風に吹かれて
今年最後の桜に会うために
出かけた
花びらの道を横切り
花びらの川を渡り
山道は もうすっかり
菫と山吹のトンネル
見上げる空を
真っ二つにしてゆく飛行機雲が
包帯みたいに
するすると解けてゆくその時まで
廃屋の傍らに寝転べば
身体も こころのあちこちも
傷だらけ 痛みだらけ
背後の森の奥からは
光る眼のなにかが
じっとこっちを見ている
それを見上げるぼくの顔に
ぱらぱらと落ちてくるのは
杉の花粉だろうか
それとも
過去からの漂流物の残骸だろうか
梢を風が吹きすぎていった後からは
ぎしぎしと
ただ一本だけ揺れ止まない
杉の木とぼく
あらゆる痛みには
もう慣れっこだけど
痛みの原点は いよいよ
この空の青よりも深く
その廃屋の窓よりも歪んだ拘束衣
遠く鳴いているのは
ぼくの喪神を悼む
名も知らぬ春の小鳥
あたりは もうすっかり
賢治が愛した
シロツメクサの草原の夕の輝き
今年最後の桜に会うために
出かけた
花びらの道を横切り
花びらの川を渡り
山道は もうすっかり
菫と山吹のトンネル
見上げる空を
真っ二つにしてゆく飛行機雲が
包帯みたいに
するすると解けてゆくその時まで
廃屋の傍らに寝転べば
身体も こころのあちこちも
傷だらけ 痛みだらけ
背後の森の奥からは
光る眼のなにかが
じっとこっちを見ている
それを見上げるぼくの顔に
ぱらぱらと落ちてくるのは
杉の花粉だろうか
それとも
過去からの漂流物の残骸だろうか
梢を風が吹きすぎていった後からは
ぎしぎしと
ただ一本だけ揺れ止まない
杉の木とぼく
あらゆる痛みには
もう慣れっこだけど
痛みの原点は いよいよ
この空の青よりも深く
その廃屋の窓よりも歪んだ拘束衣
遠く鳴いているのは
ぼくの喪神を悼む
名も知らぬ春の小鳥
あたりは もうすっかり
賢治が愛した
シロツメクサの草原の夕の輝き