々にご報告したいのは、次の説明です。

 「もちろん、無害航行することはできるが、何しろ中国の領海であるから、」「中国がその必要を感じたときは、いつでも必要な措置を取れる権利がある。」

 「まして他国の軍艦や、沿岸警備隊の船舶が、」「領土権を主張しての警備、補給活動を行うとか、」「漁業の保護を行うなど、中国にとっては、とんでもない話と言うことになる。」

 日本政府のODA援助が、果たしてアジア地域の安定に寄与したのか。日本のODAに感謝している中国が、日本の船舶に何をしたのか。

 データを示し、氏が丁寧な説明をしています。次回は、日本への中国式感謝について、ご報告します。

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『 日本が軍事大国になる日 』 - 7 ( ODAと害務省 )

2022-02-07 20:35:05 | 徒然の記

 アメリカからのF-16戦闘機150機の輸出に対し、中国が激しい反応をしたことにつき、江畑氏が興味深い説明をします。

 「アメリカのF-16売却決定よりも、北京にとって衝撃的であったのは、」「パリの、ミラージュ売却決定であったろう。」「1992 ( 平成4 ) 年12月、中国政府はフランスに対し、」「広東省広州の仏総領事館を、閉鎖するように通告した。」「さらに広州市の地下鉄建設計画に、フランス企業の参入を排除する決定を、広州市が下した。」

 今更驚く話でありませんが、軍事と政治と経済が一体となり、国際社会を動かしている事実を、具体的に教えられます。テーブルを囲み話し合いをしていると見えても、テーブルの下の足は、互いを蹴り合っています。

 「言われたら言い返す、やられたらやり返す」と、各国が応酬を繰り返し、黙って引き下がることはしません。戦前の日本も、独立国としての位置を有し、国際社会で行動してきましたが、敗戦後は、「言われたら謝り、やられたら引っ込み、」「金ばかりむしり取られる国」となってしまいました。

 「言われたら言い返す、やられたらやり返す」・・・そうしなくては、国際社会を生き抜けません。「無理難題を仕掛けられても、我慢するのが大人の対応だ。」と、もっともらしい意見が、現在の日本を支配しています。氏の著作を読みますと、「戦後の日本の異常さ」を、警告されます。「国を守る」と言うのは、どう言うことなのか、フランスの動きが参考になります。

 広州の地下鉄建設計画から締め出されたフランスは、ガス開発・肥料工場建設などを目指す上海の大型プロジェクトへの、6億4千万フランの財政支援を即座に決め、中国を喜ばせています。

 フランス製ヘリコプターのライセンス生産の件もあり、中国は、フランスと完全に手を切るわけにいかない状況があります。

 「フランスにしてみれば、今は多少 2国間の関係が悪くなっても、」「北京は必ず、フランスに膝を屈するであろうと、」「そんな見通しがあった上での、台湾志向であると、一般にみなされている。」

 氏はさらに、フランスの立場を遠慮なく語ります。

 「金がない中国に、いつまでも色目を使っているよりは、」「高速新幹線建設や原子力発電所建設で、今後大きな経済利益が期待できる台湾を、」「無視しない方が得策である、との計算がはじかれたことも疑いがない。」

 その金がない中国に、ODA ( 政府開発援助  ) の名目で、永年多額の支援をしてきたのは日本です。日本を目の敵にする教育を国民に施し、連日のように尖閣の領海を侵犯する現在の中国を、多くの日本人は苦々しい思いで見ています。

 政府開発援助とは、発展途上国の経済発展や福祉の向上のため、先進工業国の政府及び政府機関が、発展途上国に対して行う援助や出資のことですが、現在の中国のいったいどこが「発展途上国」なのでしょう。最大の支援をした日本に対し、中国は何の感謝もしていませんし、逆に「正しい歴史認識をせよ。」と説教をしています。

 今もいるのだろうと思いますが、当時の外務省には「チャイナスクール」と呼ばれる、謝罪・媚中官僚の集団が力を持っていました。

 「先の戦争で、日本は中国、朝鮮を侵略し、多大な被害を与えたから、」「謝罪するだけでなく、賠償もし続けなければならない。」

 言うまでもなく、小和田次官による「ハンディキャップ・外交論」から生まれた、中国ODAへの基本方針です。平成30年の外務省の広報資料を読むと、日本が、どれほどのお人好しの国となっていたのかが、理解できます。「ねこ庭」を訪問される方々に、読んでもらいたいと思いますので、資料の一部を紹介します。

 「1979年以降、中国に対するODAは、中国の改革・開放政策の維持・促進に貢献すると同時に、」「日中関係の主要な柱の一つとして、これを下支えする強固な基盤を形成してきました。」

 「経済インフラ整備支援等を通じて、中国経済が安定的に発展してきたことは、」「アジア太平洋地域の安定にも貢献し、ひいては日本企業の、」「中国における投資環境の改善や、日中の民間経済関係の進展にも、大きく寄与しました。」「中国側も様々な機会に、日本の対中国ODAに対して、評価と感謝の意を表明してきています。」

 「対中ODAは、1979 ( 昭和54  )年に開始され、」「2016 ( 平成28  )年度までに、有償資金協力(円借款)を約3兆3,165億円、」「無償資金協力を1,576億円、技術協力を1,845億円、」「総額約3兆円以上のODAを、実施してきました。」

 「過去のODA事業では、中国に道路や空港、発電所といった大型経済インフラや、」「医療・環境分野のインフラ整備のため、大きなプロジェクトを実施し、」「現在の中国の経済成長が実現する上で、大きな役割を果たしています。」

 フランス、オランダ、ドイツ、ロシアなどの諸外国の姿勢と比較し、日本の外務省の能天気さが目立ちます。

 「日本は、中国を選ぶか、アメリカを選ぶか、はっきりさせなくてならない。」「アメリカを選んだ場合は、日本の未来はないだろう。」

 2、3年前、解放軍の将軍が日本を威嚇しましたが、外務省の言う「ODAへの感謝と評価」は、どこにあるのでしょう。むしろ彼らは日本のことを、「自動現金支払い機」と冷笑しています。戦後日本の外務省は、「外務省でなく、害務省だ。」と言う意見もあります。拉致家族問題への取り組み姿勢を見るにつけ、私も同感しますので、時々「害務省」と言う言葉を使わせてもらっています。

 まだやっと38ページですが、次回は55ページの第二章「東シナ海と南シナ海」へ進みます。ここでもまた、アジア諸国と日本を比較しながら読みますと、新しい事実が発見できます。楽しい発見ではありませんが、次回も、どうぞ「ねこ庭」へお越しください。緑の消えた、冬枯れの、寒々とした「ねこ庭」です。

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『 日本が軍事大国になる日 』 - 6 ( 台湾の戦闘機保有計画 - 2)

2022-02-06 19:50:11 | 徒然の記

  「台湾の戦闘機保有計画」の続きです。台湾へ、アメリカからF-16戦闘機150機の輸出が報道されても、東南アジア諸国が、なぜ大きな懸念や反対の意思表示をしなかったのか。これに関する、江畑氏の解説を紹介します。

 「最大の理由は、台湾が大量の戦闘機を保有することで、」「中国が、ロシアから輸入した最新鋭機、Su27戦闘機、Su33、Su35などを、」「台湾海峡方面に、張り付けておかねばならなくなった。」

 「これで中国は、航空戦力による、南沙諸島やベトナム方面への強い圧力が、かけられなくなる。」「台湾もまた、中国の戦闘機を無視し、」「南シナ海方面に、思考するわけにいかない。」

 「つまり、東南アジアのほとんどの国にしてみれば、」「台湾が最新鋭の戦闘機を保有することは、むしろ歓迎すべきことになる。」

 東南アジアの国々から見れば、中国も台湾も軍事大国ですから、両国が動けなくなれば、その間だけでも自国の領域が安全になる・・と言う理由です。さらに氏は、これに関するアメリカの戦略についても、説明します。スペース節約のため、箇条書きにします。

 ・アメリカの戦闘機や軍艦の引き渡しは、一つには、天安門事件以後の北京政府に対し、圧力をかけることにある。

 ・ロシアから、近代的新鋭戦闘機を導入した中国に対し、台湾へ米国製造の近代的戦闘機を提供することで、台湾海峡の軍事バランスを取る。

 ・これにより、東シナ海から南シナ海方面の、軍事的安定を保持する。

 しかしF-16戦闘機と言っても、旧型の戦闘機に不満を持つ台湾は、多目的機能を持つフランスのミラージュ2000も購入しています。江畑氏は、台湾の意図を次のように説明します。

 「実際問題として、ミラージュは空対空戦闘だけでなく、」「敵地・対艦攻撃能力を有する多目的型である。」「もし今後、ニクソンの中国訪問時のように、」「ワシントンと北京の関係が改善され、再び台湾が同じ目に遭う場合を考えれば、」「アメリカととフランスの2国から武器調達をするのは、国家安全のため覚悟せねばならない。」

 「これによって生ずる、部品、整備、教育などの経済上の不都合も、あえて覚悟せねばならない。」

 台湾と日本を比較して考えるとき、果たして日本には、台湾のような決断のできる政治家がいるのだろうか、と言う疑問です。国の安全を考えた場合、一国に全てを頼ると言うのは危険だと、兵器の調達先を分散しておく覚悟は、簡単にできるものではありません。

 日本政府がもし実行しようとし、イギリス、フランス、ドイツなどと交渉を始めたら、どのようなことになるのか。考えるまでもありません。アメリカが日本占領時代に作り上げ、日本に残してきた「トロイの木馬」が、一斉に騒ぎ立てます。

 「反日左翼学者」「反日左翼マスコミ」「反日左翼政治家(自民党も含む)」たちが、手を繋いで合唱します。その最大の根拠となるのは、最強の「トロイの木馬」である「日本国憲法」です。

 「これによって生ずる、部品、整備、教育などの経済上の不都合も、あえて覚悟せねばならない。」

 台湾の政府が下したような覚悟は、日本では、どこからも生じません。「トロイの木馬」の大合唱に、ほとんどの国民も騙されてしまいます。

 話が横道へ逸れましたので、氏の著作へ戻ります。

 「米政府は、台湾への戦闘機輸出の承認前に、」「中国政府に通告したとされるが、それで北京の怒りが収まるものではない。」「当然のことながら、北京は激烈な反応を示した。」

 中国の銭其琛外相が、次のように述べています。

  ・1982年の中米コミュニケに違反する決定である。

  ・アメリカの対中政策変更につながる、重大な事態だ。

 中国外務省は、北京駐在のアメリカ大使を呼び、最も強い抗議を行ないました。

  ・この決定は、中国の内政に乱暴に干渉し、中米関係を著しく傷つけた。

  ・中国の、平和統一事業を破壊する行為だ。

  ・米国政府がこの決定を取り消すまで、国連安保理事国の5ヶ国にとどまるのは難しい。

  ・アメリカがあくまで自らの方針を貫くなら、中国政府とその人民は強い対応をとるほかない。

  ・その結果については、すべて米政府が責任を負わねばならない。

 これを読みますと、18年前から、中国の脅し文句が変わっていないことを知ります。北朝鮮や韓国も、中国の口調を真似、日本を脅していると言うことも、分かります。

 「だからと言って、中国が具体的に、何ができるものではないが。」と、江畑氏が説明していますが、確かにアメリカは、言われても平気です。しかし日本はどうでしょう。

 同じことを言われると、即座に反応する人間がたくさんいます。「トロイの木馬」だけでなく、中国で金儲けをしようと意気込んでいる、経済界があります。彼らは、自民党のスポンサーですから、早速政治家が中国に謝ったり、言い訳を並べたりします。

 台湾と比較しながら、読みますと、さまざまなことが分かりますが、戦闘機購入の話はまだ続きますので、一休みし、次回にいたします。 

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『 日本が軍事大国になる日 』 - 5 ( 台湾の戦闘機保有計画 )

2022-02-05 16:06:14 | 徒然の記

 34ページです。タイトルは、「F-16とミラージュ2000の入手」となっていますが、私のような軍事の素人には、正確な名称は不要です。この部分も、日本と比較しながら読みますと、無関心でおれないものがあります。

 「1992 ( 平成4 ) 年になり、台湾はようやく、新型戦闘機入手の道が開ける。」

 書き出しはこの叙述で始まりますが、以降は箇条書きにします。

 ・同年6月、フランスが台湾へ、ミラージュ2000戦闘機120機の輸出を承認した。

 ・9月、ブッシュ大統領が台湾への、F-16戦闘機150機の輸出を承認した。

 ・アメリカに配慮し、フランスは戦闘機の輸出を、半分の60機に減らした。

 ・ただし台湾はフランスに対し、アメリカが輸出に難色を示している空対空ミサイルの購入契約を与えている。

  ここで私は軍事産業界での、米国とフランスの力関係を教えられます。同時にまた台湾が、米国の意向だけでなく、フランスにも配慮していることを知ります。

 台湾は1980 ( 昭和55 ) 年代からアメリカに対し、F-16戦闘機の購入を要請してきたのが、やっとかなえられたのだそうです。

 しかし台湾の空軍は、アメリカの対応に一部失望します。この説明についても、日本との比較で読みますと、興味深いものがあります。

 「米国が許可したのは、最新型でなく旧型のF-16戦闘機で、本土防空用では遜色がないものの、」「敵地攻撃能力には、性能的に劣っていた。」

 「アメリカは、中国や他の諸国の反応を考慮し、」「アジアの安定を、大きく損なわないようにすると同時に、」「将来アメリカの強力なライバルになることにも、配慮したものと推測される。」

 台湾にこのような姿勢を取るアメリカが、アジアでの最強の同盟国だとしても、日本に対して何も考えず、武器輸出をしているとは思えなくなりました。自衛隊の装備強化が、アジアの軍事バランスを不安定にしないように、中国や韓国・北朝鮮を刺激しないようにと、最新の注意を払っているのではないでしょうか。

 将来ライバルとなることにも注意し、最新鋭兵器を提供しないという姿勢も、同じということが分かります。自衛隊の退役将軍が、「アメリカの兵器は、肝心の部分がブラック・ボックスになっていて、」「国内で修理できず、アメリカに頼らなくてならないようになっている。」と、こぼしていた動画を思い出しました。

 台湾はアメリカと戦争した過去を持っていませんが、日本はつい70余年前、大東亜戦争でアメリカと戦い、散々手こずらされています。今は強力な同盟国でも、軍事の世界ではいつどのように変化するのか、誰にも分かりません。もしかすると日本軍の再建に、一番神経を使っているのは、中国や韓国・北朝鮮でなく、アメリカなのかもしれません。

 アメリカにとって都合が良いのは、大量の兵器や武器を言うままに買ってくれる顧客であり続けることでしょう。戦前のように日本が強くなり、アメリカと対等に戦うようになられるのは、迷惑な話です。

 日本が軍の再建をしようとしたり、「憲法改正」考えたりしたら、アメリカは自分の手を汚す必要がありません。反日の中国や韓国・北朝鮮を使い、「日本の軍国主義に反対 ! 」と、騒がせれば済みます。そうすると条件反射的に、日本国内の反日勢力が呼応し、「日本に、再び戦争をさせるな。」「子供たちを戦場に送るな。」と大騒ぎします。

 「外敵から国を守るためには、相応の軍備が必要。」「軍備は、戦争の抑止力でもある。」・・こう言う常識が、今の日本では通用しなくなりましたので、アメリカには好都合なのだろうと思います、氏の著作を読んでいますと、これでいいのだろうかと疑問が湧きます。以下の文章は、前回のブログと同じですが、変わらない気持ちです。

 アメリカだけに頼り、アメリカの武器だけを調達している日本は、世界の常識から外れているのではないでしょうか。

  「日本は、果たして国際社会で言う独立国なのか。」

 「台湾の戦闘機保有計画」には、まだ続きがありますので、日本を大切に思う方は、どうか次回の「ねこ庭」へお越しください。

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『 日本が軍事大国になる日 』 - 4 ( 台湾の潜水艦保有計画 )

2022-02-03 20:34:58 | 徒然の記

 「難航している潜水艦保有計画」と言うタイトルで、台湾海軍の近代化計画が説明されています。台湾をめぐる各国の動きには、日本との比較で考えますと、さらに興味深いものがあります。24ページの叙述です。

 「台湾海軍の近代化は、着々と進行しつつあるが、一つ大きな問題がある。」「それは潜水艦の調達が、ままならないことである。」「いかに旧式のガラクタとはいえ、中国海軍が持つ100隻以上の潜水艦は、」「大きな脅威であり、これに対抗するには現有の戦力では不十分である。」

 台湾海軍が保有する潜水艦は、米国から貸与された旧式艦が二隻しかなかったと言います。米軍は魚雷発射管を封鎖して貸与しましたが、台湾は、その封鎖を解除し、イタリア製の魚雷発射装置をつけました。

 氏の説明によりますと、それでもこの潜水艦は潜航能力が極めて限られ、実践的価値がほとんどなかったと言います。これ以後の流れは、文章でなく箇条書きにします。

 ・1981 ( 昭和56 ) 年、台湾はオランダに潜水艦を発注・・ ( 世界で最も優れた設計といわれる)

 ・台湾はさらに、同型艦を4隻追加発注。

 ・1992 ( 平成4 ) 年、オランダ政府がこの4隻の輸出契約の中止を決定

    ・オランダ政府は、1984( 昭和59 ) 年に、中国と結んだ協定に基づく処置と説明

   協定の内容は、「オランダは台湾に兵器を輸出しない」というもの

 ・これを知り、フランスが台湾へ売り込みをかけた。原子力潜水艦1隻の売却を打診 ( フランスはすでに台湾に対し、戦闘機50機の輸出を決定済み。)

 ・1992 ( 平成4 ) 年の11月になり、台湾がフランスの申し出を断った

 潜水艦に関する流れはまだ続きますが、オランダとフランスの動きについて、説明が必要なので、氏の意見を紹介します。

 まずオランダですが、この時オランダ政府は、中国へジェット旅客機7機の輸出契約を結び、同時に今後の両国の貿易促進合意も取り交わしていました。

 「旅客機は2億5千万ドル、潜水艦の契約額は18億ドル相当と言われているから、」「オランダはかなり損をしたとみられるものの、長期的には、」「中国との貿易促進の方が、得策と判断したのであろう。」

 これが、オランダ政府の動きへの説明です。台湾が、フランスの原子力潜水艦売却打診を断った理由にも、興味深い内情があります。

 「原子力潜水艦を、自国の海軍以外に引き渡したのは、」「これまでに、ソ連がインドに行った例だけである。」「ソ連は原子力潜水艦1隻を、インドにリースしたが、」「一年余で、返却されている。」

 この艦は、インドが自力で原潜を建造するにあたり、技術的参考と乗員養成を目的としたもので、当初からリース契約され、売却ではありませんでした。秘密兵器の最先端を行く原子力潜水艦の売却は、ほとんどあり得ない話だということが、氏の説明で分かりました。

 興味深いと言いましたのは、売却を打診したフランスと、これを断った台湾側の内部事情です。

 〈 フランス側の事情 〉

  ・北京の意向を無視し、すでに戦闘機60機の輸出を決定しており、中国よりも台湾を選択した。

  ・国防費削減のため、原子力潜水艦戦力の大幅縮小を余儀なくされていた。

 〈 台湾側の事情 〉

  ・原子力潜水艦の導入に際し、必要とされるインフラ整備には多額の費用がかかるが、米・英の原子力潜水艦に比較すると、フランス製は性能が劣る。

  ・炉心寿命比較・・フランス製は約5年、米・英製は10~12年

  ・炉心交換のため、フランスに依頼せねばならなくなり、作戦的にも、経済的にもマイナスが多いと判断した。

 ここから再び、「潜水艦に関する流れ」を続けます。

 ・1991 ( 平成3 ) 年、ドイツが潜水艦の売り込みをし、台湾が10隻の購入を打診した。

 ・1993 ( 平成5 ) 年、ドイツ政府が、台湾への輸出不許可を決定。

  ( 表向きは、政治的な緊張状態にある地域への武器輸出禁止は、政府方針であるという理由。 )  ( 内実は、将来の中国市場を見越しての決定。 )

  ・米国のリットン・インガルス社が、ドイツ潜水艦の建造権を取得し、これを台湾へ売却すると提案。・・台湾が拒否

 ・1992 ( 平成4 ) 年、ロシアが台湾への売り込みをしてきた。

 ・ロシアは売れさえすれば、どこの国でも構わないという姿勢だが、台湾は、米欧と全く異なる設計思想の兵器を、簡単に購入しない。

 ・1993 ( 平成5 ) 年、1年前に輸出禁止を決定したオランダが、再び原子力潜水艦の売り込みをしてきた。

 どうしてこのようなことになるのかにつき、氏の説明があります。

 「オランダ政府は、先の台湾向け潜水艦契約の破棄に関し、」「議会に対し、1992年6月までに、中国との貿易額が増加しなかった場合は、」「台湾への潜水艦輸出契約を再検討するとの、条件をつけさせられていた。」

 「そして事態は、議会の心配通りになり、オランダ政府は、」「台湾への潜水艦輸出契約を、検討し直さなければならなくなった。」

 私が注目したのは、自国防衛のための兵器購入について、どの国も間髪をおかず、自国優先で考えているという事実です。信義や誠意など入り込む余地のない、軍事の世界が見えます。さらに、続く氏の説明は、私の知らない事実を教えてくれます。

 「1993 ( 平成5 ) 年1月末に、オランダが台湾に対し、潜水艦4隻の、」「台湾におけるライセンス建造を、提案していると伝えられた。」「オランダのRDM社は、台湾国内での建造に必要な技術も提供するから、」「これが実現すると台湾は、将来自力で原子力潜水艦を建造する、」「基礎的技術を獲得することになる。」「このことは結局、将来的に、台湾から第三世界への潜水艦輸出を、」「助けることになるかもしれない。」

 「それは中国のみならず、アジア、太平洋諸国や、」「アメリカの心配を喚起することになるだろう。」

 今では国として認められず、国連に加盟できない台湾でさえ、一つの国から購入すれば、その国の支配下に置かれると、複数の国から兵器を調達しています。自分の国を守るための決断と実行を、政治家たちが進めています。アメリカだけに頼り、アメリカの武器だけを調達している日本は、世界の常識から外れているのではないでしょうか。

  「日本は、果たして国際社会で言う独立国なのか。」

 残念ながら、今回も私の中に残る大きな疑問です。

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『 日本が軍事大国になる日 』 - 3 ( 果たして日本は、独立国なのか )

2022-02-02 23:01:23 | 徒然の記

 平成4年の、中国共産党中央軍事委員会の記事録報道と、平成5年のAPECでの江沢民氏の発言を受け、台湾は軍備の近代化と装備の充実を、急がなければならなくなりました。

 「台湾は、1993年から1997年の5年間に、GNPの5.19パーセントを、」「国防費として、コンスタントに支出することを決定した。」

 日本の防衛費は、GNPの1%を越えるか超えないかで大議論になっていますが、台湾では事情が違いました。

 「特に海軍力と空軍力の近代化に、大きな比重が置かれ、」「海軍近代化計画は、おそらく世界最大規模と呼べるものである。」

 台湾海軍の保有する水上艦、潜水艦、駆逐艦のほとんどは、第二次世界大戦中に建造されたもので、これらは米国から貸与されたり、購入したりしたものだと言います。何度かの改造をしているが、部品の供給にも限度がありました。

 台湾海軍は、旧式艦船に、イタリア製の76ミリ砲、スエーデン製の40ミリ機関砲、イスラエル製の艦対艦ミサイルなどを搭載しています。軍事評論家である氏の説明は詳細ですが、私は素人なので、戦艦や武器の名称や性能より、台湾の危機感の大きさを知ることの方に重点を置きます。

 「つまり台湾は、当時、ともかく入手できる最新鋭兵器システムを、」「組み合わせて、空・海軍を作り上げたのである。」

 台湾政府は、1945 ( 昭和20 ) 年に共産党政権に追われ、台湾へ渡って以来、「大陸への武力反攻」を国是としてきました。

 「この国是の現実性は、ほとんどない。」「今後よほど、大陸中国の内部が揺れ、分裂するならともかく、」「たかだか45万の軍隊で、300万の中国軍と、」「あの広大な土地に侵攻するのは、無謀である。」

 氏の言う通り、国是とは言いながら「大陸への武力反攻」は、現実的でありません。だから台湾政府は、軍の近代化計画で陸軍を重視せず、海軍と空軍の近代化を急ぎ、中国軍の海上侵攻から国を守ることに、専念しています。

 同じように中国の脅威を受け、恫喝されている日本と台湾の違いが、どこにあるのか。あるいは、どこに共通点があるのか・・・氏の著書を読みつつ、私の頭にあるのはこの一点です。

 防衛省の『防衛白書』は毎年発行され、ほとんどの情報が公開されていますから、日本の防衛力を知ることはできます。しかし台湾との比較、中国との比較、韓国や北朝鮮、他のアジア諸国のとの比較ができなければ、自分の役には立ちません。

 氏の説明を受けた今の時点で、分かった事実を思いつくまま、台湾との比較で列挙してみます。

 1. 台湾は自国を防衛する軍を保有しているが、日本は軍を保有せず、「専守防衛」の無力な自衛隊を持っている。

 2. 台湾の武器購入国のメインはアメリカであるが、他にイタリア、スエーデン、イスラエル、フランス、オランダ、ドイツなど多数の国がある。

 3. 日本の武器購入相手国は、アメリカ以外の国を聞いたことがない。

 4. 台湾は、戦艦、潜水艦、戦闘機を、他国から購入すると同時に、国内生産にも力を入れている。

 5. 日本が、これらの国内生産をしていると言う話を、聞いたことがない。戦前は国内で製造していたが、民間航空機でさえ、米国の牽制で自由に作れないと聞く。

  防衛省のホームページによりますと、日本にある米軍基地は、青森県の三沢基地から沖縄まで、2020年1月現在で、全国に78ヶ所あります。世界第2位の経済大国と得意になっていても、台湾に、いったい幾つの米軍基地があるのでしょう。

 飛行機の航行は、日本では通常、国土交通省の航空管制官が行いますが、在日アメリカ軍の飛行場やその周辺では、アメリカ軍が行っています。米軍の空港がある上空は、宇宙の果てまで米軍が管理し、日本の自由になりませんが、台湾にはそのような主権制限 (侵害) があるのでしょうか。

 氏の本を読みながら、日本と台湾を比較しますと、敗戦後の日本の置かれた奇妙な状況が、見えてきます。学者も政治家も評論家も、こうしたことについて、国民に説明しませんが、このことからしておかしな話です。

 江畑氏も、日本の奇妙な状況を率直に述べていませんが、それでも、精一杯の努力で語っています。

 「日本はこれまで、あまりに軍事面を、」「無視してきたのではなかろうか。」「日本は今後、現実を直視せねばならないだろう。」

 私が疑問点とすることについて、江畑氏が率直に語れる環境が日本にあるのか、あったのか、それを考えますと、江畑氏の婉曲さを批判する気になれません。

 政府はこれまで米軍の駐留費負担を、「思いやり予算」という曖昧な言葉で国民に説明してきました。昨年の12月の日米合意で、「同盟強化予算」と呼ぶことに変更しましたが、こんなおかしな話が、台湾にはあるのでしょうか。

 独立した国が、他国の軍隊を全国のあちこちに駐留させ、経費の負担をすると言う話は、普通のことなのでしょうか。自分の国を自分で守るのなら、外国の基地は不要でしょうし、軍の装備も、自分で決めるのが独立国です。アジアの発展途上国などと、日本は他国に援助資金を提供していますが、これらの国々は自分で自分の国の軍事を決めています。

 何もかもアメリカ頼りで、アメリカに任せ、制空権もあちこちで分断されている日本が、どうして独立国と言えるのでしょう。氏の本を読んでいると、考えさせられます。

 共産党を中心とする反日の野党は、「米軍基地の撤去」を叫んでいますが、私とは違った立場からの意見なので、賛成するわけにいきません。

 スペースがなくなりましたので、一区切りとしますが、次回もまた台湾との比較で、氏の著作を読んでいきたいと思います。そうしますと、どうしても同じ疑問が頭に浮かびます。

 「日本は、果たして国際社会で言う独立国なのか。」

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『 日本が軍事大国になる日 』 - 2 ( 二つの中国の緊張関係 )

2022-02-01 20:07:52 | 徒然の記

   平成3 ( 1991 ) 年おける、台湾、中国、日本等の経済指標を、氏が下記のように示しています。

                           人 口                     G N P                一人当たりGNP

      台湾    2,068 万人          1,508 億ドル            7,380ドル

   中国  11億3,000 万人        3,500 億ドル                310ドル

   日本       1億2,000 万人   2兆3,607 億ドル        1万 9,000ドル

       韓国        ---                 2,730 億ドル                6,300ドル

         タイ      ---                       926 億ドル                1,630ドル    

 この数字を見ながら、次のように説明します。

 「一人当たりGNPを見ればわかる通り、同じ中国とは言いながら、」「台湾と中国の経済力は雲泥の差である。」「日本の数字は破格にしても、台湾は韓国を上回り、タイをはるかに凌ぐ、」「アジア第二の経済力を誇る。」

 21年後の現在、中国は日本を抜き、名実ともに世界第2位の軍事・経済大国となっています。今の日本の数字がどうなっているのか、調べれば分かりますが、本題を外れますから敢えてしません。

 「台湾の経済力に相当する、国際的役割、ないしは影響力がないのは、」「中国の国連復帰に伴う、国際的孤立によることは、」「言うを待たない。」「しかしこの孤立状態でも、なお台湾の存在がそう小さくないのは、」「その戦略的地理条件だけでなく、この国が持つ経済力にある。」

 この本が出版される1年前の平成5年に、APEC ( アジア太平洋経済協力会議  ) で、江沢民氏が、「台湾は中国の1省である。」と発言し、台湾の外交部が即座に否定しています。

 「平成4年に、台湾の国防部が初めて発行した国防白書、『国防報告書』では、」「中国から台湾への軍事侵攻の可能性を、予測こそしているが、」「二つの中国の平和的統一については、何も触れてはいない。」

 私たちは、尖閣の領海へ侵入する中国公船について、神経を尖らせていますが、台湾政府と国民の危機感には、もっと差し迫ったものがあることを、教えられます。

 台湾の新聞「聯合報」が、平成4年に、中国共産党中央軍事委員会の会議内容を、穏健派と強硬派の意見に分け報じた記事を、紹介しています。

 1. 穏健派の意見

  「台湾当局を、民間の経済交流によって動かし、政治的統一を促進させる。」

 2. 強硬派の意見

  「必要な時は台湾海峡を封鎖し、台湾の経済命脈を切断する。」

 日本が世界第2位の経済大国となり、土地転がしで途方もない金が動き、多くの国民が有頂天になっていた時も、台湾はすでに中国との関係で、緊迫した状況にあったという話です。

 「日本が輸入する原油のおよそ9割、その他の輸入物資の6割が、」「南シナ海の入り口、バシー海峡を通過する。」

 「その一方に位置する台湾の動向、なかんずく軍事力の今後について、」「日本は、大きな関心を払わない訳にはいかない。」「またそれは中国の軍事力、特に海洋展開能力とのバランスを見ることが、重要である。」

 「中国の軍事力は、台湾の軍事力と相殺され、」「台湾の軍事力は、中国と相殺される部分が大きいからである。」

 詳細は分かりませんが、海洋展開面における軍事力のバランスが、最重要課題だと説明しています。北朝鮮と韓国も、かっては北からの侵略を警戒し、緊張していた時期がありましたが、台湾と中国にも、平成4年以来、その状況が続いているということになります。

 二つの中国について、およそのことが分かりましたので、次回は世界の国々が、具体的に、どんな動きをしていたのかを、氏の著書に教えてもらおうと思います。

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