国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

ラトビアが対露領土返還要求を断念して国境線を確定:北方領土問題への影響は?

2007年03月29日 | ロシア・北方領土
ラトビアがロシアとの激しい対立の原因となってきた領土要求を遂に取り下げ、ロシアとの国境線確定で合意した。エストニアもロシア国境は未確定だが両国政府は現状の境界線を国境とすることに基本的に合意しており、それに異議を唱えているのは境界線の両側に分断されて居住する少数民族だけである。これで、ロシアに対して領土の返還を公式に要求する国は世界で唯一日本だけとなってしまった。孤立した日本はロシアの圧力に屈するしかないのだろうか?私はそうは考えない。ラトビアの対露領土返還要求撤回は欧州諸国の意見を反映したものである。ところが、2005年7月7日に欧州議会は北方四島を日本に返還すべきであるとの決議を行っているのだ。 2005/9/30のプラウダロシア語版に「ロシアは北方領土を返還するように忠告されている」と題する記事がある。ロシア人に領土返還を忠告しているのはEUと米国である。英語版では「プーチンは断固としてロシアの千島への主権を擁護し、日本はその返還を主張し続ける」という異なる題名になっているが、記事の内容は英語・ロシア語とも一部を除きほぼ同一で、従来のロシアの返還反対論とは異なり、日露両国の主張を公平に載せており、日本が放棄した「千島」の範囲の認識が両国間で異なる点に触れている。 日本が北方領土問題で妥協しそうにないこと、EUや米国も日本を支持していること、北方領土やロシア極東のロシア人が日本との交流で良い暮らしをしていることなどを列挙し、日本とロシアの領土問題での要求を公平に紙面に載せることで、ロシア極東以外の日本と縁の薄いロシア人に領土問題での対日譲歩の利益を説得する意図の記事であると思われる。この記事で興味深いのは、北方領土問題だけでなく現在の日本に関する記述が多く、日本に対する賞賛に満ちあふれていることだ。日本の金保有が世界最大など信じがたい情報も含まれている。日本の報道ではロシア側が強硬姿勢とするものが多いが、「微妙な問題だが、善意を持てば、(両国にとって、また、住民にとって適切な解決策を見つけることができると確信する」とプーチンが述べている点から見て、日露両国は既に領土返還で基本的に合意済みであり、何らかの交換条件と引き換えに日本に四島の主権の全て又は一部を引き渡すというような落とし所が既に準備されていると予測する。 . . . 本文を読む
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