40年間のサラリーマン生活を終え、退職1年が過ぎた。原則として毎日昼ごはんを自分でつくるとか、通勤がなくなり定期もなくなったため、交通費の節約と運動のため行ける場所にはできるだけ自転車で移動するとか、毎朝毎夕通勤電車のなかでみる習慣になっていた「週刊読書人」をみる時間がなくなったとか、制服のように着ていたスーツとコートをカジュアルな普段着に変えるなど、衣食住にわたり生活スタイルが一変した。
また原則として勤務先近くの医療機関を利用していたのが、自宅近くの医療機関を発掘し通い始めるとか、「毎日が日曜日」というのは逆にいうと「休日がなくなる生活になりかねない」など、予測しなかった習慣の変更にもだんだん慣れてきたところである。「休日がなくなる生活になりかねない」はちょっとわかりにくいかもしれない。退職後のアルバイトは、土日に関係のない仕事やシフト制の仕事が多く、自分で計画的に体を休める日をつくらないとフリーの日がなくなることもありうる、という意味だ。
これから退職される方へ、失業給付について個人的体験と感想を述べる。失業給付は退職してはじめて身近になる制度だ。1年弱ハローワークに通ってやっとわかったこともいくつかあったので少しは覚えているうちに「教訓」などを書いておこうと思う。
とはいっても公務員には雇用保険も失業給付もないそうだし、雇用保険の被保険者ではない職業や該当者もたくさんいらっしゃると思うので、その方には関係ない話である。
ハローワークの説明パンフ類
退職前に何度か年金事務所に相談にいったことがあり、どの担当者からも「年金と失業保険の見積もりを取り、1円でも高いほうを選択するように」とアドバイスされた。健康保険で、国保にするか従来加入していた健保組合の特例退職者を選ぶのかと似た問題だと思った。長年雇用保険を払い続けたのだから、失業保険をもらうのは恥ずかしいことではなく当然のことだという人もいた。しかしハローワークに28日に一度通うようになると、それはだいぶん考え違いであることがわかってきた。「雇用保険受給資格者のしおり」によれば、失業とは「積極的に就職しようとする気持ち」と「いつでも就職できる能力(健康状態・環境など)」があり、「積極的に仕事を探しているにもかかわらず、職業に就くことができない状態」である。これだけみると抽象的だが、条件は結構厳しい。
まず登録するために求職申込書を書かなければいけないのだが、一週間の所定労働時間が20時間以上という縛り(雇用保険の加入条件)がある。こちらはサラリーマン生活がイヤだから辞めたので、そうでなければまだ続けている。だからせいぜい週に2回か3回半日勤務くらいがベストなのだが、それではダメなのだ。しかも1か月(正確には28日)ごとに提出する失業認定申告書には「ハローワークから仕事を紹介されたら、すぐに応じられますか?」という項目があり、○を付けないと失業給付はもらえない。悪くいうと「毎月ウソを書き続けなければいけない」ハメに陥る。
さらにいったん申請すると、自己都合退職の場合3か月間給付制限期間というものがあり、失業給付だけでなく年金も支給されない、まったくの無給状態に置かれる。貯金を取り崩さざるをえないが、こんな事態は想定していなかった。在職中、まだ年金はいらないのに勝手に振り込まれ、逆にこういう一番困っているときにストップするのだから酷である。
3か月後から28日ごと(毎月)のハローワーク通いが始まり、失業認定申告書を提出する。
その1か月間に2回以上求職活動をする必要がある。アルバイトのための履歴書提出や面接は当然求職活動にカウントされるだろうと思ったら、アルバイトではダメだそうで驚いた。またハローワークや東京しごと財団がやっているセミナー受講ならよいかと思ったら、認定されるものとされないものがあり、それはハローワークの雇用保険給付課の人でないとわからないとのことだった。あるいはセミナーの申し込み時にスタンプを押してもらえる対象かどうか、しつこく問い合わせるしかない。就職に役立つものはOKで、たんに個人の能力を伸ばすようなものはダメという原則だそうだが、よくわからない。はじめのうちは東京しごと財団の「履歴書の書き方」「面接の受け方」「求人票の見方」などのセミナーを順に回っていた。そのうち、月一度ハローワークに行った帰りに職業相談の窓口で簡単な質問をすればスタンプを1つ押してもらえることがわかった。時間効率もよいのでそうすることにした。またシルバーワーク(注 シルバー人材センターとは別の組織)という区が運営する無料職業紹介・相談窓口があるので、そこに月1回顔を出して、求職に関する雑談をすればスタンプを押してもらえるのでそうすることにした。ただシルバーワークがあまり有名でないこともあり、初めのころ給付課の窓口の人がわからないことがあり苦労したこともあった。
こういう具合で結構面倒なので期間半ばで脱落する人もいる。
各種セミナーのチラシ
次に失業認定申告書に記入するものとして、当該期間のパート・アルバイトなどの申告がある。無休のボランティアも含める厳密な申告だ。1日4時間以上は就労とみなされその日の分は失業給付が支払われない。4時間未満は内職の扱いで減額されることもあるらしい(わたくしは減額されたことがないので、基準はわからない)。夏に幼児用プールの監視人のアルバイトをしたのだが、午前3時間の日は内職、午後4時間の日は就労で給付なしという違いがあった。時給1100円だったので、4時間なら失業保険のほうが日額が高くなるため、働くとその日の手取りがかえって減る。それで3時間59分にしてくれればと思ったこともあった。ただ支給期間の計算は、手持ちが150日あった場合、支給された日数だけ減っていき、ゼロになると終了という仕組みになっているので、期間が延びるだけで総額に変化はない。こういう仕組みもよく聞いてはじめて理解できる。
就労日は○、内職日は×をカレンダーに記入して提出する。これもかなりシビアにチェックを受けた。したがって訂正印が必要になるので、印鑑は必携だった。
認定日は28日に1度なので、事前にいつなのか予測できるが、認定に行った日に翌月の失業認定申告書を渡され、そこに日時が記入されているのでそのほうが正確だ。時間はその日の受付時間内に行けば大丈夫だが、日を間違えて遅れると大変なことになる。その1か月分(28日分)丸ごと不支給となるのだ。自分が悪いのだから仕方がないのだが、てっきり翌月2か月分もらえるのだろうと思ったらそうではない。就労にともなう不支給と同様、期間が先送りになる(つまり一番最後にもらえるのだ)。そんなこんなで、離職票を受け取った4月初めに求職申込みをし、3か月の給付制限期間を経て150日なら、計算上は12月半ばにハローワーク通いが終了するはずだったが、2月初めまでかかった。最後の月は、1月下旬に終わることがわかっていたので、1月末に失業認定申告書を提出できないものか相談したが、やはり28日後でないとダメとのことで最後のハローワーク通いは2月初めとなった。
これでやっと年金への復帰だと思ったら、もうひとつ驚くできごとがあった。ハローワークから年金事務所へ「1月末に失業保険支給が終了した」という通知は2月か3月に届くので、給付制限期間3か月分の支払いは4月になるというのだ。つまり2月支払い分が通常の半額くらいに減額したうえ、3月もふたたび無給になるというのだ。この時期も生活が厳しい。
ただし年金の未払いは3か月でなく4か月分になっていた。後になって返金を求められ(これを「支払調整額」と呼ぶ)ても困るので、理由を聞いてみた。年金事務所としては受給資格決定の通知をハローワークから受け取るのが前年5月なので、5月から5か月分(150日)年金不支給とする。すると10月から年金が復活するはずだが、ハローワークから支給終了の通知が届くのは2月なので2月分から支給復活となり、そのあいだの10月から1月までの4か月分が過去分の支払いになるとのことだった。前年10月にわかっているのなら3月に支払ってくれればよいのに、年金支払いは偶数月ということで4月になるらしい。ハローワークと年金事務所、どちらも厚労省管轄の組織間での連絡の問題なのにスムーズでない印象がある。その他年金事務所では、1年前の3月分の高年齢雇用給付金の支払い過ぎを過去分支払と同時に「支給調整」するという問題もあったのだが、バカバカしくて書く気がしない。
なお制度の上では非人間的で受給者の立場に立っていないと思うことがいろいろあったが、ハローワークの窓口の人びとは皆さん、低姿勢で親切な人ばかりだった。
上記は、個人的体験にもとづいて書いているので、勘違いや理解不足もあるかもしれないということを付言しておく。再就職に成功した人の手当や教育訓練給付を受けた人は、さらに悲劇や笑い話を体験されたかもしれない。
以上、1年弱の体験談である。
わたくしの場合は、フルタイムに近い仕事をする気はさらさらなかったが、いまや男性の場合、60~64歳の76.8%、65~69歳の53.0%、70~74歳の32.5%が働いている時代(総務省労働力調査(基本集計)2016年平均)である。たまたまいまは雇用状況がよい時期に当たるが、高齢者で就業したいという方にはこの制度、そしてハローワークは使い出があると思われる。
また原則として勤務先近くの医療機関を利用していたのが、自宅近くの医療機関を発掘し通い始めるとか、「毎日が日曜日」というのは逆にいうと「休日がなくなる生活になりかねない」など、予測しなかった習慣の変更にもだんだん慣れてきたところである。「休日がなくなる生活になりかねない」はちょっとわかりにくいかもしれない。退職後のアルバイトは、土日に関係のない仕事やシフト制の仕事が多く、自分で計画的に体を休める日をつくらないとフリーの日がなくなることもありうる、という意味だ。
これから退職される方へ、失業給付について個人的体験と感想を述べる。失業給付は退職してはじめて身近になる制度だ。1年弱ハローワークに通ってやっとわかったこともいくつかあったので少しは覚えているうちに「教訓」などを書いておこうと思う。
とはいっても公務員には雇用保険も失業給付もないそうだし、雇用保険の被保険者ではない職業や該当者もたくさんいらっしゃると思うので、その方には関係ない話である。
ハローワークの説明パンフ類
退職前に何度か年金事務所に相談にいったことがあり、どの担当者からも「年金と失業保険の見積もりを取り、1円でも高いほうを選択するように」とアドバイスされた。健康保険で、国保にするか従来加入していた健保組合の特例退職者を選ぶのかと似た問題だと思った。長年雇用保険を払い続けたのだから、失業保険をもらうのは恥ずかしいことではなく当然のことだという人もいた。しかしハローワークに28日に一度通うようになると、それはだいぶん考え違いであることがわかってきた。「雇用保険受給資格者のしおり」によれば、失業とは「積極的に就職しようとする気持ち」と「いつでも就職できる能力(健康状態・環境など)」があり、「積極的に仕事を探しているにもかかわらず、職業に就くことができない状態」である。これだけみると抽象的だが、条件は結構厳しい。
まず登録するために求職申込書を書かなければいけないのだが、一週間の所定労働時間が20時間以上という縛り(雇用保険の加入条件)がある。こちらはサラリーマン生活がイヤだから辞めたので、そうでなければまだ続けている。だからせいぜい週に2回か3回半日勤務くらいがベストなのだが、それではダメなのだ。しかも1か月(正確には28日)ごとに提出する失業認定申告書には「ハローワークから仕事を紹介されたら、すぐに応じられますか?」という項目があり、○を付けないと失業給付はもらえない。悪くいうと「毎月ウソを書き続けなければいけない」ハメに陥る。
さらにいったん申請すると、自己都合退職の場合3か月間給付制限期間というものがあり、失業給付だけでなく年金も支給されない、まったくの無給状態に置かれる。貯金を取り崩さざるをえないが、こんな事態は想定していなかった。在職中、まだ年金はいらないのに勝手に振り込まれ、逆にこういう一番困っているときにストップするのだから酷である。
3か月後から28日ごと(毎月)のハローワーク通いが始まり、失業認定申告書を提出する。
その1か月間に2回以上求職活動をする必要がある。アルバイトのための履歴書提出や面接は当然求職活動にカウントされるだろうと思ったら、アルバイトではダメだそうで驚いた。またハローワークや東京しごと財団がやっているセミナー受講ならよいかと思ったら、認定されるものとされないものがあり、それはハローワークの雇用保険給付課の人でないとわからないとのことだった。あるいはセミナーの申し込み時にスタンプを押してもらえる対象かどうか、しつこく問い合わせるしかない。就職に役立つものはOKで、たんに個人の能力を伸ばすようなものはダメという原則だそうだが、よくわからない。はじめのうちは東京しごと財団の「履歴書の書き方」「面接の受け方」「求人票の見方」などのセミナーを順に回っていた。そのうち、月一度ハローワークに行った帰りに職業相談の窓口で簡単な質問をすればスタンプを1つ押してもらえることがわかった。時間効率もよいのでそうすることにした。またシルバーワーク(注 シルバー人材センターとは別の組織)という区が運営する無料職業紹介・相談窓口があるので、そこに月1回顔を出して、求職に関する雑談をすればスタンプを押してもらえるのでそうすることにした。ただシルバーワークがあまり有名でないこともあり、初めのころ給付課の窓口の人がわからないことがあり苦労したこともあった。
こういう具合で結構面倒なので期間半ばで脱落する人もいる。
各種セミナーのチラシ
次に失業認定申告書に記入するものとして、当該期間のパート・アルバイトなどの申告がある。無休のボランティアも含める厳密な申告だ。1日4時間以上は就労とみなされその日の分は失業給付が支払われない。4時間未満は内職の扱いで減額されることもあるらしい(わたくしは減額されたことがないので、基準はわからない)。夏に幼児用プールの監視人のアルバイトをしたのだが、午前3時間の日は内職、午後4時間の日は就労で給付なしという違いがあった。時給1100円だったので、4時間なら失業保険のほうが日額が高くなるため、働くとその日の手取りがかえって減る。それで3時間59分にしてくれればと思ったこともあった。ただ支給期間の計算は、手持ちが150日あった場合、支給された日数だけ減っていき、ゼロになると終了という仕組みになっているので、期間が延びるだけで総額に変化はない。こういう仕組みもよく聞いてはじめて理解できる。
就労日は○、内職日は×をカレンダーに記入して提出する。これもかなりシビアにチェックを受けた。したがって訂正印が必要になるので、印鑑は必携だった。
認定日は28日に1度なので、事前にいつなのか予測できるが、認定に行った日に翌月の失業認定申告書を渡され、そこに日時が記入されているのでそのほうが正確だ。時間はその日の受付時間内に行けば大丈夫だが、日を間違えて遅れると大変なことになる。その1か月分(28日分)丸ごと不支給となるのだ。自分が悪いのだから仕方がないのだが、てっきり翌月2か月分もらえるのだろうと思ったらそうではない。就労にともなう不支給と同様、期間が先送りになる(つまり一番最後にもらえるのだ)。そんなこんなで、離職票を受け取った4月初めに求職申込みをし、3か月の給付制限期間を経て150日なら、計算上は12月半ばにハローワーク通いが終了するはずだったが、2月初めまでかかった。最後の月は、1月下旬に終わることがわかっていたので、1月末に失業認定申告書を提出できないものか相談したが、やはり28日後でないとダメとのことで最後のハローワーク通いは2月初めとなった。
これでやっと年金への復帰だと思ったら、もうひとつ驚くできごとがあった。ハローワークから年金事務所へ「1月末に失業保険支給が終了した」という通知は2月か3月に届くので、給付制限期間3か月分の支払いは4月になるというのだ。つまり2月支払い分が通常の半額くらいに減額したうえ、3月もふたたび無給になるというのだ。この時期も生活が厳しい。
ただし年金の未払いは3か月でなく4か月分になっていた。後になって返金を求められ(これを「支払調整額」と呼ぶ)ても困るので、理由を聞いてみた。年金事務所としては受給資格決定の通知をハローワークから受け取るのが前年5月なので、5月から5か月分(150日)年金不支給とする。すると10月から年金が復活するはずだが、ハローワークから支給終了の通知が届くのは2月なので2月分から支給復活となり、そのあいだの10月から1月までの4か月分が過去分の支払いになるとのことだった。前年10月にわかっているのなら3月に支払ってくれればよいのに、年金支払いは偶数月ということで4月になるらしい。ハローワークと年金事務所、どちらも厚労省管轄の組織間での連絡の問題なのにスムーズでない印象がある。その他年金事務所では、1年前の3月分の高年齢雇用給付金の支払い過ぎを過去分支払と同時に「支給調整」するという問題もあったのだが、バカバカしくて書く気がしない。
なお制度の上では非人間的で受給者の立場に立っていないと思うことがいろいろあったが、ハローワークの窓口の人びとは皆さん、低姿勢で親切な人ばかりだった。
上記は、個人的体験にもとづいて書いているので、勘違いや理解不足もあるかもしれないということを付言しておく。再就職に成功した人の手当や教育訓練給付を受けた人は、さらに悲劇や笑い話を体験されたかもしれない。
以上、1年弱の体験談である。
わたくしの場合は、フルタイムに近い仕事をする気はさらさらなかったが、いまや男性の場合、60~64歳の76.8%、65~69歳の53.0%、70~74歳の32.5%が働いている時代(総務省労働力調査(基本集計)2016年平均)である。たまたまいまは雇用状況がよい時期に当たるが、高齢者で就業したいという方にはこの制度、そしてハローワークは使い出があると思われる。