詩人PIKKIのひとこと日記&詩

すっかりブログを放任中だった。
詩と辛らつ日記を・・

詩  まるでこの列車は

2020年03月06日 | 犯罪
まるでこの列車は
地獄行きの列車かと
ふっと目覚める真昼の車窓

ガタンと揺れるたびに
時給千円の十数時間の仕事で
くたくたに疲れ切った身体が
座席から放り出されそうになる

快速や特急を待っている
列車のドアからは
腋臭のような都会の熱風

各駅停車のガラガラ列車に
どこからか流れてくるレゲエと
高校生カップルのひそひそ声

まるでこの列車は
地獄から生還の列車だなと見上げたら
はるかにとおい真昼の半月

詩 ぼくらは奴隷や家畜とは違う存在

2020年03月06日 | 
時代に背を向けている人よ
あるいは時代に真剣で向き合あおうとしている人よ
いま時代は急激に変わろうとしている

ぼくらにできることはわずかだが
逃げることなく向き合いたい
現実に目をつぶり
逃げ出す卑怯者にはなりたくない

時代はこんなにも変わってゆく
苦しみ悩む人間が増えゆく時代にこそ
私利私欲ではなく
社会貢献のために生きていたい

私利私欲などは永遠の退却だ
自然界のどの生物が私利私欲だけを考えるだろうか
ただ生き延びることだけを
あるがままに生きたいと願うだけ

時代という大きな大河に
いつまでも怯んでいてはいけない
たった一度の人生を
そんなつまらない思いで生きてはならない
自分のこころを殺して生きていてはいけない

僕が住んでる町は
人口が三万のなんの変哲もない町だけど
山が迫った四季の自然が美しい町だ
毎年毎年この町の住民と同じ人々が
自殺で亡くなってゆく

政治は税金の再分配のことで
いつの時代でもいつの社会でも
弱肉強食の市場原理のために
経済格差や差別が増すばかりの弊害を
修正するためのものだ

ぼくらは奴隷や家畜とは違う存在だ
誰もが税金を収める納税者であり
その未来がどうなるかを決める税金の使い道に
物申すべき義務と責任がある
歴史とはそのための智恵を得るためのもので
変るべきもの 変わろうとしているものだ

民主的社会主義は米国の未来になるか? [INTERNATIONAL]

2020年03月06日 | 犯罪
民主的社会主義は米国の未来になるか?
[INTERNATIONAL]

カン・ドンジン(チャムセサン企画委員) 2020.03.03 09:44
[出処:バーニー・サンダースFaceBookページ]

昨年、AP通信は2020年に行われる米国大統領選挙が 「人種主義者 vs 社会主義者」というフレーム対決に進むと報道した。 これは、トランプ大統領が民主党の有色人種の女性下院議員4人に 人種差別的な攻撃を浴びせたことを契機として、 政権奪還を狙う民主党が彼を「人種差別主義者(racist)」に追い立てて、 またトランプ大統領が民主党の有色人種の女性議員を 「社会主義者(socialist)」と逆攻勢した状況を描写したものだ。 トランプ大統領は昨年、 「われわれは社会主義の悪夢ではなくアメリカンドリームを信じる」、 「米国が絶対に社会主義国家にならないという決意をまた約束する」 という反社会主義的な言明を繰り返した。

それでも大統領選挙を前にした米国では、2016年に続いて 「民主的社会主義」の風が激しく吹いている。 2016年の米国大統領選挙での民主党候補競選で 「民主的社会主義」を掲げてヒラリー・クリントン候補に惜しくも敗れた バーニー・サンダースが2020年に再立候補して、 現在(2020年2月末現在)まで得票率と全国支持率1位を記録している。 米国の民主党大統領候補選出全党大会は、 今年の7月13日から16日まで4日間予定だ。 50の州で開かれる民主党競選は、 2月3日のアイオワ州から始まり、 2月25日現在、ニューハンプシャー、ネバタなど3州のコーカスが終わった。

その結果、サンダースはアイオワ州で「白人オバマ」と呼ばれる ピート・ブティジェッジ(26.2%)に押されて残念ながら2位(26.1%)になったが、 ニューハンプシャーとネバタではそれぞれ25.9%、46.8%の支持率で1位になった。 3つの州の競選の結果、代議員確保数でもサンダースは45人で、 競争相手のピート・ブティジェッジ(25人)と 元副大統領のジョー・バイデン(15人)、 エリザベス・ウォーレン(8人)をはるかに超えている。 こうした傾向に力づけられて、 サンダースは全国世論調査で支持率1位を記録し、 トランプとの正面対決を想定した世論調査でも、 民主党の候補としては唯一トランプに勝つ候補として議論された。

これに反して民主党の主流(中道主義)は、ジョー・バイデン元副大統領、 ピート・ブティジェッジ、 億万長者のマイケル・ブルームバーグ元ニューヨーク市長の間で筋道を捉えられずにいる。 それと共にサンダース大勢論に汚点をつけようとする動きを続けている。 中道主義者のオバマ前大統領は昨年11月、 2020年の米国大統領選挙民主党競選について 「米国はまだ改善を望むだろう、革命的な変化を望む国ではない」 と言及し、 サンダースやウォレンが出した進歩的な政策に対して批判的な見解を表出した。 ニューヨークタイムズは最近、ロシアが米国大統領選挙で トランプ大統領とバーニー・サンダースを支援する準備をしているという記事を送りだした。 二人の候補が米国の軍事力の海外膨張に反対する共通点を持っているということが背景だ。 これは民主党の競争候補が「サンダース=共産主義者」という理念論争攻勢を展開する根拠を提供したという議論を呼んだ。 民主党の主流はサンダースが打ち出す「民主的社会主義」が 中道層の離反を招くとし、批判的な立場を固守している。

一方、サンダース大勢論に力を貸したのは若い青年層と有色人種だった。 ネバタ州でサンダースは47%に近い支持率を得て、 2位(21%)のジョー・バイデンを大差で振り切った。 ここでサンダースはヒスパニック有権者中51%の支持を確保した。 17〜29歳の有権者の65%を、30〜44歳の有権者の50%の支持を獲得した。 男性(38%)と女性(30%)、大卒(27%)と大卒未満(40%)有権者集団でも、 2位と二桁に格差を広げ、支持基盤の多様性を見せた。 またサンダースは労働組合の上層指導部ではなく、 下からの労働者の自発的な支持の流れを基盤にしている。

[出処:バーニー・サンダースFaceBookページ]

こうしたサンダース大勢論は、予想されたことでもある。 まずサンダースが打ち出している民主的社会主義に対する支持が高い。 サンダースはグリーンニューディール、 全国民のための医療保険、大学無償登録金、労組する権利保障などを 主要公約として提出している。 そしてこれを「民主的社会主義」と通称する。 世論調査機関ギャラップによれば、 米国ではミレニアル世代以後の若年層の社会主義に対する肯定的評価は 2010年以後、50%に近づいてきた。 これは以前の世代であるX-世代とベビーブーマー世代の30%台と比較すると非常に高い数値だ。 特に民主党支持者のミレニアル世代の中で社会主義を肯定する割合は70%をはるかに上回る。

社会主義に対する肯定的評価はサンダースに対する支持と関連性が高い。 まず米国の若い世代間で「社会主義」が友好的に広がった背景は、 2008年の金融危機で表出された資本主義経済不平等の深化と所得減少、 オバマ政府に対する失望が強い。 こうした失望と期待はサンダースの民主的社会主義の公約支持に連結する。

二番目はサンダースが下からの「草の根大衆」の自発的キャンペーンと運動を基盤にしている点だ。 「金とメディア選挙」と称される米国大統領選挙では、 選挙資金の規模は当落を決定する重要な要素だ。 したがって候補たちは選挙資金を集めることに全力を尽くす。 民主党の大統領選挙競選で他の候補は自分が億万長者であることを打ち出したり、 ウォール街や大企業のCEOなどの経歴に頼っているが、 サンダースは自発的な支持者の小額寄付金を組織した。 選挙資金の99%を自分のポケットから払うマイケル・ブルームバーグを除けば、 2019年末にサンダースは民主党候補のうち大統領選挙戦資金募金額規模で1位を記録した。 このうち60%ほどは200ドル未満の小額寄付金だった。 これはサンダース支持層の厚さと結集を示す指標であった。

三つ目はサンダースのキャンペーンと公約が下からの社会運動に全的に基盤している点だ。 代表的な公約のグリーンニューディールは、Sunrise Movementと気候正義運動などの気候危機に対応する草の根運動と連係を結んでいる。 また「連邦最低賃金15ドル提供」は米国全域で ファストフード労働者とサービス労働者が展開した 「15ドル運動」の延長線にある。 「全国民のための医療保険」や「大学無償登録金」等も同じだ。 2017年から拡大し始めた教師のストライキ、 「Black Lives Matter」運動、 堕胎罪廃止運動もまたサンダース突風の強力な基盤だ。

現在のサンダース大勢論の形成は、 △下からの社会運動と大衆の自発的参加、 △「民主的社会主義」政策と公約、 △サンダースという人物が生きてきた経験と履歴などがからんで作られた 「人民による、人民のため、人民の政治」の象徴と呼ばれるに値する。

一方、今年の米国大統領選挙で注目される点は、 サンダースが民主党候補に決定するのか、 そしてトランプとの本戦で大統領に当選するのかだ。 サンダースが民主党候補に決まるには、 急進的で左派的な候補に拒否感が強い民主党主流の流れを克服することがカギだ。 現在のところ、民主党主流の中道主義はブティジェッジ、ジョー・バイデン、 ブルームバーグの間で揺れており、 サンダースに対する曖昧な牽制があるが、 候補の輪郭がほぼ見えてくる3月3日のスーパー・チューズデイが過ぎると サンダースに対する牽制と批判が本格化するだろう。 ここに「ロシア支援説」のようなフェイク・ニュースやデマ拡散などが結びつく可能性が高い。

もしサンダースが民主党候補に選出され、 トランプ大統領との競争が繰り広げられれば、 2020年の米国大統領選挙は「資本主義 vs 社会主義」という対決構図になる可能性が高い。 前述のように、トランプはすでに「資本主義 vs 社会主義」の構図で大統領選挙を行う意図を表明した。 トランプは2008年の経済危機以後、資本主義に対する批判が高まり、 米国の世界経済に対する支配の弱化が明らかになった状況で、 過去の米国資本主義の回復と世界覇権を維持するために 「Great America Again」のスローガンを掲げて当選した。 しかしサンダースは資本主義が生んだ経済的不平等、 生態系破壊、労働者の生活の悪化などを克服するための代案的未来として 「民主的社会主義」を打ち出している。 トランプが米国の覇権に象徴される米国資本主義の「過去と現在」を象徴するとすれば、 サンダースは「民主的社会主義」で米国資本主義の「未来」を象徴すると見られる。 「過去への回帰 vs 未来に向けた前進」というフレームと構図が 2020年に繰り広げられるのか、興味深く見守りたい。

また一つ注目すべき点は、米国の政治の構図で 民主党(自由主義)と共和党(保守主義)以外に 「民主的社会主義」という新しい政治勢力が成長できるのか、 それで二大政党の構図が崩れるのかどうかだ。

サンダースの選挙キャンペーンの組織的背景には 「民主的社会主義者(Democratic Socialist of America、DSA)」がある。 DSAは昨年2年に1回行われる全国代議員大会で、 2020年を経て10万人以上の会員を確保し、 大衆政党として再誕生しようという展望を提示した。 DSAの会員で現在、米国の次世代の政治家として注目されている アレクサンドリア・オカシオ・コルテス(略称AOC)は今年の1月、 マスコミとのインタビューで 「外国ではバイデンと私は同じ党にいるわけではないが、米国では『私たち』」と言及して、 米国民主党の主流勢力との政治的差異を強調した。 経済危機と生態危機、政治危機の中で、 フランスでは2017年に共和党と社会党の二大政党構造が崩れ、 マクロンという新自由主義政治家が執権し、その後、極右勢力が浮上している。 果たして米国では資本主義的な二大政党の構図が弱まり 「民主的社会主義」という新しい未来が開かれるのか見守りたい。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可( 仮訳 )に従います。

東京高検検事長黒川弘務氏の違法な任期延長に抗議する法律家団体共同声明

2020年03月06日 | 犯罪
東京高検検事長黒川弘務氏の違法な任期延長に抗議する法律家団体共同声明

                          2020年3月5日

社会文化法律センター      共同代表理事  宮里 邦雄
自由法曹団               団長  吉田 健一
青年法律家協会弁護士学者合同部会    議長  北村  栄
日本国際法律家協会           会長  大熊 政一
日本反核法律家協会           会長  佐々木猛也
日本民主法律家協会          理事長  右崎 正博
明日の自由を守る若手弁護士の会 共同代表 神保大地、黒澤いつき
秘密保護法対策弁護団  共同代表 海渡雄一、中谷雄二、南典男
共謀罪対策弁護団   共同代表 徳住堅治,海渡雄一,加藤健次,南典男,平岡秀夫,武井由起子

1 はじめに
 2020年1日31日の閣議決定で、2月7日で63歳を迎え検察官を定年退官する予定であった東京高検検事長の黒川弘務氏の任期が半年間延長されることになった。認証官である検事長はもちろん、検察官が定年を超えて勤務を続けた前例はない。
 この人事は、黒川氏を、8月14日に65歳で定年退官となる稲田伸夫検事総長の後任に充てる目的といわれている。黒川氏は、かねてから菅官房長官と懇意であり、政権の中枢に腐敗事件の捜査が及ばなくするための人事ではないかとの疑惑が指摘されてきた。
  報道によれば、2016年夏、法務・検察の人事当局は次の次の検事総長候補として林真琴法務省刑事局長を法務事務次官に就ける方針だったが、官邸から黒川 氏を法務事務次官にするよう強く求められ、押し切られた。官邸は1年後にも林氏を事務次官とする人事を潰し、黒川氏を留任させた、とも報じられており(雑 誌「ファクタ」1月号)、今回の事態は、官邸による検察・法務人事への介入の総仕上げといえる。

2 当初の法務大臣の説明
 検察庁法22条は、検事総長は65歳、他の検察官は63歳に達した時に退官すると定めている。
  ところが森雅子法務大臣は1月31日午前の閣議後の会見で、黒川氏について「検察庁の業務遂行上の必要性に基づき、引き続き勤務させることを決定した」と 述べた。その法的な根拠は国家公務員法の81条の3であるとし、「その職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生 ずる」場合に該当するとして、定年を延長したとの説明であった。
 そして森法務大臣は、2月3日の衆議院予算委員会で、国民民主党渡辺周議員の質問に対し、「検察官は,一般職の国家公務員であり,国家公務員法の勤務延長に関する規定が適用され」るという解釈を示した。

3 検察官に国家公務員法の定年・定年延長制度の適用はない-閣議決定は違法
 1947年に制定された 国家公務員法にはもともと定年制度がなく、社会情勢の変化の中で、1981年になって初めて定年制(国家公務員法81条の2)及び定年延長制度(同法81 条の3)が導入された。しかし、同じ1947年に制定された検察庁法は、検察官は63歳に達した時に定年退官することを当初から規定し(検察庁法22 条)、旧裁判所構成法時代には存在した定年延長制度を規定しなかった。
 国家公務員法の定年制度は、「他の法律に別段の定めのある場合を除き」適 用できると定められている(国家公務員法81条の2)。この「別段の定め」の一つが検察庁法22条である。検察官の定年は検察庁法によるのであって、国家 公務員法によるものではない。従って、国家公務員の定年延長制度は、そのまま検察官に適用される関係にはない(検察庁法32条の2参照)。
 何よ りも、国家公務員一般に定年制がまったくなかった時代に、検察官について定年制が設けられたという事実は、検察官の定年制は国家公務員の定年制とまったく 別の趣旨・目的で設けられたことを意味する。検察官の定年制は、検察官が刑事訴訟法上強大な権限を持ち、司法の一翼を担う準司法的地位にあるという、その 職務と責任の特殊性に鑑み、検察官の人事に権力が恣意的に介入することを防ぐ趣旨を含むと解される。従って、検察庁法が制定されてから34年後に定められ た国家公務員一般の定年延長制度が、検察官に適用されることはあり得ない。
 そして、1981年の国家公務員法改正時、政府も検察官について国家 公務員法の定年延長の定めは適用されないとする解釈をとっていたことが、当時の政府答弁、政府文書によって明らかになっている。すなわち、2月10日の国 会審議では、1981年に政府委員(人事院任用局長)が上記解釈の答弁をしていた事実を山尾志桜里議員が指摘し、2月24日には、この1981年の政府答 弁の根拠となる文書(想定問答集)が1981年10月に総理府人事院(当時)によって作成されていたことが、野党共同会派の小西洋之議員の国立公文書館で の調査により判明した。

4 安倍首相の「解釈変更」答弁後における法務大臣・人事院の支離滅裂な対応
 2月10日、上記山尾議員の指摘を受けた森法務大臣は、1981年の人事院の解釈について、そのような解釈は把握していないと答弁した。しかし、2月12日、人事院の松尾恵美子給与局長は、1981年の人事院の解釈につき「現在まで同じ解釈を続けている」と答弁した。
 ところが、翌13日の衆院本会議で安倍首相は、「検察官の勤務(定年)延長に国家公務員法の規定が適用されると解釈することとした」と答弁した。
 この安倍首相の答弁後、法務大臣や人事局長は、これと辻褄を合わせるため、以下のとおりの支離滅裂な対応を繰り返したのである。
  まず、2月19日の衆院予算委員会で、人事院の松尾恵美子給与局長は、「現在」とは1月22日のことだった、「言い間違えた」と答弁した。2月20日に は、森法務大臣は、法務省が法解釈変更の経緯を示した文書について、「部内で必要な決裁を取っている」と答弁したが、同日、上記文書に日付がないことが判 明し、翌21日の予算委理事会で法務省と人事院は、日付を証拠づける文書はないことを明らかにした。ところが、法務省は同日深夜、文書に関し「口頭による 決裁を経た」と突然発表し、森法務大臣の答弁との整合性を取った。同月25日に森法務大臣は記者会見で、「口頭でも正式な決裁だ」と表明し、同月27日の 衆院本会議では法務大臣の虚偽答弁を理由に不信任決議案までが出される事態となった。
 これら一連の政府の対応は、1月31日の黒川検事長の定年 延長についての閣議決定が、法務省や人事院の正規の決裁も経ないまま長年の法解釈を無視し、官邸の独断で行われたものであったことを白日の下に晒しただけ でなく、法務省・人事院が、安倍首相の答弁を取り繕うため支離滅裂な辻褄合わせに狂奔する姿を露呈したものであり、もはや法治主義の崩壊と言うべき事態で ある。
 今からでも、人事院、法務省、内閣法制局、内閣官房の間で、いつどのようなタイムラインで、どのような協議がなされたか、あるいはなされていないのか、国会の場での検討が求められる。

5 検事総長の人格識見こそが検察への政治介入の防波堤である
 検察庁は行政機関であり、国家公務員法 の規定に基づいて、その最高の長である法務大臣は、検察官に対して指揮命令ができる。しかし、検察庁法14条は、法務大臣の検察官への一般的指揮権は認め ているが、具体的事件については、検事総長のみを指揮することができると定めている。
 検察の独立性を守るのは最終的には指揮権発動を受ける可能 性のある検事総長の識見、人物、独立不羈の精神に帰着する。だからこそ、検察組織は検事総長に清廉で権力に阿(おもね)らない人材を配し、政治権力による 検察権に対する不当な介入の防波堤を築こうとしてきた。そして、歴代自民党政権も、検事総長人事は聖域として、前任の検事総長の推薦をそのまま受け容れて きた。これに介入するようなことは厳に慎んできたのである。いま、安倍政権によって、その秩序が壊されようとしている。

6 政府与党、検察庁内からも噴出した異論
 2月15日、中谷元・元防衛大臣は、国政報告会の公の発言 の中で、「(黒川氏が)検事総長になるのではないかと言われております。私が心配するのは、三権分立、特に司法は正義とか中立とか公正とか、そういうもの で成り立っているんですね。行政の長が私的に司法の権限のある人をですね、選んで本当に良いのかなと。一部の私的な感情とかえこひいきとかやってしまう と、本当に行政も動かなくなってしまう。権力の上に立つ者はしっかりと、その使い方を考えていかなくてはならない。」と安倍官邸の人事に苦言を呈した。
  2月19日の検察長官会同において、静岡地検の神村昌通検事正は、検察庁法で定められた「指揮権発動」についての条文を読み上げたうえで、「今回の(定年 延長)ことで政権と検察の関係に疑いの目が持たれている」「国民からの検察に対する信頼が損なわれる」「検察は不偏不党、公平でなければならない。これま でもそうであったはず」「この人事について、検察庁、国民に丁寧な説明をすべき」との趣旨の意見を述べたと伝えられる。現職検事正による覚悟の発言であ る。

7 閣議決定の撤回と黒川検事長の辞職を求める
 このように、検察と司法の危機は白日の下にさらされ、 検察と与党の内部からまで異論が続出する事態となっている。黒川氏が検事総長に任命されても、その職務を全うすることは困難である。この人事が正されなけ れば、検察行政は麻痺状態に陥ることは避けられない。これは、「常に公正誠実に,熱意を持って職務に取り組まなければならない。」、「権限の行使に際し, いかなる誘引や圧力にも左右されないよう,どのような時にも,厳正公平,不偏不党を旨とすべきである。」という「検察の理念」(2011年制定)を心に刻 んで誠実に職務を遂行している検察庁職員に対する冒涜でもあると言わなければならない。
 我々は、司法の一翼を担う弁護士及び学者の集団として、内閣に対して、違法な定年延長を認めた閣議決定の撤回を求める。また、黒川氏に対して、当初の定年のとおり退官すべきものであったとして直ちに辞職することを求める。
  この問題は、日本の司法と民主主義の根本にかかわる重大事である。もし、内閣と黒川氏がこのような穏当な解決に応じないとすれば、我々は、心ある検察官、 与野党の政治家、メディアなどとともに一大国民運動として、検察の独立を含む民主主義を復活させるまで闘いつづける決意を明らかにするものである。