先端技術とその周辺

ITなどの先端技術サーベイとそれを支える諸問題について思う事をつづっています。

宇宙物理学最大の謎”解明へ、東芝が干渉激減の望遠鏡フィルター

2020年10月07日 07時59分10秒 | 日記
 
 

 東芝は2020年9月29日、電波の干渉波を1万分の1以下に抑えた電波望遠鏡向け受信機を開発したと発表した(図1)。“宇宙物理学最大の謎”ともいわれるブラック・ホール・ジェット(ブラックホールの噴出ガス)を観測するための切り札になる可能性がある。

日経クロステックによると、『“宇宙物理学最大の謎”解明へ、東芝が干渉激減の望遠鏡フィルター』開発との事。2020年ノーベル物理学賞はブラックホールの形成理論と観測的実証であった。2000年以来、日本人のノーベル賞受賞者は毎年出て、アメリカに次ぐノーベル賞受賞者の多さであった。日経新聞が今年の受賞の可能性ある物理、化学、医学生命の3分野のリストを上げていたが、物理分野を見て聊か愕然とした。というのも、ノーベル物理学賞は自然の法則に関する発見や解明で、リストは多くは応用であったから。

ところが、上述の記事はまさしく自然法則に関するもので、天体物理研究者と組んで、BlackMatterとかBlackEnergy の解明のきっかけを作れれば、ノーベル物理学賞も夢ではないかも。

図1 東芝が開発した電波望遠鏡向け受信機

図1 東芝が開発した電波望遠鏡向け受信機
4つの周波数帯を同時に受信できるマルチバンド特性を備える。外形寸法は150×470×125mmで、質量は15kg。(出所:東芝)

 

 「天体観測において大きな問題となっているのが、スマートフォンなどの電波による干渉だ。対策しなければ(ブラックホールから噴出される)ガスの観測は難しい」。東芝研究開発センター研究主務である河口民雄氏が、現在の電波望遠鏡の課題を説明する。

 電波望遠鏡は天体から届く電波を観測する望遠鏡である。地上に届く微弱な天体の電波をさまざまな周波数帯で観測することで、宇宙で起きている自然現象を解明する。電波望遠鏡を用いた観測では、19年に日米欧などの共同研究グループが史上初めてブラックホールの撮影に成功した。

 今後は世界的なプロジェクトとしてブラック・ホール・ジェットの観測が計画されるが、課題となるのがスマートフォンの普及に伴って深刻化している電波干渉である。ブラック・ホール・ジェットの観測で受信する電波の周波数が、スマートフォンなどの無線システムが使用している周波数帯域と近接しているためだ。

 東芝はこの課題を解決するため、複数の周波数帯の電波を受信できる「マルチ・バンド・フィルター」を搭載した受信機を開発した。この技術を用いることで、これまで観測が難しかった1.4~2.4GHzの周波数帯の電波を高感度で受信できるようになる。例えば、中性水素原子のエネルギー状態が変化することで放射される1.4GHz帯のスペクトル線を観測でき、中性水素原子が含まれるブラック・ホール・ジェットの観測に役立つ(図2)。

図2 ブラックホールのイメージ図

図2 ブラックホールのイメージ図
ブラックホールは強い重力で周囲の物質を吸い込む一方で、プラズマガスであるジェットを噴出している。(出所:国立天文台)

 

 電波望遠鏡のフィルターは、干渉電波の受信を阻止し、必要な電波のみを受信する役割を担う。東芝の開発品は、必要な電波のみ通過させる「帯域通過フィルター」と、特定の干渉波を阻止できる「帯域阻止フィルター」の組み合わせで構成しており、無線周波数帯の干渉波を1万分の1以下に減衰できるという(図3)。

 

図3 干渉波を1万分の1以下に減衰
図3 干渉波を1万分の1以下に減衰
観測に必要な周波数帯の電波のみを受信し、雑音指数を0.5dB以下に抑えた。(出所:東芝)

 

 1.4~2.4GHz帯では天体からの電波に加えて、干渉波となるスマートフォンや衛星電話の電波が飛び交う。干渉波を避けて天体からの電波の周波数帯のみを受信するため、これまでは複数の帯域通過フィルターを用いていた。課題となっていたのが、衛星電話の周波数帯だ。周波数が天体からの電波と重なっているため、帯域通過フィルターだけでは網羅することが難しい。そこで東芝は新たに開発した帯域阻止フィルターを衛星電話の周波数帯に用いることで、干渉波を避けながら4つの周波数帯を同時に受信することに成功した(図4)。

 

図4 マルチ・バンド・フィルターで4帯域をカバー
図4 マルチ・バンド・フィルターで4帯域をカバー
 

開発した受信機は、フィルターを通して受信した電波の劣化を抑えるために超電導回路を搭載した(図5)。一定温度以下に冷却することで電気抵抗をゼロにできる超電導現象を利用し、熱雑音などのノイズを取り除く。

 

図5 高断熱で低損失なケーブルを開発
図5 高断熱で低損失なケーブルを開発
断熱性を高めるためにはケーブルを細く長くすることで熱を伝わりにくくする必要があるが、受信した電波の劣化を抑えるためには太く短くしたほうがよい。東芝は、細く短いケーブルを用いることで低損失かつ断熱性の高い配線を実現した。(出所:東芝)

 

 超電導体を維持するためには冷凍機が必要になるが、従来技術では大型化が避けられなかった。主な要因は超電導回路と外部をつなぐケーブルだ。外気の熱がケーブルを通って流入するため、これまでは冷凍機を大型化することで冷凍能力を高めていた。東芝は従来の銅製の同軸ケーブルに比べて10~50倍の断熱性能を実現した配線技術を開発し、冷凍機を小型化した。開発品の容積は5~15Lで、従来品の「10分の1」(同社)にできたという。

 東芝は19年5月、タイの天文台に設置されている小型の4.5m電波望遠鏡に開発した受信機を試験導入し、スマートフォンの電波干渉があっても高感度の観測が可能であることを実証した。開発を主導する同社の河口氏は、「今後は南アフリカとオーストラリアの砂漠に2000台超の電波望遠鏡を設置する大型プロジェクトであるSKA計画(Square Kilometre Array)などへの展開を目指していきたい」と意気込む。

「帯域通過フィルター」と「帯域阻止フィルター」を組み合わせることで干渉波を阻止しながら電波を受信できる。(出所:東芝)

全固体電池とは?

2020年10月07日 07時29分25秒 | 日記

日経XTechが『Liイオン電池の革新 5分でわかる「全固体電池」』という解説記事を出していた。わかりやすいので引用した。

 

疑問そのⅠ全固体電池って何?                                

正極と負極の間に電解液がなく、一種のセパレーターだけがある電池

 

疑問その2
なぜ電解液をなくせるの?

Liイオン2次電池に代表される「ロッキングチェアー型(シャトルコック型とも呼ぶ)電池」では、電解液と電極の間での化学反応(酸化還元反応)を伴わないため、原理上は電解液が不要

 

疑問その3
なぜ今になって話題に?

固体電解質の研究は20年以上前からあったが、電解液を超える“Liの良い通り道”をなかなか実現できなかった。2011年以降にブレークスルーが相次いだ

 

疑問その4
通り道を固体にするメリットと課題は?

疑問その5
なぜ通り道が固体だとエネルギー密度が高まるの?

 

疑問その6
どんな会社が参入しているの?

既存の電池メーカーより、新規参入組が圧倒的に多い。半導体関連や受動部品のメーカーは製品化時期が比較的早い。人を出した側は、全固体電池の開発に積極的でない可能性もある。


全固体電池の開発で、本格的EV時代になる?!

2020年10月07日 07時12分42秒 | 日記
 

日経クロステックによると、『全固体電池を採用したEV、一番乗りはTeslaかトヨタか?』という記事で、本格的EV時代は全個体電池の開発で始まるという。

 

以下、日経クロステックの記事::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

2020年、全固体電池を採用した電気自動車(EV)が登場するのか――。ドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン:VW)のSUV(多目的スポーツ車)型EV「ID.4」、日産自動車のSUV型「アリア」、ホンダの小型EV「Honda e」など、各社が次々とEVを発表するのに合わせて、搭載する電池についてもにわかに関心が高まっています。その1つが全固体電池。EV市場の先駆者である米Tesla(テスラ)が一番乗りを目指すのか。それとも、トヨタ自動車やVWといった大手自動車メーカーが先陣を切るのでしょうか。そこで今回は、自動車メーカーや電池メーカーの全固体電池に対する動向を振り返ります。

Teslaが明かした電池の“隠し玉”

 「EV向けの全固体電池が発表されるのではないか」。2020年9月、そんな噂があちらこちらでささやかれていました。その発端は、Teslaが2020年9月22日(米現地時間)に開催すると発表したイベント「Battery Day(バッテリーデー)」でした。同イベントで発表される電池関連の新技術として、全固体電池がお披露目されるといった期待が高まっていたのです。

 残念ながら、Battery Dayでは全固体電池の発表はありませんでした。Teslaは低コストなリチウムイオン電池の内製化にめどをつけたことを発表。その電池を活用して、価格を2万5000ドル(1ドル=105円換算で約263万円)に抑えたEVを2023年までに市場投入する計画を明らかにしました。

東京五輪の延期は“吉”となるか

 では、大手自動車メーカーが2020年内に全固体電池を発表する可能性はあるのでしょうか。

 遡ること約1年前の2019年6月、トヨタは「電動車を世界で550万台以上販売し、そのうちEVと燃料電池車(FCV)を100万台以上とする」という電動車の普及計画を、5年前倒しとなる2025年に改めることを発表しました。

トヨタ自動車は、「電動車を世界で550万台以上販売し、そのうち電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)を100万台以上とする」という電動車の普及計画を5年前倒して2025年に改めることを、2019年6月に発表した(撮影:日経クロステック)
トヨタ自動車は、「電動車を世界で550万台以上販売し、そのうち電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)を100万台以上とする」という電動車の普及計画を5年前倒して2025年に改めることを、2019年6月に発表した(撮影:日経クロステック)
 

 日経クロステックの記事『VWへの対抗か? EVで黒字になるのか? トヨタの答え』によると、その際に、トヨタの寺師茂樹副社長(当時、現・取締役執行役員Chief Competitive Officer兼Chief Project Officer)が全固体電池について「2020年の東京オリンピック・パラリンピックのタイミングで何らかの形で発表したい」と語ったといいます。

 こちらも残念ながら、東京オリンピック・パラリンピックの開催が延期になった影響もあってか、当初予定していた2020年8月が過ぎてもトヨタは動かず、何の発表もありませんでした。

 ただ、トヨタの意気込みは本物のようです。日経クロステックの記事『小型のEVでも500km、トヨタが見据える全固体電池の可能性』によると、全固体電池の開発に携わるトヨタの関係者は「トヨタの2次電池の研究開発は、全固体電池にかなりフォーカスしている」と語っています。

 東京オリンピック・パラリンピックの開催が延期になったことをむしろ好機と捉えて発表を急がず、全固体電池の開発に磨きをかけているのかもしれません。

 欧州の自動車メーカーの巨人VWは、着々と準備を進めているようです。VWグループは2020年6月、米国の電池開発ベンチャーQuantumScape(クアンタムスケープ)に2億ドル(約214億円、1ドル=107円換算)の追加投資を発表。固体電池技術の共同開発を加速するようです。

 VWがQuantumScapeとの協力を開始した2012年当時、全固体電池の実用化目標を2025年としていましたが、今回の追加投資によってそのスケジュールが早まる可能性も考えられます。

カギはCATLが握る?

 では、自動車メーカーに電池を提供する電池メーカーはどうでしょうか。大手メーカーの1つである中国・寧徳時代新能源科技(CATL)は、2019年6月の時点では、全固体電池と距離を置く戦略を取っていました。

 これに対して、2019年6月の時点で、トヨタの技術者はEV用の電池コストの目安について、「電池セルの価格が50ドル/kWhまで下がってようやく、EVと内燃機関車のパワートレーンのコストは同等になる」と語っていました。