4月4日(金)夜、池袋の東京芸術劇場中会議室でNHK番組改変事件訴訟最高裁口頭弁論開廷に向け「最高裁は何を裁こうとしているのか?」という集会が開催された(主催:VAWW-NETジャパン)
NHK番組改変事件訴訟の経緯は下記のようなものだった。
2000年12月8―12日東京で「女性国際戦犯法廷」が開廷された。「法廷」を記録する番組を制作したいというNHKの申し出にVAWW-NETジャパンは全面的に協力し2001年1月30日ETV2001「戦争をどう裁くか」(4回シリーズ)の第2夜「問われる戦時性暴力」が放送された。ところが、その内容は当初説明を受けた「番組提案票」とかけ離れたものだった。影には右翼の圧力や安倍晋三・中川昭一の影響が見え隠れした。
そこでVAWW-NETジャパンは7月24日NHKら3社に対し、東京地裁に損害賠償請求訴訟を提訴した。04年3月24日地裁では敗訴したが、05年1月13日のNHK長井暁チーフプロデューサーの涙の会見を経て2007年1月29日高裁で逆転勝訴した。
高裁判決は、「編集の自由」との関係で、取材者と取材対象者の関係を全体的に考慮し取材対象者が期待を抱くのもやむを得ない「特段の事情」を認め「期待権(信頼利益)の侵害」を認定した。そして、番組改編の説明を受けていれば自己決定権の一態様として番組からの離脱や善処方の申し入れができたとし、説明義務を負うべき「特段の事情」を認め「説明義務違反」を認定した。また政治家との関係では、松尾武放送総局長と野島直樹総合企画室担当局長(国会担当)が政治家の発言を必要以上に重く受け止め、その意図を忖度して当たり障りのないような番組にすることを考え改編が行なわれ、自主性、独立性を内容とする編集権を自ら放棄したものに等しいとした。
これに対しNHK側が上告、VAWW-NETジャパンも付帯上告し4月24日から口頭弁論が始まる。
●最高裁審理での争点と市民に望むこと
まず、中村秀一弁護士、緑川由香弁護士、大沼和子弁護士から主要な争点について下記の説明があった。
最高裁では高裁判決に憲法違反の可能性があるとき「上告理由」を受理し、判例違反や法令解釈に関する重要な事項を含む場合「上告受理申立理由」を受理する。この裁判では被告NHK側(NHK、NHKエンタープライズ21、ドキュメンタリージャパン)が期待ないし信頼利益・説明義務について不法行為責任を認めた高裁判決を問題にし「法令解釈に関する重要な事項を含む」ため受理された。一方VAWW-NETも債務不履行責任としての説明義務を高裁が認めなかった点で付帯上告受理申立を行い、「法令解釈に関する重要な事項を含む」ため受理された。
NHK側は、1)判断基準としての「特段の事情」が不明確であること、2)説明義務違反は、生命、身体に軽微でない結果をもたらす治療の決定のように「真に人の自己実現に不可欠な決定行為」に限定したのが従来の最高裁の判例であること、3)報道されたものの内容が変わっていた場合と取材したものの報道されなかった場合とを比較し、前者にのみ説明責任が生じるのは矛盾していること、4)期待権侵害の判断基準のあてはめが吉岡民雄教養番組部長と伊東律子番組制作局長とで異なること、5)永田浩三チーフプロデューサーの証言に反し「提案票と番組内容の乖離」を認定していること、6)ドキュメンタリージャパンのVAWW-NETへの当初の説明には過失がないこと、を主張している。
これに対しVAWW-NETは、1)に対し、具体的な例示もあり「特段の事情」の基準は明確であること、2)分譲住宅売買の際の説明義務違反の最高裁判例など生命・身体に軽微でないものに限定しているわけではないこと、民法の基本である被侵害利益と侵害行為との「相関関係説」で判断すべきこと、3)高裁判決は、説明義務違反は「番組のねらい」や「番組内容に想定外の変更があった場合」と明確に述べていること、4)高裁判決は、吉岡部長や伊東局長の主観を判断基準にしているのではなく、番組内容をもとに判断していること、5)に対し、高裁判決は客観的理由を示して「乖離」を認定していること、6)に対しては、事実経過に基づき過失があったこと、と反論した。
また、共同不法行為に関して、NHKは「直接取材申し入れや取材を行ったのはドキュメンタリージャパンである」、ドキュメンタリージャパンは「2001年1月24日に編集作業から離脱しているので責任はない」と主張している。これに対しVAWW-NETは「NHKは番組の放送に向け一連の行為を主導していること、ドキュメンタリージャパンの広瀬涼二チーフプロデューサーは1月28日のスタジオ収録、29日の編集作業、30日のナレーション入れの現場に立ち会っているので共同不法行為が成立する」と反論した。
続いて飯田正剛弁護士が「最高裁に求めたいこと」とのテーマで語った。3弁護士が説明した争点は専門的だが、端的にいえば期待権侵害や説明義務違反が最高裁で通るかどうかということである。事件の本質は、政治家に便宜を図ったこと、それなのに日本のマスコミは重要な点をすっぽり抜かしていること、VAWW-NETの信頼(期待)を裏切ったNHKなど3社は許されるか、ということである。
判決は、NHK側の逆転勝訴、VAWW-NETの勝訴、高裁へ差し戻し、という3通りがありうる。重要なのは判決後の市民の態度である。最高裁は市民が納得できる論理を展開できるのか、本当の審判を受けるべきは最高裁である。判決は早ければこの夏にも出ると予想されるが、その後、市民が判決を評価しさらなる議論を起こしてほしい。また「この事件はおかしい」「NHKはおかしい」ということを、素朴な正義感で声をあげ裁判を見守っていただきたい。
●「放送と人権等権利に関する委員会」への申し立て 日隅一雄弁護士
1月25日VAWW-NETジャパンは「放送と人権等権利に関する委員会」(BRC)に申立てを行った。これは、昨年1月29日高裁判決を報じた「ニュースウォッチ9」で、キャスターの政治家への関与に関するコメントが放送倫理違反、公平原則違反当たるとしたものだ。この日NHKは夜7時のニュースではごく通常の報道を行ったが、9時のニュースで柳澤秀夫解説委員主幹は高裁判決を紹介した後、高裁判決が朝日新聞の報道を対象にしたかのような説明をし「国会議員が具体的に番組に介入したことはない」と判決にはない文言を紹介したうえ、ニュースの4割もの時間を割いて安倍晋三首相と中川昭一議員の介入がなかったことが「判決で明確に示された」とのインタビューを放送した。一方「政治家の介入があった」とのコメントはいっさい紹介しなかった。この放送も、NHKが安倍や中川におべんちゃらをつかったものであり、政治家の「意図を忖度し」た事例である。
4月8日(火)ヒアリングが実施される。
●最高裁口頭弁論をまえに 西野瑠美子(VAWW-NETジャパン)
NHKは異常な内容改編と「特段の事情」に背を向け、「編集の自由が侵害された」とまるで自分たちが被害者のような反論をしており腹立たしい。高裁判決は、一般論を展開したわけではなくちゃんと「特段の事情」があったときのみと「期待権」に歯止めをかけたうえで、今回はNHKを違法と認定した。
高裁判決で、政治家の「意図を忖度した」番組改編であったことが認定された。いま問題になっている映画「靖国」上映中止も、自主規制だった。稲田朋美議員らが要求した3月12日の議員向け事前試写会のあと足並みをそろえて上映自粛が発表された。社会の右傾化にともない、組織ジャーナリズムのチェック機能が弱まり、危機はますます進行している。
このあと参加した3人の方から励ましのことばが述べられた。
●田島泰彦さん(上智大学文学部新聞学科教授)
病気を克服し昨秋、現場復帰した。この事件の問題点は、1)表現の自由、報道の自由への権力の露骨な介入であること、2)メディアが本来の仕事をしていれば健全だが、メインストリームのメディアが権力に対峙していないこと、である。
この裁判で獲得すべきことは、1)表現の自由を貫き、裁判所にも認めさせること、政治家の不当な介入を許さないこと、2)現場の表現の自由を踏みにじったことを許さないこと、3)一部のNHK幹部が番組を好きなように改変したので、高裁判決で「NHKは憲法で尊重され保障された編集の権限を濫用」したと法的に認められたが、民主的社会でパートナーである視聴者の権利の無視を許さないこと、である。
●原寿雄さん(元共同通信)
NHKはあんなものと思っている人は多い。一般の人の声を聞くと「あんな番組をつくるから悪いんだ」という人も多い。こんなふうに「日本の政治はこんなもの」と現実をそのまま「ものわかりよく」、自分に都合よくペシミスティックに受け入れていると何も変わらない。現実を否定するところから新しいことが始まる。わたしは農家の生まれだ。藁はねじってはじめて強くなり縄になる。民主主義にねじれは不可欠だ。
●川崎泰資さん(元NHK)
NHK番組改変事件は、明らかに政治介入の結果だ。その後安倍晋三は総理に成り上がったが、それ以上にひどいのは古森重隆経営委員会委員長(富士フイルムホールディングス社長)と小林英明監査委員(弁護士)のタッグマッチだ。ムチャクチャなことを言いたい放題、それに対し福地茂雄会長(元アサヒビール社長)は何も言えない。本来ジャーナリズムはこういう問題こそ報道すべきだ。
先日参議院総務委員会で世耕弘成議員は「昭和天皇を戦争犯罪人で裁くとんでもない番組をやっていた」と発言した。編集権に関する質問だったが「編集権は、わたくし(福地会長)にある」と言わせたかったのだろう。
今の状況では、NHKに受信料を支払わないことに正当性がある。
最後に司会の東海林路得子さん(VAWW-NETジャパン)からあいさつがあった。
松井やよりは、世界中の人が南京事件を知っているのに日本人だけ知らないことにショックを受けたことがきっかけで女性国際戦犯法廷を始めた。韓国、フィリピンなど被害国各国のNG0から、法廷で、NHKと同じように壇の真下から撮影したいと言われたが、それでは一般参加者が証言を聞き取りにくくなるので、2階席に座ったまま取材してもらうよう何とかわたしたちが説得してした。NHKを特別扱いしたのはそれだけわたしたちの期待が大きかったからだ。だから信頼を裏切ったNHKをどうしても許せない。今日は多くの方から励ましの言葉をいただき胸がいっぱいになった。視聴者が間違ったほうへ行かないように、この裁判が少しでも歯止めになることを願いたい。
☆東海林さんは、故・松井やよりさんの強い思いを述べながら、感極まって泣き出してしまわれた。参加者も深く感動した。4月24日(木)10時半開廷の口頭弁論は、傍聴希望者は1時間前に並ぶ必要がある。原告2人も傍聴券が必要だそうだ。同日13時から星陵会館で報告集会が行われる予定だ。
NHK番組改変事件訴訟の経緯は下記のようなものだった。
2000年12月8―12日東京で「女性国際戦犯法廷」が開廷された。「法廷」を記録する番組を制作したいというNHKの申し出にVAWW-NETジャパンは全面的に協力し2001年1月30日ETV2001「戦争をどう裁くか」(4回シリーズ)の第2夜「問われる戦時性暴力」が放送された。ところが、その内容は当初説明を受けた「番組提案票」とかけ離れたものだった。影には右翼の圧力や安倍晋三・中川昭一の影響が見え隠れした。
そこでVAWW-NETジャパンは7月24日NHKら3社に対し、東京地裁に損害賠償請求訴訟を提訴した。04年3月24日地裁では敗訴したが、05年1月13日のNHK長井暁チーフプロデューサーの涙の会見を経て2007年1月29日高裁で逆転勝訴した。
高裁判決は、「編集の自由」との関係で、取材者と取材対象者の関係を全体的に考慮し取材対象者が期待を抱くのもやむを得ない「特段の事情」を認め「期待権(信頼利益)の侵害」を認定した。そして、番組改編の説明を受けていれば自己決定権の一態様として番組からの離脱や善処方の申し入れができたとし、説明義務を負うべき「特段の事情」を認め「説明義務違反」を認定した。また政治家との関係では、松尾武放送総局長と野島直樹総合企画室担当局長(国会担当)が政治家の発言を必要以上に重く受け止め、その意図を忖度して当たり障りのないような番組にすることを考え改編が行なわれ、自主性、独立性を内容とする編集権を自ら放棄したものに等しいとした。
これに対しNHK側が上告、VAWW-NETジャパンも付帯上告し4月24日から口頭弁論が始まる。
●最高裁審理での争点と市民に望むこと
まず、中村秀一弁護士、緑川由香弁護士、大沼和子弁護士から主要な争点について下記の説明があった。
最高裁では高裁判決に憲法違反の可能性があるとき「上告理由」を受理し、判例違反や法令解釈に関する重要な事項を含む場合「上告受理申立理由」を受理する。この裁判では被告NHK側(NHK、NHKエンタープライズ21、ドキュメンタリージャパン)が期待ないし信頼利益・説明義務について不法行為責任を認めた高裁判決を問題にし「法令解釈に関する重要な事項を含む」ため受理された。一方VAWW-NETも債務不履行責任としての説明義務を高裁が認めなかった点で付帯上告受理申立を行い、「法令解釈に関する重要な事項を含む」ため受理された。
NHK側は、1)判断基準としての「特段の事情」が不明確であること、2)説明義務違反は、生命、身体に軽微でない結果をもたらす治療の決定のように「真に人の自己実現に不可欠な決定行為」に限定したのが従来の最高裁の判例であること、3)報道されたものの内容が変わっていた場合と取材したものの報道されなかった場合とを比較し、前者にのみ説明責任が生じるのは矛盾していること、4)期待権侵害の判断基準のあてはめが吉岡民雄教養番組部長と伊東律子番組制作局長とで異なること、5)永田浩三チーフプロデューサーの証言に反し「提案票と番組内容の乖離」を認定していること、6)ドキュメンタリージャパンのVAWW-NETへの当初の説明には過失がないこと、を主張している。
これに対しVAWW-NETは、1)に対し、具体的な例示もあり「特段の事情」の基準は明確であること、2)分譲住宅売買の際の説明義務違反の最高裁判例など生命・身体に軽微でないものに限定しているわけではないこと、民法の基本である被侵害利益と侵害行為との「相関関係説」で判断すべきこと、3)高裁判決は、説明義務違反は「番組のねらい」や「番組内容に想定外の変更があった場合」と明確に述べていること、4)高裁判決は、吉岡部長や伊東局長の主観を判断基準にしているのではなく、番組内容をもとに判断していること、5)に対し、高裁判決は客観的理由を示して「乖離」を認定していること、6)に対しては、事実経過に基づき過失があったこと、と反論した。
また、共同不法行為に関して、NHKは「直接取材申し入れや取材を行ったのはドキュメンタリージャパンである」、ドキュメンタリージャパンは「2001年1月24日に編集作業から離脱しているので責任はない」と主張している。これに対しVAWW-NETは「NHKは番組の放送に向け一連の行為を主導していること、ドキュメンタリージャパンの広瀬涼二チーフプロデューサーは1月28日のスタジオ収録、29日の編集作業、30日のナレーション入れの現場に立ち会っているので共同不法行為が成立する」と反論した。
続いて飯田正剛弁護士が「最高裁に求めたいこと」とのテーマで語った。3弁護士が説明した争点は専門的だが、端的にいえば期待権侵害や説明義務違反が最高裁で通るかどうかということである。事件の本質は、政治家に便宜を図ったこと、それなのに日本のマスコミは重要な点をすっぽり抜かしていること、VAWW-NETの信頼(期待)を裏切ったNHKなど3社は許されるか、ということである。
判決は、NHK側の逆転勝訴、VAWW-NETの勝訴、高裁へ差し戻し、という3通りがありうる。重要なのは判決後の市民の態度である。最高裁は市民が納得できる論理を展開できるのか、本当の審判を受けるべきは最高裁である。判決は早ければこの夏にも出ると予想されるが、その後、市民が判決を評価しさらなる議論を起こしてほしい。また「この事件はおかしい」「NHKはおかしい」ということを、素朴な正義感で声をあげ裁判を見守っていただきたい。
●「放送と人権等権利に関する委員会」への申し立て 日隅一雄弁護士
1月25日VAWW-NETジャパンは「放送と人権等権利に関する委員会」(BRC)に申立てを行った。これは、昨年1月29日高裁判決を報じた「ニュースウォッチ9」で、キャスターの政治家への関与に関するコメントが放送倫理違反、公平原則違反当たるとしたものだ。この日NHKは夜7時のニュースではごく通常の報道を行ったが、9時のニュースで柳澤秀夫解説委員主幹は高裁判決を紹介した後、高裁判決が朝日新聞の報道を対象にしたかのような説明をし「国会議員が具体的に番組に介入したことはない」と判決にはない文言を紹介したうえ、ニュースの4割もの時間を割いて安倍晋三首相と中川昭一議員の介入がなかったことが「判決で明確に示された」とのインタビューを放送した。一方「政治家の介入があった」とのコメントはいっさい紹介しなかった。この放送も、NHKが安倍や中川におべんちゃらをつかったものであり、政治家の「意図を忖度し」た事例である。
4月8日(火)ヒアリングが実施される。
●最高裁口頭弁論をまえに 西野瑠美子(VAWW-NETジャパン)
NHKは異常な内容改編と「特段の事情」に背を向け、「編集の自由が侵害された」とまるで自分たちが被害者のような反論をしており腹立たしい。高裁判決は、一般論を展開したわけではなくちゃんと「特段の事情」があったときのみと「期待権」に歯止めをかけたうえで、今回はNHKを違法と認定した。
高裁判決で、政治家の「意図を忖度した」番組改編であったことが認定された。いま問題になっている映画「靖国」上映中止も、自主規制だった。稲田朋美議員らが要求した3月12日の議員向け事前試写会のあと足並みをそろえて上映自粛が発表された。社会の右傾化にともない、組織ジャーナリズムのチェック機能が弱まり、危機はますます進行している。
このあと参加した3人の方から励ましのことばが述べられた。
●田島泰彦さん(上智大学文学部新聞学科教授)
病気を克服し昨秋、現場復帰した。この事件の問題点は、1)表現の自由、報道の自由への権力の露骨な介入であること、2)メディアが本来の仕事をしていれば健全だが、メインストリームのメディアが権力に対峙していないこと、である。
この裁判で獲得すべきことは、1)表現の自由を貫き、裁判所にも認めさせること、政治家の不当な介入を許さないこと、2)現場の表現の自由を踏みにじったことを許さないこと、3)一部のNHK幹部が番組を好きなように改変したので、高裁判決で「NHKは憲法で尊重され保障された編集の権限を濫用」したと法的に認められたが、民主的社会でパートナーである視聴者の権利の無視を許さないこと、である。
●原寿雄さん(元共同通信)
NHKはあんなものと思っている人は多い。一般の人の声を聞くと「あんな番組をつくるから悪いんだ」という人も多い。こんなふうに「日本の政治はこんなもの」と現実をそのまま「ものわかりよく」、自分に都合よくペシミスティックに受け入れていると何も変わらない。現実を否定するところから新しいことが始まる。わたしは農家の生まれだ。藁はねじってはじめて強くなり縄になる。民主主義にねじれは不可欠だ。
●川崎泰資さん(元NHK)
NHK番組改変事件は、明らかに政治介入の結果だ。その後安倍晋三は総理に成り上がったが、それ以上にひどいのは古森重隆経営委員会委員長(富士フイルムホールディングス社長)と小林英明監査委員(弁護士)のタッグマッチだ。ムチャクチャなことを言いたい放題、それに対し福地茂雄会長(元アサヒビール社長)は何も言えない。本来ジャーナリズムはこういう問題こそ報道すべきだ。
先日参議院総務委員会で世耕弘成議員は「昭和天皇を戦争犯罪人で裁くとんでもない番組をやっていた」と発言した。編集権に関する質問だったが「編集権は、わたくし(福地会長)にある」と言わせたかったのだろう。
今の状況では、NHKに受信料を支払わないことに正当性がある。
最後に司会の東海林路得子さん(VAWW-NETジャパン)からあいさつがあった。
松井やよりは、世界中の人が南京事件を知っているのに日本人だけ知らないことにショックを受けたことがきっかけで女性国際戦犯法廷を始めた。韓国、フィリピンなど被害国各国のNG0から、法廷で、NHKと同じように壇の真下から撮影したいと言われたが、それでは一般参加者が証言を聞き取りにくくなるので、2階席に座ったまま取材してもらうよう何とかわたしたちが説得してした。NHKを特別扱いしたのはそれだけわたしたちの期待が大きかったからだ。だから信頼を裏切ったNHKをどうしても許せない。今日は多くの方から励ましの言葉をいただき胸がいっぱいになった。視聴者が間違ったほうへ行かないように、この裁判が少しでも歯止めになることを願いたい。
☆東海林さんは、故・松井やよりさんの強い思いを述べながら、感極まって泣き出してしまわれた。参加者も深く感動した。4月24日(木)10時半開廷の口頭弁論は、傍聴希望者は1時間前に並ぶ必要がある。原告2人も傍聴券が必要だそうだ。同日13時から星陵会館で報告集会が行われる予定だ。