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集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」

半田滋の「日本は戦争をするのか」

2015年03月15日 | 集会報告
毎年恒例の3・1朝鮮独立運動の集会が2月28日(土)夜、文京区民センターで開催された(参加170人)。96周年の今年のテーマは「戦後70年「戦争する国」を許さない!2・28日韓連帯集会」だった。安倍政権が大暴走し、昨年夏の集団的自衛権の行使容認を決めた閣議決定、その方針に基づく法案が5月の連休明けに提出されようとしている。一方、河野談話や村山談話を事実上反故にする安倍談話を8月に出すといわれる。
日本は戦争をするのか(岩波新書2014年5月)の著者・半田滋さんの講演を中心に報告する。

日本は戦争をするのか――集団的自衛権と自衛隊
              半田滋さん(東京新聞論説委員兼編集委員)

安倍首相は昨年7月集団的自衛権行使容認の閣議決定を行った。この閣議決定は海外で自衛隊が武力行使できる限定容認として受け止められていることが多い。しかしわたしは、海外での武力行使のハードルを下げる役割があることに注目したい。
かけつけ警備、後方地域支援、グレーゾーン、いずれも憲法上日本はできないとされていた。政府は、自衛隊法、防衛省設置法など14本もの法令の改正案を連休明けに提出し、一気に変えようとしている。
安倍首相は猪突猛進で進めようとしているが、国民の希望に沿った活動をしているのだろうか。たとえばISILの日本人殺害事件を思い出してみよう。安倍首相は国会答弁で「8月の湯川さん不明、11月の後藤さん不明で、官邸に情報連絡室、外務省に対策室を設置した」と述べた。また後藤さんの奥さんに身代金要求メールが12月初めに届いたことも知っていた。それなのに1月16日に中東に出かけ、17日にエジプトで2億ドル提供を約束し19日にはイスラエルで、イスラエルの旗の前でネタニヤフと並んで軍事同盟を強化すると演説した。ネタニヤフは中東のいくつかの国ではテロリストと目されている。その翌日の20日、二人の画像がインターネットに掲載された。安倍ははじめからISILを刺激することをわかっていて、中東を訪問した。二人の身柄がどうなろうが、ISILへの「強い姿勢」を示すため行ったのだ。
独裁に等しい閣議決定
安倍がこの2年で何をしたか振り返ってみよう。日本版NSCを設置し、特定秘密保護法を制定した。ただ、これらは国会で決議したことだ。そのあとはすべて閣議決定だ。閣議決定は首相も含め19人の閣僚が賛成すればすむ。もし署名を拒否すればクビにできる。だから首相の意思にほかならない。
2013年12月17日に閣議決定した国家安全保障戦略は、30pの資料の中に「積極的平和主義の「積極的」という言葉は49回も登場する。「武力行使も視野に入れる」ことを決定した。13年12月閣議決定で防衛計画大綱も変え中国をけん制するため、尖閣を念頭に陸上自衛隊に水陸機動団という米軍の海兵隊のような組織を編成することにした。さらにオスプレイを5年で17機、水陸両用車を52両購入することにした。
14年4月には武器輸出3原則を廃止し、15年2月にはODAで他国の軍隊に対する援助をしてもよいことにした。安倍首相のやり方はすべて閣議決定によるもので、これでは独裁と変わらない。9条をもっていても、もっていないのと同じということになってしまう。
来年夏の参議院選で2/3の議席を取り9条改正の発議をねらっている。スケジュールを逆算して昨年年末選挙を行ったのではないか。
●安倍首相のウソ
昨年5月からの与党協議で集団的自衛権の事例として15のケースを挙げている。この与党協議の特徴は一度も結論を出さないことだ。しかもありえないことをでっちあげて議論している。たとえば「邦人輸送中の米輸送艦の防護」で、安倍は米軍艦に助けてもらった母子の絵をよく取り上げる。しかし辻元清美議員が昨年9月国会質問で「過去に一度でも助けられたことがあるのか」と質問したら首相は「一度もない」と答弁した。さらに中谷・現防衛相は99年3月の衆院予算委員会で「米軍に断られた」と説明した。だいたい日本の自衛艦が近くにいるのなら、はじめからその船に母子を乗せて戻ればすむことだ。
次に「武力攻撃を受けている米艦艇の防護」で、石破茂元・防衛相は「友達がなぐられそうになったときに見捨てて逃げ出すのか」という例を出す。しかし国際関係では、なぜなぐられそうになっているのか理由を探るだろう。また自分が勝てる相手がどうか判断すべきである。だいたい防衛予算が日米では10倍以上違うのに、そんな米軍を守れると考えているのだろうか。
おかしな話ついでに「有事の弾道ミサイル発射警戒時の米艦艇防護」について考えてみる。想定しているのは北朝鮮のミサイルがアメリカ本土に発射されたときのことだ。地球儀をみればわかるが、西海岸のたとえばロスに飛ばすには、北海道の西からサハリン上空を通る軌道になるし、ワシントンの場合はシベリアを通る。そんなところに自衛艦は行けない
だいたい「世界最強のアメリカに戦争をしかけ、弾道ミサイルを撃ち込もうという国などあるのだろうか」。あるところでそう言ったら、「かつて、日本がしかけた」といわれたことがある。日本くらいしかそんな国はない。
昨年夏の閣議決定を超える与党協議
今回与党協議は3回行われた。いままでにないびっくりするような内容が話し合われている。集団的自衛権に日米だけでなくオーストラリアまで入れようというのだ。日米には安全保障条約があるが、日豪に取決めはない。
後方支援で「武器弾薬の補給」はしないことになっていたのに、提供しようとしている。昨年7月の閣議決定に書いていないことをやすやすと乗り越え、憲法違反の法律ができようとしている。しかし日本には憲法裁判所がないので、具体的損害が伴わなければ裁判もおこせない。つまり1人以上の死者やけが人が出ないと違憲すら問えない。
イラク攻撃のときはイラク特措法という特別な法律をつくったが、給水、道路・建物の復旧など人道支援のみだったが、これからはISIL空爆の手伝い、たとえば燃料補給や、地上軍への武器弾薬、燃料、食料補給もできるようになる。その場合自衛隊が攻撃されればどうなるのか。閣議決定では「活動を休止する」ことになっている。しかし戦場でそんなことはできない。いよいよ現地で「普通の国」のように武力行使をすることになる。
第二次朝鮮戦争の引き金に
恐ろしいのは第二次朝鮮戦争の引き金になることだ。1993年に北朝鮮が核開発を進めようとしてNPT(核拡散防止条約)からの脱退を表明したとき、米軍はヨンピョン空爆を検討し、日本に掃海艇の出動や民間港湾の借用を申し出た。しかし日本が断ったので、結局空爆を中止することになった。
その後北朝鮮は核実験に成功し、アメリカに着弾できるテポドン2を開発した。核の小型化を進め大陸間弾道弾を保有するとなるとアメリカはどうするだろう。かつて核開発をするというだけで空爆しようとしたのだから、やはり先制攻撃するのではないか。日本が法律を改正しアメリカの戦争を手助けすれば、アメリカの背中を押すことになりはしないか心配になる。もし北朝鮮が戦争にまきこまれたとき、日本には原発が54基ある。使用済み核燃料は屋根に近いプールに置かれ、かつ福井県や九州に原発が集中している。「どうぞ撃ってください」といわんばかりである。そこに日本が攻撃される可能性のある法律をつくってどうなるのか。
今国会は6月24日に閉会予定だが、8月には戦争できる法律が成立する可能性がある。さらに来年7月の参院選で与党が2/3取り憲法改正を発議する可能性もある。「国民は相当バカだ」と安倍に思われている。
自衛隊は、精密誘導できるジェイダムを搭載するF2戦闘機や空中給油機、空中警戒管制機AWACSももっているので組み合わせれば長距離爆撃機と同じことができる。また全長200mを超え、オスプレイや垂直離着陸戦闘機F35Bも搭載できる護衛艦を建造している。後方支援にとどまらず、外国を攻撃する能力をすでにもっている
●市民活動で安倍の暴走を阻止
安倍の暴走を阻止する最善の方法は国政選挙だ。しかしそれは来年夏までないので身近にあるのは4月の統一地方選だ。また市民活動で「安倍に対し、おかしいことはおかしい」と行動することが重要だ。いま戦後70年の中でいちばんきなくさくなっている。ここで見逃しては、子や孫に申し訳ない。ともにがんばりましょう。

半田さんの講演を聞いたイ・チャンボクさん((6・15南北共同宣言実践南側委員会常任代表・元国会議員)は「日本が朝鮮半島を攻撃する実力をすでに持っていると聞き、ゾッとした」と感想を漏らし「軍国主義を復活させようとする安倍政権は阻止しないといけない。その力は目覚めた市民から出てくると思う」と述べ「総がかり行動実行委員会」を称賛し、「東アジア市民平和連帯」を呼びかけた。
その後、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック許すな!憲法改悪・市民連絡会VAWW RAC日韓つながり直しキャンペーン2015、「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会」からショートスピーチがあった。

この集会の1週間前の2月21日十条の東京朝鮮中高級学校講堂で、朝鮮高校生裁判支援全国統一行動実行委員会主催の「朝鮮学校で学ぶ権利を!! 2・21全国集会」が開催された。

写真撮影は主催者の了解を得て行った
高校無償化から朝鮮学校だけが排除されてすでに丸5年になる。中井洽拉致問題担当相(当時)が無償化に横やりを入れたのが2010年2月、4月にスタートした無償化から朝鮮学校だけがはずされた。安倍政権に代わった2年前の2013年2月には文科省の省令を変更し、施行規則1-1-2の(ハ)を削除して、朝鮮学校に通う生徒に対する「無償化」法適用(私立学校や外国人学校の場合、補助金支給)の根拠そのものをなくしてしまった。卑怯で姑息なやり方だ。これに対し、大阪、愛知、広島、福岡、東京の朝鮮高校生や朝鮮学園が原告となり次々に裁判を起こした。一番早かったのは2013年1月の大阪、最後に提訴したのが2014年2月の東京で、いまから1年前のことだ。
広島では、国の代理人の弁護士は産経新聞の記事しか出してこないそうだ。裁判官もあきれて「産経に出たことが重要なのか、それとも記事内容が正しいから出しているのか」と聞くと「厳密な意味での真実性までをも保証するわけではない」と答えた。「要するにいい加減な記事というわけだが、それを反論の材料にしているのか」と重ねて問うと「そうです」と答えたそうだ。東京では、朝鮮学校と朝鮮総連の関係を問題にして、「教育への不当な支配」が論点になっているそうだ。大阪は提訴が早かったせいもありすでに立証段階にさしかかり、97%もの高率回収に成功したアンケートを提出する段階に来ている。福岡では4回の口頭弁論が終わったが国の主張は論拠に乏しい。愛知では憲法、朝鮮半島の歴史などで裁判官を説得しようとしている。
ソウルから訪日した「ウリハッキョと子どもたちを守る市民の会」のソン・ミヒさんは「まさか日朝関係を理由に子供を差別し迫害するとは本当に『野蛮中の野蛮』だ」と非難した。
今年高校を卒業する原告の高校生は「1年のときは先輩の背中のあとを必死についていった。2年のとき、無償化の問題は国による朝鮮学校生徒への差別、人権侵害であることを認識した。3年になると法廷闘争へステージが移った。原告は生徒自身で、だれも長期化が予想される裁判で国と闘うことに不安を抱いた。しかし後輩たちのことを思い、何度も文科省前行動に参加した。卒業後は大学で法律を学びたい。団結という何よりも強い力でこれからも闘っていこう」とアピールした。
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