12月上旬の土曜日、宇都宮へLRT(ライトレールトランジット)の進捗状況を見に行った。
LRTとはかつての都電と似ているが、低床式車両で、乗降がしやすい都市交通システムをいう。
東武宇都宮駅からJR宇都宮駅経由で、宇都宮大学までの往復を歩いてみて、この街でのLRTの必要性を痛感した。
少し長くなるが、おつきあいいただきたい。
まず、自宅から東武宇都宮までは東武鉄道の普通電車や急行・準急を乗り継いで日帰りした。
特急には乗らず。
これが最も安価な経路であり、JRの新幹線を使う場合の1/3で済む。
宿泊費も不要なのがありがたい。
東武宇都宮着は11時前、帰りの東武宇都宮発の電車は14時20分なので、現地の滞在時間が3時間20分と限られているが、まずは腹ごしらえということで宇都宮餃子をいただいた。
東武宇都宮駅近くの「来らっせ 本店」さんでは、私一人なので、カンター席かと思っていたが混んでいたので、ソーシャルディスタンス確保のため、店長さんの配慮で、4人テーブルへ案内されたのもうれしかった。
事前に調べたら、お昼には行列ができるとあったので、11時過ぎと少し早めに行ったのがよかったのかもしれない。
宇都宮餃子は(宇都宮も)初めてであったが、あまりに美味しかったので、追加で注文した。
だがこれが、現地滞在時間を短くする一番の原因となるうれしい誤算となった。
私は、いろいろな餃子の味がセットになったBセットを「来らっせ本店」さんで注文した。
宇都宮餃子があまりにも美味しくて、あっという間に一皿目のBセットがなくなり、二皿目も追加注文した。
(上の写真は1個目を既に食べている(笑))
ライスセットの御飯の量も多く、漬物も美味しかったので、漬物も追加注文した。
ところが、この追加した漬物が250円なのだが山盛りで(下の写真)、メニューの写真とはまったく量が違う、これまたうれしい誤算だった。
この漬物は一人では食べきれないほどあるので、グループで注文されることをお勧する。
食事は20分ほどで終わらせるつもりが、あまりに宇都宮餃子が美味しいので、滞在時間が限られるのを忘れ、45分ほど食事に費やしてしまった。
(笑)
だが、宇都宮へ行ったら宇都宮餃子は外せないということがよく分かった。
「来らっせ 本店」さんでの餃子ランチを終え、心も体も満足して外へ出てちょっと歩くと目の前が、宇都宮二荒山神社であった。
LRTの状況を見た後に、時間が余ったら見学する予定であったが、目の前だったので、二荒山神社に先に詣でることにした。
私は知らなかったが、宇都宮はこの二荒山神社の門前町だったのだ。
東武宇都宮駅を出るとオリオン通りがアーケードになっていて、東武宇都宮駅に隣接する東武デパートと一体となって、宇都宮駅周辺の賑わいの中心となっている。
宇都宮は、二荒山神社のまさに門前町なのである。
二荒山神社はその賑わいを見下ろす位置にある。
さて、二荒山神社に幸運にも参詣できたことを感謝した後、いよいよJR宇都宮駅に向かって歩くことにした。
驚いたのは、歩道の広さだ。
銀座通りくらいの広さの歩道が、二荒山神社からJR宇都宮駅に向かってまっすぐ東へ延びている。
若干下っているが、ほぼ平坦である。
なので、とても歩きやすい。
しかも、車道は銀座通りの1.5倍くらいはあろうかと思われるほど広いので、歩いていて実に気持ちいい。
時々高校生が自転車で追い越してくるがまったく気にならない。
人がそれほど多くないからだ。
時間がつまってきたので、急いで歩いた。
だが、コートを脱いで手持ちにしても、誰かにぶつかるという心配がまったくなかった。
つまり、歩いていて気持ちいいのだ。
宇都宮の大通りの歩道は。
ほんとにいい街だし、快晴だし、最高だと思った。
20分ほど歩いて、いよいよLRTの発駅のJR宇都宮駅の東口についた。
まだ、宇都宮LRTは一度試運転したと聞いているが、低床式のLRTは来年8月営業運転開始予定なのでまだない。
ただ、軌道や停車場は完成していて、あとは走るだけくらいかと素人目には思えた。
LRTに興味があったのは、子供のころ「都電」によく乗っていたからだ。
都電は実に便利だった。
地下鉄のように階段を下へ降りる必要もなく、路線が充実していて、10分ほど待てば来たので、私たち子どもでもよく都電を利用していた。
家族で、都電で近くの盛り場に行って夕飯をいただき、帰りに喫茶店でいただいたクリームソーダのおいしかったことは今でもいい思い出だ。
また、都電で盛り場にある書店やちょっと遠くの病院へもよくでかけたものだ。
その便利な都電がモータリゼーションによって自家用車やトラックに追いやられ、都内からほぼなくなってしまった。
私たちは、元気で若かったから地下鉄へ乗るために階段を上り下りすることができたが、それが出来ない人たちは混雑して揺れの大きい、しかも渋滞して時間の見通せないバスに、身体に応える重い荷物を持って利用するしかなかったと思う。
その人たちも、都電のように自家用車やトラックによって隅へ追いやられてしまったのではないのか?
政治が配慮することも、我々が配慮することもなく。
その「都電」がより便利な「LRT」になって、宇都宮で復活する。
それがうれしくて、興味があって宇都宮に来たのだ。
JR宇都宮駅から、ホンダさんのある芳賀町までLRTは延びるが、時間がないのでLRTに沿って宇都宮大学を目指すことにした。
写真を見ても分かる通り、宇都宮は歩道も車道も広い。
LRTが上り下りの2線をとっても車道には十分な広さがあり、これなら東京の都電のように隅へ追いやられることはなさそうだ。
(東京の場合、道路を拡幅しても自動車が多すぎて、つまり人口が地方からの集中で急増して多すぎて、都電と自動車が共存できなかったのだ)
しかも、スロープで停車場までの段差がない。
停車場は信号機のある所に設置されているので、歩行者や車いす、シルバーカーの利用者が安全にLRTに乗車できるだろう。
下の写真をよく見ると下の方に交差点の横断歩道があるのがご覧いただけると思う。
宇都宮LRTは、乗車する歩行者の安全に配慮しているのだ。
宇都宮の町の歩道を歩くことはとても快適であることは十分わかったが、LRTに乗車してこの街を快走することはもっと快適だろう。
そう感じるだろうと思うのは、LRTがある宇都宮の街に、都電や足腰の弱い利用者を隅においやった人口が急増した東京のような、ゆとりのない気持ちをほとんど感じないからだろう。
LRTに誰でも受け入れるというやさしさが、宇都宮の街とともに感じられるのだ。
私はLRTが開通して、それに乗って、宇都宮の街を快走することが、心から楽しみになった。
しかし、その時、うれしさとは反対に、宇都宮での滞在時間があと1時間少ししかないことに気づいた。
当初計画した宇都宮大学までは無理かもしれないと思ったが、せっかくなので強行することにした。
多分、大学の前からJR宇都宮駅までバスがあるだろうと考えたからだ。
宇都宮大学はLRTの路線からは15分ほどは離れていただろうか。
ようやく到着して大学前のバス停の時刻表を見て愕然とした。
13時台のバスが1本もない。
このまま14時台のバスを待っていたのでは、14時20分発の東武宇都宮駅発の電車に間に合わない。
帰宅が遅れる。
泣きたかったが、JR宇都宮駅まで歩くほかない。
グーグルマップにナビさせて、必死で片手にスマホを持ちながら宇都宮の裏道を歩いた。
タクシーも探したが、お客が乗車中でつかまらなかった。
LRTが完成していれば、15分ほど歩いて、LRTのある通りまで出れば、10分おきに走る予定のLRTに乗って楽々JR宇都宮駅まで行けるのにと、完成した暁のことを思っていた。
JR宇都宮駅に出たかったのは、お土産の目星を駅ビルでつけておいたからだ。
急いで歩いていたので、途中おもしろい歩道橋を上って渡ろうとしたら、足がつりそうになって、少し休み、そのあとゆっくりとした歩行にせざるをえなかった。
時間がないのに。
こんなことは、LRTが完成すれば、笑い話になるだろう。
ようやくJR宇都宮駅について、駅ビルでお土産を探していたら、店員の女の子が、
「リュックのファスナーがあいていますよ」
と優しく教えてくれた。
急いでいたので、全然気づかなかった。
「どうもありがとう」
とは言ったものの、(宇都宮餃子が美味しすぎてランチの時間が長くなり、それが原因で急ぐことになってリュックのファスナーをしっかり閉めなかったとは言い訳出来ない)気恥ずかしさで、目を見て挨拶も出来なかった。
(笑)
しかし、宇都宮の人のやさしさを心から感じた。
街が優しいから、人も優しい。
人が優しいから、街も優しくなる。
LRTができる宇都宮の、人と街がそのことを如実に物語っているような気がした。
女の子の店員のおかげで、無事お土産を買うこともでき、落とし物をすることもなく、帰りの東武宇都宮駅14:20初の電車になんとか乗ることが出来た。
東武の普通列車内からは遠く、夕日に染まる紅葉がまぶしい栃木の山々と真っ白な新雪に輝く日光連山が続いているのを眺めていた。
LRT完成後に是非、またやさしい宇都宮の街を訪れたいと思いつつ。