3回のシリーズで紙上討論授業を通して、どのように生徒の意見が深まっていったか、1年の間にどのような紆余曲折があったかを紹介した。中学生にとって社会科は一般に「暗記もの」と受け止められている。しかし社会科でも、このように「考える授業」を実践することが可能なのである。客観的な情報をもとに出てきた意見は、わたしたち大人と本質的な部分では相違がないように思われる。
最終回では、中学校学習指導要領と対照し紙上討論授業の意義について触れる。裁判資料用のやや蛇足の部分である。小文字で青になっている部分は97年当時の中学校学習指導要領の引用である。
紙上討論は教育基本法、中学校学習指導要領に沿う優れた授業方法である
紙上討論は、教育基本法第八条(政治教育)「1 良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。」に合致することはもちろん「中学校学習指導要領」に沿う授業方法である。
注1:足立16中の紙上討論は1997年6月から98年3月の時期に行ったので、旧学習指導要領(1989年3月15日に告示され93年4月1日から施行)を使用した。
注2:学習指導要領は、学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)第54条の2に根拠づけられる。
1 自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力の育成を図る授業である
「考える力を身につけることができた」「考える事が、私達中学生にもできることの一つだ」「考える事が、すべての行動の始まりだと思う」「増田先生の授業を受けられなくなっても、自主的に知りたくなったし、知らなきゃいけないと思う」といった感想から「自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力」が身についたことは明らかである。
第1章 総 則
「1(前略)学校の教育活動を進めるに当たっては、自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力の育成を図るとともに、基礎的・基本的な内容の指導を徹底し、個性を生かす教育の充実に努めなければならない。」
2 民主的、平和的な国家・社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養う授業である。
「中学生の今から「事実を知る」そして「考える」、これが、これからの日本の平和、そして世界の平和につながっていく」身近で『民主主義』を学べたように思う」といった感想から、「民主的、平和的な国家・社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養う授業である」ことが見て取れる。
第2節 社会
第1 目標
広い視野に立って、我が国の国土と歴史に対する理解を深め、公民としての基礎的教養を培い、国際社会に生きる民主的、平和的な国家・社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養う。
3 「沖縄の米軍基地」の紙上討論授業は、地理的分野の目標に沿ったものである
「沖縄の米軍基地」の紙上討論授業は地理的分野・沖縄を終了した時点で行われていることに留意すべきである。
「米軍基地があるから近所の人や普二小の児童がすごく迷惑している。もし墜落したら・・・。(略)これで海に移ったら今度はサンゴや漁師達に被害が出る」「米軍基地はあってもなくても誰かが困る。(略)もし米軍基地がなくなったら、基地があるからこそ生活できている人達が困る」という感想にみられるように、沖縄県民にとっての米軍基地は「地方的特殊性」であり、米軍基地のありようを学ぶことは沖縄の「人々の生活の地域的特色を理解するための基礎を培う」うえで欠かせない事項である。
第2 各分野の目標及び内容
〔地理的分野〕
1 目標 (2) 日本や世界の各地域における人々の生活には地方的特殊性と一般的共通性のあることに気付かせ、それらを成り立たせている地理的諸条件について考えさせるとともに、人々の生活の地域的特色を理解するための基礎を培う。
また基地を抱えた生活は、「社会的条件と人々の生活の関係」に注目させ基地移転運動により「地域も変容していることに気付かせ」る一例にほかならない。
目標(4) 「自然及び社会的条件と人々の生活の関係は人間の活動によって絶えず変化し、それに伴って地域も変容していることに気付かせ、環境や資源と人々の生活とのかかわりについて考えさせる」
また敗戦後の沖縄の土地収用の歴史を知ることは、「地域の歴史的背景に留意して指導内容の構成を工夫」した例にほかならない。
「3 内容の取扱い」「(2) 配慮事項」「ア 日本や世界の人々の生活に対する生徒の興味や関心を高めるような指導に努めるとともに、地域相互の結び付きや地域の歴史的背景に留意して指導内容の構成を工夫すること」
写真は12月末の都庁前ビラ撒き
4 紙上討論は、社会の諸問題に着目させ、自ら考えようとする態度を育てる授業である
「現実の問題や、過去の問題を深く考えることができたのはよかった。深く物事を考えることの大切さと必要さを忘れないようにしようと思う」「日本の社会の現実を知った上で、自分の意見を持つということができたので、私は自分のためになったと思う。」「増田先生の授業を受けられなくなっても、自主的に知りたくなったし、知らなきゃいけないと思う」という感想から、紙上討論は「社会の諸問題に着目させ、自ら考えようとする態度を育てる」ことに成功していることがわかる。
〔公民的分野〕1 目標(2) 民主政治の意義、国民の生活の向上と経済活動とのかかわり及び現代の社会生活における個人の役割などについての理解を深めるとともに、社会の諸問題に着目させ、自ら考えようとする態度を育てる。
上記は「公民的分野」の目標だが、総則において「各教科等及び各学年相互間の関連を図り、系統的、発展的な指導ができるようにする」と記されているので地理の授業で「公民的分野」の目標を達成することに問題はない。
第6 指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項
1 学校においては、次の事項に配慮しながら、学校の創意工夫を生かし、全体として調和のとれた具体的な指導計画を作成するものとする。
(1) 各教科等及び各学年相互間の関連を図り、系統的、発展的な指導ができるようにすること。
また公民の「3 内容の取扱い(1)アには「地理的分野及び歴史的分野の学習の成果を活用するとともに、これらの分野で育成された能力や態度が、更に高まり発展するようにする」ともある。
3 内容の取扱い
(1) 内容の取扱いについては、次の事項に配慮するものとする。
ア 地理的分野及び歴史的分野の学習の成果を活用するとともに、これらの分野で育成された能力や態度が、更に高まり発展するようにすること。また、社会的事象は相互に関連し合っていることに留意し、特定の内容に偏ることなく、分野全体として見通しをもったまとまりのある学習が展開できるようにすること。
5 紙上討論は「道徳」の授業内容にも沿っている
「道徳」の目標である「人間尊重の精神」、道徳の「内容」の「自律の精神を重んじ、自主的に考え」「真理を愛し、真実を求め」「正義を重んじ」るものである。
またこれまでみてきたように「いろいろなものの見方や考え方があること」を身を持って理解して、「謙虚に他に学ぶ広い心をもつようにする」授業である。
第3章 道徳
第1 目標
道徳教育の目標は、教育基本法及び学校教育法に定められた教育の根本精神に基づき、人間尊重の精神と生命に対する畏敬の念を家庭、学校、その他社会における具体的な生活の中に生かし、個性豊かな文化の創造と民主的な社会及び国家の発展に努め、進んで平和的な国際社会に貢献できる主体性のある日本人を育成するため、その基盤としての道徳性を養うこととする。
第2 内容
1 主として自分自身に関すること。
(3) 自律の精神を重んじ、自主的に考え、誠実に実行してその結果に責任をもつようにする。
(4) 真理を愛し、真実を求め、理想の実現を目指して自己の人生を切り開いていくようにする。
2 主として他の人とのかかわりに関すること。
(5) それぞれの個性や立場を尊重し、いろいろなものの見方や考え方があることを理解して、謙虚に他に学ぶ広い心をもつようにする。
4 主として集団や社会とのかかわりに関すること
(3) 正義を重んじ、だれに対しても公正、公平にし、社会連帯の精神をもって差別や偏見のないよりよい社会の実現に尽くすように努める。
6 「総則第6 指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項」について、紙上討論の関連で下記に注目したい
1)紙上討論は「まとめ方に工夫を加え」「教材等の精選を図り、効果的な指導ができるよう」にした優れた授業である。
ただし担当教員には、ビデオ教材選択、新聞・書籍による参考資料のセレクトと編集、感想のテキスト打ち、感想へのコメント付け、印刷など、過重な負担がかかる。また年間120時間の枠のなかで、教科書以外の特別授業を地理的分野で9時間、歴史的分野で9時間を捻出することは、だれでもできるわけではなく、意欲と力量のある教員でないと実践することは難しい。
(2) 各教科の各学年、各分野又は各領域の指導内容については、そのまとめ方や重点の置き方に適切な工夫を加えるとともに、教材等の精選を図り、効果的な指導ができるようにすること。
2)作文教育をフルに活用している点で「言語に対する意識や関心を高め」に合致する。
増田さんは「書く事は考える事です。言葉をたどりながら思考は形成されます」という考えに基づき紙上討論を展開した。
2 以上のほか、次の事項に配慮するものとする。
(1) 学校生活全体を通して、言語に対する意識や関心を高め、言語環境を整え、生徒の言語活動が適正に行われるよう努めること。
3)生徒個人の意見をプリントにしていることは「今まで『この人、何考えてんの?』って感じの人や、一度も話したことのないヒト・・・そんな人達の意見は、すごく、ためになった」という感想にみられるように「生徒相互の好ましい人間関係を育て」ることに寄与する。また注目すべき意見にコメントを加えていることは「生徒指導の充実」に寄与しているといえる。
(3) 教師と生徒及び生徒相互の好ましい人間関係を育て、生徒が自主的に判断、行動し積極的に自己を生かしていくことができるよう、生徒指導の充実を図ること。
4)個別の生徒にコメントを付けてプリントにしていることから「生徒の実態等に応じ、学習内容の習熟の程度に応じた指導など個に応じた指導方法の工夫改善に努めること」にも合致する。
(5) 各教科等の指導に当たっては、学習内容を確実に身に付けることができるよう、生徒の実態等に応じ、学習内容の習熟の程度に応じた指導など個に応じた指導方法の工夫改善に努めること。
5)ビデオを多用していることは、「視聴覚教材にも沿ったなどの教材・教具の適切な活用」と言える。
「(9) 視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図るとともに、学校図書館を計画的に利用しその機能の活用に努めること。」
☆ここに掲げたのは地理的分野のものだが、ほかにビデオ「人間を返せ」を見て、ビデオ 公害訴訟団「東京の米軍基地」(横田)、「国益と大地」(矢臼別米軍演習)を素材に紙上討論が実施された。また歴史的分野では、「富国強兵」「殖産興業」を考える、岩波ジュニア新書 宮田光雄「生きるということ」から『隣の家の出来事』でユダヤ人迫害、ビデオ「ガンジー」で植民地独立運動、ビデオ「我が闘争」(ヒトラー)、「武器なきたたかい」(山本宣二)で戦争と抵抗、ビデオ「侵略」、原爆記録映画「予言」により紙上討論が実施された。
機会があれば歴史的分野や九段中学の紙上討論も紹介したい。
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最終回では、中学校学習指導要領と対照し紙上討論授業の意義について触れる。裁判資料用のやや蛇足の部分である。小文字で青になっている部分は97年当時の中学校学習指導要領の引用である。
紙上討論は教育基本法、中学校学習指導要領に沿う優れた授業方法である
紙上討論は、教育基本法第八条(政治教育)「1 良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。」に合致することはもちろん「中学校学習指導要領」に沿う授業方法である。
注1:足立16中の紙上討論は1997年6月から98年3月の時期に行ったので、旧学習指導要領(1989年3月15日に告示され93年4月1日から施行)を使用した。
注2:学習指導要領は、学校教育法施行規則(昭和22年文部省令第11号)第54条の2に根拠づけられる。
1 自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力の育成を図る授業である
「考える力を身につけることができた」「考える事が、私達中学生にもできることの一つだ」「考える事が、すべての行動の始まりだと思う」「増田先生の授業を受けられなくなっても、自主的に知りたくなったし、知らなきゃいけないと思う」といった感想から「自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力」が身についたことは明らかである。
第1章 総 則
「1(前略)学校の教育活動を進めるに当たっては、自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力の育成を図るとともに、基礎的・基本的な内容の指導を徹底し、個性を生かす教育の充実に努めなければならない。」
2 民主的、平和的な国家・社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養う授業である。
「中学生の今から「事実を知る」そして「考える」、これが、これからの日本の平和、そして世界の平和につながっていく」身近で『民主主義』を学べたように思う」といった感想から、「民主的、平和的な国家・社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養う授業である」ことが見て取れる。
第2節 社会
第1 目標
広い視野に立って、我が国の国土と歴史に対する理解を深め、公民としての基礎的教養を培い、国際社会に生きる民主的、平和的な国家・社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養う。
3 「沖縄の米軍基地」の紙上討論授業は、地理的分野の目標に沿ったものである
「沖縄の米軍基地」の紙上討論授業は地理的分野・沖縄を終了した時点で行われていることに留意すべきである。
「米軍基地があるから近所の人や普二小の児童がすごく迷惑している。もし墜落したら・・・。(略)これで海に移ったら今度はサンゴや漁師達に被害が出る」「米軍基地はあってもなくても誰かが困る。(略)もし米軍基地がなくなったら、基地があるからこそ生活できている人達が困る」という感想にみられるように、沖縄県民にとっての米軍基地は「地方的特殊性」であり、米軍基地のありようを学ぶことは沖縄の「人々の生活の地域的特色を理解するための基礎を培う」うえで欠かせない事項である。
第2 各分野の目標及び内容
〔地理的分野〕
1 目標 (2) 日本や世界の各地域における人々の生活には地方的特殊性と一般的共通性のあることに気付かせ、それらを成り立たせている地理的諸条件について考えさせるとともに、人々の生活の地域的特色を理解するための基礎を培う。
また基地を抱えた生活は、「社会的条件と人々の生活の関係」に注目させ基地移転運動により「地域も変容していることに気付かせ」る一例にほかならない。
目標(4) 「自然及び社会的条件と人々の生活の関係は人間の活動によって絶えず変化し、それに伴って地域も変容していることに気付かせ、環境や資源と人々の生活とのかかわりについて考えさせる」
また敗戦後の沖縄の土地収用の歴史を知ることは、「地域の歴史的背景に留意して指導内容の構成を工夫」した例にほかならない。
「3 内容の取扱い」「(2) 配慮事項」「ア 日本や世界の人々の生活に対する生徒の興味や関心を高めるような指導に努めるとともに、地域相互の結び付きや地域の歴史的背景に留意して指導内容の構成を工夫すること」
写真は12月末の都庁前ビラ撒き
4 紙上討論は、社会の諸問題に着目させ、自ら考えようとする態度を育てる授業である
「現実の問題や、過去の問題を深く考えることができたのはよかった。深く物事を考えることの大切さと必要さを忘れないようにしようと思う」「日本の社会の現実を知った上で、自分の意見を持つということができたので、私は自分のためになったと思う。」「増田先生の授業を受けられなくなっても、自主的に知りたくなったし、知らなきゃいけないと思う」という感想から、紙上討論は「社会の諸問題に着目させ、自ら考えようとする態度を育てる」ことに成功していることがわかる。
〔公民的分野〕1 目標(2) 民主政治の意義、国民の生活の向上と経済活動とのかかわり及び現代の社会生活における個人の役割などについての理解を深めるとともに、社会の諸問題に着目させ、自ら考えようとする態度を育てる。
上記は「公民的分野」の目標だが、総則において「各教科等及び各学年相互間の関連を図り、系統的、発展的な指導ができるようにする」と記されているので地理の授業で「公民的分野」の目標を達成することに問題はない。
第6 指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項
1 学校においては、次の事項に配慮しながら、学校の創意工夫を生かし、全体として調和のとれた具体的な指導計画を作成するものとする。
(1) 各教科等及び各学年相互間の関連を図り、系統的、発展的な指導ができるようにすること。
また公民の「3 内容の取扱い(1)アには「地理的分野及び歴史的分野の学習の成果を活用するとともに、これらの分野で育成された能力や態度が、更に高まり発展するようにする」ともある。
3 内容の取扱い
(1) 内容の取扱いについては、次の事項に配慮するものとする。
ア 地理的分野及び歴史的分野の学習の成果を活用するとともに、これらの分野で育成された能力や態度が、更に高まり発展するようにすること。また、社会的事象は相互に関連し合っていることに留意し、特定の内容に偏ることなく、分野全体として見通しをもったまとまりのある学習が展開できるようにすること。
5 紙上討論は「道徳」の授業内容にも沿っている
「道徳」の目標である「人間尊重の精神」、道徳の「内容」の「自律の精神を重んじ、自主的に考え」「真理を愛し、真実を求め」「正義を重んじ」るものである。
またこれまでみてきたように「いろいろなものの見方や考え方があること」を身を持って理解して、「謙虚に他に学ぶ広い心をもつようにする」授業である。
第3章 道徳
第1 目標
道徳教育の目標は、教育基本法及び学校教育法に定められた教育の根本精神に基づき、人間尊重の精神と生命に対する畏敬の念を家庭、学校、その他社会における具体的な生活の中に生かし、個性豊かな文化の創造と民主的な社会及び国家の発展に努め、進んで平和的な国際社会に貢献できる主体性のある日本人を育成するため、その基盤としての道徳性を養うこととする。
第2 内容
1 主として自分自身に関すること。
(3) 自律の精神を重んじ、自主的に考え、誠実に実行してその結果に責任をもつようにする。
(4) 真理を愛し、真実を求め、理想の実現を目指して自己の人生を切り開いていくようにする。
2 主として他の人とのかかわりに関すること。
(5) それぞれの個性や立場を尊重し、いろいろなものの見方や考え方があることを理解して、謙虚に他に学ぶ広い心をもつようにする。
4 主として集団や社会とのかかわりに関すること
(3) 正義を重んじ、だれに対しても公正、公平にし、社会連帯の精神をもって差別や偏見のないよりよい社会の実現に尽くすように努める。
6 「総則第6 指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項」について、紙上討論の関連で下記に注目したい
1)紙上討論は「まとめ方に工夫を加え」「教材等の精選を図り、効果的な指導ができるよう」にした優れた授業である。
ただし担当教員には、ビデオ教材選択、新聞・書籍による参考資料のセレクトと編集、感想のテキスト打ち、感想へのコメント付け、印刷など、過重な負担がかかる。また年間120時間の枠のなかで、教科書以外の特別授業を地理的分野で9時間、歴史的分野で9時間を捻出することは、だれでもできるわけではなく、意欲と力量のある教員でないと実践することは難しい。
(2) 各教科の各学年、各分野又は各領域の指導内容については、そのまとめ方や重点の置き方に適切な工夫を加えるとともに、教材等の精選を図り、効果的な指導ができるようにすること。
2)作文教育をフルに活用している点で「言語に対する意識や関心を高め」に合致する。
増田さんは「書く事は考える事です。言葉をたどりながら思考は形成されます」という考えに基づき紙上討論を展開した。
2 以上のほか、次の事項に配慮するものとする。
(1) 学校生活全体を通して、言語に対する意識や関心を高め、言語環境を整え、生徒の言語活動が適正に行われるよう努めること。
3)生徒個人の意見をプリントにしていることは「今まで『この人、何考えてんの?』って感じの人や、一度も話したことのないヒト・・・そんな人達の意見は、すごく、ためになった」という感想にみられるように「生徒相互の好ましい人間関係を育て」ることに寄与する。また注目すべき意見にコメントを加えていることは「生徒指導の充実」に寄与しているといえる。
(3) 教師と生徒及び生徒相互の好ましい人間関係を育て、生徒が自主的に判断、行動し積極的に自己を生かしていくことができるよう、生徒指導の充実を図ること。
4)個別の生徒にコメントを付けてプリントにしていることから「生徒の実態等に応じ、学習内容の習熟の程度に応じた指導など個に応じた指導方法の工夫改善に努めること」にも合致する。
(5) 各教科等の指導に当たっては、学習内容を確実に身に付けることができるよう、生徒の実態等に応じ、学習内容の習熟の程度に応じた指導など個に応じた指導方法の工夫改善に努めること。
5)ビデオを多用していることは、「視聴覚教材にも沿ったなどの教材・教具の適切な活用」と言える。
「(9) 視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図るとともに、学校図書館を計画的に利用しその機能の活用に努めること。」
☆ここに掲げたのは地理的分野のものだが、ほかにビデオ「人間を返せ」を見て、ビデオ 公害訴訟団「東京の米軍基地」(横田)、「国益と大地」(矢臼別米軍演習)を素材に紙上討論が実施された。また歴史的分野では、「富国強兵」「殖産興業」を考える、岩波ジュニア新書 宮田光雄「生きるということ」から『隣の家の出来事』でユダヤ人迫害、ビデオ「ガンジー」で植民地独立運動、ビデオ「我が闘争」(ヒトラー)、「武器なきたたかい」(山本宣二)で戦争と抵抗、ビデオ「侵略」、原爆記録映画「予言」により紙上討論が実施された。
機会があれば歴史的分野や九段中学の紙上討論も紹介したい。
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