ニューズウィークが、中国とインドで進む、月面探査の目的が、軍事利用と資源開発そして宇宙空間コロニー構築だと解説していた。日本は、Jaxaあたりで細々、基礎研究を行っているようだが、中国やインド更には欧米には足元にも及ばない。もはや、日本は後進国になりつつある!
<次々に挑む月面探査ミッションは軍事利用、資源探査、そして移住計画への布石>
9月7日、インドの無人月面探査機「チャンドラヤーン2号」は現在も月の周回軌道上にあり、今後1年間、月の南極と北極の画像撮影や月面の観測などを続けるが、探索車の、月面軟着陸には失敗しており、成功していれば、アメリカ、ロシア、中国に続く、第4番目の国になるはずであった。
月面科学基地の本気度
中国は、今年1月に無人探査機「嫦娥4号」が付きの裏側に軟着陸に成功している。
嫦娥4号から切り離された探査車「玉兎2号」は、過酷な月の夜を8回乗り越え、あまり知られていない月の裏側の観測を続けている。地球上の7月25日、月面の8日目(月の1日は地球上の約1カ月に相当)、玉兎2号は小さなクレーターでゲル状の見慣れない物質を発見したと報じられた。
今この時代に、月面探査計画が戦略的に重要な意味を持つ理由は何か。アポロ時代の「国旗を立てて足跡を刻む」ミッションと違って、現代の優先課題は、月面の資源探査と長期的な移住計画だ。
3番目の快挙 中国は2013年に玉兎号で月面軟着陸に成功した(写真は実物大模型) ALEX LEEーREUTERS
空間技術研究院(CAST)で嫦娥4号の設計責任者を務めている孫沢洲(スン・ツォーチョウ)は次のように語っている。
「月面に科学研究基地を建設するためには、同じエリアに複数の探査機を着陸させて、複合施設を組み立てなければならない。そのためにはかなりの精度で着陸させる必要がある......嫦娥4号のミッションの課題を解決することによって、今後の月面探査と、ほかの惑星の着陸の基礎を築けるだろう」
中国にとって月面着陸は、さらに大きな目的を達成するための手段である。月面で工業能力を育て、小惑星の鉱物資源開発と、より遠い宇宙空間の探査と開発を実現しようというのだ。
例えば、ロケットの推進に用いる水など月の資源を使って宇宙船を建造・維持する技術によって、発射エネルギーを、地球から打ち上げる場合の22分の1に削減できる。
中国国家航天局(CNSA)は今年1月、嫦娥4号が月面軟着陸に成功した直後に、さらに数回の月面探査ミッションの計画があると発表。2036年までに、月面に恒久的な研究基地を建設すると述べた。
「中国の月面探査機の父」葉培建(イエ・ペイチエン)は2018年に、中国が先進的な月面探査技術の強みを生かして、月面の資源が豊富な土地の権利を主張しなければ、自分たちは今後何十年も後の世代から責められるだろうと指摘している。
人民解放軍の専門部隊
中国は、明確な宇宙戦略と壮大な野望を掲げているだけではない。月面基地の維持に必要な宇宙太陽光発電技術を積極的に開発するなど、月面で恒久的な研究基地を維持する能力があることも証明している。
習近平(シー・チンピン)国家主席は2015年12月、人民解放軍戦略支援部隊を設立した。人民解放軍の陸軍、海軍、空軍、ロケット軍と同列の独立部門で、宇宙戦争やサイバー戦争、電子戦争などを管轄するとみられ、習が宇宙で描く野望を推進することになる。「資源争奪戦」への備えを2018年9月、中国国家航天局のシステム部門責任者だった李国平(リー・クオピン)は、中国は2030年までに月の両極にロボット探査機を送り込むと明言した。南極では太陽風が運んできた水素、炭素、ヘリウム、酸素の同位体構成を分析。北極では常に太陽光の届かないエリアに氷が存在するかどうかを探査する。
ロシアも2030年までに月を植民地化しようともくろんでいる。ロボット探査が成功した暁には、ロシア初の月面基地を月の両極に建設する構えだ。資源探査ミッションも計画中で、2020年代に無人月着陸船ルナ25を月の南極に向けて打ち上げる予定だ。
インドも軍事目的、資源開発で突き進む!
インドと日本は2016年11月、宇宙開発協力に関する覚書に署名。その一環として、日本はインドのチャンドラヤーン3号のミッションに協力を予定している。時期は2022~2024年で、中国・ロシアとほぼ同じだ。インドは、普段は宇宙での軍事力誇示を避けているだが、今年3月にASAT(対衛星攻撃)実験に成功して世界を驚かせた。インドの「シャクティ作戦」では、高度300キロ軌道を周回する自国の人工衛星を弾道弾迎撃ミサイルで撃墜。発射から3分という早業だった。ミサイルはインド国防研究開発機構(DRDO)が開発したものだ。歴史的には宇宙における列強という印象を与えることに慎重なインドが、宇宙計画を利用して「スペースパワー」を誇示しだした。
宇宙軍事分野に詳しいブレント・ザイアニックによれば、スペースパワーとは「宇宙で、もしくは宇宙を通して、国家ができること全て」だ。ASAT実験はインドが宇宙で敵を撃墜する能力を見せつけた。DRDOは2012年にはそうした能力を獲得していながら、これまで公表を控えていた。
インドは重要インフラを中国に脅かされることを危惧し、中国による威圧に対する抑止力として報復能力を見せつけた。DRDOが宇宙開発に関与したのもISROが兵器の実験に加わったのも、これが初めてだった。さらに実験後、インドのナレンドラ・モディ首相はアジット・ドバル国家安全保障担当補佐官に宇宙ドクトリンの立案を指示。政府は6月、宇宙防衛機関(DSA)新設に関する概略をまとめた。
DSAの役目は「宇宙におけるインドの資産を守り、抑止力を持つため、広範なプラットフォームと衛星攻撃兵器を開発する」など、宇宙戦争の際にインドの利益を守る戦略を策定することだ。「宇宙利用の軍事面に関する」研究開発を行う防衛宇宙研究機構(DSRO)も新設される。
2035年までに科学研究基地を建設するための最終ステップだろう。各国に先立ち南極探査に乗り出したチャンドラヤーン2号計画だが、現在の宇宙資源をめぐる国際情勢の中で、インドも月探査計画の方向転換を図っているようだ。いずれにせよ、月の南極は産業目的の探査にとって特に重要なエリアである。
だが、インドの月の資源への注目は今に始まったことではない。チャンドラヤーン1号計画(2008年打ち上げ)について、月面に眠るヘリウム3(将来、原子炉の燃料として使える)を探すためだと述べた。ナイールはインド核開発の中心施設であるムンバイのバーバ原子力研究所で演説し、「ヘリウムの埋蔵量が重要なのは、開発する前に経済的価値を算出できるからでもある」と述べた。
インド原子力委員会のアニル・カコドカル委員長(当時)も、ヘリウム3が核燃料として役立つと主張。地球にもヘリウム3はわずかに存在するが、月のほうが有望だと指摘した。「エネルギーの必要性は日に日に高まっており、地球にある燃料にいつまで依存していられるか。地球外にエネルギー源を見つけなければならない」
航空工学の専門家でもあったA・P・J・アブデル・カラム元大統領は「宇宙探査と人類進歩の未来」と題する2008年の論文で、世界の人口は2050年に90億人に達する見込みで、その人口を養うためには宇宙太陽光発電など宇宙資源に投資する以外に解決策はないと主張している。