ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『絶頂の一族』- 6 ( 東條総理との対立 )

2024-04-24 09:14:44 | 徒然の記

 実を言いますと、私は岸信介氏についてほとんど知りません。氏が日米安保条約を改定したのが、私の高校時代でしたから、激しい反対運動の中で改定を強行した首相として記憶があるだけです。

 アメリカに保護される代償として、国内各地に米軍基地を提供すると言う不平等な条約を、日米が対等な立場で相互に安全保障をする内容に変えたのですから、日本の自立を一歩前進させた政治家だと理解し、評価をしてきました。

 私が「憲法改正」を日本の最優先課題と考えるようになったのは、氏の影響ではありません。「ねこ庭」で温故知新の書に学び、試行錯誤した結果ですから、安倍元首相や洋子氏の感化もありません。今回松田氏の著作を読み、岸氏と洋子氏が強い「憲法改正論者」だと知り意外感に打たれたくらいです。

 今考えているのは、氏の著書から見つけた岸ファミリーの過去を、息子たちと「ねこ庭」を訪問される方々へのどのように紹介するかです。幸い松田氏は洋子、信介、晋三氏の賛美者でなく批判者なので、返って偏らない事実が見つかるのではないかと期待します。目次に従うと、氏の著作は次の順番になっています。

  第1章 祖父・岸信介       第4章 父・晋太郎の隠れた弟

  第2章 父・安倍晋太郎      第5章 妻・安倍昭恵

  第3章 叔父・西村正雄      第6章 母・安倍洋子

 氏が「あとがき」で述べていますように、『週刊現代』に執筆した記事をベースとし、全面的に書き下ろした本なので似たような記述が各章にあります。目次に沿って人物の紹介をするつもりですが、他の章からの抜書きも混じると思います。

 目次の人物は、本のカバーに写っている6人のファミリーです。重要人物と思われる佐藤栄作氏が省略されている所を見ますと、松田氏がテーマのため取捨選択をしていることが分かります。従って私も、自分のテーマのため中身を取捨選択します。既にシリーズが6回目になっていますから、全部の人物の紹介は困難になっています。

 長い前置きになりましたが、早速第1章から始めます。

 〈 第1章 祖父・岸信介 〉

  ・岸は大正4 ( 1920 ) 年に東京帝大を卒業し、農商務省 ( 後に農林省と商工省に分離  ) に入省

  ・省内きっての辛辣なエリート官僚として、出世の階段を駆け上がる

  ・当時の満州国で絶大な支配力を誇っていたのは、70万人の軍隊を持つ関東軍だった。岸が関東軍から乞われて満州へ渡ったのは、昭和11 ( 1936 ) 年40歳の時だった

  ・岸は満鉄と並ぶ大コンツェルン「満州重工業開発株式会社」を設立。満州総務庁次長に就き満州国首脳の一人として、石炭、鉄鋼などの生産力増強を図った

  ・4年近くで満州から帰国した岸は、商工省次官に就き、昭和16 ( 2041 ) 年に東條内閣の商工大臣になる。同年12月、日本軍が真珠湾を奇襲し太平洋戦争に突入した。

 これまで満州国にあった日本の巨大組織は、関東軍と満鉄 ( 南満州鉄道  ) の二つだと思っていましたが、もう一つ大コンツェルン「満州重工業開発株式会社」の存在を教えられました。

 温故知新の読書をしたのに、岸氏の関係した会社を知らなかった理由は、設立年を比較すると分かりました。

  関東軍の設立       ・・・明治39 ( 1906 ) 年 11月

  満鉄 ( 南満州鉄道  ) の設立 ・・・明治39 ( 1906 ) 年 11月

  満州重工業開発株式会社の設立 ・・・昭和12 ( 1937 ) 年 12月

 国内での反対論を押し切り、関東軍が清朝最後の皇帝溥儀を迎え満州国を設立したのが、昭和7 ( 1932 ) 年 9月ですから、関東軍と満鉄はその26年も前から満州に進出していたことになります。

 岸氏の経歴を語る上で、満州重工業開発株式会社は大きな位置を占めますが、満州の歴史全体を述べる時は小さな比重になります。したがって、過去に読んだ本の中で取り上げられなかった理由が分かりました。満州重工業開発株式会社と満鉄に関する詳しい説明がありますが、ここでは省略し、岸氏の経歴に戻ります。

  ・商工省の改編で軍需省が新設され、岸が国務大臣兼軍需次官に就くのは昭和18 ( 1943 ) 年。軍需大臣になったのは東條だった

  ・東條は総理だけでなく、外務大臣、陸軍大臣に加えて軍需大臣を兼務。翌年には参謀総長も兼務し、独裁的な巨大権力を掌握した。

 当時国民には隠されていましたが、ミッドウェーの海戦で空母4隻を失い、戦局は悪化の一途を辿っていました。岸氏が東條総理と決定的な対立に至ったのは、サイパン陥落だったそうです。『岸回顧録』の中の言葉を、松田氏が紹介しています。

  ・サイパンを失ったら、日本はもう戦争はできないという私の意見に対して、東條さんは反対で、そういうことは参謀本部が考えることで、お前みたいな文官に何が分かるかというわけです。

  ・B29の本土への爆撃が頻繁に行われて、軍需生産が計画通りできなくなるし、私は軍需次官としての責任を全うできなくなった。

 独裁的な権力を持つ東條総理に異議を唱えることがどれほど恐ろしいことか、総理の強要する辞職勧告を拒絶する岸氏は、暗殺の標的にされたと言います。松田氏が洋子氏の回想『父岸信介の素顔』の中の一文を紹介しています。

  ・父が態度を崩さぬことに腹を立てた四方 ( しかた ) という憲兵隊長は大臣官邸へ押しかけてきて、軍刀を突きつけ、

   「東條閣下が右向け右、左向け左と言われたら、閣僚はそれに従うべきでないか。それを反対するとは何事か。」と言い、父は

   「黙れ、兵隊 !  お前みたいなのがいるから、この頃東條さんは評判が悪いのだ。日本において右向け右、左向け左という力を持っているのは、天皇陛下だけではないか。下がれ ! 」と一喝して追い返したと言います。

      東條氏を怖れなかった岸氏の姿勢が、結局閣内不統一となり、内閣を総辞職に追い込みました。岸氏は生涯に3回死を覚悟したと、後年洋子氏に語ったと言います。

  1回目は、東條総理との対決の時

  2 回目は、A級戦犯として巣鴨プリズンに収監された時

  3 回目は、安保国会の時

 松田氏は、娘として洋子氏が父の影響を強く受けたと説明しますが、紹介している私自身が、政治家としての岸氏を見直しています。父の姿を横で見ていた洋子氏が、尊敬の気持を抱いても不思議はありません。

 230ページの本で、岸氏に関する説明が105ページを占めていますから、松田氏が重要視していることが分かります。次回は敗戦後の日本で、岸氏が総理として何をしてきたかに関する松田氏の意見の紹介です。氏は私と違って、岸氏の安保改定を評価せず、失敗だったと語ります。

 興味のある方は、次回の「ねこ庭」へ足をお運びください。    

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『絶頂の一族』- 5 ( 岸信介氏の家系 )

2024-04-23 08:16:55 | 徒然の記

  〈 岸信介氏の家系 〉

 今回はまず、シリーズ3回目に書いた次の言葉の訂正から始めます。

 ・安倍晋太郎氏から見て閨閥となるのは、安倍、岸、佐藤の3家になりますが、洋子氏が司令塔の役割を発揮しているのは、父信介氏のいる岸家でしかも、分家です。

 訂正しなくてならないのは、青字部分の「分家」と言う言葉で、正しくは「本家」でした。松田氏の説明を読みながら家系図を書いて、間違いに気づきました。込み入っているので、うまく書けるのか自信がありませんが息子たちと「ねこ庭」を訪問される方々のため、家系図に挑戦して見ます。

 佐藤・本家        佐藤・分家         岸・本家  ( 緑色表示は、養子を意味します )

松介 == 藤江      秀助 == 茂代      信政 == 千代

    |             |             |       

  寛子 == 栄作    栄作 - 信介 - 市郎              良子 ==  信介    安倍寛

                                |           |   

                         仲子 == 信和  -  洋子  ==   晋太郎

                            |           |

                          信夫      信夫   -  晋三  -   寛信

 岸信介氏の家系は、佐藤・分家の秀助氏から説明するとよく分かります。以下文章をやめ、項目で説明します。

 ・秀助氏は岸・本家から、男子のいない佐藤・分家へ養子に入った人です。

 ・秀助氏の妻・茂代 ( もよ  ) さんが三人の子供を産みます。

 ・長男市郎氏、次男信介氏、三男が栄作氏です。

 ・次男信介氏は、岸・本家の一人娘良子さんと結婚し、本家へ戻ります。

 ・妻・良子さんが、長男信和氏と長女洋子氏を産みます。

 ・洋子氏は安倍晋太郎氏と結婚し、三人の子を産みます。

 ・長男寛信、次男晋三、三男信夫氏です。

 ・三男信夫氏は、子供のいない岸・本家の信和氏の養子になります。

 従って冒頭の文章は間違いで、岸信介氏が岸・本家を継いでいます。しかし次に本家を継いでいるのは長男の信和氏ですから、松田氏が洋子氏を「岸家の司令塔」と説明するのは間違いとは言えませんが、誇張になるのではないでしょうか。

 岸・本家は仲子さんと結婚した兄信和氏が、洋子氏から三男信夫氏を養子にもらい結婚させ、系図には書いていませんが今はその子の信千代氏が継いでいます。洋子氏と仲子さんは冷めた関係にありますから、閨閥( 仲間 ) と言えるほどの親密さがありません。

 兄弟と甥が三人揃って首相となり、他に外務大臣、防衛大臣を輩出しているのですから、岸、安倍、佐藤の三家は著者の言葉通り「絶頂の一族」です。絶頂の一族のトップにいた信介氏が「憲法改正」を悲願とし、娘の洋子氏がその意思を引き継ぎ、総理となった晋三氏に伝えたのになぜ実現できなかったのか。

 私にはそれが疑問ですが、著者のテーマは「憲法改正」の是非にあるのでなく、政界で苦労を重ねる夫・晋太郎氏と息子晋三氏を、洋子氏がいかに支えたのかにあります。それでも最後まで読めば、「憲法改正」を実現できなかった理由が間接的に叙述されています。

 今回は三家の複雑な家系の紹介までとし、「憲法改正」の叶わなかった原因を松田氏の本の中から探す作業は次回からにしたいと思います。4年前の令和元年8月に「ねこ庭」で、NHKが放映した『昭和天皇拝謁記』を取り上げました。GHQの統治下で皇室改革が進められ、送り込まれたのが初代宮内庁長官・田島道治氏でした。信任していた側近を全て更迭させられた天皇が、孤立状態でご苦労される話でもありました。

 何度も田島長官に反対されますが、陛下は「軍の再建は国防のために必要」とするご意見を変えられませんでした。「昭和の妖怪」と松田氏が言う岸信介氏も、「軍の再建は国防のために必要」と言い、「憲法改正」を最優先の課題と主張します。本を読む限りでは、陛下と岸氏は同じ意見を述べていますので私は岸氏に賛同しています。

 岸信介氏、安倍晋太郎氏、安倍晋三氏を嫌悪する人たちは、彼らを親子三代の悪徳政治家として批判します。本の中では語られていませんが、岸氏の満州時代における麻薬密売による金作り、敗戦後の統一教会とのつながりなどに注目しての酷評です。

 反日左翼の人々が岸氏親子三代を嫌悪するのは理解できますが、同じ保守の中に酷評する人たちがいる事実が今も私には理解できないままです。答えを見つけられないかと、このシリーズを書いている目的の一つでもあります。

 昨夜の雨以来また肌寒くなった「ねこ庭」に、白いモッコウバラが沢山咲きました。しかし、心の沈む春の庭です。惑いつつ、躊躇いつつ、いつも通りの「ねこ庭」ですが、興味のある方は足をお運びください。 

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『絶頂の一族』- 4 ( 軍閥の説明 )

2024-04-22 19:01:16 | 徒然の記

 今回は主としてウィキペディアからの、「軍閥」の解説を紹介します、

 軍閥とは・・・

  1.  文民・文官を中心とする政治勢力(派閥)に対抗する、軍人を中心とする政治勢力(派閥)のこと。

  2.  日本軍の中における、相争う複数の勢力(派閥)のこと。

 ウィキペディアの解説は「軍閥」を大きく二つに分けていますが、もう少し説明を加えないと息子たちには分からない気がします。1. の解説は政界に限定した説明で、軍人を中心とした勢力と軍人以外の政治家を中心とした勢力のことです。2. の解説は政界の話でなく、日本軍の中で争っていた複数の勢力を言い、これらを「派閥」という言葉でくくっています。

 戦前は、天皇陛下が軍の統帥権を持っておられたので、陸海軍は陛下の指揮下にありました。陸・海軍大臣が文官の総理大臣の政府に参加しているとしても、実質的には陛下の統率下にありました。

 従って 1.の説明によりますと、戦前の政界には軍人と文民 ( 文官 ) という二つの勢力があり、双方が対立していたことが窺われます。

 「軍部の独走」「軍の横暴」と、戦後の歴史で語られる原因は 、1.  2. の部分から生じていたことを、後世の私たちは知っておく必要があります。これから実現する「憲法改正」に際しては、再び「軍部の独走」を生じさせないため、細心の注意が求められるからです。

 この点については、近衛内閣で内閣書記官長を務めた富田賢治氏の意見を紹介するのが、一番適切な気がします。内閣書記官長というのは、現在で言えば内閣官房長官に当たるのだと思いますが、昭和37年に出版された、氏の著書『敗戦日本の内側』からの引用です。

 ・昨今、現行日本国憲法の再検討が云々されており、その重要な点の一つに、再軍備の問題がある。

 ・再軍備問題は、今日のわが国内の国民感情、特に婦人層並びに青年層の考え方や、国家財政の上から、いろいろ問題があるけれど、独立国としていつの日にか、軍備を持たねばならぬと思う。

 ・その時、一番心しなければならないことは、軍の統帥を絶対に国務から独立させてはならないと考えている。

 ・端的に言って、統帥の国務からの独立を許したことが支那事変を拡大し、そして大東亜戦争に発展せしめ、これが敗戦を導いたと断じてよいと、私は信ずるものである。

  氏が述べているのは、「軍の統帥権」つまり「天皇の大権」のことで、「国務」と言うのは「政府」を指しています。陸・海軍の統帥権は天皇の大権で、政府や帝国議会は介入できないとする考え方が主流でしたから、政府に反対する人間はこの論理で批判・攻撃をしました。今は死語になっていますが、「統帥権干犯」という言葉がそれで、軍による倒閣を可能にしました。

 ウィキペディアは、次の 2.の軍内の派閥も「軍閥」と解説していますが、これは軍閥と言うより、派閥と表現する方が正しい気がします。過激で暴力的だった彼らの影響力の大きさから、軍閥と言いたかったのだと思いますが、陸軍と海軍に分け具体的に紹介しますので、各自でご判断ください。

 〈 陸軍内 〉

     月曜会・・軍の薩長閥支配に反対した、若手将校の研究会

     湖月会・・日露戦争を推進・画策した外務省、陸・海軍少壮有志によるグループ

     革新派・・満州事変以降盛り上がった、民族主義、国家主義、国粋主義をもとに、当時の政界、経済界の革新、改造を唱えた勢力

        ・・その潮流の一つが昭和維新であり、三月事件、十月事件、五一五事件、二二六事件などの暗殺、クーデター事件を引き起こした

        双葉会・・後に一夕会と合同

        木曜会・・後に一夕会と合同

        一夕 ( いっせき ) 会・・昭和4年に発足した陸軍左官級の幕僚将校らによる会合。

               双葉会と木曜会が合同してできたもの 永田鉄山、東條英機 小畑敏四郎 岡村寧次

        桜会・・日本の軍事国家化と翼賛議会体制への国家改造を目指して結成された超国家主義的な秘密結社 橋本欣五郎

     皇道派・・荒木貞夫・真崎甚三郎ら  相沢事件や2・26事件につながる

     統制派・・永田鉄山と言われるが、特に中心人物なし

        満州派・・永田鉄山・東條英機ら

 〈 海軍内 〉

     本省派・・山本権兵衛が中心

     艦隊派・・条約派に反対する者 対英米主戦論者 ?

     条約派・・ロンドン海軍軍縮条約締結時、「条約妥結やむなし」とする者

 軍閥の説明は「憲法改正」に当たって忘れてならない重要事ですが、ブログのテーマから外れていますので、これ以上の言及をやめます。次回は本題へ戻り、岸信介氏の家系を松田氏の著書に従い紹介します。

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『絶頂の一族』- 3 ( 様々な「閥」 )

2024-04-21 21:42:41 | 徒然の記

 2.  閨閥

  ・閨閥 (けいばつ)とは、外戚( 妻方の親類 )を中心に形成された血縁や婚姻に基づく親族関係、又はそれらが成す勢力、共同体、仲間などを指す   

    ・閨」の意味はもともとは中国語で、「夜、寝るための部屋のこと。

   ・婚姻は政略結婚も含み、政界、財界、官界、さらには王室、貴族に属する一族が、自身や血族の影響力の保持および増大を目的に、婚姻関係を用いて構築したネットワークを言う。門閥(もんばつ)と呼ぶこともある。

 この説明に洋子氏を当てはめますと、晋太郎氏からみた「妻方の親類」となります。洋子氏の親類は岸家と佐藤家で、それぞれがさらに本家と分家に分かれています。

 夫の安倍晋太郎氏から見て閨閥となるのは、安倍、岸、佐藤の3家になりますが、洋子氏が司令塔の役割を発揮しているのは、父信介氏のいる岸家でしかも、分家です。彼女は他家の血縁関係に関心を払わず、夫である晋太郎氏の安倍家との関係も重視していません。

 本書では、洋子氏と安倍家、岸・本家、佐藤家との冷めた関係が語られています。果たしてこれらが「婚姻に基づく共同体、仲間」と呼べるかについては、疑問が生じるところです。

 ・父である信介氏を尊敬してやまない洋子氏が、嫁ぎ先の安倍晋太郎氏の家で、大きな影響力を発揮していた。

 と、事実は狭い範囲の閨閥だったような気がします。松田氏と講談社が、売れる本を世に出そうと頑張った結果の、売り文句だったと思えば疑問が解けます。嘘や捏造が書かれているのでなく、氏が取材した沢山の事実が読者を驚かせます。そのかわり売り上げ重視のドュメント本の特徴である誇張と省略が避けられず、テーマに不要な事実は削られています。

 私の知りたかった旧統一教会問題が、重要なはずなのに語られていないのはそんな理由でしょう。旧統一教会に言及すると、問題が大き過ぎてテーマが絞れなくなるからだろうと思います。

 ここまで分かると、他の「閥」の紹介の必要を感じなくなりました。

 3.  財閥  4.  門閥  5.  学閥  6.  藩閥  7.  派閥  8.  軍閥

 藩閥はもう存在しませんが他の閥は今も残り、社会を動かしています。私たち庶民は、政治家や学者や経済界のリーダーが、自分たちだけの利益のため仲間を作る習性があると、おおまかに知っていれば十分な気がします。学問的に正確な知識が無くても、不埒な政治家は選挙の一票で落選させれば良いのです。

 と、これも実際には難しい話ですが、有り難いことに現代はネット社会です。戦前と違い、庶民が自由な意見を社会へ発信できます。一つの報道を信じることしかできなかった国民が、違った意見を沢山知り、自分で考えて選ぶ世になりました。

 「庶民が騙されるしかなかった社会」から、「庶民が自己選択して騙される社会」に変わったのですから、大きな変化です。間違った政治の責任は、政治家や学者やマスコミだけにあるのでなく、国民一人一人にもかかってきます。良いのか悪いのか分かりませんが、私たちはこんな時代に生きています。

 そして国民の多くが「憲法改正」を悲願とし、これさえ実現すれば素晴らしい日本が取り戻せると考えています。「ねこ庭」でも、「憲法改正」を日本の最優先課題として、掲げています。「憲法改正」は軍の再建ですから、他の閥を省略しても「軍閥」についてだけは、息子たちと「ねこ庭」を訪問される方々に情報を紹介しておきたくなりました。

 「憲法改正」と同時に、戦前の「軍閥」が息を吹き返す可能性も知っておく必要があります。同じ姿で現れるのでなく、時代に合わせた形で生まれ、油断していると恐ろしい「組織」に変化する可能性があります。苦労して来られたご先祖が、私たちに残された言葉がこれではないでしょうか。

 「諸刃の刃 ( やいば ) 」

 誰でも知っている言葉ですが、「軍閥」に当てはめますと、国土と国民を守る軍隊も、ぼんやりしていると大変な仲間や勢力を産むということです。

 現在の国民は、省庁の中の省庁といわれる「財務省」に政治を握られ、為されるがままの状況にあります。洋子氏が司令塔をしている岸家の「閨閥」も、あるいは一部で財務省に似た権勢を持っていたのかも知れません。しかし「軍閥」の力は、そんな穏やかなものでありません。「問答無用」と言って反対者を軍刀で切り捨て、銃で斃した過去を持っています。

 「憲法改正」をするというのは、「諸刃の刃 ( やいば ) 」の復活でもあると肝に銘じておかねばなりません。過激な左翼勢力が何万人を動員して騒いでも、軍は一瞬にして彼らを蹴散らします。反日左翼勢力が、暴力装置と言って軍を忌み嫌う理由がここにあります。

 世界を見れば分かりますが、軍がクーデターを起こしたり、政治へ介入したりするのは後進国の話です。中国やロシアや北朝鮮のような独裁国は、いわば軍と政府が一体化した後進国なので参考になりませんが、民主主義の国で軍は軽々しく政治に介入しません。

 従って5・15事件や2・26事件を起こした戦前の日本は、残念ながら後進国だったことになります。事件に関する見直しと再発防止策が、確立されているとはまだ言えません。いったん緩急あれば、国民が一つになる素晴らしい日本ですが、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という国民性があるのも事実です。

 戦前の軍部に異論を述べたのが、洋子氏の尊敬する岸信介氏と安倍晋太郎氏の父・安倍寛氏でした。『絶頂の一族』の中で、松田氏はここに焦点を当てていませんが、事実の一端を無意識のうちに言及しています。

 次回は、諸刃の刃である「軍閥」に関する情報を紹介しようと思います。

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『絶頂の一族』- 2 ( 司令塔としての安倍洋子 )

2024-04-20 19:22:43 | 徒然の記

 本書では、多くの人物が登場し私たちの知らない逸話が紹介されますが、根底に存在しているのは安倍洋子氏です。本のあちこちで語られる氏に関する描写を拾い出し、これを最初に紹介します。本題に入る前にそうすると、著者の意図が明確になる気がします。

 ・18ページ 

  ・晋三にとって岸は政治のシェルパ ( 案内人 ) であり、岸が成し得なかった「憲法改正」の宿題を、孫の自分が成し遂げようとする意思が見え隠れする。

  ・見過ごすことができないのは、晋三が政権の座にあるということは、岸の娘洋子が岸家の伝道師として晋三の陰にいるということである。

 ・19ページ

  ・「政治というのは土壇場で何が起こるか分からない。正式に決定するまで、誰にも言ってはダメなんですよ。」

  ・戦後最大の政治闘争を生きた岸の娘として、そして息子晋三の司令塔として生きている覚悟を窺わせる言葉だ。

 ・29ページ

  ・その年の師走、晋三は2度目の総理に就いた。未完に終わった岸の「憲法改正」を、洋子は息子の晋三に託そうとしている。

  ・一方で洋子を中心軸に、岸から晋三につながる脈々とした血族の傍流というべき存在が、安倍晋太郎、安倍昭恵、岸仲子らのように見える。

  ・三人とも、岸が頂点の閨閥の流れから見れば他人だった。そこには彼らのもう一つのドラマがあった。

 ・229ページ

  ・洋子は昭和20年8月15日、疎開先の山口・田布施村でラジオから流れる玉音放送を聞いた時、「びっくりすると同時に、もっと頑張れないのかしらとも思いました。」と語っている。

  ・当時洋子は17才。軍国少年ならぬ軍国少女だっただけでなく、「大東亜戦争を以て、日本の戦略戦争というは許すべからざるところなり。」( 岸の獄中記『断想録』  ) という岸信介を父に持ったことで、彼女の歴史観は岸の影響を受けて作られたというべきだろう。

  ・頂点を極めた安倍ファミリーの中で、洋子ほど政治の興亡を体験した女性はいない。その意味で、洋子は一族の家長と言うべき存在だ。

 彼女を称賛する文章にも読めますが、著者である松田氏は岸氏の『断想録』を肯定していません。松田氏から見れば、洋子氏の歴史観は単に父の影響を受けただけのものとなり、まして安倍元首相の「憲法改正」論においておや・・・と言う立ち位置になります。

 最後までこの本が抵抗なく読めたのは、氏の中庸の姿勢だったと思います。「東京裁判史観」に染まった人々のように、「憲法改正」論者を口を極めて批判していません。憲法改正に反対の立場にいながら、改正論を主張する人間を正面切って否定しないところに、ジャーナリストの姿勢を教えられた気がしました。

 安倍洋子氏と松田氏のおおよそを紹介したところで、話が大きく飛びます。洋子氏が中心にいたと言われる「閨閥」とは、何なのか。「閥」とはそもそも何を言うのか。テーマの本道を離れますが、安倍元総理というより、日本の政治を理解するには欠かせない知識と考えます。思いつくままに挙げますと、次のような言葉があります。

 閨閥、財閥、門閥、学閥、藩閥、派閥、軍閥・・まだあるのかもしれませんが、中学・高校時代の教科書に出てきた言葉は、こんなものではなかったでしょうか。学校では言葉の中身を説明されたのでなく、批判の材料として何となく教わったと言うのが実際だったと思います。

 現在、安倍総理の反対側の勢力にいた人間たちが、盛んに批判・攻撃しているのが「派閥」です。「閥」と言う言葉も良い意味に使われていませんので、初心に戻りこれらの言葉を調べてみました。( ウィキペディアが中心ですが、他にウェブログ辞書、コトバンク、goo辞書などを参照しました。)

 大元になっている「閥」と言う言葉から、順番に紹介します。

 1.  閥

  ・出身が同じなどで団結・連絡し、自分たち仲間の利益を図ろうとする人々のつながり。

  ・つながりを作ることを「閥を作る」という
 
  ・例えばいえがらや家格、による「門閥・名閥」、つみ上げてきた手柄など

 日本に限らず世界のどこへ行っても、人間は全て同じでありません。異なる意見だけでなく、異なる神様、異なる先祖、異なる肌の色などがあり、対立するだけでなく殺し合いにもなります。

 世界にまで広げず、日本だけに限っても、仲間が集まって行動すれば自分たちの利益が守れ、身の安全も図れます。「閥」と言うのは一つの利害で人間が集まることを言い、何を基盤として集まるかによって「閥」の種類が分かれるのだと分かりました。

 次回は、安倍洋子氏が司令塔だったと言う「閨閥」から順番に紹介いたします。

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『絶頂の一族』( 著者の紹介 )

2024-04-19 19:29:42 | 徒然の記

 松田賢弥 ( けんや ) 氏著『絶頂の一族』( 平成27年刊 講談社 ) を読みました。副題は「プリンス安倍晋三と六人のファミリー」です。

    第3次安倍内閣 : 2014年(平成26年)12月24日 - 2017(平成29年)11月1日

      第4次安倍内閣 : 2017年(平成29年)11月1日 - 2020年(令和2年)9月16日

      安倍元首相暗殺  2022年(令和4年)7月8日奈良市の大和西大寺駅北口

 ネットの情報で確認しますと、この本は安倍元首相が暗殺される7年前、第3次安倍内閣の時に書かれています。出版は安倍氏が東京五輪の開催を決め、伊勢志摩サミットを開催し、アベノミクスが第二段階に入り、「GDP600兆円」「1億総活躍社会」と前向きな政策を掲げていた年です。

 また同年は、オバマ大統領が現職の大統領として初めて広島を訪問し、ロシアのプーチン大統領とは北方領土問題で前向きな会談をしています。本書のタイトルに使われている「絶頂」と言う言葉は、安倍氏だけでなく、安倍氏の一族も指しているようです。

 本のカバーには安倍元首相を中心に5人の顔写真が並び、この人物たちが「6人のファミリー」です。参考までに、名前と相互の関係、肩書などを簡単に紹介します。

  1.  岸信介 ・・ 安倍晋三の祖父、安倍晋太郎の義父 安倍洋子の父

  2.  安倍洋子・・ 岸信介の長女 安倍晋三の母 安倍晋太郎の妻

  3.  安倍晋太郎・・元衆議院議員・安倍寛の長男 安倍洋子の夫 晋三の父

  4.  西村正雄 ・・安倍晋太郎の異父弟 日本興業銀行元頭取 みずほホールディングス元会長

  5.  安倍昭恵 ・・安倍晋三の妻 森永製菓元社長・松崎昭雄の長女

  6.  安倍晋三 

 図書館にこの本を予約して手に入れたのには、理由がありました。2年前の令和4年7月に安倍元首相が暗殺された以後、突如日本中を賑わせる話題になったのが、悪徳宗教法人「旧統一教会」でした。

 「岸信介、安倍晋太郎、晋三の三代にわたる闇、旧統一教会」

 センセーショナルな見出しで、テレビと新聞、ネットメディアがトップニュースで報じ、政界での「安部派叩き」と「安部派潰し」が始まりました。国難の世界情勢をそっちのけにし、現在は次の「安部派潰し」の「パーティー権問題」・「裏金問題」が世間を騒がせています。

 『絶頂の一族』のプロローグの見出しが「ゴッドマザー安倍洋子を軸にした三代」でしたので、三代という言葉にひかされ、旧統一教会に関する詳しい情報が得られるのかと期待しました。

 しかし著者の焦点は、安倍洋子氏が岸信介・安倍晋太郎・安倍晋三3氏の閨閥作りの中心人物だったという処にあり、旧統一教会は出てきませんでした。日本の独立を達成するため、「憲法改正」と「皇室護持」が不可欠と考える「ねこ庭」にとって、氏の著書は役に立ったのか、有意義だったのか自問自答しますと、

 「役に立ったような、有意義だったような・・・」という答えが出てきます。週刊誌のゴシップ記事をつなぎ合わせた本という印象でしたが、著者の「あとがき」を読んで納得しました。

 ・本書は安倍晋三が2003年に自民党幹事長に就任して以降、『週刊現代』に執筆した記事を一部ベースとしつつ、全面的に書き下ろした。

 国民が面白がって見たり読んだりしてくれれば会社が儲かるというのが、テレビ・新聞・雑誌各社の目的の一つですから、否定する気持はありません。以前は怒ったり攻撃したりで忙しかったのですが、今は「多忙な怒り」を卒業しました。日本より世界のマスコミがもっと大きく、もっと大胆な嘘を報道し、自国民ばかりか世界の人間を惑わせています。昔からそうだったのか、最近特に酷くなったのか、信用できる報道や情報が何処にあるのか分からなくなりました。

 息子たちと「ねこ庭」を訪問される方々に、著者の略歴を紹介しておくのも必要でないかと思えてきました。表紙の裏扉に書かれていますので、そのまま転記します。

 ・昭和29 ( 1954 ) 年岩手北上市生まれ

 ・業界紙記者を経てジャーナリストとなり、『週刊現代』『週刊文春』『文藝春秋』などを中心に執筆活動を行う

 ・故小渕首相秘書官のNTTどこも株疑惑をはじめ、政界について多くのスクープ記事を執筆

 ・小沢一郎について20年以上取材を続け、その後の「陸山会事件」追求の先鞭をつけた

 ・妻・和子から小沢一郎への「離縁状」をスクープしたことで、編集者が選ぶ第19回「雑誌ジャーナリズム大賞」を受賞

 ウィキペディアには、次のように書かれています。

 ・出版業界紙『新文化』記者を経てジャーナリストとなり、『週刊現代』を中心に執筆活動を行う

 ・政界について多くの記事を執筆しており、とりわけ小沢一郎について多く取り上げ、「小沢一郎の天敵」と評された

 ・平成25 ( 2013 ) 年、『小沢一郎 淋しき家族の肖像』で第12回新潮ドキュメント大賞を受賞

 ・令和3 ( 2021 ) 年10月8日、肺炎による急性心不全の為死去  享年67

 小沢一郎氏の天敵と評されているとは知りませんでしたが、テレビドラマに出てくる「トップ屋」みたいな記者だったのでしょうか。安倍氏には天敵でなかったらしく、激しい批判をしていません。その代わり誉めてもいませんので強いていうなら、「反安倍」でなく「非安倍」という立ち位置です。

 氏が亡くなっているとなりますと、この本は「氏の遺書」になります。「温故知新」の一冊に加え、学徒として「役に立った」「有意義な」部分を紹介することに決めました。興味のある方は、次回の「ねこ庭」へ足をお運びください。

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拉致問題・オットー・ワームビア事件 - 3

2024-04-13 07:08:35 | 徒然の記

  〈 オットー・ワームビア事件 〉

 北朝鮮問題の専門家と言われる磯崎教授の意見を、何度でも紹介したくなります。今回も、そうです。

 ・2018 (平成 30 ) 年の6月にシンガポールでの米朝首脳会談の前に、トランプ大統領は北朝鮮に拘束されていたアメリカ人を取り戻している訳ですね。

 この糞教授の愚かさを明らかにするには、2018年10月18日の 「GQ  JAPAN 」の記事を紹介するのが早道です。時間が逆戻りしますが、記事のタイトルは、「変わり果てた姿での帰国」です。    

  ・2017年6月13日、22歳の大学生オットー・ウォームビアを乗せた救命飛行機が、オハイオ州シンシナティの空港に着陸した。2015年末以来、じつに1年半ぶりの里帰りだ。

  ・両親のフレッドとシンディは、息子が昏睡状態にあると聞かされていた。けれどもアメリカの高度な医学と両親の愛情があれば、オットーはきっと元の元気な姿を取り戻してくれるに違いないと、そこに一縷の望みを抱いて父はタラップを上った。

  ・父・フレッドが耳にしたのは、人間とは思えない野獣のような咆哮だった。オットーの四肢は反射的に激しく痙攣するように動いていた。妹が悲鳴をあげてタラップを駆け下りる。フレッドは息子を抱きしめたが、オットーの目は見開かれたまま焦点が合わず、何を語りかけても反応がなかった。

  ・母シンディは衝撃を受けながらも覚悟を決め、夫とともに、病院に向かう救急車に同乗した。ここまで変わり果ててしまった、痛ましいわが子の姿を見ると、気絶してしまいそうだった。

  ・ウォームビア夫妻は何度もワシントンを訪れて陳情し、当時のオバマ政権も水面下での接触は試みていたのだが、実りのないままに時間ばかりが流れて行ったのだった。

 この記事を子を持つ親は平常心で読めませんが、私が紹介したいのは、オバマ氏から政権を引き継いだ当時のトランプ大統領の対応です。

  ・オットーが昏睡状態にあることが、大統領に知らされた。寝耳に水の知らせに驚いたトランプは、交渉担当者や医師を乗せた軍用機を、事前調整なしで北朝鮮に向かわせ、ぶっつけ本番の交渉で若者の身柄引き渡しを成立させた。

 「GQ  JAPAN 」の記事はここまでですが、別の情報が捕捉しています。

  ・北がオットーと面会をさせると言った時、アメリカは面会地に北の許可なしに、軍用機を強行着陸させた。

  ・面会時間が過ぎ、北が拉致したオットーを連れ出そうとした時、同席していた軍人が反対した。

  ・我々はオットーを連れて帰る。邪魔すれば戦争になる。

  ・軍人たちは担架に横たわったままのオットーを取り戻し、北は何も手出しができなかった。

 磯崎氏は、安倍元総理が拉致被害者を取り戻せなかったと、トランプ氏との比較で話していました。氏が語らなかった事実がこれですが、果たして安倍元総理に同じことが出来たのでしょうか。

 ・「日本国憲法」がある限り、安倍元総理は自衛隊機への発進命令ができない。

 ・国内では、親北の議員集団「日朝国交正常化促進議員連盟」という強力な反安倍勢力が抵抗している。

 事実を百も承知していながら、この糞教授は亡くなった安倍元総理を批判していました。一時が万事、戦後の反日学者たちは犯罪国家の説明を省略し、日本の譲歩だけを勧めます。

  ・2018 (平成 30 ) 年の6月にシンガポールでの米朝首脳会談の前に、トランプ大統領は北朝鮮に拘束されていたアメリカ人を取り戻している訳ですね。

 日本人のクズとしか言えない磯崎教授の、他人事みたいな説明の背後には、トランプ大統領とアメリカ政府関係者の並大抵でない苦労があったのです。これで分かったと思いますが、日本以上にアメリカの世論も北朝鮮を許していません。アメリカの合意なしの北朝鮮との交渉が困難である理由が、ここにあります。次の総理が誰になるとしても、日本が独自の交渉をする範囲は限られています。

 北朝鮮の専門家と言われるクズどもは、オットー・ウォームビア事件に誰も触れませんでした。自由民主党がしっかりしていないため、こういう学者と政治家がはびこり、国民の判断が歪められます。「拉致問題」解決のためには、「日本国憲法」、「トロイの木馬」、「日朝国交正常化促進議員連盟」だけでなく、アメリカがあるという事実を国民は知っておく必要があります。

 上品に説明しようと思っていましたが、自戒を忘れ汚い言葉使いをし、「ねこ庭」を訪問される方々に不快な思いをさせたのかもしれません。横田めぐみさんや有本恵子さんたちが、オットー・ウォームビアさんのような姿で帰国しないことを祈りつつ、今度こそ「拉致問題」のシリーズを終わらせて頂きます。

 長いおつき合いに、感謝いたします。

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拉致問題・オットー・ワームビア事件 - 2

2024-04-12 21:14:16 | 徒然の記

  〈 オットー・ワームビア事件 〉

 オットーさんを帰国させたあと、北朝鮮外務省報道官が次のように主張しました。

  ・米国内でワームビアが死亡したのが、労働教化中に拷問と殴打を受けたためという事実無根の噂が流れている。

  ・ワームビアの生命兆候が正常だったのに、米国に帰ってから1週間も経たないうちに急死したのは、我々にとっても謎。

  ・それほどに米国民の安寧に関心を持っているのなら、どうして米国政府はオバマ政権時代に、ワームビアの人道主義的釈放を一度も私たちに要請しなかったのか。その答えは米国が自らに求めるべきだ。

  ・ワームビアは、我々に対する極度の敵対感と抵抗感にとらわれ、対話を拒否してきたオバマの戦略的忍耐政策の犠牲者だ。

 オットーさんの両親の悲しみに一切考慮せず、自国の正当化をする意見には、盗人猛々しいという言葉がそのまま当てはまります。

  ・このような事実を全面的に歪曲し、故意に反共和国非難騒動を起こして、尊厳の高いわが国に対する報復と圧力を語ることこそが、我々に対する挑戦である。明確にしておくが、今回の事件による最大の被害者は我々だ。

  ・米国で行われている反共和国、非難合戦は、我々にとって、人道的、寛容性は禁物であり、法の刃をさらに鋭く研いでおかなければならないという決心を固めさせるものだ。

  ・米国は、自らの軽挙妄動がもたらす禍について熟慮すべきだ。

 驚きました。悪辣な言辞を弄するのは日本にだけかと思っていましたが、アメリカに対しても同じでした。だがアメリカは日本と違い、我慢をしない国ですから、北朝鮮に負けていません。時系列で、米国の対応を紹介します。

  ・2016 ( 平成28 ) 年1月、北朝鮮の「労働強化刑15年の判決」に対し、起訴理由の判決として重すぎると即座に非難

  ・ワームビアの死亡を受け、2017年7月21日にトランプ政権は米国民の北朝鮮への観光の禁止と、米国務省による渡航許可制を発表

  ・米国務省は北朝鮮への渡航を認可する条件に、遺言状の作成と葬儀の手配を挙げた

  ・同年10月24日、合衆国下院で「オットー・ワームビア法」を可決。その内容は、

    ⚫︎北朝鮮政府と取引する外国政府や北朝鮮労働者を雇用した外国企業に、定めた数量以上の石炭、鉱物、繊維、原油、石油製品の輸出入を行った場合、制裁を科す

    ⚫︎北朝鮮制裁の対象になった個人と取引する海外金融機関に対しては、米国内の資産を凍結し口座の開設を制限する

  ・同年11月20日、トランプ大統領は北朝鮮を9年ぶりに「テロ支援国家」に再指定することと追加制裁の意向を表明した。同時に大統領は次のように語った。

   「北朝鮮は世界を核で脅してるだけでなく、ワームビアの事件や金正男暗殺事件など、国際テロを支援している。」

   「テロ支援国家指定は、もっと何年も前に再指定されるべきだった。」

  ・ワームビア家は、大統領と政府に対し感謝を表明した

  ・2018 ( 平成30 ) 年1月トランプ大統領は、初の一般教書演説で合衆国議会にワームビアの両親と脱北者を招き、ワームビアの両親を最初に紹介した。

  ・彼はここで激しく北朝鮮を批判し、次のように述べた。

    「妥協してきた歴代政権の失敗は繰り返さず、最大限の圧力をかけ続ける」

  ・同年4月ワームビアの両親は、外国主権免責法に基づいて北朝鮮を提訴し、同年12月24日、ワシントン連邦地方裁判所は次の判決を下した。

    「拷問、人質、裁判なき超法規的な殺人、両親が負った被害について北朝鮮は責任を負う。」「5億100万ドル(約550億円)の支払いを命じる。」

 厚顔な犯罪国家北朝鮮が、今回岸田首相にこのような悪態をついてきた時、岸田氏はどう対応するのでしょうか。アメリカ議会と違って、日本には「日朝国交正常化促進議員連盟」に100人を超える売国議員がいます。トランプ氏のように、間髪を入れず首根っこを抑える政策が出せるのでしょうか。

 トランプ氏のアメリカと比較し、「ねこ庭」がもっと心配している事実がまだあります。これにつきましては、スペースの都合で次回に説明いたします。

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拉致問題・オットー・ワームビア事件

2024-04-12 15:38:04 | 徒然の記

 北朝鮮問題の専門家と言われる磯崎教授の意見を、何度でも紹介したくなります。

 ・2018年の6月にシンガポールでの米朝首脳会談の前に、トランプ大統領は北朝鮮に拘束されていたアメリカ人を取り戻している訳ですね。

 この時はスペースの都合で言及しませんでしたが、トランプ大統領が拉致米国人を取り戻したのは困難を極めた話です。事実を詳述すれば、安倍元総理が日本人拉致被害者を取り戻せなかった理由が、分かってしまいます。細部を省略し安倍元総理を批判している氏は、やはり反日「トロイの木馬 B 」の仲間です。

 先月3月20日の「ねこ庭」で紹介した「救う会」の資料には掲載されていませんでしたが、実は北朝鮮が拉致した米国人が3人いました。米国は次のように、彼らを2回に分けて北朝鮮から奪い返しました。

   1. 回目  2017 ( 平成29  ) 年6月13日

    ・米国人学生オットー・ワームビアさん(22)

   2. 回目 2018 ( 平成30  ) 年5月9日

    ・韓国系米国人キム・ハクソン氏、トニー・キム氏、キム・ドンチョル氏の3人

 磯崎教授が語っていたのは、2回目の韓国系米国人3人のことですが、彼らが戻される前にオットー・ワームビアさんの悲惨な事件がありました。彼の犠牲があったから、北朝鮮はトランプ大統領との首脳会談を前にして3人を戻しています。

 概略を言いますと、バージニア大学の学生だったオットーさんが、北朝鮮へのツアー参加中に拘束され、両親と米国政府の働きかけにより帰国することになったが、昏睡状態で戻りその後死亡したという事件です。経過を、ウィキペディアの解説から紹介します。

  〈 オットー・ワームビア事件 〉

  ・ワームビアは1994 ( 平成6 ) 年にオハイオ州に生まれ、ドイツ北西部からの移民系の父とユダヤ系の母、弟と妹の5人家族。

  ・バージニア大学で、商学と経済を学んでいた2016 ( 平成28 ) 年1月、彼は中国の観光会社主催のツアーで北朝鮮を観光旅行した。

  ・この時彼は、羊角島国際ホテルの「政治宣伝ポスター」を盗もうとした容疑で、北朝鮮当局に拘束された。

  ・北朝鮮側の言い分は、「オハイオ州ワイオミングにあるキリスト教の友情連合メソジスト教会の指示を受けて、1万ドルをもらって犯行をした。」というもの。

  ・彼は2月29日記者会見の場で、展示物を持ち帰ろうとしていたことを認めて涙ながらに謝罪した。

  ・3月16日、北朝鮮最高裁は国家転覆陰謀罪に当たるとして、労働教化刑15年を宣告した。ワームビア家はキリスト教徒ではなくユダヤ教徒であり、北朝鮮のでたらめな主張にもかかわらず、北朝鮮を刺激しないためにユダヤ教の信者という事実を公表しなかった。

  ・イスラエルのメディアによると、米国の交渉チームもワームビア家の選択に従い、北朝鮮との交渉でこの事実に言及しなかった。

  ・翌年の6月、アメリカ国務省の政府特別代表がニューヨークで北朝鮮の国連大使と接触し、ワームビアが昏睡状態であることを把握。

  ・同代表はトランプ大統領の指示を受け、6月12日に医療チームと共に訪朝して解放の交渉を行なった。ワームビアは昏睡状態で解放されるが、帰国後の6月19日に死亡した。

  ・昏睡状態になった理由は、労働教化中の拷問と殴打の可能性が高いとされ、米国の医師らにも確認されているが、北朝鮮側は拷問と殴打を否定し、2016年3月からボツリヌス症による昏睡状態となっていると主張した。

 ワームビアさんの治療を担当したシンシナティ大学病院の医師は、北の説明を否定し、次のように述べたとのことです。

 「彼は植物状態で目は開くが、言葉を発することができない。ボツリヌス菌の中毒症状は見られない、脳の大部分の細胞が損傷している。」

 「心拍停止によって脳に酸素が送られなかった時に生じる、典型的な症状である。」

  ・ワームビアの両親は、9月26日のFOXニュース情報番組『フォックス・アンド・フレンズ』に出演し次のように語った。

  〈 父 フレッド 〉

 「息子は体を動かし激しく痙攣していて、うなり声を上げ、人間でないような音を出していた。」

 「髪の毛は剃ってあり、目が見えず耳が聞こえない状態で、腕と脚は完全に変形しており、足には大きな傷があり、誰かがペンチを使って下の歯並びを変えたようだった。」

 「拷問され、金正恩とその組織に意図的に危害を加えられた。これは事故じゃない。」

  〈 母 シンディー 〉

 「北朝鮮が送還を許したのは、自分たちの国で死なせたくなかったからだ。」

 「米国人は北朝鮮に旅行しないでほしい。訪問すれば、政治的宣伝に使おうとする北朝鮮の思う壺だ」

  ・6月22日にワームビアの出身校であるワイオミング高等学校にて葬儀が営まれ、両親・教職員・元同級生・ユン大使など約2500名が参列した。

 ここで私は、蓮池教授の言葉を思い出しました。

 「北は帰国しても余計なことを言わないと思われる人間と、そうでない人間を分けた。」「日本に帰って、何も喋らない人間だけを帰した。」

 「北の思い通りにならない者は、死んだことにした。」

 北朝鮮にとってワームビアさんは、帰国すればなんでも話す人間だったため、「喋れない人間」にして帰国させたのではないでしょうか。彼が亡くなったあと、トランプ大統領がどのような対応をし、米朝関係がどうなったのか、次回もウィキペディアの解説を紹介します。

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拉致問題・新しい事実の発見

2024-04-11 17:20:16 | 徒然の記

 朝になり雨戸を開けるのは、私の役目です。庭に面した和室と居間のカーテンを広げ、閉め切っている雨戸を開けると、室内が一気に明るくなります。毎朝繰り返していることなのに、この瞬間いつも心が躍ります。

 「天気の悪い日は、雨戸を開けなくてもいいよ。」

 家内は言いますが、吹き荒れる台風でない限り、一階も二階も雨戸を全部開けます。部屋も生きて呼吸をしている気がするので、外気と陽の光を入れてやります。4、5日前から「ねこ庭」では、姫りんごと花ずおうの花が咲き、雨戸を開ける度に気持が華やぎます。

 「拉致問題」だけでなく、「憲法改正」「皇室護持」「トロイの木馬」など重い話ばかり書いているので、暗い日常生活を送っていると誤解されているのかもしれませんが、私は「ねこ庭」の花や木と共に暮らしを楽しんでいます。「狭いながらも楽しい我が家」と、昭和の初期にそんな歌がラジオから流れていましたが、そっくり今の気持です。

 金はなくても贅沢はしなくても、家内と2人で毎朝ラジを体操をし、喧嘩したり笑ったり、満足という名の船に乗っています。毎月年金を頂き、殺人も強盗もいない街で安心して暮らしていけるのは、なんといっても国のおかげです。もっと言えば、毎朝ちょっとだけ、申し訳程度に手を合わせているご先祖さまのお蔭でもあります。

 こんな素晴らしい日本国民の一人であると感謝しているから、私は拉致被害者の方たちの不幸が気になります。あるいは息子や孫たちの未来を想いますと、敗戦後の「日本国憲法」と「トロイの木馬 A 」「トロイの木馬 B 」のことを、どうしても考えてしまいます。

 息子たちと「ねこ庭」を訪問される方々に、くれぐれもお伝えしたいのは、私は暗い日々の中でブログを綴っているのでないということです。自分が幸せでいる申し訳なさのため、先日まで下記の通りブログを書いてきました。

 「拉致問題の、基本からの見直し」 「拉致問題・著名人4氏の言葉」

 「拉致問題・ 蓮池准教授の意見」  「拉致問題・ 金総書記のシグナル」

 「拉致問題・ 専門家諸氏の意見」  「拉致問題・青山繁晴氏の意見」

 一区切りをつけ終わりにしますと言いましたが、今朝雨戸を開け、朝日を受けた姫りんごと花ずおうの美しさを目にした途端、一連の記事の紹介作業中に見つけた「オットー・ワームビアさん」の事件を思い出しました。

 同時に、TBS番組コメンテーターの堤伸輔氏の言葉が浮かびました。

  ・私の手で全員を取り戻すと安倍総理は言いましたけれども、その言葉は一歩も進まなかった。結局10年、ものごとが動かないまま進んできた訳ですが、

 「トロイの木馬 B」のマスコミは、こうして亡くなった後でも安倍氏を批判します。氏も木馬の仲間なので拉致被害者が取り戻せなかった責任が、安倍氏一人にあるような言い方をしていました。

 また礒崎敦仁教授も似たような意見で、暗に安倍氏を批判しました。

  ・2018年の6月にシンガポールでの米朝首脳会談の前に、トランプ大統領は北朝鮮に拘束されていたアメリカ人を取り戻している訳ですね。安倍総理はトランプ大統領を通じて、金正恩氏に日本側の懸念を伝えている訳だけれども、アメリカの大統領が日本人の拉致被害者たちを取り戻してくれる訳ではない。

 「トロイの木馬 B 」の中身は、反日左翼学者、反日左翼マスコミ、ジャパンハンドラーですから、「ねこ庭」の定義通りです。堤氏が反日左翼マスコミ、磯崎氏が反日左翼学者の仲間として、安倍元総理の否定をしています。なぜいつまでも執拗に氏の否定をするのかは、青山繁晴氏の意見が教えてくれます。

  ・僕が秋の総裁選に勝って、総理になったとして、仮に今のような状況だったとしたら・・・

    1.  先ず、帰せる人を帰すという北の要求を受け入れます。

    2. 直接関係ないと思われるかもしれませんが、次に衆議院を解散します。 

    3.  解散のテーマは、「9条の改正」です

  ・憲法はまず、9条から変えるべきです。なぜかと言うと、国家は国民を守るためにあるので、国民を守る手段がないという憲法を変えることから手をつけないと、何も始まらないのです。

 青山氏は、「拉致問題「を「憲法改正」と直接に関連づけて語った最初の政治家で、安倍元総理はタブーだった「憲法改正」を、公約として掲げた最初の政治家でした。つまり安倍氏を否定するということは、「憲法改正」反対への意思表示になります。

 これは、盛んにマスコミが騒ぎ続けている「裏金問題」で、一番叩かれているのが「安部派」だという事実と繋がっています。だから心配なのは、青山繁晴氏も暗殺されないだろうかということです。

 「国民のために死ぬ覚悟をしているのが、政治家なんです。」

 【僕らの国会】の動画で時々氏が自分で言っていますから、心配しなくていいのかもしれませんが、「憲法改正」という問題はこれほど厄介で、重いものだということです。

 回りくどい話になりましたが、今朝雨戸を開け、姫りんごと花ずおうの花に感動し、同時に堤氏と磯崎氏の顔が浮かんだため、予定を変更することにしました。

 「拉致問題」のシリーズを、まだ終わりにしてはいけない。

 ということで次回は、「オットー・ワームビア事件」について紹介いたします。

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