今も不思議な事がある。
伯母の行方が分からなくなった頃、私は一言も田舎の話をしなかったし、
いつもと変わらないふりを必死で装っていたにも関わらず、
普段は全くといって言い程、伯母の事は口にしないかぁちゃんが、何かにつけて
「ねぇちゃん、元気かしら?とぉから(随分)会ってないわぁ。」と口にし出した。
その度に、胸をえぐられるような思いをしながら、あんまりしつこく言うので、
「昨日、兄ちゃんから電話があったけどみんな元気だって。」と無理に嘘をついた。
おばちゃんがいなくなった事・・・もしかしたら、かぁちゃんは先に知ってたのかな。
現実に・・・ではなく、何か不思議な感覚のようなもので・・・
葬儀に向かう準備の前に、まず私がした事は、かぁちゃんの病院に行って事情を説明し、
安定剤をもらってくる事だった。かぁちゃんの性格上、現実を受け止めた時には
必ず半狂乱になってしまうと思っていたし、そのまま心が完全に壊れてしまうと思ったから。
だって、この時はまだ「かぁちゃんの正常な精神」が存在していると思っていたから。
そして、一番の問題がぺこちゃんの事。
伯母の事は、デイの職員さんに報告してあった。
もちろん、「見つかるまで私がぺこちゃんの事を細かく見ていられないと思うから、何か変化があったら教えてください。」という形で。
まさかの事態になった事を告げると、本来は二ヶ月前から予約しないと希望日が取れないのに、
併設されている、ショートステイの施設に緊急用に部屋が一つ開けてあるからと、
直ぐに手続きをしてくださった。これ程ありがたかった事はない。
ぺこちゃんがデイサービスに通い始めて4ヶ月。初めてのショートステイの利用となった。
「何があるかわからないので、余裕を持って日にちを取りましたから安心してください。」
そう心強い言葉ももらった。・・・ぺこちゃんは不安と緊張で泣きながら出かけていった。
かぁちゃんに、伯母が亡くなった事を告げ、妹の車に同乗して、
そして、田舎に着く前に事の成り行きをかぁちゃんに説明したのだが、
それがどうしても、かぁちゃんには分からないのだ。
「亡くなった。」事はわかるのだが「何故自分に言わなかった?皆が私を騙した。」と
あんまり激しく言い続けるので、妹が怒りで運転出来なくなる程だった
途中の道の駅で一度降りて、人の誰もいないレストランの片隅で落ち着いて説明し、
「頼むから、伯父を責めるような事だけは言ってくれるな。」と、二人で懇願したのだが、
かぁちゃんは「わかったわよ。早く連れて行ってよ。」と不機嫌に応えただけだった。
私達が懐かしい家に到着すると、
既に祭壇が設けられて、少し若い頃の伯母が笑ってこちらを見ていた。
留袖姿・・・笑顔の写真でいいのがこれしかなかったと従兄がぽつりと言った。
私の結婚式の時の写真だった・・・。
周りにはとっても若い、綺麗な伯母の写真がいたる所に貼ってあった。
兄ちゃんが・・・最後に見たかぁさんの姿を払拭しようとしてか、
徹夜でパソコンに古い写真を取り込んで引き伸ばしたのだと、従兄の嫁さんが教えてくれた。
かぁちゃんは、泣き崩れていたし、私も放心状態で、涙で何も見えなかった。
そんな中で・・・つい私達はかぁちゃんから、目を離してしまった。
気付いた時、かぁちゃんは幼馴染みに囲まれて話をしていたので、ほっとしたのだが、
次の瞬間、妹も私も互いに顔を見合わせた。
背中に冷たい物が走り、全身が震え出したのを覚えている。
かぁちゃんは、声をあげて笑い出した。
嬉しそうに、楽しそうに・・・。
伯母の行方が分からなくなった頃、私は一言も田舎の話をしなかったし、
いつもと変わらないふりを必死で装っていたにも関わらず、
普段は全くといって言い程、伯母の事は口にしないかぁちゃんが、何かにつけて
「ねぇちゃん、元気かしら?とぉから(随分)会ってないわぁ。」と口にし出した。
その度に、胸をえぐられるような思いをしながら、あんまりしつこく言うので、
「昨日、兄ちゃんから電話があったけどみんな元気だって。」と無理に嘘をついた。
おばちゃんがいなくなった事・・・もしかしたら、かぁちゃんは先に知ってたのかな。
現実に・・・ではなく、何か不思議な感覚のようなもので・・・
葬儀に向かう準備の前に、まず私がした事は、かぁちゃんの病院に行って事情を説明し、
安定剤をもらってくる事だった。かぁちゃんの性格上、現実を受け止めた時には
必ず半狂乱になってしまうと思っていたし、そのまま心が完全に壊れてしまうと思ったから。
だって、この時はまだ「かぁちゃんの正常な精神」が存在していると思っていたから。
そして、一番の問題がぺこちゃんの事。
伯母の事は、デイの職員さんに報告してあった。
もちろん、「見つかるまで私がぺこちゃんの事を細かく見ていられないと思うから、何か変化があったら教えてください。」という形で。
まさかの事態になった事を告げると、本来は二ヶ月前から予約しないと希望日が取れないのに、
併設されている、ショートステイの施設に緊急用に部屋が一つ開けてあるからと、
直ぐに手続きをしてくださった。これ程ありがたかった事はない。
ぺこちゃんがデイサービスに通い始めて4ヶ月。初めてのショートステイの利用となった。
「何があるかわからないので、余裕を持って日にちを取りましたから安心してください。」
そう心強い言葉ももらった。・・・ぺこちゃんは不安と緊張で泣きながら出かけていった。
かぁちゃんに、伯母が亡くなった事を告げ、妹の車に同乗して、
そして、田舎に着く前に事の成り行きをかぁちゃんに説明したのだが、
それがどうしても、かぁちゃんには分からないのだ。
「亡くなった。」事はわかるのだが「何故自分に言わなかった?皆が私を騙した。」と
あんまり激しく言い続けるので、妹が怒りで運転出来なくなる程だった
途中の道の駅で一度降りて、人の誰もいないレストランの片隅で落ち着いて説明し、
「頼むから、伯父を責めるような事だけは言ってくれるな。」と、二人で懇願したのだが、
かぁちゃんは「わかったわよ。早く連れて行ってよ。」と不機嫌に応えただけだった。
私達が懐かしい家に到着すると、
既に祭壇が設けられて、少し若い頃の伯母が笑ってこちらを見ていた。
留袖姿・・・笑顔の写真でいいのがこれしかなかったと従兄がぽつりと言った。
私の結婚式の時の写真だった・・・。
周りにはとっても若い、綺麗な伯母の写真がいたる所に貼ってあった。
兄ちゃんが・・・最後に見たかぁさんの姿を払拭しようとしてか、
徹夜でパソコンに古い写真を取り込んで引き伸ばしたのだと、従兄の嫁さんが教えてくれた。
かぁちゃんは、泣き崩れていたし、私も放心状態で、涙で何も見えなかった。
そんな中で・・・つい私達はかぁちゃんから、目を離してしまった。
気付いた時、かぁちゃんは幼馴染みに囲まれて話をしていたので、ほっとしたのだが、
次の瞬間、妹も私も互いに顔を見合わせた。
背中に冷たい物が走り、全身が震え出したのを覚えている。
かぁちゃんは、声をあげて笑い出した。
嬉しそうに、楽しそうに・・・。