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集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

俺は、君のためにこそ死ににいく

2007年05月19日 | 観劇など
5月17日(木)夜「俺は、君のためにこそ死ににいく(製作総指揮・脚本 石原慎太郎を渋谷TOEIでみた。
理由は有田芳生氏がいうような反戦映画かどうか確認するため。

映画は、知覧基地を飛び立った若者たちと母と慕われた富屋食堂・鳥濱トメさんの物語を中心に、知覧高女の女学生、隊員の婚約者、父、祖母、弟などのドラマ。
感動的だったのは、出撃する機を追って6歳くらいの少年が「兄ちゃん、兄ちゃん」と叫びながらどこまでも走っていくシーン。
 (古い映画だが、大島渚「少年」の、当たり屋の少年の瞳にも感動した覚えがある)
大西瀧治郎中将(伊武雅刀)の「この戦は負ける。負けるにしてもおめおめ負けられない、そのために自爆攻撃の特攻を開始する。志願というかたちは採るが、そんな人はめったにいないので(実質的に)命令で行う」という支離滅裂な論理は理解できなかった。アラブ人やパレスチナ人にも理解できないだろう。作者の石原都知事にも理解できなかったらしい。
「天皇陛下万歳」や「お母さ―ん」というセリフがなかったのはよかった。また戦死したと思われていた隊員が、じつは沖縄の孤島で生き延びていたことが判明したり、同じく生き残った隊員が精神を病み、戦後、菜の花畑でひとり酒を飲みながら軍歌を歌うシーンでは、ひょっとするとこれは、と期待した。
しかし、戦争賛美の映画ではないにしても反戦映画とはいえない。「死んだら靖国の門を入って2本目の桜のところで再開しよう」というセリフや最後のシーン、夜の靖国のような境内(ロケ地は知覧の平和公園・観音堂)でホタルが舞い、それが亡き若者になり、生き残った者からの「ありがとう」というセリフなどから、靖国賛美の映画であることは間違いないと思った。
設定は異なるがNHKの朝ドラ「純情きらり」で戦友を見殺しにして贖罪に苛まれる青年が戦友の姉に許しを乞うたときのセリフ「許しません。わたしが許すと、あの子は浮かばれない」とは、ずいぶん違う。
出てくる曲も「海ゆかば」「同期の桜」「加藤隼戦闘隊歌」など。
  「青年日本の歌」が出てこなかったのはまだしもだったが・・・
  (なお朝鮮人特攻兵士・金山(前川泰之)が歌う「アリラン」も出てくる)
原寸サイズで製作した隼2機とフィリピンに現存する米軍の駆逐艦や掃海母艦を使い、VSXを駆使した特攻シーンは迫力があった。
(パイロットに機銃掃射や爆弾が命中して血しぶきが噴き出すシーンはちょっとウソッぽかったが・・・)
遊就館の「私たちは忘れない――感謝と祈りと誇りを」よりずっとよいのは確か。
そのうち遊就館でも上映されるのだろう。

主演は徳重聡(21世紀の裕次郎を探せ! 2000年グランプリ)、窪塚洋介筒井道隆岸恵子
わたしは、3度出撃したあげくエンジン不良で基地上空で墜落死する不条理劇のような筒井道隆の役が心に残った(筒井のデビュー作は高岡早紀と出た「バタアシ金魚松岡錠司監督)
また石橋蓮司(緑魔子のダンナ)が女学生のシュールな父親役をやっていた。
その他、「肉弾」(岡本喜八監督 大谷直子のデビュー作)の主演をやった寺田農がこういう映画に出ているのは不思議だった(寺田は「櫻の園」の男性教師役もやっていた)
不思議といえば、沖縄出身の新城卓監督(「オキナワの少年」、「ザ・オーディション」など)は今村昌平監督の弟子だというが「黒い雨」を撮った人の弟子がこういう映画を監督するのも解せなかった。
音楽は「ALWAYS三丁目の夕日」の佐藤直紀、なるほどそういえば、という雄大な音楽だった。
昔近くに住んでいた東映東京撮影所の面影をスクリーンに求めたが、みつからず。どうやら食堂内や三角兵舎、士官室など屋内撮影のみのようだった。

B'zの主題歌「永遠の翼
 真白い雲のただよう果て 何があるの?
 桜の丘で ねころんで 夢をみてた
 いつか戻ってきたい場所は きっとここにある

は、20―30代の心をつかみそうだ。
こちら側はネット空間でも負けているが、
クヤしいが映画や音楽でも負けているようだ。
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