田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

恐怖の鉤爪/夕日に中の理沙子(2)  麻屋与志夫

2009-01-24 22:50:48 | Weblog
「つけられてる」

仲間とわかれた。

キヨミとつれだてあるいていた。

理沙子はまだ長い夜がおわっていないのをしった。

「なによこれって。

つけられているの……?

ほんとにわたしたちが。

つけられているの??」

キヨミには理解できない。

にわかに信じられない。

「そうみたい。ほら」

深夜でもやっている居酒屋の前でたちどまった。

そしてふいにあるきだした。

路地にはいった。

路地の先に。

少年が立っている。

「今夜じゅうに決着つけたくてね」

「シツコイワヨ。サブロウさん」

「おや。うれしい。覚えてくれたんだ。ぼくのなまえ」

ぼくってガラかよ。

でも、たしかに外見は平凡な少年にしかみえない。

「なんだ。おしりあいなの。理沙子顔がひろいじゃん」

「そう。さっき戦ったばかりの犬森ジロウさん」

「そして。おれはサターンをたばねている、宝木」

「ゲッ。またあんたかよ」

キヨミが路地の後方をふりかえった。

理沙子とキヨミははさまれていた。

「これかえしとくよ」

宝木がニヤニヤ笑っている。

気泡シートをなげてよこした。

気泡はきれいにつぶしてある。

「みてごらん。影がもううつらない」

路地には宝木の背後から街灯がさしこんでいた。

だが長く伸びているはずの影はない。

爪がそのかわり。

異様なほど長く伸びている。

肥満男の大きな影はない。

宝木は仮性吸血鬼になりきっていた。

「あの鉤爪がアイツの武器」 



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ああ、快感。


影がない/夕日の中の理沙子(2)  麻屋与志夫

2009-01-24 10:49:49 | Weblog
「キヨミ……」

かたわらにいるキヨミにだけきこえるように。

声をひくめた。

いや理沙子は恐れている。

「みて……アイツラには影がない」

さきほどまで影がぶれていた肥満男。

サターンの頭も。

影か消えてしまった。

「つうことは。こいつらアレ」

「理沙子。撤去だ」

タイミングよく舗道から、翔太の声がふってきた。

2

「そういわれても、すぐには信じられないよ」

駅の東。

宇都宮餃子会館にそろってはいった。

一段高くなった隅の席で理沙子がひそひそと。

一別以来の話をしながら。

キヨミの敵について解説している。

「理沙子は秀才だからさ。

操の生徒と宇女商のアタイではつりあわないと。

引いたんだよ」

「そんなのおかしいよ。

いままでだって、これからだってわたしたちチームだよ」

「うれしいよ。それでさぁ」

まだキヨミは旧交をあたためたかったらしい。


理沙子は吸血鬼のはなしにはいろうとした。

翔太が車から段ボールの箱をはこんできた。

「なんですかこれ。ボス」

「ボスじゃない。パートナーなの」

翔太がはこんできたのはVampire Hunter Kit だった。

さきほど理沙子が危ういところで投げたプチプチシートもある。

「ゲーム感覚だね」

「みなさんがあの連中と戦うとこ、みせてもらった。

半覚醒しているとみた。

またおそわれたときに必要となるから。

それにこれは覚醒者しかもたないシルバーリング。

使いかたは理沙子にきくといい。

ここの勘定はすませてあるから。

たべほうだいでいいよ」

「ねね。理沙子のあたらしい彼?」

3

餃子の匂いをたてて店をでた。

深夜だ。

ひさしぶりであったキヨミと理沙子は油断していた。

この時間こそ。

吸血鬼のいちばんあばれやすいことを――。






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