多面体F

集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

今年のブックフェアの目玉は版元ドットコム

2008年07月18日 | 日記
7月10~13日に有明の東京ビッグサイトで開催された第15回東京国際ブックフェアをみた。いつも梅雨明け前に開催されているのに、なぜか雨は降らない。今年もビールを飲めばうまく感じそうな日差しの強い日だった。入場者数は昨年の10%増の61000人、昨年より出展社の活気を感じた。

今年の目玉は、明石書店、現代人文社、ポット出版など34社が連合出展した版元ドットコムの新コーナーだった。良書がふんだんにあり、書物復権8社の会の弟分のような雰囲気だった。ブックフェア開催の原点に戻ったようなコーナーで見ごたえがあった。本の価格はほかのブースと同様2割引だったが、スピードくじで漏れなく景品をもらえ、わたしはジュースが当たった。

一方、兄貴分である、みすず書房、岩波書店、未来社など書物復権8社の会も大入りで、なんだかお祭りの夜店を歩いているように通路が狭く感じられた。
次に自費出版関連のブースも元気があった。まず「血液型別自分の説明書」で大ヒットを飛ばす文芸社、PR誌「ことのは 3号」によれば本書のヒットは山形県・天童の書店から始まり、仙台で当たって増刷、そして三省堂など首都圏で火がついたとある。昨年のブックフェアでは「リアル鬼ごっこ」の大キャンペーンが先行投資に感じられたが、1年後に投資を回収した感がある。昨年はケータイ小説が流行したが「主人公は読者」という流れそのものは好ましい。いっぽう今年1月民事再生法の適用を申請し4月に文芸社が支援を開始した草思社の書籍も展示されていた。盛者必衰を目の当たりにする光景だった。また自費出版の一方の雄だった新風舎は消費者とのトラブルをきっかけに今年1月に経営破たんした。
デジタルパブリッシングのコーナーに、「ブログを本にする」という欧文印刷のブースがあった。昨年「ブログの国内開設数1300万を突破」と報じられたように、いまや自分のブログを開設している人は非常に多い。ネット用の日記と書籍ではまとめ方が違うので編集作業が必要なはずだが、出版のコンテンツであることは間違いない。HPに従って原価計算すると、B6(四六版に近いサイズ)、並製、カバー付き、100部で20万円足らずで作成できる。本文フォーマットやカバーデザインはまだまだのレベルだがこのくらいの直接原価でできるのなら、自費出版のジャンルで有力企業にのし上がる可能性は十分ある。説明員の方に聞くと、主として2部から10部くらいの小部数を念頭においているそうだ。
また日本イラストレーター協会という若手や地方のイラストレーターの団体が出展していた。自分たちの作品をポストカードにしてワゴンで無料配布していた。ブースに立って呼び込みをしているのもクリエイター本人たち。これもフェアの原点のようで、好感が持てた。
それから今年は京都の出版社がたくさん出展していた。まずミネルヴァ書房。創立55周年記念の「ミネルヴァ日本評伝選」は2003年9月に発刊し始め現在60人分を刊行、当初の構想では10年以上かけて200人以上にするという。政治学、社会学、法学など学術出版の質も高いようだ。
刊行物のジャンルや質が有斐閣に近くになってきたように感じた。

ほかに思文閣出版、糺(ただす)書房、法藏館、その他本願寺出版社、禅文化研究所など宗教系出版社がブースを構えていた。目立ったのは、コトコト光村推古書院宮帯出版社の3社共同「京都ブース」だった。赤い唐傘、和服の女性、青と白の新撰組のハッピを着た男性の呼び込み、さらに祗園囃子の音が流れてくる。完全に異次元の世界だった。
そういう点では、本社は京都でなく自由が丘だが、ミシマ社のたたみ敷きのブースは、ここだけ学園祭というノリだった。年に一度の出版業界のイベントなので、こういうお祭り空間も歓迎すべきではないだろうか。

☆第42回造本装幀コンクールの三賞は「HIROSHI NODA MASTERWORKS」(光村図書出版)、「イラストレーテッド 名作椅子大全」(新潮社)、「有斐閣判例六法」(有斐閣)だった。
わたくしは「てんじつきさわるえほんシリーズの『きかんしゃトーマスなかまがいっぱい』」(小学館)に興味をもった。これは普通の文字入りの絵本に点字を付け、シルクスクリーンで絵の輪郭を盛り上げた本だ。さらに色を表現するため、点線は青、斜線は緑、横線は茶色を示すというルールを加えている。したがって、ある程度の面積があるブロックでないと表現できない。こういう絵本をユニバーサルデザイン絵本というそうだ。
昨年、象の糞を材料に製紙した「ぼくのウンチはなんになる?」(ミチコーポレーション)が入賞した。これは環境問題への出版印刷物の環境問題での社会貢献だが、今年は視覚障害者と健常者のコミュニケーションでの社会貢献という点で、興味を抱いた。
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