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集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

3・1朝鮮独立運動92周年集会

2011年03月07日 | 集会報告
2月26日(土)、朝は代々木公園の朝鮮学校の集会、午後は横浜で「日の丸・君が代強制をはね返す」集会があった日の夜、文京区民センターで3・1朝鮮独立運動92周年集会が開催された(参加160人)。今年のテーマは「朝鮮半島の準戦時状態に終止符を!」だった。
主催者のあいさつで渡辺健樹さん(日韓民衆連帯全国ネットワーク共同代表)は要旨、次のように述べた。
「従来は、アメリカを中心に米韓相互防衛条約と日米安保の2国間の条約を基本とした軍事同盟、ただし実態としては日米韓3国の軍事同盟だった。ところが昨年末釜山沖のPSI海上封鎖演習に自衛隊の艦船2隻がついに実働参加し、1月には日韓の物品役務相互提供協定(ACSA)と軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の交渉を開始することで合意した。日韓軍事協力体制を具体的につくり始めようとしている。自民党にもできなかったことを菅・民主党政権が踏み込み始めた。はっきりNO!の声をあげよう」。

今年の集会のメインは李時雨さん(フォトジャーナリスト)の講演だった。講演は、李さんの撮影による美しい写真や図表をたくさん使い、(逐次通訳を含め)全部で75分もあったので、砲撃事件のあった延坪島(ヨンピョンド)の「領海」問題、国連軍司令部の存在、日本と韓国の米軍基地の問題の3点に絞って紹介する。なお全容は集会で配布されたパンフに詳しく掲載されている(翻訳:大畑正姫)。関心のある方は主催者に連絡されるとよいと思う。

講演 紛争の海・西海(黄海)を平和の海へ
             李 時雨
さん(イ・シウ フォトジャーナリスト)

体の中心はどこにあるかとの質問を受けた。心臓あるいは脳かと思ったが、答えは痛いところ、苦しいところということだった。痛いところがあれば、そこに全神経を集中するからだ。社会の問題も「痛いところ」、すなわち戦争や飢餓のあるところについて考えるべきだ。痛いところ、苦しいところのことを考え、皆が協力すれば、世界の中心に自分が存在すると考えることになるかもしれない。
延坪島砲撃事件や天安号沈没事件について、「世界の痛み」ということから考えてみたい。
●延坪島事件のキーポイントは領海問題
延坪島事件について、南は北の領海に向かって砲撃訓練はしなかったといい、北(朝鮮)は南が北の領海で砲撃訓練をしたので、自衛的措置をとったという。どちらの言い分が正しいのか? 南は北方限界線を領海ラインと主張し、北は西海(ソヘ)の軍事分界線(境界線)が領海ラインだと主張する。南北が合意するラインは存在しない。この状態こそがすべての交戦の本質だ。
朝鮮戦争の停戦協定で、海上の分界線は定められなかった。制海権を握っていた米軍がラインを引かないほうが有利と判断したからだ。延坪島を含む西海の5つの島のみ国連軍司令官が軍事統制することにした。
また朝鮮戦争時のクラーク米軍総司令官兼国連軍司令官は北方限界線を北の合意なしに一方的に設定した。これは人民軍だけでなく、南の反共遊撃隊を北へ行かせないためのラインだった。
99年の第一次西海(黄海)交戦後、北方限界線が問題となり、2006年5月北は「西海海上の分界線について原点から話し合い、新たに設定しよう」と提案した。その提案ラインはほとんど北方限界線と一致するものだった。しかし韓国政府は受け入れなかった。
その後ノ・ムヒョン大統領時代の末期、2007年に10.4南北首脳宣言が合意され、この地帯を平和協力特別地帯にする期待が高まった。しかしイ・ミョンバク政権に交代しこの宣言に背を向けてしまった。延坪島事件により西海は平和協力地帯になるのか、砲撃で戦争の火薬庫となるのか、わたしたちは選択の岐路に立たされている。
●国連軍司令部と韓国、日本
事件後はじめて延坪島に降り立ったのは、韓国人ではなく国連軍司令官だった。西海5島とそれ以南の島は国連軍司令官が軍事統制権を握っている。平時には治安・行政・民間人救護など民事業務は韓国政府と韓国軍の能力で十分行える。しかし状況が悪化すれば軍事作戦のために民事業務は再編される。実際、延坪島砲撃事件直後に、韓国合同参謀本部と韓米連合司令部兼国連軍司令部に危機措置班が設置され、稼働を始めた。
国連軍司令部の問題は韓国に限られるものではない。サンフランシスコ平和条約と旧日米安保条約が調印された1951年9月8日、吉田・アチソン交換公文で、日本は韓国での国連軍の活動を支援するため国内の施設と役務を提供することになった。これにより7つの在日米軍基地は国連軍司令部の後方支援基地として編成された。
沖縄のホワイトビーチ、嘉手納、普天間基地では毎朝8時にまず星条旗が揚がる。次に君が代が流れて日の丸が揚がり、最後に音楽なしで国連旗が掲揚される。佐世保、横須賀、横田、座間でも同じ光景が見られるだろう。これは何を意味するのか。朝鮮半島に危機が発生すると、在日米軍司令官は、太平洋司令官ではなく韓国の国連軍司令官の指揮を受けることを意味する。
延坪島事件以降、「日米韓軍事同盟」の強化は、国連軍司令部の存在でさらに具体化しようとしている。国連軍司令部の作戦計画のもとで行われる在韓・在日米軍の演習でいったいどのようなことが起きるのだろうか。
●日米韓軍事同盟の隠れ蓑、国連軍司令部
板門店の国連軍司令部警備隊が駐屯するキャンプ・ボニファス弾薬庫には、黄色の化学兵器を示すマークが付いている。同じマークは岩国の弾薬庫でもみられる。板門店と岩国の関連が推定できる。
劣化ウラン弾の問題もある。2001年情報開示で公開された資料によると嘉手納に30万発、韓国の3つの基地に270万発、合計300万発の存在が確認された。湾岸戦争で使用されたのは90万発なので、米軍は朝鮮半島の戦争に備え湾岸戦争の3倍もの劣化ウラン弾を想定していることがわかる。
2000年8月の朝日新聞で、日米安保の密約がスクープされた。密約には2つのポイントがある。米国艦船が核兵器を搭載し日本に寄航するとき、そしてもう一つは、朝鮮半島有事の際、在日米軍基地から米軍が直接出撃するときは、事前協議は必要ないということだ。
今年2月末から3月にかけて米韓合同軍事演習「キー・リゾルブ」が行われている。日本の自衛隊がこの訓練にオブザーバー参加することは国連憲章の平和の脅威となるが、国連軍司令部の名のもとに、すべてが合理化される
延坪島事件をはじめ、韓国での戦争危機と日本の平和憲法を脅かす日米軍事行動は、そのすべてが「国連軍司令部」という環(わ)でつながり、合法性を仮装するものとなっている。

このあとイ・シウさんが自分で撮影した国連軍司令部や在日米軍などの写真、1922年イルクーツクで開催された極東民族大会に参加した片山潜やイ・ドンフィ(李東輝)の写真などを使ったビデオ上映が行われた。最後のシーンは、鉄条網にクモが糸を張り、そこに露の水滴が付いてキラキラ輝いているアップの写真だった。
イさんは「小さな露は、その一粒にこの世を分け隔てる鉄のトゲすら、自らの体に取り込んでその姿を映し出すのです。露の小さな勝利です」と解説を加えた。

第2部では3つの団体から報告があった。
沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックの吉田正司さんは、反戦地主会と対立する沖縄県軍用地地主連合会(土地連)が国に土地の買い上げを要望してる問題や、辺野古、高江の最近の状況を報告した。
VAWW-NETジャパンの東海林路得子さんが書いた、昨年12月5日東京外国語大学で行われた「女性国際戦犯法廷から10年・国際シンポジウム」についてのメッセージが代読された。
在日本朝鮮人人権協会の金東鶴さんは、この日行われた代々木公園の大集会や東京・大阪などの地方自治体の朝鮮学校への補助金ストップの動きを紹介したあと、次のように述べた。
無償化に反対する人は、教育内容や総連との関係などを挙げるが、それは「家のカギが締まっていなかったから」という「強盗の論理」のようなものだ。この強盗の論理は根が深い。1885年福沢諭吉は「朝鮮国・・・未開ならば之を誘うて之を導く可し、彼の人民果して頑陋ならば・・・武力を用ひても其進歩を助けん」(「朝鮮の交際を論ず」)と論説で主張し、1906年新渡戸稲造は旅行記で「韓人生活の習風は死の習風にして、彼らの民族的生活の期限は了りつつあり。死は乃ちこの半島を支配す」(「枯死国朝鮮」)と書いた。
朝鮮は未開国である、進歩を助けてあげるべきだと「強盗の論理」を正当化し、朝鮮を侵略した。この論理と同じことがいま朝鮮学校の問題で語られている。植民地主義がなんの反省もなく連綿と続いている。そう思えて仕方がない。何が本質なのかしっかり見極めながら、この問題を解決に導かなければならない。

平和のための2011日韓民衆共同宣言(このサイトで読むことができる)を確認した後、在日韓国民主統一連合、許すな!憲法改悪・市民連絡会「韓国強制併合」100年共同行動日本実行委員会新宿ど真ん中デモの4団体からアピールがあった。

☆この集会ではおなじみのノレの会の歌の発表。今年は「そんな顔しちゃだめさ」「Hana」の2曲が披露された。Hanaは「ひとつ」という意味で、2つに分断された国がふたたび1つになる日を願う歌である。
  ひとつになろう ひとつになろう あふれる思い伝えてゆこう
  この歌に希望をのせて 明日に向かってゆこう
  光輝く未来・・・

ノレの会は結成10周年を記念し、今年5月ごろ完成の予定でCDを制作中とのことだ。
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