鏡を見ながら化粧する女性を描いた作品ということで、なんとなく鏡に映った姿つまり鏡像と錯覚してしまうのだが、もちろん別の鏡に向かっている姿を脇から見て鏡形のフレームの中に描いた体の実像である。10 点あるが全作かどうかは不明である。
一枚目は眉毛を剃っている図か。古く既婚女性は眉をおとしていた。二枚目は花魁が毛抜きで眉を整えているところ。右端は小娘が嫁にいって眉を剃るとどんなふうになるか紙で隠して見ているところだそうである。小娘とする理由は図が小さくて分りにくいが、挿しているのが金魚の簪て成人なら用いないということ。だからこの絵だけは化粧のまねごと。
左は房楊枝での歯磨き。あとは口紅とお歯黒か。
髪梳き。笄を挿すところ。白粉か頬紅を塗る。最後は合せ鏡で仕上がり点検。
美人と江戸名所をとり合わせたこの作品は、三十二相と同じように「・・・・そう」というサブタイトルが付いてる。
なおこの作品も最後の一点がなかなか見つからず、つい最近国外のサイトで見つけて揃ったばかりで、全作纏めて見られるのは
数少ないと自惚れております。
手がありそう-吉原 ・ しんきそう-愛宕山 ・ 面白そう-隅田川
高輪-うわきそう ・ 不忍池弁天-しずかそう ・ 両国橋-気がかるそう
金龍山浅草寺-愛想がよさそう ・ 佃新地-おとなしそう ・ 深川八幡-てごわそう
上野寛永寺-うれしそう ・ 品川洲崎-おてんばそう ・ 芝神明宮-苔 ? がなさそう
あたたまりそう ・ 舟が当りそう ・ 放してやりたそう
とくがありそう ・ 帰しともなさそう ・ 気がせきそう
早く見たそう ・ 飾ってみたそう ・ あとができそう
よんでみたそう ・ ねむたそう ・ ?
歌川国芳の弟子の月岡芳年に対して、歌川国貞の弟子に豊原国周がいて、「三十二相」も手掛けている。国周は「相」ではなく「想」の字だが内容は変わらない。ただ国周はなぜかタイトルより一点多く実際は三十三点ある。
全部揃っているが一部小さい画像拡大のため鮮明さも劣りサブタイトルも不明なものがある。
手がありそう ・ 夢が見たそう ・ 咄がききたそう
写したそう ・ 雲がかかりそう ・ おかみさんと言われたそう
相談が整いそう ・ つもりそう ・ ?
思い切りがよさそう ・ 目が醒めそう ・ 風がほしそう
中世ヨーロッパ[英・仏・独・伊]の王侯貴族・騎士などの姿を52枚の札に描いたトランプがあって、そのうち「エース・7・10・クィーン」は女性になっている。札の順位と女性の身分とは関係ないようだし、具体的な名前まで記されているのは僅かで ほかは「フランスの女王」とか「イギリスの貴族の女性」というような普通名詞で右横に記されている。
そんなわけで16人を同列に扱って並べた次第である。