時々雑録

ペース落ちてます。ぼちぼちと更新するので、気が向いたらどうぞ。
いちおう、音声学のことが中心のはず。

話者800人

2010年11月26日 | ことば
先日、NPRのサイトにネアンデルタール人と我々(ホモ・サピエンス)の脳の成長パターンの違いに関する記事があり、興味を持って調べました。その原論文は詳しく読んでいないのですが、それが載っていたCurrent Biologyという雑誌に、「新言語発見!」の記事がありました。出所はNational Geographicだったようで、さかのぼって見てみました。

どうやら、The Linguistというドキュメンタリーにも出てきた言語学者のチーム(※1)をNational Geographicがサポートして、チベットの山深い地域の言語の記録プロジェクトをやっていたと(※2)。そこで、Akaという言語の方言を記録していたら、民族的にはAkaの人たち(写真、日本人みたい...)とちっとも違わないのに、別言語と呼ぶしかないほど音組織も、単語も非常に違うものを話す一部族があった、違う言語とすべきだろう、という報告をした、ということのようです。

※1 Living Tongues Institute for Endangered Languages
※2 Enduring Voices Project

記事は10月5日付で、日本でも(一部で)話題になったのかも。部族名の名前をとってとりあえずKoroと呼ばれているその言語、EthnologueのWeb版にはまだ登録されていませんでした。この言語の話者たちは、近くにいる、人種・文化的に似た人たちと非常に異なる言語を話していながら、自分たちの独自性を強調したがる様子がないのだそうです。同じ言語の変種からスタートしても、「あいつらとは違う」という異化の心理が作用した結果、かなり違うものに発展していく、というしばしば見られるパターンと合致しない、ということでしょう。ともあれ、本当に「新言語」ということになるか、まだ待つ必要がありそうだと思いました。

ところで、Koro語、見つかったとたんに「危機言語」ということになりました。話者が800人程度しかいないし、子供の習得が進んでいないようなのだそうで。いつも思いますが、こういう仕事は人類に対する貢献度が高くてエライなあと(楽しいでしょうけど)。言語の一部、興味を持った現象だけを追いかけている自分の仕事がうしろめたくなります。ただ、私のフィールドの瀬戸内海の言語も、ほとんどみんな消滅寸前。あとちょっと、高齢世代がなくなると無人島という島が多いようです。人口減少率が緩やかな伊吹島だって、もう実質の人口は500を割っているし、まだ小中学校はあるけど、子供たちはおそらく伊吹島のアクセントを習得してはいないでしょう。こっちこそ、緊急に記録・保存の仕事がなされるべきですが。。。

記事のURLは以下
http://news.nationalgeographic.com/news/2010/10/101005-lost-language-india-science/

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