9月20日夜、練馬区役所内会議室で開催された生かそう1947教育基本法!練馬連絡会議の学習会に参加した。
この日のテーマは「いま練馬の教育に起きていること」。練馬の保育園では民営化計画(20園/60園)、小学校では一挙に8校の統廃合、学童クラブでは全児童対象の「放課後子どもプラン」、中学では4月から強制導入された2学期制の問題が起きている。当事者である教員や保護者の生の声を聞いた。
練馬の教育にも、拙速の民営化、効率化など、小泉改革の負の側面が現れているようだ。
1 一挙に8校、小学校統廃合問題
9月6日、区は中P連で、突如「区立学校適正配置第一次実施計画(案)」を公表した。計画案の資料によれば、2003年12月適正規模検討委員会を設置し翌年3月適正規模を小学校12-18学級、中学校11-18学級と定め、2004年9月適正配置検討委員会を設置し05年4月基本方針を定めた。
2007年度東京都教育人口推計を基礎数値として2012年度の推計をしたところ、小学校の過小規模校が14校/69校、中学校の過小規模校が16校/34校の見込みとなった。そこで今後2年間準備期間を設け、まず光が丘の小学校8校を2010年4月に4校に統合、その後2009年度に計画の見直しを行い2010年度以降の第二次実施計画を策定する、とある。統廃合対象の光が丘地区で、学校別説明会を9月末から10月半ばまで保護者や地域住民向けに開催する。
降って湧いたような話に会場から驚きの声が上がると同時に、次々に疑問の声が上がった。
●他都市の計画書には統廃合のメリット・デメリットが書かれているいることが多いが、練馬の計画案には適正規模の集団生活、学習活動、学校運営上など「メリット」しか書かれていない。
●適正学級数だけでなく、最少生徒数の基準が定められていることが多いが、練馬の計画にはない。
●今年12月に計画案を決定するようだが、地域向け説明会は各校1回しか予定がない。拙速ではないか。
●学校統廃合をする場合、教育内容のすり合わせも行う必要がある。やらなかった東久留米では混乱し、やった調布ではうまくいった。
●校名は新名称にすることになっている。統合の場合、校歌・校章も新たなものにしないとうまくいかないことが多いが、どうなるのか。また学校指定用品は?
●この適正規模は学校運営面から定められたものだ。教育面の適正規模を考えているのかどうか。
(1学級の生徒数の適正規模の研究はあるそうですが、1校の学級数の適正規模はあまりみかけないそうです)
●跡地利用はどうなるのか
(地元では、かねてより老人施設に転用するというウワサがある)
●新校のうち2校の学区が中学の学区と同一になる。小中連携を実験しようとしているのではないか。
●(2005年度にスタートした学校選択の結果をみて第二次計画を定めるとは書いてあるが)都の2012年度人口推計は、学校選択の結果をいったいどのように盛り込んでいるのだろうか。
(板橋区の高島七小は、学校選択以前は10人以上新入児童がいたが、選択制導入の結果、3人に激減し廃校になった)
2 学童クラブと学校応援団「放課後子どもプラン」
2006年5月、政府(文科省と厚労省)は猪口少子化対策特命大臣の発案で、全児童対象の放課後対策として学童クラブ(学童保育)事業と児童放課後等居場所づくり事業を一体化あるいは連携して推進する「放課後子どもプラン」を発表した。川崎の「わくわくプラザ」、品川の「すまいるスクール」、世田谷区の新BOPなどの先行例がある。
しかし目的も事業内容も異なるふたつの事業を一体化させることには問題もある。たとえば、児童放課後等居場所づくり事業は決まった児童がくるわけではなく指導員もローテーション勤務で、連絡帳もないので一人一人の子どもや保護者の顔がみえにくくなる。
また人数が増え、1人当たりのスペースが狭くなった結果、接触事故が激増し平均1日1回事故が起きている。そして大人は子どもと遊ぶのではなく、監視役になってしまった。
練馬区では職制だけで半年間プランを練り、現在、担当課である生涯学習課長、小学校長など14人のメンバーで「放課後子どもプラン」関係者会議を立ち上げたところである。しかし会議は3回しか開催されず、11月中に結論を出し区長に報告する予定になっている。
児童館は正規の職員が生活と遊びをサポートしているが、「放課後子どもプラン」で学童専用の部屋や専任職員が確保されるのか、今後、注視する必要がある。
3 全中学に強制導入された2学期制、半年後の検証
この4月から練馬のすべての中学に2学期制が強制導入された(小学校は先行校が4校増え6校)。
区の意図は(1)「学びの連続性」を確保する、(2)子ども一人ひとりの学習状況に応じたきめ細かい指導を行う、(3)子どもと教師が向き合う時間的ゆとりができる、というものだった。
導入して半年、はたして、いま学校でどのような問題が起きているのか。
まず受験制度との矛盾がある。1学期の期末試験は9月中旬に行われる。これでは夏休みの高校訪問前に自分の評価を知ることができないので、夏休み前に暫定評価を出すため従来は5教科だった1学期の中間試験が9教科に増えた。しかし技術科など週1時間しかない科目は(行事や祝日の関係で)たった3回しか授業をやらずに試験をするとか、数学の図形分野は夏休み明けに授業が一度もないまま試験という事態も発生している。しかもそのうち1回はテストの答え合わせということすらある。
学校行事でも多くの問題が生じている。秋の修学旅行はすでに1年生のときに日程が決まっていたため修学旅行の2日後が期末試験とか、生徒会の立候補締切日の翌日が試験、最大の行事である合唱コンクールが期末試験で寸断されるなど、区が目論んだ「学びの連続性」が失われる事態になっている。
9月に転校してくるといきなり期末試験という最悪の状況なので、不登校になる生徒が実際に出ている。
また夏休みの学習支援教室(補修授業)や三者面談は従来3年だけだったものが全学年になり、教員の負担が増えている。
☆都立高校や千葉の私立高校では2学期制を中止し3学期制に戻した学校もあるそうだ。
4 区立保育園民営化裁判の現状
2005年9月、光が丘第8保育園は、ピジョン(株)への民間委託を行った。年度途中の民営化は全国にも例のないものである。その結果、常勤職員15人、非常勤職員15人が退職に追い込まれ、混乱のなか26人(全体の2割)の園児が転園を余儀なくされた。
そこで民営化に関わる委託契約の違法性を問い、委託先への不当利得返還を求める訴訟が2006年7月提起された。
次回は10月31日午後、第8回口頭弁論が東京地裁で開かれる。
区立施設委託化・民営化実施計画では今後も毎年2園ずつ、2016年度までに20園/60園を民営化することにしている。
この日のテーマは「いま練馬の教育に起きていること」。練馬の保育園では民営化計画(20園/60園)、小学校では一挙に8校の統廃合、学童クラブでは全児童対象の「放課後子どもプラン」、中学では4月から強制導入された2学期制の問題が起きている。当事者である教員や保護者の生の声を聞いた。
練馬の教育にも、拙速の民営化、効率化など、小泉改革の負の側面が現れているようだ。
1 一挙に8校、小学校統廃合問題
9月6日、区は中P連で、突如「区立学校適正配置第一次実施計画(案)」を公表した。計画案の資料によれば、2003年12月適正規模検討委員会を設置し翌年3月適正規模を小学校12-18学級、中学校11-18学級と定め、2004年9月適正配置検討委員会を設置し05年4月基本方針を定めた。
2007年度東京都教育人口推計を基礎数値として2012年度の推計をしたところ、小学校の過小規模校が14校/69校、中学校の過小規模校が16校/34校の見込みとなった。そこで今後2年間準備期間を設け、まず光が丘の小学校8校を2010年4月に4校に統合、その後2009年度に計画の見直しを行い2010年度以降の第二次実施計画を策定する、とある。統廃合対象の光が丘地区で、学校別説明会を9月末から10月半ばまで保護者や地域住民向けに開催する。
降って湧いたような話に会場から驚きの声が上がると同時に、次々に疑問の声が上がった。
●他都市の計画書には統廃合のメリット・デメリットが書かれているいることが多いが、練馬の計画案には適正規模の集団生活、学習活動、学校運営上など「メリット」しか書かれていない。
●適正学級数だけでなく、最少生徒数の基準が定められていることが多いが、練馬の計画にはない。
●今年12月に計画案を決定するようだが、地域向け説明会は各校1回しか予定がない。拙速ではないか。
●学校統廃合をする場合、教育内容のすり合わせも行う必要がある。やらなかった東久留米では混乱し、やった調布ではうまくいった。
●校名は新名称にすることになっている。統合の場合、校歌・校章も新たなものにしないとうまくいかないことが多いが、どうなるのか。また学校指定用品は?
●この適正規模は学校運営面から定められたものだ。教育面の適正規模を考えているのかどうか。
(1学級の生徒数の適正規模の研究はあるそうですが、1校の学級数の適正規模はあまりみかけないそうです)
●跡地利用はどうなるのか
(地元では、かねてより老人施設に転用するというウワサがある)
●新校のうち2校の学区が中学の学区と同一になる。小中連携を実験しようとしているのではないか。
●(2005年度にスタートした学校選択の結果をみて第二次計画を定めるとは書いてあるが)都の2012年度人口推計は、学校選択の結果をいったいどのように盛り込んでいるのだろうか。
(板橋区の高島七小は、学校選択以前は10人以上新入児童がいたが、選択制導入の結果、3人に激減し廃校になった)
2 学童クラブと学校応援団「放課後子どもプラン」
2006年5月、政府(文科省と厚労省)は猪口少子化対策特命大臣の発案で、全児童対象の放課後対策として学童クラブ(学童保育)事業と児童放課後等居場所づくり事業を一体化あるいは連携して推進する「放課後子どもプラン」を発表した。川崎の「わくわくプラザ」、品川の「すまいるスクール」、世田谷区の新BOPなどの先行例がある。
しかし目的も事業内容も異なるふたつの事業を一体化させることには問題もある。たとえば、児童放課後等居場所づくり事業は決まった児童がくるわけではなく指導員もローテーション勤務で、連絡帳もないので一人一人の子どもや保護者の顔がみえにくくなる。
また人数が増え、1人当たりのスペースが狭くなった結果、接触事故が激増し平均1日1回事故が起きている。そして大人は子どもと遊ぶのではなく、監視役になってしまった。
練馬区では職制だけで半年間プランを練り、現在、担当課である生涯学習課長、小学校長など14人のメンバーで「放課後子どもプラン」関係者会議を立ち上げたところである。しかし会議は3回しか開催されず、11月中に結論を出し区長に報告する予定になっている。
児童館は正規の職員が生活と遊びをサポートしているが、「放課後子どもプラン」で学童専用の部屋や専任職員が確保されるのか、今後、注視する必要がある。
3 全中学に強制導入された2学期制、半年後の検証
この4月から練馬のすべての中学に2学期制が強制導入された(小学校は先行校が4校増え6校)。
区の意図は(1)「学びの連続性」を確保する、(2)子ども一人ひとりの学習状況に応じたきめ細かい指導を行う、(3)子どもと教師が向き合う時間的ゆとりができる、というものだった。
導入して半年、はたして、いま学校でどのような問題が起きているのか。
まず受験制度との矛盾がある。1学期の期末試験は9月中旬に行われる。これでは夏休みの高校訪問前に自分の評価を知ることができないので、夏休み前に暫定評価を出すため従来は5教科だった1学期の中間試験が9教科に増えた。しかし技術科など週1時間しかない科目は(行事や祝日の関係で)たった3回しか授業をやらずに試験をするとか、数学の図形分野は夏休み明けに授業が一度もないまま試験という事態も発生している。しかもそのうち1回はテストの答え合わせということすらある。
学校行事でも多くの問題が生じている。秋の修学旅行はすでに1年生のときに日程が決まっていたため修学旅行の2日後が期末試験とか、生徒会の立候補締切日の翌日が試験、最大の行事である合唱コンクールが期末試験で寸断されるなど、区が目論んだ「学びの連続性」が失われる事態になっている。
9月に転校してくるといきなり期末試験という最悪の状況なので、不登校になる生徒が実際に出ている。
また夏休みの学習支援教室(補修授業)や三者面談は従来3年だけだったものが全学年になり、教員の負担が増えている。
☆都立高校や千葉の私立高校では2学期制を中止し3学期制に戻した学校もあるそうだ。
4 区立保育園民営化裁判の現状
2005年9月、光が丘第8保育園は、ピジョン(株)への民間委託を行った。年度途中の民営化は全国にも例のないものである。その結果、常勤職員15人、非常勤職員15人が退職に追い込まれ、混乱のなか26人(全体の2割)の園児が転園を余儀なくされた。
そこで民営化に関わる委託契約の違法性を問い、委託先への不当利得返還を求める訴訟が2006年7月提起された。
次回は10月31日午後、第8回口頭弁論が東京地裁で開かれる。
区立施設委託化・民営化実施計画では今後も毎年2園ずつ、2016年度までに20園/60園を民営化することにしている。