〇数週間ぶりに休みをとれてもまだ気持ちが晴れず鬱の感覚が抜けないまま、台風接近の雨の中、出かける。
(去年の7月下旬も豪雨の中出かけたような…)
福岡市内は午後少し雨が弱くなったりもしたが、夕方になると西の方からレーダーの赤いやつが東へ移動しつつ近づきつつある、そんな時に:
「VOICARIONⅣ 博多座声歌舞伎~信長の犬~」(博多座、7/20 夜の部18:00~)
脚本・演出:藤沢文翁 音楽:村中俊之 「敦盛」監修:塩津圭介
cast:石田彰、井上和彦、鈴村健一、諏訪部順一、関智一、朴璐美、保志総一朗(五十音順)
博多座前、今週の土日はこの朗読劇の特製の幟が立ってる。満員御礼。
昨年はLIVE VIEWINGで見た藤沢朗読劇を、今年は博多座で見て聴くことができた(><)。
去年の9月に同じ博多座で初演された時は、自分はちょうど平安神宮の京都に行ってたと思う。それから一年もたたずに、その再演がここで行われている。
…これだけの強力なベテランの声のメンバーが、こんな近くで、目の前に一堂に会するという。
自分は昨年頃から、なんとなく気になって去年のあれだのそれだの、今年のこれだののLIVE VIEWINGの舞台挨拶や、音声の提供にも、などといった形で、結構接してきた。
そのうち出かけなくとも、文学作品の朗読CDやラジオCMやトーク番組なんかの録音から音声ファイルを作って、音楽と一緒にDAPに入れて空き時間に聞いたりし、声はいつも聴いてて、知りすぎるくらい知っており、声がどこからか流れてくればそれで「おっ」と気がつくような存在になっていく。
というか、石田彰さんや諏訪部順一さんをはじめ、声はほぼ毎週何かで、とかの頻度でしょっちゅう聴くのに、ご尊顔をいつも拝見できるかどうかは人により違いがある。それもテレビ画面でくらいだ。「ほんとに現世に存在するんだわ、こういう声の出る人たちが」とまざまざと思って、胸を熱くした。3DとかAIとかじゃなくて本当に(ってKinKi KidsとかL'Arc~en~Cielを初めて見た時のようなことをまた思ってしまった自分・爆)
生の公演での、プロの声の迫力であるのは、当然さすがにLIVE VIEWINGとは違う。台詞が演奏の音楽とともに舞台の空間に突き抜けて響くのを、体感できるLIVE、というのは演劇の舞台と同感。こ、これがあの朗読劇の本物なのか、という驚愕。舞台上の「!!」な効果だけでなく、それこそ、過去の回想と現在との時制の移動や、老若の声の使い分けから始まり、その間合いのニュアンスとか、各人物のキャラクターの立ち方、台詞の演技の説得力が只事ではない。能も唐突ではなく、全体として「語り物」として連続しているところも、音楽朗読劇なんだなと思う。観客の想像力を十二分に刺激して、目の前に戦争や海原が一気に広がってくるようなイメージの鮮やかさ。舞台全体そのもので圧倒される。
もちろん話の中身にも知らず知らず引き込まれていて、語り方の順序とか、最初の藤沢氏からのガイドの口上から、既に(観客の意識はそっちに誘導されている)仕掛けは始まっているな、と(最後まで聴いていて)気づいた。ラストあたりになって不覚にも涙腺をやられる。NacsのWarriorも陰謀論的だったけど、安土桃山ってそういう想像力を掻き立てられる設定満載の時代なのでしょうな。しかし要所は、心と心の問題で。
終了後の舞台挨拶もじわじわくる。このところLIVE Viewingが多かったので、生で見聴きするのがしばらくぶりの感覚だと、病み上がりかつ衰弱気味の自分には刺激が非常に強いということもあるが、ラジオやトークなどで聴いたことのあるこの声の出演の人たちの独特のキャラ(?)を、こんな近くで生々しく実感できるなんて、めったにない機会である。じっくり見て聴いてしまった。ほんとに「声がいい」人の「稀有」な声の「語り」ってのはあるもので、LIVEで身体の芯にまでびんびん響いてしまう。歌であっても、芝居であっても。
夜半になってまだ雨が続いている福岡市内の同じ空の下に、あの舞台上の皆さんがお泊りなのですな、と思うのは、博多座の帰り道で時々感じることだが、今夜もまたちょっと どきどきする。
たかがアニメや吹替といわれても…何やら気になって聴いていくうちに、ついにこれをじかに見るまでに至ってしまった自分への影響力に気づく。逆に、何か自分はこういうのをただ楽しんでるだけで、このままで本当にいいんだろうか、と思った。
何かこういう風に受けた感動やら手ごたえのようなものを、自分は何かに反映するとか、作り出せたりとかしているのだろうか。ただ享受して楽しんでるだけじゃなくて、何かしないといけないのではないか、という思いに、雨の中で帰り道を歩きながら、なぜかよくわからないが、襲われた。不思議な感覚だ。それだけ凄いものだったのかもしれない。そんな舞台だった。
まだまだ勉強が足りない。自分は何をしたらよいだろうか。
考えてみると、博多座で観劇したのも久しぶりなのだが。何かお土産に、と思って、上演案内ガイド入りのA4ファイルと、「信長の犬」のロゴの入った包装のきんつば本舗を入手。
キイロイトリ「ナマモノハ オハヤメニ」
劇中で降ってきた雪か花の吹雪のようなやつを拾ってみたら、桜の花びらの形だった。道具係さんの仕事の細かさを知る。(20190729)