冬ぬくし
硬券「こん」と
月崎駅
ふゆぬくし hu yu nu ku shi
こうけん「こん」と ko u ke n "ko n"to
つきざきえき tsu ki za ki e ki
昨年末、友人と小湊鉄道の月崎駅を訪れた。
その折、月崎駅の入場券を買い求めた。
入場券は「硬券」である。
今は、ほとんどスイカやパスモといった形のない電子乗車券になってしまった。
券売機で切符も買うことが出来るが、薄い紙の切符である。
写真のような厚みのあるボール紙を小さく裁断したいわゆる「硬券」は、私の子供の頃はとてもポピュラーであった。
出札口で、駅員さんにどこどこまでと言って買い求めると、「硬券」に日付刻印機で、日付を印刷してお釣りと一緒に渡してくれた。
日付は、昔のように刻印機でなくスタンプである。
昔は、駅構内に入るとき、改札ばさみで硬券の一部が切り取られた。
冒頭の句の「こん」という音は、実はこの日付刻印機の音にも似ているが、実はそうではない。
この「こん」という音は、実は月崎駅の切符の委託販売をしている売店で、おばちゃんが硬券箱から、硬券を引き抜くときに出ている音なのである。
店内はおばちゃんと私だけなので、とても静かである。
なので、余計「硬券箱」から硬券を引き抜くときの音が「こん、こん、こん」と店内に響く。
仕組みは、何十枚もの硬券を上から重りで押していて、出口からは硬券が一枚ずつ出るので全体の重みが出口の切符にかかり、金属の出口とあたって、一つの楽器のように硬券が「こん」となるとのこと。
「こん」となるためには、硬券が滑らかに硬券箱を滑り落ちなければならない。
そのためには、硬券箱の加工の精度とともに、何十枚もの硬券切符の加工の精度が良くなくてはうまく滑り落ちない。
しかし、おばちゃんが硬券を引く抜く度に「こん」「こん」とストラディバリウスにも勝ると劣らないいい音が店内に響く。
まさに、音楽である。
硬券が「こん」「こん」「こん」と。
この素晴らしい音だけのために、月崎駅を訪れても十分に価値がある。
それほど、いい音である。
人がつくる音はこれほどにも、いい音になるのだと驚いた。
スマフォや最近ではTVでも電子音が頻繁に聴かれるような環境にいると、月崎駅の委託売店の静かな環境で聴く、硬券の「こん」という音は、人が作り出す無二の素晴らしい音楽である。
人が作り出す音は、こんなにも温もりがあるいい音なのかと、再発見した。
^_^
世界中の皆さん、是非月崎駅の委託の売店で、硬券の「こん」「こん」という和の国の人が作り出す、素晴らしい音をご鑑賞ください!
^_^
ちなみに月崎駅は「チバニアン」の最寄駅でもあります。
こちらもご鑑賞ください!
成田空港からも、比較的近いですよ!