国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

中国の支配階層の中で一大勢力を有する満州族:満州国再建は日本の国益に利益か不利益か?

2007年03月31日 | 中国
満州族は漢族と比較して大学レベルの文化水準を持つものが十倍以上と異常に多く、文盲・半文盲者の比率は十分の一以下と異常に少ない。現在と違って大学が非常に狭き門であった1990年以前の大学卒業者というのは中国では非常なエリート階層であると考えられる。中国の総人口の1%に満たない少数派である満州族であるが、恐らく中国の大卒者の中では10%程度という圧倒的勢力を有していると思われ、 満州族が多数居住する遼寧、吉林、黒龍江・河北の4省ではその比率は更に高いと予想される。 もう一つの興味深い情報だが、中国の少数民族の自治区・自治県の成立時期を見ると、他の民族自治区域が建国間もない時期に続々と設置されているのとは対照的に、満州族の自治県は1985年6月から1990年6月までの短い期間に設置が集中している。 やはり、中華人民共和国時代でも漢民族優位主義の中で満州族への差別や迫害が存在したか、あるいは中華民国時代の迫害の記憶故に満州族がその出自を隠さざるを得なかったのだろう。そして、1980年代はその迫害が終焉して、自らの出自を隠していた人々が一斉にカミングアウトし始めた時期なのだろう。満州族自治県初設置の三ヶ月前の1985年3月にゴルバチョフがソ連書記長に就任したことが関係しているのかもしれない。 もし満州民族が中心となって満州国を再建した場合、それは日本にとっては基本的には好都合である。大陸全体が単一のランドパワーに占拠される体制ではなく、ロシア・満州・中国の三大国が並立する形態になるからだ。四世紀前と同様に満州国が統一朝鮮国家を軍事的に支配下に置き平和をもたらす可能性も期待でき、日本と中国を悩ましてきた朝鮮半島問題を一挙に解決するものである。 ただ、日本にとって憂慮されるのは、19世紀半ばに清からロシアに割譲されたアムール川以北と沿海州の領土返還要求が出る場合である。人口の9割が漢民族の新満州国が沿海州を領有すると、日本は西だけでなく北からも中国人の圧力を受けることになるからだ。日本政府・ロシア政府はこの問題を把握しているだろう。場合によっては、満州族中枢階層との間で既に何らかの秘密合意が出来上がっているか、あるいは合意形成中かもしれない。 . . . 本文を読む
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