田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

終りのデート 夕日の中の理沙子(2)  麻屋与志夫

2009-01-20 17:24:09 | Weblog
真夜中になっているだろう。広い地下街は光に満ちている。

「高内さんに、連絡しといてよかった」

「心配されなかった」

理沙子のほうがまるで年上のかんじがする。

「飲んで外泊するの常習だから」

エレベーターで地下二階までおりた。
 
5

夏休みだった。

コウジは大学生。

理沙子は操女子高校生なって。

はじめてのデートだった。

オリオン通りのピザ屋。

思いでの場所。

ふたりはトレビの泉で食事することにした。

東京からくるコウジを駅で出迎えたかった。

コウジがことわった。

照れてるんだわ。

そのコウジが遅刻している。

胸騒ぎがして店をでた。

アーケード街を走りだした。

枯れ草のきついにおいがしていた。

なんなのこのにおい。

コウジに危機がせまっている。

携帯できないほどだ。

なにか起きてる。

コウジの性格からいって。

連絡してこないなんておかしい。

アーケードのつきるあたりに。

濃い霧の柱がうごめいていた。

その中心にコウジがいた。

喉をしめあげられている。

口をくるしそうにあいている。

口腔から青い息がもれていた。

それを輪郭のぼやけた人型のものにすわれていた。

コミックみたい。

理沙子は頭の隅でそうおもった。

おもったときには少林寺拳法で鍛えた走りとび蹴りを――。

人型めがけてはなった。

ドスツ!!!

まさにコミックの世界だ。

壁をけった。

感触。

吸血鬼の面。

ゴム面をつけたヤクザだ。

「カモネギかよ」

面をつけた男がいった。

なにをいわれたのか理沙子にはわからなかった。

「げんきな女の子だ。おう、いてえ、いてえ」

霧の中から男たちが実体化した。

三人いた。

「コウジを離しなさい」

「いさましいな」

「気にいった。おまえの精気もすってやる」

「いいからだしている。おいしそうだ」

三人ですきかってなことをいっている。

「理沙子。逃げるんだ」

「コウジこそだいじょうぶ」

「こいつらニンゲンじゃない」

「なにいつてるの。コウジこそさきに逃げて」

「おやおや。しりあいか。それも恋人同士とみた」

その危ういときに。翔太にたすけられたのだ。

病院につくまでに理沙子の説明がおわっていた。

「それいらい彼はこのとおりよ」

「わたしも……こうなっていたかもしれないのね」

「まちがいなく……」




one bite,please. ひと噛みして!! おねがい。
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ああ、快感。