秋の田の
警報機ほら
気車迎ふ
あきのたの a ki no ta no
けいほうきほら ke i ho u ki ho ra
きしゃむかう ki sha mu ka u
動画の通りなので、説明は不要と思うが、念のため、補足する。
「汽車」と思われた読者の方もおられると思うが、ここでは気車。
汽車は蒸気機関車で、気車はディーゼルカーのこと。
正確には気動車。
気車は、小湊鉄道のキハ204である。
この可愛い2両編成のディーゼルカーを、踏み切りの警報機が迎える。
その警報機の可愛いらしい音と言ったらない。
最近の警報機は、電子音に切り替わっているのに、この踏切の警報機は、鐘を物理的に叩いて出している。
音が優しい。
音が柔らかい。
音が高音まで、シャープ。
ノイズまで綺麗。
まるで、音楽を聴いているようだ。
こんな、柔和な優しい音楽のような警報機の鐘の音に、2両編成のディーゼルカーが迎えられている!
ディーゼルカーがうらやましくなるほどだ。
(⌒-⌒; )
「迎ふ」という言葉は、最初「迎え」と決めたが、ディーゼルカーと警報機の懐かしい感じを出すために、「迎ふ」と旧仮名遣いにした。
文語的な表現をして、動画を見なくても懐かしさが分かるようにした。
成功したかどうか、読者の判断はいかがでしょうか?
この句の最も心をくだいたのは、「ほら」である。
「ほら」は、最初「鳴り」だった。
だが、これでは「警報機」と「鳴り」で音がかぶってしまう。
警報機と言っているのだから、わざわざ鳴りは必要ない。
いろいろ考えた末に「ほら」にした。
日本語では、「ほら」は優しい呼びかけに使う。
ほら、そうでしょう。
ほらね!
のように。
美しい、いい言葉だ。
ここでは、優しい鳴り方をする警報機について、親が子どもに呼びかけるように、
「ほらキハ204が来たでしょう。」
「まるで警報機が優しく鳴って、ディーゼルカーを優しく迎えているようでしょう!」
という意味で「ほら」と表現した。
実際、「親」は尊敬する友人であった。
友人がこの踏切のこの警報機を案内してくれなかったら、この句は出来なかった。
感謝している。
本当にこの警報機の音はいい音で、優しい。
どこかで、聴いたことがあるなと考えて、分かった!
宇多田ヒカルさんの「人魚」だ。
お手持ちの方は、聴き比べてほしい。
本当に優しさがそっくりだ。
そう、宇多田ヒカルさんが、アルバムFantomeの「人魚」の最後で「ほら、ほら」と繰り返している!
あまりにいいフレーズで頭に記憶されていて、その優しい言葉「ほら」が、踏切の警報機の音を聴いて思い出された。
最後に、この踏切は、千葉県にある小湊鉄道の光風台駅から、少し上総中野よりのところにある。
しかし、冒頭の動画のように線路に沿った道路と、鉄道の敷地の間に余裕がない。
現地で撮影されたり、警報器の音を聞かれたりする時は、車の走行の妨害やあなた自身に危険が及ばないよう、十分に注意してご鑑賞ください。