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集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

「光が丘学校跡地利用を考える会」のキックオフ

2009年10月23日 | 集会報告
2010年4月に光が丘地域の小学校8校が4校に統廃合したあとの跡地利用問題で、練馬区が、4校のうち2校を産業振興のため民間企業を誘致(民間貸与)するという素案を発表したのは9月11日、さらに、今後住民の修正要求を受け付ける場はいっさい設けないと驚くべき回答を行ったのは9月24―10月2日の説明会でのことだった。
10月18日(日)夜、区の姿勢に疑問をもつ区民40人が光が丘地区区民館に集まった。

まずこの会を呼びかけた世話人から、この間の具体的な活動の経過報告があった。
企業誘致の見直しを求め、住民や学校関係者の理解を得られるスケジュールへの見直しを求める区議会宛陳情を10月9日に提出し、賛同署名を集めていること、この問題を扱う区議会企画総務委員会の議員に要請したこと、16日に区役所の担当課である企画課と都市計画課を訪れ質疑を行ったこと、光が丘7小跡地は10年後に病院建替え関連用地とされているが、一方の当事者である日大光が丘病院にヒアリングしたこと、などである。
その結果いくつかのことが判明した。企画課は、管理組合など住民の組織から要望があれば説明会を行う、要望の高い老人施設への転用については、改修費用も新築費用も十数億円で大差ない、と説明した。
都市計画課から1984年の光が丘の都市計画(変更)書面を入手した。これによると光が丘の103ha、住宅10690戸(予定)一帯には「一団地の住宅施設」という枠がかかっており、「配置の方針」は、公共的施設(道路、公園及び緑地、その他の公共施設)、公益的施設(学校、地区区民館、消防署、店舗施設1ヵ所など)、住宅の3種類しかない。アニメ産業など企業の事務所が「その他の公共施設」や「公益的施設」に含まれるのか疑問だ。計画変更は区ではなく東京都が決定する。なお2小と7小を含む周辺地域の建ぺい率は40%、容積率は190%である。
日大光が丘病院は、あと10年ほどで区との貸与契約が切れる。庶務課の担当者は「建物が狭く、大会議室もなく使いにくい。駐車スペースも手狭であることは事実だ。しかし10年後に現在地で建て直すとか、建替え用地が7小跡地ということは区とまったく話したことがない」とのことだった。
素案になる前の段階で、学校跡施設活用検討会議が今年3月に報告書を提出した。報告書と区の素案を比較すると、かなりのギャップがある。報告書の「学校跡施設に求められる機能」には「地域活動・文化振興」「教育・人材機能」「生活支援」「防災」など7つの機能が掲げられており、「産業振興」はそのひとつに過ぎない。16pの「校舎の構成例」をみても文化芸術活動支援施設、子育て支援施設、高齢者支援施設など11例の1つに過ぎない。それなのに、素案では4校のうち2校(10年の暫定利用含む)入っておりバランスを欠く
検討会議では、生涯学習施設、デイサービスセンターなど21の活用用途(施設)を取り上げ、8つの視点から3段階評価している。「IT、アニメ等の産業支援施設」はCが2つあり、それほど評価が高いとはいえない。一方、デイサービスや団塊世代向けの生涯学習施設は非常に評価が高い。
また産業振興の活用事例が7つ紹介されている。区やNPOが運営しているところが多く、民間会社は世田谷ものづくり学校イデーアールプロジェクトのみである。しかしこの会社はこのプロジェクトのために設立された会社で、既存の民間会社に貸与するのは練馬区しかない。そもそも文部科学省の「廃校後既存建物の主な活用用途」の調査でも、1376件のうち創業支援施設は8件(0.6%)にすぎない。
検討会議の11人の委員名簿をみると、光が丘の住民と確認できたのは2人だけだった。また住民の希望や意見を聴取したこともないはずだ。

この集まりには複数の区議会議員が参加していて、次のような説明があった。
企画総務委員会は、自民3、公明3、民主党練馬クラブ、民主区民クラブ、共産、社民・市民の声・ふくしフォーラムが各1で計10議員が所属する。素案の審議はまだ1度しかやっていない。産業育成の観点から明確に賛成しているのは自民のみ。公明の区議で「特養施設は足りないし、待機児童もあふれているのに、なぜこんな素案なのか」と発言した人もいる。共産から「少人数学級は全国の流れになっている」との意見表明があった。
素案は議決事項ではなく、区の報告事項なので議決は行わない。ただ区議会であまりにも多くの疑問が出れば、行政は強行できないだろう。
説明会のお知らせは、自治会・管理組合に届いていない。区報に一度掲載されただけだ。したがってほとんどの地域住民はこの素案を知らない
たしかに検討会議の報告書と素案の間には大きいギャップがある。そのことを企画課長に質すと、「委員から報告書をセレクトしてまとめてよいと言われた」と答えた。しかしそんなことは報告書のどこにも書かれていない。
区は産業振興により民間企業の税収を期待しているようだが、法人住民税は直接区に入るわけではない。いったん都の歳入になり財政調整というかたちで区に配分される。
この素案は、区全体の視点や区政の視点ばかりで、光が丘のまちづくりという視点が欠落している。案としての欠陥がある。また「一団地」という都市計画のしばりは強力だ。光が丘3小、7小の民間利用は用途変更も伴う。一団地の計画そのものを変更するか地区計画に分けて修正する必要がある。最終的には条例変更も必要になる。都市計画変更には、手続き上いろんな段階で住民の合意や意見提出が必要になるはずだ。住民にとってどういう施設が必要か、ぜひ地域から声を上げてほしい。
担当の企画課長は昨年秋まで都市計画課長を務めた人なのでそういうことはわかっているはずなのだが。
11月19日(木)10時の閉会中審査で、区から説明会やパブリックコメントの報告、陳情の審査が行われる予定だ。
  
住民から多くの疑問や要望がでたが、典型的な発言を紹介する。
3小の近くのマンションで、廊下に掲示された習字がみえるような、また、声をかけると子どもと話ができそうな距離に住んでいる。それが企業の事務所になるのはショックだ。行政にこんな目にあうのは生まれて初めてのことだ。
昨日は防災訓練、今日は防災体験会があり、おばあちゃんを非常用階段避難車で下へおろした。自治会の機関紙に「ぐらっと来たら3小に逃げよう」と書いてきた。ところがこの素案には、体育館や校舎を避難拠点にすることを誘致企業の募集条件にするとは一言も書かれていない。訓練、防災倉庫など多くの蓄積はいったいどうなるのか。区は「災害はいつ起きても不思議ではない」とキャンペーンを張っているのに、憤激に耐えない
そもそも小学校の統廃合計画がずさんだった。来年38人以上のクラスが1小で5クラス、3小で2クラス発生する。ヨーロッパでは1校200人規模、1クラス20人以下が当たり前だ。子どもの視点をまったく考慮していない。また統合準備会で、区は建物の改修や増築をするには地権者全員の承諾が必要なので、事実上できないと説明していた。
統廃合のとき、教育長らは跡地利用について「住民のみなさんと話し合って決めていく」と説明した。それが無視され腹立たしい。跡地が子どもの学校であったことを考慮した利用計画を立ててほしい。
知り合いに聞いてみると「全然知らない。学校跡地は老人施設になるんでしょう」と皆いう。こんな素案が出ていることはほとんどの人が知らない。住民の意見を聞かず区が勝手に決めるとは腹立たしい
練馬区は8月1日長期計画(2010―14年度)(素案)を発表した。5つのねりま未来プロジェクトのひとつにアニメプロジェクトが入っており、指標(モノサシ)として区内のアニメ関連企業の従業者数を2000年度の1980人から06年度に2500人にする計画を立てている。光が丘とどう関係するかチェックする必要がある。

最後に、この素案に、住民の意見を取り入れることを求める「光が丘学校跡地利用を考える会」を発足させることを参加者一同で決議した。
 (連絡先:mirai.hikarigaoka@gmail.com )

☆検討会議の資料のなかに他区や他の自治体の事例が紹介されている。道頓堀の近くで演劇に特化した精華小劇場(旧・大阪市立精華小学校)、人形劇・児童劇・落語など芸能文化の総合拠点・芸能花伝舎(旧・新宿区立淀橋第三小学校)、祇園祭も含めた芸術振興の拠点施設・京都芸術センター(旧・京都市立明倫小学校)、地域開放型画廊や日展会員のアトリエのギャラリー・野月舎(鹿児島県吹上町立野首小学校)などワクワクするような施設がいくつもある。
このブログで紹介した東京おもちゃ博物館も、旧・新宿区立四谷第四小学校の校舎を使いNPO法人日本グッド・トイ委員会が運営する施設だった。それぞれ学校跡地であることを意識したプランである。
☆10月16日(金)の日経朝刊・東京面(37面)に「品川区の八潮団地周辺 旧校舎を高齢者施設に」という記事が掲載された。品川区は、2校の跡地を高齢者向け活動施設と特養に転用することを決定、改修費用は25億円とある。「高島平・光が丘も転用に」という小見出しがあり、板橋区は跡地を高齢者の運動施設や保健施設に転用し、改修費用は十数億円を投じるそうだ。練馬区もこういう事例を参考にしてほしい。



10月25日一部修正
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