今年も3.1独立運動記念日に合わせた日韓連帯集会が開催された。今年は日本国内で選挙の結果如何では憲法が「改正」されるかもしれないという危機の年なので集会名は「3・1朝鮮独立運動97周年 戦争法の廃止と朝鮮半島の平和を求める2・27日韓連帯集会」(主催2016 3・1集会実行委員会 参加130人)である。わたくしがはじめて参加したのは2008年だったので、8回目になる。会場はずっと文京区民センターの大きな集会室だったが、今年は3月末まで耐震工事中とのことで、まだ新しい上野区民館だった。
この1年、米韓連合司令部によるピョンヤン制圧まで含めた5015作戦計画の策定、水爆実験やロケット発射に対する制裁論議、ケソン工業団地閉鎖など、東アジアの緊張が高まった。日本でも戦争法成立、辺野古新基地建設など軍事強化が新たな段階に進み、韓国とのあいだでは被害当事者を無視した「慰安婦」合意を発表した。
メインの講演は毎月議員会館前で総がかり行動に取り組む高田健さんだった。高田さんの講演を中心に紹介する。
■講演 2016年・安倍政権の動向
戦争法・憲法改悪の動きとどう闘うか
高田 健さん(許すな!憲法改悪・市民連絡会事務局長)
昨年9月19日深夜2時半、戦争法が強行成立した。そのときわたしは国会前で「憲法違反!」と叫び続けていた。翌朝9時大勢の市民が集まった。このような事態を迎えるとふつう運動は萎んでしまう。しかし反対運動は半年後のいまも全国でずっと続いている。多くの憲法学者と日弁連が違憲だという戦争法と、憲法そのものは変わったわけではないので憲法とが並存する奇妙な状態がいまの状況だ。この矛盾を解消するには、憲法を変えるか戦争法を廃止するか、どちらかしかない。
3月29日に閣議決定すれば戦争法が施行される。すると日本は海外で戦争ができ、集団的自衛権を一部使えるようになる。安倍は昨年「国際情勢が求めているから急いで成立させる必要がある」と説明した。それは南スーダンのPKOのことで、今年5月にも発動されるといわれた。しかしいまでは5月でなく11月といわれている。半年も余裕があるのならあのときもっと国会で議論を続けるべきだった。先送りしたのは7月の参議院選挙のせいだといわれる。自衛隊がかけつけ警護し10-12歳の少年兵と戦ったらどうなるか。また自衛隊員が戦闘で死亡したらどうなるか。世論がこわくて先延ばししたのだが、行き当たりばったりと批判されても仕方がない。
イラクのときにはアメリカからどんなに派兵を迫られても「憲法9条があるからできない」といって断り、非戦闘地域のサマワに派兵した。しかし戦争法が成立したいまは断れない。朝鮮半島で緊張が高まり、アメリカから出動を要請されたときに、断れるのか。今年3月29日以降はこれまでの延長ではない。どこでも戦争ができる国になり、大変なところでわたしたちは生きている。いま戦争法を廃止しないといけない。
南スーダンの難民キャンプを政府軍が襲うという事態が発生した。自衛隊がかけつけ警護をすると、政府軍と戦うことになる。しかしいまは政府や準政府とは戦えないことになっている。いまはまださまざまな制約がある。だから安倍は憲法を変えると言い出した。
●緊急事態条項附加の改憲
国会開会の冒頭から首相が憲法改正を言い続けるのは異例のことだ。ただ、いきなり9条改正ではなく、憲法に緊急事態条項を附加するといっている。
自民党が挙げる理由は3つか4つだ。
まず福島出身の佐藤正久議員は「原発事故のとき被災地でガソリン不足が深刻だった。郡山まで行ったタンクローリーの運転手が、南相馬市に行こうとしなかった。憲法に緊急事態条項があれば「行け」と命令できた」と発言した。しかし憲法18条で「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない」と、そんなことはできないことになっている。この条文は徴兵制を敷けない根拠にもなっている。石破茂は「国を守るのが苦役という考えは、考え方そのものが間違っている」というが・・・。
次に衆議院解散中に天災や侵略があったときにはどうするのか、という論法がある。しかし憲法54条2項、3項の規定があり、参議院の緊急集会を開催できることになっている。衆参同日選挙の場合という声があるが、参議院は半数ずつの改選である。
次に、大震災が起きたときや大きなテロを受けたときという議論がある。これに対しては災害対策基本法があり、もしそれが不十分なのなら基本法を修正、充実させれば法的には解決する。
最後に、日本に対する急迫不正の侵害が起きたときという議論をする人がいる。この問題に対しては自衛隊法で専守防衛すると、自民党自身がずっと主張してきた。だから二重基準なのである。
この問題に関しては、敗戦直後の1946年7月の日本国憲法制定時の帝国議会で金森徳次郎国務大臣が「言葉を非常ということにかりて、その大いなる途を残しておきますなら、(略)破壊されるおそれが絶無とは断言しがたい(略)したがってこの憲法は左様な非常なる特例をもって――いわば行政権の自由判断の余地をできるだけ少なくするように考えたわけであります」と答弁している。15年戦争の反省がすでに憲法に含まれているわけだ。この闘いは、戦争法を廃止すると同時に、憲法の全面破壊を防ぐ闘いでもある。
●2015年の運動の特徴
ひとつは総がかりの行動が成立したことだ。60年代以降運動はいくつかに分かれてきた。たとえば原発反対でも3つのセンターがある。それが安倍を本当に止めるための団結・連携のため2014年12月に総がかり行動実行委員会が成立した。あらたに生まれたシールズ、ママの会、学者の会なども連携している。また日弁連は、自民・高村、公明・山口なども所属する職能団体で政治的行動がむずかしいが、それを越えて連帯してくれている。その結果、本当に安倍政権を倒せるのではないかと思っている。
もうひとつの特徴は非暴力市民行動に徹したことだ。大きな怪我人を出さず、逮捕者は出たものの長期拘留はなかった。参加した人の自覚によるところもあるが、既成の労働組合、民主団体の力が大きかった。そうしたなか非組織の自立した市民が大量に現れた。昨年、意見広告を7回打った。新聞に出た翌日大量の電話がかかってくる。その大半は「わたしも国会前に行きたいが最寄駅はどこか、行き方はどうすればよいか」というものだ。また「デモに参加するのに何か資格はいるのか」と聞くひともいた。これを生かせばもっともっと運動を大きくできる。
●今後の課題
また集会・デモを行うだけでなく、議会の政党との連携も必要だ。2月19日野党5党の党首会談が開かれ、戦争法廃止法案を共同提出した。また7月の参議院選挙をめざし選挙協力することになったが、戦後史上まれにみるできごとだ。ただし統一候補を定めても、そのあと当選させなければ意味がない。そのためには他人事にしないことだ。
戦争法廃止の運動はようやくここまで来た。あと5か月である。
ところでこの運動は弱点もいろいろもつ。たとえば憲法の運動なので、日本国憲法に縛られがちという問題がある。日本国民の一国的な運動になりがちだ。しかし東アジア、とりわけ朝鮮半島の人々にも共通の課題だという視点を入れて運動を続けていきたい。
■韓国ゲストから
韓日民衆の連帯強化で東アジアの平和を実現しよう!
イ・チャンボクさん(6・15南北共同宣言実践南側本部常任代表議長・元国会議員)
わたくしがはじめてこの民衆連帯集会に参加したのは1996年なのでちょうど20年前のことだ。「東アジアの平和」、とりわけ朝鮮半島の危機を回避する問題は一貫して最重要のテーマだった。
しかしいま韓国への米軍のサード(THAAD)配備計画やケソン工業団地閉鎖で、緊張と危機は最高レベルに達している。また韓日のあいだでは、被害当事者の意思を反映しない昨年末の「慰安婦問題の合意」、教科書問題、独島問題などが解決されていない。
わたしたちは本質的な問題に目を向けるべきだ。それは朝鮮半島の平和と安定だ。根本的な対策は、朝鮮戦争を一時中断させている停戦協定を破棄し、新たに平和協定を締結することだ。そうすれば北の核問題も自ずと解決する日が開かれていく。
2月の米中外相会談で王毅外相は「朝鮮半島の非核化と、朝鮮戦争の休戦協定から平和協定への転換を同時に進める」ことを提案した。平和協定の可能性に公式に言及したことは重要だ。
わたしたちは3―4月の米韓軍事演習に反対し、停戦協定記念日の7月27日から8月15日まで朝鮮半島の平和と統一のための大衆運動を進める予定だ。韓日民衆の固い連帯で、朝鮮半島の安定、東アジアの平和を作っていこう。
以下、特別報告とアピールのスピーチがあった。印象に残った部分を紹介する。
■特別報告
沖縄・辺野古新基地建設反対 青木初子さん(沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック)
沖縄には戦時中、朝鮮人軍夫が1万5000人から2万人連行された。普天間には青丘之塔、久米島には痛恨の碑、渡嘉敷島には従軍「慰安婦」・�樮奉奇(ペ・ポンギ)さんの慰霊モニュメントがある。
かつて「琉球人、朝鮮人お断り」という差別掲示があったが、沖縄と朝鮮は似たところがある。沖縄では「改姓改革」、朝鮮では「創氏改名」があり、沖縄は琉球処分、朝鮮は韓国併合を蒙った。日本の沖縄への差別的対応はいまも続く。オスプレイ配備もそうだし「建白書」を政府が無視したこともそうだ。
辺野古阻止の運動は沖縄の尊厳を賭けた闘いだ。ゲート前座り込みは600日を超えた。
日本軍「慰安婦」問題の真の解決を 中原道子さん(VAWW RAC共同代表)
戦争の歴史に女性は出てこなかったが、最近になってやっと少し出てきた。ノルマンディ上陸作戦はフランス解放の輝かしい戦いといわれた。じつはアメリカ兵による強姦の場だった。またベルリンはソ連軍に解放されたといわれるが、ソ連兵による強姦が多発した。
こういう問題のひとつが日本軍「慰安婦」問題だった。
昨年12月28日、日韓の外相が会見し「合意」を発表した。しかしこれでは解決しないことを、この問題を知っている人ならすぐわかった。
アメリカのケリー国務長官やアーネスト報道官は歓迎の意を表明したが、米国主導の「合意」だったことがわかる。
わたしたちの会では1月に声明を発表した。まず加害の事実認定も行わない。岸田外相は「慰安婦の強制連行はなかった」というが、オランダ人女性への裁判で認定されている。政府としての謝罪も行わないし、再発防止のための教育も行わない。日本の教科書からこの問題は削除されている。
さらに、被害女性にどうやって「合意」を伝えようとするのか。勝手に「読め」とでもいうのだろうか。女性たちの名誉と尊厳の回復以外に解決はありえない。
■アピール
朝鮮学校に「高校無償化」の適用を! 森本孝子さん(「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会)
2013年2月20日、政府は文科省令そのものを変更し、朝鮮学校への無償化基準そのものをなくすという暴挙に出た。こうした事態に全国で訴訟を起こし、毎週文科省前で金曜行動を行い抗議している。今年は2月13日大阪で全国一斉行動・全国集会、19日に文科省行動、20日に東京集会を行った。
海外ではロケット発射と報道されるのに、日本では「事実上の弾道ミサイル」と呼び危機を煽っている。自治体の補助金についても削減される現実があるが、2月22日には夕刊フジの1面に「朝鮮学校の補助金中止通達へ 日本政府、北への新たな制裁措置」という大見出しが躍って驚いた。
バッシングの相手は共和国だが、犠牲になっているのは高校生たちだ。3月2日には東京の「無償化」裁判で第9回口頭弁論が行われる。多くの方の傍聴をお願いしたい。
夕刊フジを手にアピール
☆わたくしも2月20日に田町交通ビルで開催された「朝鮮学校で学ぶ権利を!東京集会」に参加し、30代弁護士3人の体験を踏まえたスピーチを聞いた。高校の途中からアメリカに留学した人は、朝鮮学校が世界標準を先取りする多文化共生の民族教育を実践していると述べた。在日で朝鮮学校出身の弁護士はダブルスクールで学ばざるをえなかったこと、司法試験の一次試験が免除されなかった「差別」を訴えた。中学生のときに丹波マンガン記念館の李貞鎬さんから聞き書きをした弁護士は、「朝鮮学校を訪問すると非常にオープンなのに、むしろ自分のほうが壁をつくっていたことに気づいた」と語った。それぞれ新鮮な視点だった。
☆毎月19日の総がかり行動の議員会館前集会にはほぼ参加している。2月19日には5党から野党共闘や戦争法廃止法案共同提出の話もあったが、憲法学者の清水雅彦さん(日本体育大学)から自民党改憲案の緊急事態条項はナチスの全権委任法と同じなので、絶対阻止しないといけないというアピールがあった。
この1年、米韓連合司令部によるピョンヤン制圧まで含めた5015作戦計画の策定、水爆実験やロケット発射に対する制裁論議、ケソン工業団地閉鎖など、東アジアの緊張が高まった。日本でも戦争法成立、辺野古新基地建設など軍事強化が新たな段階に進み、韓国とのあいだでは被害当事者を無視した「慰安婦」合意を発表した。
メインの講演は毎月議員会館前で総がかり行動に取り組む高田健さんだった。高田さんの講演を中心に紹介する。
■講演 2016年・安倍政権の動向
戦争法・憲法改悪の動きとどう闘うか
高田 健さん(許すな!憲法改悪・市民連絡会事務局長)
昨年9月19日深夜2時半、戦争法が強行成立した。そのときわたしは国会前で「憲法違反!」と叫び続けていた。翌朝9時大勢の市民が集まった。このような事態を迎えるとふつう運動は萎んでしまう。しかし反対運動は半年後のいまも全国でずっと続いている。多くの憲法学者と日弁連が違憲だという戦争法と、憲法そのものは変わったわけではないので憲法とが並存する奇妙な状態がいまの状況だ。この矛盾を解消するには、憲法を変えるか戦争法を廃止するか、どちらかしかない。
3月29日に閣議決定すれば戦争法が施行される。すると日本は海外で戦争ができ、集団的自衛権を一部使えるようになる。安倍は昨年「国際情勢が求めているから急いで成立させる必要がある」と説明した。それは南スーダンのPKOのことで、今年5月にも発動されるといわれた。しかしいまでは5月でなく11月といわれている。半年も余裕があるのならあのときもっと国会で議論を続けるべきだった。先送りしたのは7月の参議院選挙のせいだといわれる。自衛隊がかけつけ警護し10-12歳の少年兵と戦ったらどうなるか。また自衛隊員が戦闘で死亡したらどうなるか。世論がこわくて先延ばししたのだが、行き当たりばったりと批判されても仕方がない。
イラクのときにはアメリカからどんなに派兵を迫られても「憲法9条があるからできない」といって断り、非戦闘地域のサマワに派兵した。しかし戦争法が成立したいまは断れない。朝鮮半島で緊張が高まり、アメリカから出動を要請されたときに、断れるのか。今年3月29日以降はこれまでの延長ではない。どこでも戦争ができる国になり、大変なところでわたしたちは生きている。いま戦争法を廃止しないといけない。
南スーダンの難民キャンプを政府軍が襲うという事態が発生した。自衛隊がかけつけ警護をすると、政府軍と戦うことになる。しかしいまは政府や準政府とは戦えないことになっている。いまはまださまざまな制約がある。だから安倍は憲法を変えると言い出した。
●緊急事態条項附加の改憲
国会開会の冒頭から首相が憲法改正を言い続けるのは異例のことだ。ただ、いきなり9条改正ではなく、憲法に緊急事態条項を附加するといっている。
自民党が挙げる理由は3つか4つだ。
まず福島出身の佐藤正久議員は「原発事故のとき被災地でガソリン不足が深刻だった。郡山まで行ったタンクローリーの運転手が、南相馬市に行こうとしなかった。憲法に緊急事態条項があれば「行け」と命令できた」と発言した。しかし憲法18条で「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない」と、そんなことはできないことになっている。この条文は徴兵制を敷けない根拠にもなっている。石破茂は「国を守るのが苦役という考えは、考え方そのものが間違っている」というが・・・。
次に衆議院解散中に天災や侵略があったときにはどうするのか、という論法がある。しかし憲法54条2項、3項の規定があり、参議院の緊急集会を開催できることになっている。衆参同日選挙の場合という声があるが、参議院は半数ずつの改選である。
次に、大震災が起きたときや大きなテロを受けたときという議論がある。これに対しては災害対策基本法があり、もしそれが不十分なのなら基本法を修正、充実させれば法的には解決する。
最後に、日本に対する急迫不正の侵害が起きたときという議論をする人がいる。この問題に対しては自衛隊法で専守防衛すると、自民党自身がずっと主張してきた。だから二重基準なのである。
この問題に関しては、敗戦直後の1946年7月の日本国憲法制定時の帝国議会で金森徳次郎国務大臣が「言葉を非常ということにかりて、その大いなる途を残しておきますなら、(略)破壊されるおそれが絶無とは断言しがたい(略)したがってこの憲法は左様な非常なる特例をもって――いわば行政権の自由判断の余地をできるだけ少なくするように考えたわけであります」と答弁している。15年戦争の反省がすでに憲法に含まれているわけだ。この闘いは、戦争法を廃止すると同時に、憲法の全面破壊を防ぐ闘いでもある。
●2015年の運動の特徴
ひとつは総がかりの行動が成立したことだ。60年代以降運動はいくつかに分かれてきた。たとえば原発反対でも3つのセンターがある。それが安倍を本当に止めるための団結・連携のため2014年12月に総がかり行動実行委員会が成立した。あらたに生まれたシールズ、ママの会、学者の会なども連携している。また日弁連は、自民・高村、公明・山口なども所属する職能団体で政治的行動がむずかしいが、それを越えて連帯してくれている。その結果、本当に安倍政権を倒せるのではないかと思っている。
もうひとつの特徴は非暴力市民行動に徹したことだ。大きな怪我人を出さず、逮捕者は出たものの長期拘留はなかった。参加した人の自覚によるところもあるが、既成の労働組合、民主団体の力が大きかった。そうしたなか非組織の自立した市民が大量に現れた。昨年、意見広告を7回打った。新聞に出た翌日大量の電話がかかってくる。その大半は「わたしも国会前に行きたいが最寄駅はどこか、行き方はどうすればよいか」というものだ。また「デモに参加するのに何か資格はいるのか」と聞くひともいた。これを生かせばもっともっと運動を大きくできる。
●今後の課題
また集会・デモを行うだけでなく、議会の政党との連携も必要だ。2月19日野党5党の党首会談が開かれ、戦争法廃止法案を共同提出した。また7月の参議院選挙をめざし選挙協力することになったが、戦後史上まれにみるできごとだ。ただし統一候補を定めても、そのあと当選させなければ意味がない。そのためには他人事にしないことだ。
戦争法廃止の運動はようやくここまで来た。あと5か月である。
ところでこの運動は弱点もいろいろもつ。たとえば憲法の運動なので、日本国憲法に縛られがちという問題がある。日本国民の一国的な運動になりがちだ。しかし東アジア、とりわけ朝鮮半島の人々にも共通の課題だという視点を入れて運動を続けていきたい。
■韓国ゲストから
韓日民衆の連帯強化で東アジアの平和を実現しよう!
イ・チャンボクさん(6・15南北共同宣言実践南側本部常任代表議長・元国会議員)
わたくしがはじめてこの民衆連帯集会に参加したのは1996年なのでちょうど20年前のことだ。「東アジアの平和」、とりわけ朝鮮半島の危機を回避する問題は一貫して最重要のテーマだった。
しかしいま韓国への米軍のサード(THAAD)配備計画やケソン工業団地閉鎖で、緊張と危機は最高レベルに達している。また韓日のあいだでは、被害当事者の意思を反映しない昨年末の「慰安婦問題の合意」、教科書問題、独島問題などが解決されていない。
わたしたちは本質的な問題に目を向けるべきだ。それは朝鮮半島の平和と安定だ。根本的な対策は、朝鮮戦争を一時中断させている停戦協定を破棄し、新たに平和協定を締結することだ。そうすれば北の核問題も自ずと解決する日が開かれていく。
2月の米中外相会談で王毅外相は「朝鮮半島の非核化と、朝鮮戦争の休戦協定から平和協定への転換を同時に進める」ことを提案した。平和協定の可能性に公式に言及したことは重要だ。
わたしたちは3―4月の米韓軍事演習に反対し、停戦協定記念日の7月27日から8月15日まで朝鮮半島の平和と統一のための大衆運動を進める予定だ。韓日民衆の固い連帯で、朝鮮半島の安定、東アジアの平和を作っていこう。
以下、特別報告とアピールのスピーチがあった。印象に残った部分を紹介する。
■特別報告
沖縄・辺野古新基地建設反対 青木初子さん(沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック)
沖縄には戦時中、朝鮮人軍夫が1万5000人から2万人連行された。普天間には青丘之塔、久米島には痛恨の碑、渡嘉敷島には従軍「慰安婦」・�樮奉奇(ペ・ポンギ)さんの慰霊モニュメントがある。
かつて「琉球人、朝鮮人お断り」という差別掲示があったが、沖縄と朝鮮は似たところがある。沖縄では「改姓改革」、朝鮮では「創氏改名」があり、沖縄は琉球処分、朝鮮は韓国併合を蒙った。日本の沖縄への差別的対応はいまも続く。オスプレイ配備もそうだし「建白書」を政府が無視したこともそうだ。
辺野古阻止の運動は沖縄の尊厳を賭けた闘いだ。ゲート前座り込みは600日を超えた。
日本軍「慰安婦」問題の真の解決を 中原道子さん(VAWW RAC共同代表)
戦争の歴史に女性は出てこなかったが、最近になってやっと少し出てきた。ノルマンディ上陸作戦はフランス解放の輝かしい戦いといわれた。じつはアメリカ兵による強姦の場だった。またベルリンはソ連軍に解放されたといわれるが、ソ連兵による強姦が多発した。
こういう問題のひとつが日本軍「慰安婦」問題だった。
昨年12月28日、日韓の外相が会見し「合意」を発表した。しかしこれでは解決しないことを、この問題を知っている人ならすぐわかった。
アメリカのケリー国務長官やアーネスト報道官は歓迎の意を表明したが、米国主導の「合意」だったことがわかる。
わたしたちの会では1月に声明を発表した。まず加害の事実認定も行わない。岸田外相は「慰安婦の強制連行はなかった」というが、オランダ人女性への裁判で認定されている。政府としての謝罪も行わないし、再発防止のための教育も行わない。日本の教科書からこの問題は削除されている。
さらに、被害女性にどうやって「合意」を伝えようとするのか。勝手に「読め」とでもいうのだろうか。女性たちの名誉と尊厳の回復以外に解決はありえない。
■アピール
朝鮮学校に「高校無償化」の適用を! 森本孝子さん(「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会)
2013年2月20日、政府は文科省令そのものを変更し、朝鮮学校への無償化基準そのものをなくすという暴挙に出た。こうした事態に全国で訴訟を起こし、毎週文科省前で金曜行動を行い抗議している。今年は2月13日大阪で全国一斉行動・全国集会、19日に文科省行動、20日に東京集会を行った。
海外ではロケット発射と報道されるのに、日本では「事実上の弾道ミサイル」と呼び危機を煽っている。自治体の補助金についても削減される現実があるが、2月22日には夕刊フジの1面に「朝鮮学校の補助金中止通達へ 日本政府、北への新たな制裁措置」という大見出しが躍って驚いた。
バッシングの相手は共和国だが、犠牲になっているのは高校生たちだ。3月2日には東京の「無償化」裁判で第9回口頭弁論が行われる。多くの方の傍聴をお願いしたい。
夕刊フジを手にアピール
☆わたくしも2月20日に田町交通ビルで開催された「朝鮮学校で学ぶ権利を!東京集会」に参加し、30代弁護士3人の体験を踏まえたスピーチを聞いた。高校の途中からアメリカに留学した人は、朝鮮学校が世界標準を先取りする多文化共生の民族教育を実践していると述べた。在日で朝鮮学校出身の弁護士はダブルスクールで学ばざるをえなかったこと、司法試験の一次試験が免除されなかった「差別」を訴えた。中学生のときに丹波マンガン記念館の李貞鎬さんから聞き書きをした弁護士は、「朝鮮学校を訪問すると非常にオープンなのに、むしろ自分のほうが壁をつくっていたことに気づいた」と語った。それぞれ新鮮な視点だった。
☆毎月19日の総がかり行動の議員会館前集会にはほぼ参加している。2月19日には5党から野党共闘や戦争法廃止法案共同提出の話もあったが、憲法学者の清水雅彦さん(日本体育大学)から自民党改憲案の緊急事態条項はナチスの全権委任法と同じなので、絶対阻止しないといけないというアピールがあった。