母とは、離れて暮らしている。
その母といろいろ話をする。
しかし、年老いてきていることもあり、なかなか話が伝わらない。
「梅雨入りしたの？」
と母。
「そうだよ。雨がたくさん降ってきているでしょう」
と私。
「◯◯ちゃん(私の名前)の家はどっちの方角？」
と母。
「あっちの方角だよ」
と私。
会話の内容は他愛のないことばかり。
でも、同じ時間と空間を少しでも、一緒に過ごせることに二人とも感謝している。
私も母も。
その母が、
「ここは、どこ？」
と地名を聞く。
私が、
「◯◯だよ」
と言っても、
「んんー？？」
と言って解らない様子。
困った私が、iPod touchのアプリ「iテキスト」(注)で、漢字変換して、
「◯◯」
と大きくして見せた。
それでも、
「んんー？？」
と言う。
発音の最後の1音が、伝わらない。
そうか？
窮地に追い込まれた私は、アプリ「iテキスト」で、ひらがなで
「◯◯◯」と画面に大きく書いて、母に見せた。
母は、ニッコリ。
伝わらなかった、1音がiPod touchとiテキストのお陰で、母に伝えることが出来た。
伝わらないと言って、いつでも投げ出すことは出来た。
でも、何とかして母に伝えたいという私の気持ちと、わかりたいと言う母の「んんー？？」という気持ちが、咄嗟にこうすれば伝わるという、妙案を私に考えつかせた。
それが、出来たのは、日本語の「かな」が聞き分けずらい話言葉の「音」を、「文字」つまり「映像」として表現出来たからである。
言い換えれば、「聴覚」を「視覚」に変換して伝えることが出来たからである。
そして、iPod touchとアプリiテキストがあったからである。
この２つが、私と母の心を繋げた。
そして、母の笑顔と安心に繋がった。
(注)
iテキストについては、このブログで前にも書いたが、とても重宝する。
それは、文字の大きさを、自由に変えられることである。
最大500パーセントまで拡大できるので、視力が弱くなっても眼鏡なしで判読可能である。
iPod touchで、500パーセントの大きさは、縦長の画面で、横にひらがな3文字分の大きさである。
ちなみに、iPod touchの画面の横は、約5cm。
ひらがな1文字分の縦横は、1cm四方の大きさにもなる。
この便利な機能が、母と私の心を繋いだ。