2
アツシの手はかじかんでいる。
リャカーのパイプの取っ手に。
へばりついているようだ。
むりしてひきはがそうとすれば。
パイプと手の平の間で。
パリッと音がしそうだ。
凍っている。冷たい。寒い。
だがうれしかった。
こころは、ほのぼのとしている。
姉妹の役に立っていることが。
ホームレスのオジサンたちが。
よろこんでソバをたべてくれたことが。
うれしかった。
あいつらの手に握られていた鉄パイプ。
ひとを傷つけるためのものだ。
ひとを、殺めるためのものだ。
「アツシくん。このままお店に帰って」
なにかやろうとしている。
「ふりむかないで。そのままゆっくりと……お店に向かって歩いて」
姉妹は雪の花を咲かせた桜の古木の影に潜んだ。
「モモ。後をつけられる?」
「感度、OK」
歯をむいたホームレスVの襟に。
クリップほどのマイクを刺しておいた。
姉妹は桜のゴツゴツした幹に手をおいている。
「オネエ。百子さん、みえないね」
「さすがクノイチ48のリーダー。わたしにも……みえない」
「忍者映画みたいだね。白装束で穏行してるのよ」
少年たちはVとつれだって樹木の奥にあるいている。博物館の方角だ。
「翔子。百ちゃんそこからだとみえる?」
「雪の乱反射でみえない。なにか白いものが雪の上を這っている」
「それよ」
「でも美香の予想があたったね。それってT能力なの」
「闇法師にきいたの」
マスターVの鉤爪を避けずに体でうけた。
体をはった。
Vの鉤爪を封じた。
美香がVの片腕を斬りおとした。
それから、法師にすがった。
そして法師がきれぎれのことばでいった。
「ここのモリではない。ヤッラの巣窟はこの森ではない。武器を銀でコーテングするのだ」
ほとんどテレパシー。
声にはなっていなかった。
頭に直接つたわってきた。メッセージ。
でも……たしかに法師のことばは姉妹につたわってきた。
理解することができた。
MVはいかにも庭園美術館の奥の森に住んでいるようなことを発言していた。
だがいくら捜査してもみつからなかった。
Vの巣窟、あるいは寺院らしきものはみあたらなかった。
そこで神宮の森。
早稲田の森。早稲田には森と呼ばれるほど樹木はないが。
そして上野の森。
森と名のつくところは、神社仏閣の森までくまなく探した。
そして四日目の雪の朝、ついに美香&香世の地元。
上野の森に探索の輪を狭めた。
「なに、悩んでいる。なにも悩むことはない。こうしてやればいい」
少年たちが血吹雪を上げて倒れた。
雪が赤く染まった。
体をヒクヒクさせている。
エイドリアン、ヴァンパイア・マスターが中空にういていた。
もちろん両腕とも健在だ。
回復力はなみの吸血鬼のものではない。
さすが、マスターと賞賛する。
「役立たたずは、レンフイルドにすることはない。血を吸っていいぞ」
少年たちをつれてきたホームレスを装ったVにいっている。
「でも……わたしの人選がまずかったのかと……」
「だから、そのことでは悩むことはない。そこにいる美香ちゃんに邪魔されたから、ホームレスの血を吸い従者にすることには失敗したのだ」
姉妹の追尾はしられていた。
「出てきたらどうだ。美香ちゃん」
MVがフワッと雪の上におりたった。
雪の上に立っている。足跡はつかないだろう。
雪の上に浮かんでいるようだ。
姉妹は剣を抜かない。
美香は指剣さえかまえない。
なにで戦おうとしているのか。
剣も指剣もかまえずに。
MVと美香&香世はにらみあった。
そのまま三人は膠着。雪の上で凍りついた。
MVの顔に苦痛の色がひろがった。
「うぬ。なにしている」
姉妹は思念をとばしていた。
念力をほどばしらせていた。
T攻撃だ。
ハジメテのT能力による攻撃念波。
姉妹の体から霊気が放射されている。
「参る!!」
百子が雪の中から舞い上がった。
MVの頭上に刀をきらめかせた。
美香が斬りおとした腕。再生した腕が。
また斬りおとされた。
「銀の刀で斬られた腕は、どうしたら再生できるかしら」
「推参!!」
つぎつぎと白装束のクノイチ48が雪のなかからあらわれた。
レンフイルドがマスターを円陣をつくって護衛した。
白装束、アーマーは銀でコウテングしてある。
いままでのように。
吸血鬼の鉤爪の攻撃で。
生命を落とすことはあるまい。
百子はそう願っていた。
今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
皆さんの応援でがんばっています。
にほんブログ村
アツシの手はかじかんでいる。
リャカーのパイプの取っ手に。
へばりついているようだ。
むりしてひきはがそうとすれば。
パイプと手の平の間で。
パリッと音がしそうだ。
凍っている。冷たい。寒い。
だがうれしかった。
こころは、ほのぼのとしている。
姉妹の役に立っていることが。
ホームレスのオジサンたちが。
よろこんでソバをたべてくれたことが。
うれしかった。
あいつらの手に握られていた鉄パイプ。
ひとを傷つけるためのものだ。
ひとを、殺めるためのものだ。
「アツシくん。このままお店に帰って」
なにかやろうとしている。
「ふりむかないで。そのままゆっくりと……お店に向かって歩いて」
姉妹は雪の花を咲かせた桜の古木の影に潜んだ。
「モモ。後をつけられる?」
「感度、OK」
歯をむいたホームレスVの襟に。
クリップほどのマイクを刺しておいた。
姉妹は桜のゴツゴツした幹に手をおいている。
「オネエ。百子さん、みえないね」
「さすがクノイチ48のリーダー。わたしにも……みえない」
「忍者映画みたいだね。白装束で穏行してるのよ」
少年たちはVとつれだって樹木の奥にあるいている。博物館の方角だ。
「翔子。百ちゃんそこからだとみえる?」
「雪の乱反射でみえない。なにか白いものが雪の上を這っている」
「それよ」
「でも美香の予想があたったね。それってT能力なの」
「闇法師にきいたの」
マスターVの鉤爪を避けずに体でうけた。
体をはった。
Vの鉤爪を封じた。
美香がVの片腕を斬りおとした。
それから、法師にすがった。
そして法師がきれぎれのことばでいった。
「ここのモリではない。ヤッラの巣窟はこの森ではない。武器を銀でコーテングするのだ」
ほとんどテレパシー。
声にはなっていなかった。
頭に直接つたわってきた。メッセージ。
でも……たしかに法師のことばは姉妹につたわってきた。
理解することができた。
MVはいかにも庭園美術館の奥の森に住んでいるようなことを発言していた。
だがいくら捜査してもみつからなかった。
Vの巣窟、あるいは寺院らしきものはみあたらなかった。
そこで神宮の森。
早稲田の森。早稲田には森と呼ばれるほど樹木はないが。
そして上野の森。
森と名のつくところは、神社仏閣の森までくまなく探した。
そして四日目の雪の朝、ついに美香&香世の地元。
上野の森に探索の輪を狭めた。
「なに、悩んでいる。なにも悩むことはない。こうしてやればいい」
少年たちが血吹雪を上げて倒れた。
雪が赤く染まった。
体をヒクヒクさせている。
エイドリアン、ヴァンパイア・マスターが中空にういていた。
もちろん両腕とも健在だ。
回復力はなみの吸血鬼のものではない。
さすが、マスターと賞賛する。
「役立たたずは、レンフイルドにすることはない。血を吸っていいぞ」
少年たちをつれてきたホームレスを装ったVにいっている。
「でも……わたしの人選がまずかったのかと……」
「だから、そのことでは悩むことはない。そこにいる美香ちゃんに邪魔されたから、ホームレスの血を吸い従者にすることには失敗したのだ」
姉妹の追尾はしられていた。
「出てきたらどうだ。美香ちゃん」
MVがフワッと雪の上におりたった。
雪の上に立っている。足跡はつかないだろう。
雪の上に浮かんでいるようだ。
姉妹は剣を抜かない。
美香は指剣さえかまえない。
なにで戦おうとしているのか。
剣も指剣もかまえずに。
MVと美香&香世はにらみあった。
そのまま三人は膠着。雪の上で凍りついた。
MVの顔に苦痛の色がひろがった。
「うぬ。なにしている」
姉妹は思念をとばしていた。
念力をほどばしらせていた。
T攻撃だ。
ハジメテのT能力による攻撃念波。
姉妹の体から霊気が放射されている。
「参る!!」
百子が雪の中から舞い上がった。
MVの頭上に刀をきらめかせた。
美香が斬りおとした腕。再生した腕が。
また斬りおとされた。
「銀の刀で斬られた腕は、どうしたら再生できるかしら」
「推参!!」
つぎつぎと白装束のクノイチ48が雪のなかからあらわれた。
レンフイルドがマスターを円陣をつくって護衛した。
白装束、アーマーは銀でコウテングしてある。
いままでのように。
吸血鬼の鉤爪の攻撃で。
生命を落とすことはあるまい。
百子はそう願っていた。
今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
皆さんの応援でがんばっています。
