国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

バルチスタン、クルド、シーア派の聖地ナジャフ:米国の描く新中東地図とイラン

2007年03月17日 | 中近東地域
表向きは米国とイランは核問題で激しく対立し、開戦直前の状況にあるとされる。しかしながら、イラク情勢を巡って米国とイランは交渉を持っており、米国の戦争はどう考えてもイランの国益に貢献している。このことから考えられるのは、米国とイランの核開発問題を巡る対立は単なる茶番であり、実は米国とイランは親密な関係にあるのではないかということだ。では、「米国のアフガニスタン・イラク攻撃は友好国イランへの貢献」という仮説について考えてみよう。米国とイランの対立があまりに真に迫っているために覆い隠されている米国とイランの友好関係は、クルド人国家・パシュトン人国家・バルチスタン人国家というペルシャ系民族の国家やイラク南部のシーア派アラブ人国家を生み出す点でイランにとって大きな利益である。米国は犯罪国家の汚名を着て戦争を実行するという大きな損失があるが、それを上回る利益があるだろうか?私が考えつくのは、中東の国境線が民族や宗教の境界線に合致することで平和がもたらされ西アジアからの米軍の撤退が可能になる利益と、米国の経済的崩壊時にイランが米国に支援を行うことで恐慌の混乱を回避する利益ではないかと想像する。同様に、イスラエルを何らかの形で滅亡させることでパレスチナ問題を解決する利益、スンニ派イラク人居住地域を併合する利益と引き替えに、サウジやシリアなどのアラブ諸国は米国の経済崩壊時に経済支援を行う予定なのかもしれない。別の仮説としては、米国は多民族国家であるイランを攻撃して、ペルシャ系だがスンニ派の多い西部のクルド人地域や、シーア派だがトルコ系でアゼルバイジャン共和国という国民国家を持つ北西部のアゼリー人地域、イラク南部と同様シーア派だがアラブ系住民の住む南西部地域、パキスタンのバルチスタン州と同じバルチスタン人の住む地域などを占領し切り離してそれぞれ別の国にするというより壮大な国境線引き直しも考えられる。アラブ人地域のフゼスタン州は大油田地域なので、ここを失うとイランは一挙に貧乏国に転落してしまうだろう。アメリカ軍部が発表した新中東地図はまさにこのシナリオである。以上、米国がイランを攻撃しない説とする説について考察してみた。正解は近日中に明らかになることであろう。 . . . 本文を読む
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