多面体F

集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

サンタクロース会議

2008年12月26日 | 観劇など
12月18日夜、こまばアゴラ劇場で青年団の第58回公演「サンタクロース会議」を見た。この芝居には、子ども参加型(11ステージ)とアダルト編(7ステージ)の2つのバージョンがある。わたくしが見たのはアダルト編である。3場で合計1時間の短い芝居だった。

登場人物は、議長とお父さん2人、お母さん3人、小学校の先生、サンタに会ったことのある魔女、サンタの専門家ガリガリ博士とクリスマスの専門家ガミガミ博士、日本のこどもの代表3人、全部で13人である。
舞台は3層になっている。後景は煉瓦の暖炉と「サンタクロース会議(Santa Claus Conference)」の木の看板、中景は横長のテーブル兼実験机とイス、真ん中のイスは議長席で立派である。机の左端にはヒゲを付け丸メガネのガリガリ博士が実験をしている。黄色、水色、白、ピンクのビーカーがありドライアイスの煙が出ている。また赤、青、黄、緑、紺の色とりどりの試験管が並んでいる。右端にはガミガミ博士が青とオレンジの風船を動物のかたちにしている。前景には木のベットに大きな白い靴下が吊るしてあり、ブルーの三角帽子をかぶった子どもが眠っている。その前には、赤の白のストライブのパジャマを着て色鉛筆で絵を描いている男の子、ピンクのパジャマで毛糸を編んだりおはじきをしている女の子、紫地に白の水玉のパジャマを着てトランプ占いをしている女の子の3人がしゃがんでいる。
そこに緑の服を着た「たろうくんのおかあさん」が会議に現れる。机の上には牛のミニチュア、お母さんは雑誌を取り出し読んでいる。バックミュージックはもちろんジングルベルをはじめクリスマスソングの定番メドレー、平田ワールドの始まりである。
ベッドの子どもが、靴下に入っているプレゼントの赤い包み紙を破り、跳び跳ねながら暖炉のなかに消える。次々に会議のメンバーが集まってくる。
この日の議題は3つ。まず「サンタクロースに何をお願いするか」である。3人の子どもは、それぞれバイク、お父さん、サッカーボールをお願いする。2場の議題は「サンタさんにどうすれば会えるか」。ずっと起きていたらお父さんがプレゼントを持ってきたという子どもには「お父さんに化けたサンタさんだよ」という答えがおとなから返ってきた。3場の議題は「煙突のない家はどうするのか」。玄関から入るという答えに落ち着いた。
2場から会議のゲストとして、サンタに会った経験をもつ魔女が登場。論争を挑まれると腹の立つ相手をネコ、ブタ、イヌ、サルなど動物にしてしまう。ところが元に戻す術を忘れて、ガリガリ博士の薬でやっと人間に戻ることができ、それからおとなしくなった。魔女が魔法を使うシーンは非常に自然だった。
なぜ女性のサンタはいないのかという問題からジェンダーの話題、プレゼントをもらえる子ともらえない子がいるという話から、学校にも通えない貧しい子どもが1億人いるといったグローバル化時代のサンタクロース問題などと話が発展する。あげくは浮気しているお父さんのイブの夜の行先は愛人宅か本宅か、そして離婚かわびを入れるかどちらかの結論を出す、という話にまで広がる。最後は、中学生でサンタを信じている子にいつどのように本当のことを知らせるかという話題だった。
平田の芝居としては笑えるシーンやセリフが多かった。しかし、出来がよい芝居とは言えない。子役の3人は演技がまだまだに思えた。演出はもうひと工夫必要だ。とくにラストの5分は再考の余地が大きい。ただ平田の芝居は、観劇直後は失敗と感じても、半年後とか1年後に印象深く思い出すことがあるので、決め付けは早計かもしれない。
シンプルな構成なので、平田の作劇パターンが見えたような気がした。平田の脚本のテーマは人間の生死にかかわる哲学的な大きな問題のことが多い。しかし舞台では「ごきげんよう」「いいお天気ですね」といったごく普通の日常会話に終始する。井上ひさしの戯曲のように明示されることはなく隠喩として表れるに過ぎない。この芝居では、サンタクロースをめぐる古典的な問題がテーマにとしてはっきり提示される。そして大人、子ども、ゲスト双方から世間話風の意見が出され、どんどん展開していく。そしていつもの脚本同様、終わったのかどうかわからぬまま終演する。
役者では、お母さん役の3人とガリガリ博士、つまり女優のうち4人が好演だった。
地元の駒場小学校の協力を得て、授業をしたり学芸会向けの戯曲を書き練習に参加したり、親子で見学に来てもらったりしたとプログラムにあった。子ども参加型の芝居は、こどもにどう受け入れられたのか評価を聞いてみたい。
わたくしが見たアダルト版の観客は20%前後は50代以上にみえた。

劇場ロビーには大きなツリーが飾られていた。

☆20時開演と遅いスタートだったので、井の頭線に乗らず渋谷から歩いてみた。せっかくなので、「麻生でてこい!リアリティツアー」の跡をたどった。東急本店を右手に進むと松濤を過ぎ神山町に入る。商店街をしばらく行って左折すると警官が立っている。グランドメゾン松濤、そしてニュージーランド大使館、その先にポリスボックスがあり右手奥に古い洋館がある。そう麻生邸である。この屋敷をみるだけのツアーで転び公暴で逮捕されてしまったわけである。そのまま歩くと山手通りに出る。地図でみるとアベシンゾーの自宅から直線で200-300mのところにある。明治神宮やNHKにもほど近いこの近辺は総理の名産地なのだろうか。
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