「君の名は。」
記憶のピース
入れ替える
きみのなは ki mi no na wa
きおくのぴいす ki o ku no pi- su
いれかえる o re ka e ru
「君の名は。」とはもちろん大ヒットしているアニメのタイトルである。
大ヒットとしているので、何かあるのだろうと言うことで友達を誘って観た。
その友達が、最後にこう言った。
「今日はいい日だった」
私もそう思った。
まだ見ていない方には、ぜひ見ていただきたい。
また、和の国を訪れていただいた方にもぜひ見ていただきたい。
ぜひ見ていただきたい理由を、少し長くなるけれど書いていく。
長くなるのでまず結論から言う。
アニメ「君の名は。」は、あなたの記憶のピースにあるアニメ、映画、そしてもっと言えば映像と言う「記憶のピース」を丸ごと入れ替えてしまう。
まず「記憶のピース」について説明する。
実は、最初にあげた「「君の名は。」記憶のピース入れ替える」の句は、変更後の句である。
最初は、
「君の名は。」
リアルを超えて
世界観(み)る
きみのなは ki mi no na wa
りあるをこえて ri a ru o ko e te
せかいみる se ka i mi ru
であった。
「君の名は。」は人物と背景を映像化した普通の映画よりも、リアルである。
それは、アニメ「君の名は。」が、脳が見た通りの作法で映像を「脳が実際見るように」絵にして描いているからである。
具体的には、人間が人物を見た場合、脳の映像は、人物など焦点以外の周囲がボケている。
それは、1つにはピントが人物にしか合わないことがある。
これはカメラと同じである。
しかし、決定的に違うのはカメラの視点はいつも同一方向に固定されている。
これに対して、人間の目(視線)はいつも動きながら、周囲全体を認識していることである。
例えて言うと、人間の目は望遠鏡で広い宇宙を見ているようなものである。
だから、望遠鏡の「視野」は極めてよく見えるが、周りはほとんど見えていない。
では、全体を認識するのはどうしているかと言うと、「記憶」である。
つまり、人間の世界に対する認識は、一つ一つを細かく見て、それを記憶でつなぎ合わせていると言える。
アニメ「君の名は。」の映像の作り方は、この人間の目と脳の世界に対する認識(さっきは作法といったが)と全く同じ方法である。
「認識」と言ったが、実は脳の作り出した記憶による映像のつなぎ合わせである。
だから、例えば中央総武線のドアが極めてリアルに映像化されている。
そして、中央総武線の乗り換え駅である代々木駅のこれまたは極めてリアルな映像。
それら一つ一つを丹念につなぎ合わせながら、観客の脳の中にひとつのスーパーリアルな世界を作り出している。
ひとつひとつがリアルなので、脳が作り出した全体としての映像あるいは認識も、極めてリアルなのである。
「スーパーリアル」と言っていいだろう。
だから、監督の新海誠さんのメッセージが、極めてよく理解できる。
例えて言うと、新海誠さんは一つ一つのリアルな映像を紡ぎ合わせて、絢爛豪華な着物にしている。
新海誠さんは、観客の記憶力を信頼しているのである。
観客の記憶力を信頼して、人間の目と脳が世界を認識していると同じ作法で、新海誠さんの世界を観客に理解してもらうことに成功したのである。
もし、観客の「記憶力」が信頼できないとすればどうなるか?
脳が作り出した全体としてのスーパーリアルな映像または世界を理解してもらえないのである。
観客が一つ一つのスーパーリアルな映像を、つなぎ合わすことができないからである。
われわれは、一つ一つのスーパーリアルな映像を記憶を頼りにしてつなぎ合わせて、1つの超スーパーリアルな映像または世界として認識しているのである。
横道にそれるが、認知症の方は記憶を頼りにして一つ一つの映像を組み合わせることができないため、世界(映像)を認識することが非常に難しいと考えられる。
世界は記憶のピースでできているのである。
大きいピースもあれば、小さいピースもある。
大きな大陸もあれば、小さな島もある。
それと同じである。
それらひとつひとつをつなぎ合わせているのが「記憶」である。
だから、記憶のピースを変えると世界も変わる。
「君の名は。」は、我々の持っていた、アニメ、映画、映像と言う大きな記憶についてのピースを丸ごと変えてしまったと言えるだろう。
「君の名は。」を見ようと友人を誘った時、
このアニメは歴史に残るから見ようと誘った。
しかし、今はこういう。
「このアニメ(「君の名は。」)は、映像と言うものに対するわれわれの記憶のピースそのものを変えてしまう!」
「是非見ようと!」
あなたも、和の国にいらして、新海誠さんのリアルな映像を紡いで創り出した「スーパーリアルな美しい和の世界」を体験してみませんか?
和の国にいらして、現実の観光地だけ見て、「君の名は。」をご覧にならないなんて、もったいなさすぎます!
あなたの「記憶のピースが丸ごと入れ替わる体験」をみすみす見逃す逃すなんて!
補足
人間の目の動きは、アイカメラを使うとよく分かる。
どうも、人間の視線の動きを見ると、人間はディティールに関心があるようだ。
細かいところに関心がある。
この特性は、獲物を発見したり、ライオンなどの肉食獣に捕食されてしまう危険から身体を守ったりする能力として獲得され、その能力を獲得した個体のみ生き残ることができた。
そして、人間の身体に組み込まれて、DNAとして伝えられた能力だと考えられる。
その能力をフルに活かして、絵作りをしたのが新海誠監督とそのチームだし、その能力、観客の能力をフルに活用して、「超リアルな美しくも愛(いと)おしい和の国」を観客の脳内につくりだすのに成功したのが、新海誠監督と言えるだろう。
和の国にいらして、「君の名は。」をご覧になって、あなたの獲得した素晴らしい能力を実感してみませんか?
そして、美しくて愛おしい和の国を「体験」してみませんか?