15
「オネエ。携帯くるね」
「そうね。わかってる」
「アンデイからかな?」
「ワカッテルクセニ。からかわないで」
勉強机に置いてあった携帯が鳴った。
「ああ。百ちゃん」
男の子をひとり預かってくれないかな。
隣の子なのよ。中3。
両親がいなくなって孤児。
かわいそうなの。母親のほうはVにたべられちゃったのよ。
百子が涙声になっている。
連れられて来た子は青白い顔だった。
眼の前で母親がVに食いちぎられていたのだ。
蒸発した父はレンフイルド、吸血鬼にかまれてしまったらしい。
店に入ってきても、口もきけない。
「しっかりするなんだ!! 戦争中だったらそんなことはあたりまえだ。親が死んだくらいで動揺はするな」
みんなの話中に二階からおりてた。
いつのまにか話をきいていたオジイチャンが少年のほほをバンとはった。
「庄一ジイチャン。それムカーシノコトヨ」
美香&香世が同時に声をあげた。
少年は魂の抜け殻。
ぼうっとたちつくしていた。
それが、ほほをなぐられた。過酷な母との別れを経験した。
悲しみのあまり心神耗弱。その少年がなきだした。
顔に赤みがさした。
「朝からなにもだてないのだろう。ソバをたべなさい。はなしはそれからだ。われらが、きみのソバにいるから。蕎麦食べて」
いつものオヤジギャグだ。美香&香世は顔をしかめた。
ところが少年が笑った。
「百チャンたちみんなにも大判振る舞いだ」
庄一ジイジイが得意になる。ギャグがみごとに理解された。
調理場からガラス越しに事の成り行きをみていた父が「はい、毎度あり」と大声でこたえた。
少年が泣いていた。
「百チャンたちもここにカケて。温かなカケそばだ。さあ、すわった。すわった」
カケにカケをカケたがこんどはだれにもつうじなかった。
湯気がみんなの顔を温かな雰囲気にしていた。開店前の10時半。
店内はときならぬクノイチ48の美少女でいっぱいになった。
兆子の連絡におうじてIモールの地下駐車場にあつまったメンバーだ。
20人はいる。
百子と兆子が美香&香世を手伝っている。
「きょうから……アツシ君。ここが君の住む家よ」
美香がやさしくいう。
「よかったね。アツシ。家と仕事がいっしょに見つかって……」と百子。
「りっぱなソバ打ち職人になってね。わたしたち毎日でもくるから……」と兆子。
A少年。アツシはまた泣きだした。
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