一日の王さんのブログを(ry
まぁ、この作品は見んとしゃーないでしょう。アカデミー賞筆頭。もう既に金獅子賞は取ってますから。
原作はジェシカブルーダーさんって人のノンフィクション本。
その本を読んで惚れ込んだフランシスマクドーマンドさんがプロデューサーと主演を兼ね製作に至ったんだと。
ストーリーは2008年、リーマンショックの煽りを受け倒産した石膏会社。その従業員が多く住む企業城下町エンパイア。
倒産ともにエンパイアの住人は立ち退きを命ぜられ、ついには町の郵便番号も抹消される。
町に住んでいた中年の女性・ファーンは立ち退きの後、どこかへ移住するのを良しとせず、自分の家を持たない車上生活。
各地の季節労働や日雇いを巡る放浪の人・ノマドとしての生き方を選択する。その一年間を追ったロードムービー。
といった作品になっております。注目作なだけあってやはり面白かったですね。
これがアメリカの実情であったり全てだったりって訳じゃないんでしょうけど、その一端を描いたという点で優れた傑作。
正直そんな共感を呼ぶような作品ではない。でも、これぐらい特徴的な方が見応えがあります。
映画全体に流れる雰囲気がとにかく良い。実際のノマド生活者の人達も出演してるとか。言われるまで全然気付かんかったw
素人とは思えない。てか、演技が上手いとかそういう次元じゃない。マクドーマンドさんも大女優とはいえ、この溶け込み様……。
映画の小道具にマクドーマンドさんの私物が使われていたり、それぞれのエピソードも本人やノマドから話を聞いて脚本を作ったみたいですから。
世界観に一切の違和感がないという。没入感と称される所以ですか。
物語とドキュメンタリーの完全な融合。まさに奇跡の映画。
叙情的かつノスタルジー。
人の寂しさや悲しみを通して、切ないからこそ、人の暖かさが画面を通して伝わってくる。なんか映画見てて初めて味わう感覚でした。
社会問題を描いてるんだけど、リアリティよりは感性に訴えかけてくる。
どこへ行くか目的のある『旅』ではなく、『放浪』を描いてるからこその映画なんでしょうね。
人間ですから死があり病気があり、車にも寿命がある。
いつかは終わりが来る。いや、終わりとも言えない何かの区切りが。
デビットのように家族の元へ戻る人もいればスワンキーのように放浪の果てに亡くなる人もいる。
ファーンもいずれは何かを選ばなきゃいけない。目を逸らしてるわけじゃないんだけど、夫の面影で追うためであったり、放浪を止めれない。衝動とも言えない何か。切り離せない何か。
肯定や共感は全面的にはできないんですけど、それでも胸を突き刺される感覚。今誰しもが持つ疑問に通じてる部分があるんでしょうね。
てか、アメリカってつくづく良い国だな。多様な生き方を尊重してくれる土壌がある。
無論、差別や貧富の差など他の問題があり、ノマドはアメリカの雇用形態の変化が生んだ産物でもある。
誰しもがノマドという生き方を選べるわけではないし覚悟も必要。本人達は必死に生きてるだけで。それでも羨ましいと感じた。
ただ、まあ、平和時なら普通に楽しめる映画なんでしょうが、このコロナ禍で別の意味も孕んできたような。
本当に笑い事じゃ済まされない時代になってきた。
今やアメリカの失業者は一時5000万人を越え、ラスベガスでは25万人が家賃払えなくて立ち退きの危機に瀕してると。
続報がなくてその後どうなったか分からないんだけど、劇中のエンパイアみたく町一つ消えるなんてことも現実味を帯びてきた。
そもそもアメリカのコロナ禍はテント村という。アメリカの貧富の差は極限に達していて日本の派遣村みたいな、ホームレスの居住地が各地で出来とんだと。
そこでの集団感染が始まり。テントで暮らしてるくらいだから病院行く金もない。気付いた時には爆発的に広がってしまった。
ノマドになれない、放浪すらできない人間も世の中にはいる。
そのノマドすら、ロックダウン下で州間の移動はできないだろうし。生活も頓挫するだろう。
多様性を受け入れる土壌も今や変質してきている。
やっぱこれからは人間が想像だにしない時代へ突入するんかね。この映画見た後だとより一層そう感じる。何かしらのメッセージというか皮肉にすら。
こんな時、ファーンはどこにいるんだろうか?
今もエンパイアの町に佇んでいるのか。デビットのように家族と一緒に暮らしているのか。
今、それが知りたい。
パンデミック下の大阪では3000店舗の飲食店が閉店したという。
その人達は店を閉めた後、どこへ向かったんだろう。
知りたい。
では、また。
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